経済産業省
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「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」報告書を取りまとめました

本件の概要

経済産業省が昨年9月に立ち上げた「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」において、このたび報告書を取りまとめました。報告書では、企業と投資家が質の高い対話を通じて相互理解を深め、中長期的な企業価値創造を行うための環境づくりを提言しています。具体的には、統合的な企業情報開示や中長期の投資判断に有用な情報の充実、対話型の株主総会プロセスに向けた日程の設定や電子化の促進等、「対話先進国」に向けた方策が示されています。

1.提言の内容

本報告書では、企業と投資家(株主を含む)が対話を通じて相互理解を深め、持続的成長あるいは中長期的な企業価値の向上という目的を達成するため、国際的に見ても質の高い対話環境を目指すべきとしています。このため、対話環境を形づくる様々な要素、たとえば企業情報開示や監査、株主総会の日程や付議事項、電子化の促進等を総合的に検討し、全体最適を図るための方策を提案しています。特に、高い水準の情報開示が対話の質を高め、質の高い対話が情報開示の充実を促すという相互作用、相乗効果を高めることの重要性を指摘しています。
このような認識の下、本報告書では、以下のような方策が示されています。

1) 一体的・統合的な企業情報開示 ~「モジュール型開示システム」の実現~

本報告書では、投資家にとって有用な情報をより効果的かつ効率的に提供するため、金融商品取引法、会社法、上場規則に基づく制度開示や任意開示を企業が統合的に行うための方策を提案しています。そのための基本的な設計思想として「モジュール型開示システム」という考え方が示されています。すなわち、開示すべき情報の全体像(一体的・統合的な企業報告の全体)を認識した上で、そこから投資家にとって必要な情報の「モジュール(まとまった構成要素)」を切り出し、適切なタイミングで提供するという考え方です。
本報告書では、その実現に向けて、企業、投資家、制度関係機関が一同に会し、年度の開示内容を総合的に分析・検証し、統合的な開示の全体像とモジュールの検討を行うための具体的なステップを示しています。これと併せて監査の実質的な一元化や四半期開示の一本化等の検討も提案しています。

2) 中長期的な企業価値評価・分析のための情報の充実

投資家が中長期的な企業価値を評価するために必要な情報の充実やより効果的な開示方法の検討を提案しています。企業のビジョンや経営方針、戦略やガバナンス等が、企業の成果や財政状況、持続的な価値創造といかに結びつくのかを統合的に理解できるような情報開示の重要性が指摘されています。
本報告書では、企業と投資家等が集まる場において、中長期的な企業価値向上に関する対話を促進するための情報開示として、中期経営計画やESG(環境・社会・ガバナンス)情報の開示、統合報告のあり方等を検討することを提案しています。

3) 対話型の株主総会プロセスへの転換

本報告書では、株主総会に至るプロセス全体を企業と投資家の対話の一環として捉え、以下のような見直しを提案しています。

① 株主の議案検討と対話のための適切な日程設定と情報提供

日本の株主総会は、諸外国に比して決算後早いタイミングで行われており、かつ6月下旬に集中していることから、株主の実質的な議案検討や企業との対話を行うための期間が十分ではないと認識されています。また、株主が必要とする情報が早く利用しやすい形で提供されることが求められています。
本報告書では、株主総会に向けて、株主が議案検討や企業との対話を通じて理解を深めるために十分な期間の確保と適時かつ充実した情報を入手するための方策を示しています。具体的には、「対話型株主総会プロセス」を実現するための必要条件(期間や情報提供のあり方等)を示すとともに、総会日程やその前提となる議決権の基準日の設定を見直す際の考え方や方法を明らかにしています。

② 電子化の促進

本報告書では、株主の議案検討や対話期間を確保し、プロセス全体を効率化するとともに、統合的な情報開示を実現する観点から、株主総会プロセスにおける電子化の促進を提言しています。具体的には、①議案や招集通知に添付する書類(招集通知関係書類)の情報の早期(発送前)Web開示、②招集通知関係書類の電子化、③議決権行使の電子化のそれぞれを促進すべきことを提案しています。

③ 株主の参加の円滑化等、意義ある株主総会に向けた環境整備

本報告書では、機関投資家や個人株主が株主総会に参加しやすくするための方策等について提言しています。たとえば、「名義株主以外の機関投資家等」が株主総会に参加する場合のガイダンス策定を提案しています。また、議決権行使比率の向上も含む個人株主を意識した総会運営、それ以外の機会も含む対話や情報開示を検討すべきことを示しています。
さらに、本報告書においては、株主総会への付議事項や株主提案権の適切な行使のあり方を考える際の検討事項も提示されています。

4) 企業と投資家の意識と行動、対話支援産業の役割

本報告書では、企業と投資家が対話に向けた共通認識を醸成し、双方の見識・実力を高めることの重要性を指摘しています。その上で、企業経営者や投資家が対話を深めるための懸念や問題等を把握し、それぞれの根拠等について検証し、明確化を積み重ねていくべきことを提案しています。
また、信託銀行や証券代行、弁護士、コンサルタント、アナリスト等が、企業と投資家の対話全般を支援する「対話支援産業」としてそれぞれの役割を一層強化することへの期待が表明されています。

2.本研究会の背景

平成26年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014においては、日本の「稼ぐ力」を取り戻すための方策として「コーポレートガバナンスの強化、リスクマネーの供給促進、インベストメント・チェーンの高度化」を通じて企業の生産性・収益性向上を目指す施策を掲げています。
その背景としては、生産性向上により企業収益を拡大し、それを賃金上昇や再投資、株主還元等につなげるため、資本コストを意識したコーポレートガバナンスの強化、持続的な企業価値向上が重要との認識があります。
このため、企業自身の取り組みはもとより、様々な投資主体による長期的な価値創造に向けた「インベストメント・チェーン(投資収益を最終的に家計まで還元する一連の流れ)」を強化することが重要な政策課題として挙げられています。一連の取組は、経済の好循環を促すとともに、人口減少社会に直面する日本の国富を将来的に確保するという課題への対応でもあります。

このような価値創造の好循環を実現するためには、その主役となる企業とリスクマネーの出し手である投資家とが、質の高い対話を通じて相互理解を深め、共に持続的成長を目指すことが不可欠であり、「日本再興戦略」改訂2014では、「持続的な企業価値の創造に向けた企業と投資家との対話の促進」を取り組むべき施策として掲げています。

「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」は、その一環として、平成26年9月に設置され、企業経営者、投資家、市場関係者、有識者、関係団体や関係省庁等の参加の下(※)、企業と投資家との対話のあり方について、4回にわたり幅広い観点からの議論を行いました。
さらに研究会の下に「企業情報開示検討分科会」と「株主総会のあり方検討分科会」を設置し、グローバルな観点から見た現状や課題、望ましいあり方について、それぞれ7回会合を開催して、集中的な検討を行いました。

また、本研究会での検討は、「コーポレートガバナンスの強化、リスクマネーの供給促進、インベストメント・チェーンの高度化」という背景・目的を共有する施策等も視野に入れて行われました。特に、①「日本版スチュワードシップ・コード」、②「コーポレートガバナンス・コード」という二つの「コード」、③「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築」最終報告書(伊藤レポート)との関連が明確に意識されており、本報告書にも反映されています。

※ 研究会、分科会の参加者については別紙を参照下さい。

担当

経済産業政策局企業会計室

公表日

平成27年4月23日(木)

発表資料

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