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WTO・エネルギーサービスに関する日本提案

Ⅰ.序
  1. 日本は、既に2000年12月22日に分野別関心事項を含む交渉提案(S/CSS/W/42)を提出しているところであるが、「ロードマップ」第2パラ(b)に明記されているように、加盟国は今後も追加的な或いは詳細な交渉提案を提出する柔軟性を与えられているため、経済活動におけるエネルギー・サービスの重要性に鑑み、今次サービス貿易自由化交渉において、エネルギー・サービスを検討対象に含めることを提案する。なお、日本の今次交渉の進め方に対する考え方は、既に2000年12月22日に提出した交渉提案に示しており、これと併せて読む必要がある。

  2. この追加提案は、以下の「Ⅱ.エネルギー・サービスの重要性と考慮すべき事項」及び「Ⅲ.交渉における検討項目」からなっている。「Ⅱ.エネルギー・サービスの重要性と考慮すべき事項」においては、エネルギー・サービスの重要性と今次交渉を行うに当たって考慮すべき事項について述べている。また、「Ⅲ.交渉における検討項目」においては、今次交渉を通じて漸進的に一層高い水準の自由化を達成するために検討を行うことが必要な課題を取り上げている。これらは例示であり、網羅的リストではない。

  3. なお、日本は、「ロードマップ」第2パラ(b)に基づき、引き続き今後も追加的な提案を行う権利を留保する。


Ⅱ.エネルギー・サービスの重要性と考慮すべき事項
  1. 既にいくつかの国の提案で指摘されているとおり、経済的及び社会的発展を図るためには、エネルギーの効率的かつ安定的な供給が確保されることが必要である。また、経済成長を成し遂げるためには、他のサービスと同様に、エネルギー・サービスの効率を上げることが極めて重要である。

  2. エネルギー・サービスの経済的な重要性にもかかわらず、これまでGATSにおいては、エネルギー・サービスに特化した分類は行われておらず、加盟国はエネルギー・サービス分野の約束をほとんど行っていない結果になっている。これは、これまで、エネルギー・サービス分野は、各国において、各国の事情に基づき国営又は独占企業体により独占的に供給されており、GATSにおける約束の対象と認識されていなかったことによると考えられる。しかしながら、ウルグアイ・ラウンド以降、エネルギー・サービス分野においても、各国において、各国の事情に応じて、試行錯誤を繰り返しながら、規制改革が進められており、その結果、事業再編が起きているところもある。我が国においても、これまでエネルギー市場の自由化が進められており、エネルギー・サービスの分野において効率化に向けた努力を今後とも継続していくこととしている。


  3. エネルギー・サービス分野の貿易は、エネルギー市場の自由化とともに、徐々に重要な役割を担うようになってきている。しかしながら、各国によっては、エネルギー・サービスの規制制度が未整備であったり、その運用が不透明であったりする場合もあり、エネルギー・サービスの貿易環境が依然として整っていない場合もある。エネルギー・サービスの規制が不透明であれば、その貿易を行うに当たり、事業の予測可能性が低くなる。また、透明性が欠如した規制システムは、貿易障壁に関する外部からの疑問を倍加させ、当該国の市場の信頼を大きく低下させる。したがって、加盟国は、エネルギー・サービスにおける規制の透明性を向上することが必要である。

  4. 一方で、いずれの国においても、エネルギー・サービスが現代社会を支える基盤的なサービスとなっているために、その供給における信頼度が損なわれた場合には、消費者利益を阻害するおそれがあるのみならず、当該国の経済成長に大きな負の影響を与えることが懸念されるようになっている。国内にエネルギー資源をほとんど持たない国が存在することや、発展途上国においてはエネルギー・サービスが産業として発展途上にあり、また、国により資本規模の大小が存在することを考慮すると、エネルギー・セキュリティは引き続きエネルギー政策の重要な側面を占めていると考えられる。特に、近年、エネルギー・サービスの規制改革を進めている国において、自由化市場で供給支障が生じ、多大な負担を生じた事例が発生したことを考えると、各国において、規制改革や事業再編を進めるに当たっても、エネルギー・セキュリティや供給信頼度を確保する努力を行うことが必要である。

  5. さらに、エネルギー政策を巡る大きな変化としては、環境問題、特に地球環境問題への影響が1980年代後半から世界的に取り上げられるようになっている。1997年にはCOP3が日本の京都で開催され、先進国の温室効果ガス削減目標が決定されている。日本は、2008年から2012年の平均値で、1990年比6%の削減をすることとなっており、日本の場合、排出する温室効果ガスの約8割がエネルギー起源の二酸化炭素となっている。現在、地球環境問題を巡る議論が行われているところであるが、日本は、いずれの国においてもエネルギーと環境を調和させる努力は行われるべきものであり、そのような努力を行っている国がエネルギー・サービスの貿易で不利になるべきでは無いと考える。

