経済産業省
文字サイズ変更
   
 

WTO電子商取引に対する通商産業省提案(2nd Draft) (注)

原文(英文)はこちら

Towards eQuality
Global E-Commerce presents Digital opportunity to lose the Divide
Between Developed and Developing Countries


和訳版作成責任者:通商政策局国際経済部国際経済課
田村英康
羽田由美子

通商産業省提案の背景及び目的

我々は、「インターネットとE-Commerceの発達こそが、全人類及び全世界の国家の発展をもたらす」という固い信念に基づき、本提案をここに表明する。E-Commerceは、ビジネスの世界のみでなく、社会全体に対して強い影響力を持つようになってきており、その傾向は今後、益々強まることになろう。情報化社会に生きる全人類にとって、「生活水準」の向上は、信頼できる強固なネットワークシステムの構築に係っている。ビジネス面でインターネットを使用する人々のみでなく、ごく一般の(従来であれば、インターネットに縁のない生活を送っていたような)人々も、インターネットを通じた活動に親しむようになることは、我々の政策の目標とするところである。

沖縄サミットの「グローバルな情報社会に関する沖縄憲章(IT憲章)」においても、G8諸国は情報通信技術(IT)は、21世紀への未来を切り開くに当たって、最も力を発揮する可能性を持った技術である、と宣言している。

IT憲章において、G8各国は包括的な原則に向け、公約を刷新することも宣言している。誰もがどの場所からもグローバルな情報社会に参加でき、その経済的利益を享受することが出来る社会の実現が必要なのである。

E-Commerceによって、全ての消費者や中小企業が、インターネットを通じた世界的規模の市場に容易にアクセス出来るようになる。かつては、世界的規模で展開する先進国の大企業のみが、世界的規模の市場にアクセスし、その恩恵を享受していた。E-Commerceは、国家間のデジタル・デバイドを解消し、新たな国際経済秩序の中で、“eQuality”を達成する新たなで強力な手段なのである。eQualityは、先進国と途上国双方の利益となるE-Commerce関連の国際的枠組構築に向け、メンバー国が、消費者及び企業の利益をバランス良く反映した政策を実行し続けることによって達成できる。このイニシアティブを考えるに当たり、加盟諸国は、消費者と産業界双方の視点を考慮しなければならない。この観点から、「デジタル通商政策」は、非常に大きな意味を持つようになる。

本ペーパーは、通商産業省作成のWTOにおけるE-Commerceイニシアティブ第二次案である。本提案の主目的は、WTOでの国際的な議論や国内の論議を喚起するべく、問題点を提示することである。


途上国から見た利益

E-Commerceは、持続的発展的な経済、公益の増大、社会的結合の進展という相互協力的な目標に貢献する全ての国家にとって良い影響を与える。また、多角的通商体制に参加する多くの発展途上国に対しても大いに貢献するものとなるであろう。E-Commerceの急速な発達から、途上国は多大な利益を得、貧困削減、健康、教育面の改善といった目標が達成出来るようになる。

今日のような情報化社会において、世界的レベルでの“eQuality”を達成するためには、WTO加盟国は世界的な規模で、情報化社会への移行を促進するだけでなく、経済的、社会的、文化的な恩恵を十分に享受できるような政策的基盤を整えなければならない。

同時に、加盟諸国は、開発途上各国がE-Commerceによってもたらされる利益を享受できるよう、能力の涵養(キャパシティ・ビルディング)を実行し、それによってデジタル・デバイドを解消するよう努めるべきである。沖縄憲章においても、G8諸国はデジタル・デバイドの早期解消に向けて合意した。WTO加盟諸国は途上各国のそれぞれのあまり芳しくない状況や、ニーズを踏まえつつ、この問題に積極的に取り組んでいかねばならない。


1.E-Commerce関連分野の貿易自由化

加盟国は、E-Commerceに必要不可欠なインフラを提供する「E-Commerce Enabling Sectors」を確立し、そして当該分野の貿易自由化を進めなければならない。

現存するGATS協定も、E-Commerceを通じて提供されるサービス分野に関して、当てはまる部分もある。E-Commerceのコンテンツ分野はこれに当たる。しかし、E-Commerceを促進するようなグローバルな規模での環境整備のため、更にこれらの分野での貿易自由化を進める必要がある。

E-Commerce関連分野の定義、範囲は産業界と協議して決定しなければならない。産業界の国際的協調促進もまた、重要になってくる。消費者の関心もまた、便利さと取引範囲の拡大のために十分に考慮に入れるべきである。

