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ESGと無形資産投資に関する初めての体系的な手引きと政策提言を取りまとめました~「伊藤レポート2.0」発表~

本件の概要

経済産業省では、2016年8月に、「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」を立ち上げ、企業が企業価値を高めるための戦略的な投資のあり方、投資家が長期的な視野から企業を評価する方法、そして企業の情報開示や投資家との対話のあり方について検討を行ってきました。この度、本研究会の提言とその議論の過程をまとめた報告書「伊藤レポート2.0(「持続的成長に向けた長期投資(ESG・無形資産投資)研究会」報告書)」(以下、本報告書)を作成・公表しました。

※ESG:環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉

1.背景

企業が「稼ぐ力」を高めて持続的に企業価値を向上し、そのような企業への投資が中長期的に収益を生み出す「インベストメント・チェーン(資金の拠出者から、資金を最終的に事業活動に使う企業までの経路)」を循環させることが重要です。そのような観点から、これまで日本政府はコーポレートガバナンス改革や資本市場改革を進めてきました。

2014年に発表した「伊藤レポート」は、こうした一連の改革の土台として、包括的な分析を行うとともに、資本生産性を高めるための日本型ROE経営や企業と投資家の対話促進に向けた政策提言を行いました。その後、具体的な政策対応が行われ、企業や投資家においても企業価値向上や対話に向けた取組が進んでいます。資本効率性を示す指標であるROE(自己資本利益率)のボリュームゾーン(東証一部上場企業)は、当時の2.5%~5%から2016年時点では5%~7.5%まで上昇しています。

今後の課題は、このような流れを着実に企業の持続的成長につなげ、長期投資が収益をもたらす循環を定着させることです。一方、コーポレートガバナンス改革を通じて収益性への注目が増えることで、短期的には利益を圧迫する中長期的な戦略投資が行われにくくなる可能性も指摘されています。世界で競争する企業の「稼ぐ力」の源泉が、設備等の有形資産から計測しにくい人材や技術、ブランド等の「無形資産」に移行する中、このような傾向は顕著になってきます。また、近年、特に長期的な視点に立つ世界の機関投資家の間で、企業を評価する指標として「ESG(環境、社会、ガバナンス)」等の非財務情報が重視されてきています。日本でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名し、ESG指数を採用するなどの動きが見られます。

本研究会では、伊藤レポート後に生じた動きを総括しつつ、無形資産投資やESG等を巡る論点を深掘りして議論し、今後の政策対応等を検討しました。その成果を「伊藤レポート2.0」として取りまとめました。

2.「伊藤レポート2.0」の内容

本報告書では、まず第四次産業革命が企業の競争のあり方を大きく変化させ、競争力の源泉として無形資産に対する戦略投資の重要性が高まっていることを指摘しています。その上で、グローバル企業の投資額が増大していること、日本企業の研究開発投資の伸びが他国と比べて鈍化していること、人材投資の水準が低いことを示しています。
また、長期投資を巡る資本市場の変化として、パッシブ・インデックス投資への資金流入が増える中での課題やESGを巡る主要論点が体系的に示しています。特にESGについては投資家の間で長期リスク要因として見るコンセンサスが存在すること、投資収益への影響には見解に違いがあることが明らかになりました。
その上で日本企業のパフォーマンスに関する資本市場の評価をいくつかの指標で国際比較しています。「伊藤レポート」によって注目が集まったROEが改善する一方、欧米と比べて事業の収益性や資本政策に違いがあることを示しています。特に本研究会では企業価値を市場がどのように評価しているかを示す指標としてPBR(株価純資産倍率)に着目して国際比較を行いました。その結果、日本企業のPBRが長年にわたり1倍前後という(理論的には解散する方が価値が高い)水準で推移しており、業種・資産構成等ごとに欧米と比較しても極めて低い水準にあることが明らかになりました。

このような課題認識を踏まえ、本研究会では、企業が持続的な価値創造に向けた経営のあり方を見直し、そのビジネスモデルや戦略、ガバナンス等を投資家等と対話するための「ガイダンス(価値協創ガイダンス)」を提案しました。本報告書では、ガイダンスの各要素についての考え方や議論を整理し、その活用も含め以下の8項目の提言を行っています。

  1. 企業と投資家の共通言語としての「価値協創ガイダンス」策定
  2. 企業の統合的な情報開示と投資家との対話を促進するプラットフォームの設立
  3. 機関投資家の投資判断、スチュワードシップ活動におけるガイダンス活用の推進
  4. 開示・対話環境の整備
  5. 資本市場における非財務情報データベースの充実とアクセス向上取組
  6. 政策や企業戦略、投資判断の基礎となる無形資産等に関する調査・統計、研究の充実
  7. 企業価値を高める無形資産(人的資本、研究開発投資、IT・ソフトウェア投資等)への投資促進のためのインセンティブ設計
  8. 持続的な企業価値向上に向けた課題の継続的な検討

3.今後の展開

経済産業省としては、関係省庁や機関と協力して、本研究会の提言の速やかな実現に向けて取り組みます。

今後、価値協創ガイダンスをベースとして、企業のベストプラクティス研究やモデル事業の実施、投資家における開示等の評価を調査・検討する場を立ち上げる予定です。その際、企業や投資家の関係団体における検討を促しつつ、連携して取り組む方針です。

これに合わせ、本年から東京証券取引所の「企業価値向上表彰」※1や国際機関の統合報告優良企業表彰の審査に「価値協創ガイダンス」が組み込まれることとなっています(以下リンク(1)、(2)参照)。また、証券リサーチセンター※2のプロジェクトとして、特に証券アナリストがカバーしていない有望な新興企業等について、価値協創ガイダンスをベースとしたアナリスト・レポートが順次執筆・公表されることとなっています(以下リンク(3)参照)。

※1東証が市場開設者としての立場から望ましいと考える企業価値の向上を目指した経営の普及・促進を図るため、東証市場に上場する全上場会社から、資本コストをはじめ投資者の視点を深く組み込んで企業価値の向上を目指すなど、東証市場の魅力向上に資すると認められる経営を実践している上場会社を表彰する制度。
※2株式市場の活性化に向けて、中立的な立場から、アナリスト・カバーが不十分な企業を中心にアナリスト・レポートを作成し、広く一般にレポートを公開する活動を展開している組織。
※3民間組織や公的組織とパートナーシップを組み、株主やその他ステークホルダーの関心が高い知的資産/資本や、KPI(Key Performance Indicator/主要業績・価値評価指標)に関する開示を改善しようとする組織。

4.参考

担当

経済産業政策局産業資金課長 福本
担当者:湯浅、杉野、石川、村山
電話:03-3501-1511(内線 2641~2645)
03-3501-1676(直通)
03-3501-6079(FAX)

公表日

平成29年10月26日(木)

関連資料

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