  6. GATSにおけるエネルギー・サービス分野のルールの策定に当たっては、エネルギー・セキュリティや供給信頼度の維持、環境の保全、ユニバーサル・サービスの維持、公衆安全の維持といった公益的課題の解決に向けて、加盟国が透明性があり、競争中立的であり、かつ、必要以上に大きな負担とならない規制手段を取り得ることが留保されるべきであり、約束に差異があることが許容されるべきである。

  7. また、加盟国間において、エネルギー・サービスがそもそも国営であったか私営であったかといったサービスの成り立ちや現在の産業構造に差異が存在するため、GATSにおけるエネルギー・サービス分野のルールの在り方については、加盟国独自の多様性を認める必要がある。ただし、そのルールは、可能な限り非差別的であり、最大限の透明性が確保されたものでなければならない。

Ⅲ.交渉における検討項目

A.分類
  1. 既に多くの加盟国が指摘しているとおり、これまでGATSにおけるサービス分類(W/120)では、エネルギー・サービスに特化した分類がなされていないため、今次交渉において、広くエネルギー分野全般を対象に特定の分野に偏らぬ包括的な協議を行うこととし、新たなエネルギー・サービス分類の作成を検討することを提案する。その際、新分類はエネルギー分野のみを対象とし、既存の約束と抵触することのないよう作成されなければならない。

  2. 交渉対象として検討すべきエネルギー・サービスは、エネルギーの卸売から最終消費者の消費に至るまでの一連のサービスを包括的に協議すべきであり、まずエネルギーの卸売、輸送(送電及び配電、パイプラインによる輸送並びに熱の移送)及び小売に関連する「コア」エネルギー・サービスを中心とすべきである。財の生産行為であるとも考えられるエネルギー資源の生産(採掘、精製、発電やガスの気化)については、サービス貿易理事会及びその特別会合等の場において、これまでのGATSの分類等の議論と整合性を持った論理的な説明がなされることが必要である。

  3. エネルギーに関する建設サービスやエンジニアリング・サービスのように、非「コア」のエネルギー・サービスについても議論を行うことは可能であるが、「コア」と非「コア」を分けて議論する方が、議論をシンプルにし、混乱を避けるために有益であると考える。また、非「コア」を議論する場合には、他のサービスとの二重リスト化を避けるため、あくまで参照用のチェックリストとして、エネルギー関連サービスについての分類を定義することも有益である。

  4. 検討の対象とするエネルギー・サービスとしては、まずエネルギー中立的なものとし、エネルギー源は問わないものとする。ただし、原子力に関連したエネルギー・サービスは、原子力の平和利用や保障措置、原子力安全に係る議論を惹起し、議論を混乱させるため、慎重に検討することが必要である。また、資源の公的所有については交渉対象から除外することを提案する。

B.市場アクセス及び内国民待遇
  1. 全ての加盟国は、パラグラフ9の公益的課題に留意しつつ、可能な限りの広範囲の市場アクセスと内国民待遇について交渉を検討すべきである。

  2. また、一部の加盟国においては、当該国の市場が一体化・緊密化していく経済実態の一方で、地方政府毎に市場アクセスや内国民待遇の状況に差違が存在している例も見られる。そうした場合、地方政府毎の制度の複雑さから当該国におけるエネルギー・サービス貿易を活発化させるための阻害要因となるおそれがある。外国企業が当該国における事業展開を円滑に行うことができるようにする観点からも、各地方政府が、加盟国市場の経済実態に即し、市場全体としての市場アクセスや内国民待遇を改善することを、中央政府(独立の規制機関を含む。)は保証すべきである。

  3. さらに、エネルギー・サービスの提供に当たっては、エネルギー・サービス固有の資機材の設置、エネルギーに関する専門知識を有する技術者等が不可欠である。現在、特定の資機材の輸入に高い関税を課したり、現地調達義務を課す国が存在していたり、技術者の短期入国に制限を課す国がある。また、そもそも規制が不透明であり、事業の予測可能性が低下することがある。日本は、今次交渉を通じて、このような障壁を撤廃する適切な議論が行われることを期待する。

C.規制の枠組みの検討
  1. 各国においても、エネルギー・サービス分野の国内規制及び競争環境に関して、完成した成功事例があるわけではなく、各国とも試行錯誤を繰り返しながら、エネルギー市場の規制改革と事業再編が進められている。日本は、この点を十分に踏まえながら、エネルギー・サービス分野の交渉においては、第16条(市場アクセス)及び第17条(内国民待遇)の義務を踏まえて、ネットワークの公平・公正・透明な利用の視点も踏まえた、競争環境の整備に資する国内規制の枠組みの有用性を検討することが有用であると考える。

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