オンラインでも、実体としても購入できる品もある。どちらかの購入形態がもう一方をさしおいて優遇されぬように注意しなければならない。


2.国内規制の原則

加盟国が情報化社会の抱える、根本的なリスクを回避するような内容を含む、国内規制法制を執る際には、以下の原則について合意しておく必要がある。これらの原則は、GATT、GATS、TRIPS、OECDなどの国際フォーラで議論された国内規制原則を基盤とし、E-Commerceの特徴を考慮して磨き上げる必要がある。
このような原則を設けることによって、ある特定の加盟国が、一方的に「偽装された貿易障壁的な措置」ともいえるような、過剰な規制を敷くことや、プロバイダーが個々の加盟国の相互矛盾的な規制に悩まされたりするのを防ぐことが我々の目的である。

透明性-全ての加盟国は、緊急の場合を除いて、関連措置が実行された場合には、E-Commerceに関連するか、もしくは影響を及ぼすような全ての一般適用措置をすぐに発動する。

非差別的取扱い-内国民待遇や、最恵国待遇は、E-Commerceに関しても適用されるべきである。

必要限度を超えた貿易阻害措置の回避―消費者保護などの国内規制を実施する際には、加盟各国は他国にとって必要限度以上の負荷となるような貿易制限措置を採ってはならない。このことは、今後、E-Commerceの発達により、従来より容易に世界経済市場に参入が可能になる、中小企業や途上国の企業にとってはとりわけ重要なことである。だから、国内規制をインターネットの性質に合わせて援用するような、貿易制限的措置を採らないようにすべく、加盟各国は現物要求、書面交付要求、対面販売要求、署名要求といった、インターネット上のサービス提供にそぐわない措置の見直しをすべきである。その際に、消費者保護の観点を忘れてはならない。

規制、標準に係るルールの国際的ハーモナイゼーション-国内の規制と標準は、国際的にハーモナイズされた、市場法則に則ったルールに基づいて制定され、市場の現状を十分かつ、実行可能な程度に反映するものにしなければならない。また、加盟諸国は基準の、消費者保護と加盟諸国-特に、途上国-への技術拡散を容易にするという性質に十分注意する必要がある。国際的ルールや標準を適用することで、産業界にも消費者にも将来を予想可能にするという効果がある。

同質な他国基準措置の認証-国際的にハーモナイズされた措置を採ることが出来ない場合は、他の国の類似する部分を調査・評価したり、貿易相手国の規制措置の同質性を認識したりすることで、国家間の不均衡という、ネガティブな貿易効果を無くしていくことが望ましい。


3.E-Commerce関連分野における競争促進的な環境整備

各国政府が先進国と途上国のデバイドを緩和するような、バランスの取れた政策を採る限り、E-Commerceの発達によって、中小企業か、大規模な国際的企業かに関わらず、世界規模の市場に展開できる可能性を秘めている。しかし、反対に、バランスを誤った政策を採ると、このデバイドは残り続けることになる。

このようなデバイド解消のためには、加盟諸国は単に国内規制緩和の推進だけでは不十分である。先進国か途上国かに関わらず、E-Commerce関連市場において公平なチャンスを与えられるようにするには、自由化だけでなく、市場のプレーヤーたる各企業が、反競争的にならないよう、競争促進的な環境の整備が必要である。我々はネットワーク効果により、独占や寡占が起こりやすい分野であること、もし独占、寡占が起こった場合には非常に大きな力をもつことなどを考慮に入れる必要がある。先進国も途上国も公平な条件の下で参加し、それぞれの利益が反映されるようにするのは、世界的規模でのE-Commerceの発展にとって欠かせないことである。競争促進的な環境は、消費者の利益も反映するようになる。

GATS第8条及び第9条を下に構築されているこの文脈の中では、ネットワーク効果がE-Commerceに与えるインパクトに関して議論を進めるに当たっては以下の事項を考慮に入れなければならない。

エッセンシャル・ファシリティ-有形財産についても、無体財産についても、「エッセンシャル・ファシリティ」にどのように対処し、それをいかに利用するかは、E-Commerce関連のマーケットで競争する供給者(プロバイダー)にとっては重要である。

特許関連問題-ソフトウェア関連ビジネス方法についてはテクノロジー時代においてハーモナイズされた国際的な知的財産保護のための国際的プログラムに関して議論を活発に行うことが望ましい。その中には、過去の技能に関する強固なデータベースの構築や競争的なマーケットの整備が含まれる。沖縄憲章においても、G8諸国は知的財産権と、当該分野の専門家が更に議論を進められるように、共同作業をすることを歓迎する。
サイバースペースの独占的原理-インターネットの独占的性質とE-Commerceの与える否定的なインパクトいついて。それらの点について議論することは、技術的革新を考慮に入れるべきである。

