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特許制度調和に関する国際シンポジウムを開催しました

本件の概要

特許庁は、10日、国際知的財産保護協会(AIPPI)、国際弁理士連盟(FICPI)と共に、特許制度調和に関する国際シンポジウムを開催いたしました。本シンポジウムでは、各国・地域の知財庁、ユーザー団体、大学等から講師を招き、グレースピリオドに関する主要な項目を中心に活発な議論がなされ、グレースピリオドを始めとする特許制度を調和する方向で議論を推進すべきという認識が官民で共有されました。

 1.背景

三極特許庁(日・米・欧)と、欧州主要国(英、独、仏、丁)の知財庁(いわゆる「テゲルンゼーグループ[1])は、これまで、特許制度を巡る国際調和の議論を継続してきました。そして、本年4月に開催された会合においては、国毎に制度の差異が大きい4項目(グレースピリオド(*1)、衝突する出願の取扱い(*2)、18ヶ月全件公開(*3)、先使用権(*4))に関して、各庁が実施したユーザー協議結果を分析した最終統合レポートがとりまとまりました。
それを受け、その結果について、特にユーザーの関心が高いグレースピリオドに焦点をあてて、ユーザーと議論を行い、ユーザーからのフィードバックを得るため、特許庁は、AIPPI、FICPIと共にシンポジウムを開催しました。
*1「グレースピリオド」:特許出願日前の一定の期間であって、この期間中であれば、出願より前に自らの発明を発表しても、その発明の新規性が失われないとされる期間。特許出願前の論文発表等をどの範囲で許容するかが論点。(日本では、「新規性喪失の例外」という規定。)
*2「衝突する出願の取り扱い」:出願を審査する際、先に出願済みであるが出願公開されていない別の出願に記載された発明を(実際は秘密状態にあるが)公知の先行技術と擬制して、後の出願を拒絶することがある。このようなケースにおいて、先の出願を「衝突する出願(Conflicting Application)」という。(日本では、特許法第29条の2による「拡大された範囲の先願」という規定)。出願済みだが公開されていない技術がどの程度後願を排除する効果があるかが論点。
*3「18ヶ月全件公開」:多くの国では出願後18ヶ月で出願は公開されるが、米国は米国のみに出願される場合に出願人の意思で出願が公開されない場合あり。
*4「先使用権」:特許された発明について、第三者がその出願より前にその特許発明の使用(又は使用の準備)をしていた場合、その第三者が引き続きその発明を使用できる権利。特許権がなくても、特許が出願される前から事業を実施している者は無償でその技術を利用できるが、米国は先使用権の適用に条件あり。

2.特許制度調和に関する国際シンポジウムの結果(概要)

各国・地域の知財庁、ユーザー団体、大学等から講師を招き、特許制度調和に関する主要な項目を中心に講演やパネルディスカッションを行いました(詳細なプログラムは別添参照)。主な結果は以下のとおりです。
①基調講演
シュトラウス博士(独マックス・プランク知的財産法・競争法・租税法研究所名誉科学員)、渡部俊也教授(東京大学政策ビジョン研究センター)が基調講演を行い、グレースピリオドが欠如することで発明者が開示に躊躇し、新しい知見の普及が遅れることや産学連携への悪影響があることを紹介。 
②テゲルンゼーグループからの報告
最終統合レポートの内容について、日本国特許庁、欧州特許庁(EPO)、米国特許商標庁(USPTO)から報告。特に、日本国特許庁からの報告においては、最終統合レポート作成に使用したアンケート結果のうち、ユーザーのグレースピリオドについての考えに係る回答結果を属性(出願人種別、技術分野)ごとにクロス集計。属性毎に顕著な傾向[2]があり、制度調和の議論を推進するにあたっては、傾向をきめ細かく把握する必要があることを説明。
③グレースピリオドに対するユーザーからの意見
各国ユーザー団体から、グレースピリオドの利用状況、今後の制度のあり方を含めた講演が行われ、グレースピリオドの存在自体については、多くのユーザー団体等から支持する意見が表明された。また、大学関係者等は特許出願よりも論文発表を優先したいという事情があること、中小企業等は展示や商談等における開示を通じて市場の反応が分かり、後から特許権を取得する必要に気づく場合があることなど、いずれの立場においても、グレースピリオドの必要性についての意見が相次いだ。
④グレースピリオドに関するパネルディスカッション
グレースピリオドの制度について、主要国間で異なる各項目(*5)に関して議論。
・グレースピリオドの期間について
12ヶ月が望ましいという意見が大勢だった一方で、国際的に調和されるのであれば、特に期間にはこだわらないという意見もあった。なお、グレースピリオドは存在すべきでないという意見はなかった。
・グレースピリオドの開示の形態について
国際博覧会に限らず、任意の開示の形態について認めるべきという意見で一致したが、特許公報の扱いについては意見が分かれた。
・宣言等所定の手続を義務化すべきかについて
公開された日が特定できない場合などにグレースピリオドを利用できなくなるおそれがある等といった理由から義務化すべきでないという立場と、法的安定性等を理由として宣言等の手続を義務化すべきであるという立場に分かれた。
・グレースピリオドを調和すべきかについて
全パネリストから調和すべきであるという意見が示された。制度が異なると、ある国でグレースピリオドを使って出願できても、他国には出願できないという問題がある等意見が示された。
*5 今回のパネルディスカッションで取り上げたグレースピリオド制度の項目
(日米欧比較)

 

日本

米国

欧州

グレースピリオドの期間

6か月

12か月

6か月

グレースピリオドの適用が受けられる開示形態

すべての開示形態
(特許公報等による公開を除く)

すべての開示形態

限定された
国際博覧会

宣言等所定の手続
の要否

必要

不要

必要

 

3.今後の取組

日本国特許庁は、本シンポジウムでもユーザーからグレースピリオドの必要性、制度調和の必要性等についてのフィードバックが得られたことを受け、グレースピリオドをはじめとした特許制度の国際調和に向けた議論を推進し、我が国ユーザーによる低コストかつ円滑な特許取得が可能とすることで、企業・大学等の国際的な事業活動、研究開発活動が促進されるよう努めてまいります。

 


[1]2011年7月、第1回会合が、ドイツのミュンヘン近郊の都市「テゲルンゼー」で開催されたことから、「テゲルンゼーグループ」と呼ばれている。

[2]例えば、中小企業は過失による開示や、展示会・商談による開示が多い等。

担当

特許庁総務部国際政策課

公表日

平成26年7月11日(金)

発表資料

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