特許出願技術動向調査を取りまとめました

特許情報ビッグデータを分析し、最先端技術の動向を把握する

平成30年5月14日

特許庁

特許庁は、次世代にインパクトを与える最先端分野である「有機EL装置」、「リチウム二次電池」、「自動走行システムの運転制御」及び「マンマシンインターフェイスとしての音声入出力」などの12の技術テーマについて、大量の特許・論文情報を調査・分析した報告書を取りまとめました。

1.特許出願技術動向調査とは

各国における研究開発の進展により、世界全体の特許出願件数は年々増加しています。この大量のビッグデータと言える特許情報について、論文情報も併せて分析し、各国や各企業の研究開発動向を把握することは、我が国の研究開発戦略や施策検討を行う上で非常に有用な情報となります。

そこで、特許庁では、次世代にインパクトを与える最先端の技術分野を中心に技術テーマを選定し、特許出願技術動向調査を実施しています。

2.調査結果の概要

平成29年度は、将来の市場創出・拡大に大きな影響を与える分野を中心に以下の12の技術テーマを選定し、特許・論文情報の調査・分析を実施しました。

これらのうち、「有機EL装置」、「リチウム二次電池」、「自動走行システムの運転制御」及び「マンマシンインターフェイスとしての音声入出力」について、以下紹介します。

有機EL装置

有機EL装置は、有機薄膜を2枚の電極ではさみ、両電極間に電界をかけることで有機材料が発光する有機EL素子を利用した装置であり、ディスプレイや照明等への幅広い応用が期待されます。

有機EL装置の世界市場規模は増加傾向にあり有望な市場ですが、ディスプレイの市場シェアにおいては韓国が優勢です。また、有機EL装置の出願動向では、2012年以降、中国・韓国による出願件数が増加しており、日本からの出願を上回っています。

有機ELパネルの成膜方法では、日本は低コストな小型製造装置で高精細なパネルを製造できる「湿式法」の出願件数が多く、日本が他国に先行して開発していることがわかります。湿式法は日本の有機EL産業の競争力回復のためのカギとなる技術であり、その生産プロセスを他国に先駆けて確立することが期待されます。

リチウム二次電池

リチウム二次電池は、近年、小型民生用だけでなく、車載用、定置用電源等、様々な用途に用いられるようになっています。容量、出力特性については特に車載用でのニーズが高く、正極材、負極材、電解質などの要素技術について、各国で研究開発が活発に行われています。

次世代材料(固体電解質や高容量電極)における研究開発競争は特に活発です。全固体電池(硫化物系固体電解質)では、日本は特許出願で優位ですが、論文では米欧中が件数を伸ばしており、研究開発力で米欧中の追い上げが加速しています。

大学等の研究機関で行われる新規物質の発見等の独創性の高い研究は、基本特許に結びつきやすく、確実な権利取得を進めることが必要とされます。研究機関と企業との連携を強固なものとし、大学等が取得した基本特許をもとに企業が特許網を構築するといった、産学で役割を分担した連携が重要です。

自動走行システムの運転制御

世界規模で急速な市場拡大が予測されている自動運転車を実社会に導入する際に最も重要な課題の一つは、「安全性」の確保です。実際、特許出願を分析すると、「安全性」を課題とする特許出願件数が最も多くなっています。

「安全性」を課題とする出願を国籍別でみると、日本からの出願件数が中国に次いで多くなっています。また、自動運転車の安全性確保には、移動通信技術を活用して周辺の車両やインフラと協調するシステムを構築することが必要となりますが、このようなシステムに関する出願でも、日本の出願が多くなっています。

今後の自動運転車の開発では、日本がこれまで培ってきた自動車技術に、移動通信技術などを高度に融合させ、「安全性」を競争力の源泉とすべく開発を進めていくことが期待されます。

マンマシンインターフェイスとしての音声入出力

人間と機械が情報をやり取りするための手段であるマンマシンインターフェイスとして、音声入出力技術が注目されています。2017年は、IT大手各社等からスマートスピーカーが発売され、音声アシスト端末が家庭に入る動きが活発化しています。

会話ボット等では、機械に話しているということをユーザに意識させない「自然な会話」を実現するための技術が注目されています。この分野の特許出願では、日本が世界を牽引しており、「自然な会話」を実現する技術における日本の強みを活用し、会話ボットや家庭用ロボット向けの研究開発、及びその権利化に繋げていく必要があります。

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担当

特許庁総務部企画調査課長 今村
担当者:薄井、小堺
電話:03-3581-1101(内線 2155)
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