国際的協力フレームワーク-加盟諸国は、バイレベル、プルリレベル、そしてマルチレベルで上記事項を達成するために協力プログラムを進めるべきである。


4.関係国際機関との協調

知的財産権や契約法、電子署名や電子認証、消費者保護、裁判権などを含む、国際的なルールの構築に当たっては、E-Commerce関連の問題は、WIPO、OECDなどを含む様々な機関において議論が進んでいる。
WTOはそのような作業を注意深く見守るとともに、様々なE-Commerce関連の問題を扱う努力を進めるべきである。

他の国際的フォーラで、合意がなされた場合、WTOは「適切な国際的ルールが関連国際機関で既に存在するか、またはこれから成立するのであれば、加盟国はその国際的ルールを国内の法制度や規制に反映する」ということを前提に、ルールのハーモナイズに努めなければならない。


5.途上国の能力涵養(キャパシティ・ビルディング)

情報化社会の波に乗り遅れた加盟各国は、情報化社会に参画し、E-Commerceの恩恵を享受する機会に恵まれずにいる。加盟各国はWTOの貢献を大きなものと出来るよう、努力し、途上国の苦しい状況とニーズを理解して、eQualityを達成すべく、努力していかなければならない。以下の分野は特に強調すべきである。

技術的協力-先進諸国は、技術的協力(例えば、ハード、ソフト両面でのインフラの整備、E-Commerceに対応できる人材の育成、貿易円滑化)を実行することで、途上国のE-Commerce利用を促進し、途上国とE-Commerceから得られる恩恵を分かち合うようにすべきである。

インフラストラクチャーとして必要なもの-E-Commerce利用を促進するためには、途上国はインフラ整備に重点を置くべきである。国際社会による支援を技術協力と共に行うことは、E-Commerceのためのインフラ整備には重要である。また、知的資源や財源の確保のために、WTOは、世界銀行、アジア開発銀行、米州開発銀行等の国際的、地域的な金融組織と連携することが望ましい。

デモンストレーション-途上国でのE-Commerce利用を推進を成功したという経験は、貿易と開発委員会(CTD)において、情報や知識を共有することで進められる。

政策対話-情報、知識の共有のため、加盟諸国は政策対話を進め、グローバルな規模でデジタル・デバイド解消のための重要性を認識すべきである。

国際的協調フレームワーク-加盟諸国は、APEC(アジア太平洋経済協力機関)などの国際的フォーラの中でのE-Commerce分野のキャパシティ・ビルディングの進展に注目すべきである。


6.民間セクターの積極的取り組みの推進

社会的問題に対する自己規制のような、民間セクターの積極的取り組みは促進されるべきである。自己規制は、政府の政策的サポートによって強化されていくべきである。

各国政府は、GBDe等のような民間主導型のフォーラと積極的に政策対話を進めていくべきである。沖縄憲章も、G8は、デジタル・デバイド解消に向けた民間セクターの貢献を歓迎している。

加盟諸国は、発展途上国の産業界や消費者の観点を反映したスキームを構築する方法を考えていかなければならない。


7.その他

関税不賦課モラトリアム-加盟諸国は、現在のE-Commerceに対する、関税不賦課モラトリアムの継続に合意すべきである。モラトリアム期間の延長に関する議論は、第4回閣僚会議の場ではじめることが望ましい。


議論の前提

E-Commerce関連分野の貿易自由化は、今後のサービス交渉の中においても行われるべきである。我々通商産業省は、E-Commerceに関する4つの下部組織における作業部会の再活性化を望んでいることは言うまでもない。また、GATT、GATS、TRIPS、そして発展途上国関連作業部会の4下部組織に関して、分野横断的な問題については、一般理事会の下に” Horizontal Task Force”を設置して検討するべきである。

その、”Horizontal Task Force”は、従来、GATTなどの4下部組織において行われていた議論を踏まえた上で設置されるべきであり、議論の結果は必要に応じて、今後のサービス交渉に反映していくべきである。また、タスク・フォースを置くことによって、WTOは急激な技術革新にも対応でき、WTOの全分野について横断的な知識や情報の共有に繋がる。そして、そのことは現在に於いては、四つの下部組織全てに代表団を派遣しなければならない加盟各国とりわけ、途上国の加盟各国の負担軽減にも繋がるのである。加盟諸国は、APECやGBDeなどといった国際的な政府間のまた、企業間のフォーラの、”Horizontal Task Force”を求めるメッセージに一刻も早く応えていくべきである。

(注)本提案(2nd Draft)は、平成12年7月に制作された(1st Draft(英語のみ))を改訂したものである。

TOP

経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
Copyright Ministry of Economy, Trade and Industry. All Rights Reserved.