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ブラジルの内外差別的な税制恩典措置がWTO協定違反と確定しました

WTO紛争処理上級委員会報告書が公表されました

2018年12月14日

WTOは、12月13日(ジュネーブ時間)、我が国及びEUの申立てに基づき、WTOで審理されてきたブラジルの内外差別的税制恩典措置について、紛争処理上級委員会の報告書を公表しました。

同報告書は、ブラジルの自動車政策及び情報通信分野の税制恩典措置について、内国民待遇義務(GATT第3条第2項及び同条4項)などに違反し、措置の是正を求めるものです。

1.概要

ブラジルは、2011年から、自動車に対する工業品税(IPI)を引上げ、2012年より自動車メーカーに対し、ブラジル国内での一定の製造工程の実施、研究開発への投資等と結び付け、かかるIPIを相殺する税制恩典措置を実施しました。また、情報通信機器分野においても、同様に内外差別的な優遇税制措置がみられました。
さらに、ブラジルは、輸出実績を条件とした、輸出企業向けの税優遇措置も実施しました。

2015年7月、我が国は、ブラジルに対し、WTO協定に基づく協議を要請し、同年9月、WTOに対してブラジルの各種税制恩典措置について紛争処理小委員会(パネル)での審理を要請し、パネルが設置されました。
※EUは、本件について、別途、2013年12月にWTO協議要請、2014年10月にパネル設置を要請し、同年11月パネルが設置されました。

その後、2016年2月及び5月にパネル会合(口頭弁論)が開催され、2017年8月30日、WTOはパネル報告書を公表し、ブラジルの税制恩典措置についての我が国の主張を全面的に認め、ブラジルに対し措置の是正と禁止補助金の撤廃を求めました。

このパネル報告書に関し、2017年9月28日、ブラジルはパネルの判断を不服として上訴(WTO上級委員会への申立て)を行いました。その後、2018年6月に上級委員会会合で口頭弁論が行われ、この度、上級委員会はブラジルの各種税制恩典措置に関する報告書を公表しました。

【参考】 ブラジルによる税制恩典の概要

  1. 情報通信分野の税制恩典
    ブラジル国内での情報通信分野(電気・電子、半導体、テレビ等)の生産・研究開発・投資、製造品の国産部品の使用要求に関連付けて各種連邦税の減免を認める。

  2. 自動車政策(「イノバール・アウト」)
    自動車メーカー等に対して、ブラジル国内での一定の製造工程の実施等を要件として、自動車の製造に使用された国産部品の比率等に応じて、工業品税(連邦税)の減税を認める。(2017年末にて、本政策は期限終了。)

  3. 輸出企業に対する税制恩典
    一定割合の輸出を行う企業に対して、機械、装置、原材料等の購入・輸入に係る各種連邦税の猶予、免除を認める。

2.上級委員会報告書における主な認定内容

上級委員会報告書は、日本の主張を認め、パネル報告書を概ね支持し、情報通信分野の税制恩典及び自動車政策について、ブラジルにWTO協定に従って措置を是正・撤廃するよう勧告しました。

  1. 上級委員会は、情報通信分野の税制恩典、自動車政策について内国民待遇義務(GATT第3条2,第3条4,TRIMs協定第2条1)違反とのパネル報告書の認定を支持した。また、情報通信分野の税制恩典のうち2つのプログラム(Informatics programme, PATVD)の国産部品の使用を含む国内製造工程要件について,パネルの認定を支持し,禁止される国産品優先補助金(補助金協定第3条1(b))であるとした。
  2. また,日本及びEUが上訴していた一部の論点(パネルが判断しなかった論点)については,上級委員会は,日本及びEUの主張を認め,情報通信分野の税制恩典及び自動車政策が内国民待遇義務(GATT第3条4, TRIMs協定第2条1)に違反し,禁止される国産品優先補助金(補助金協定第3条1(b),第3条2)に該当するとしたパネルの認定は,(パネルが示唆したように国内生産者が製造工程を第三者に委託する場合だけでなく)国内生産者が製造工程を自ら行う場合にも適用されるとした。
  3. 他方、情報通信分野の税制恩典の一部、及び自動車政策について、国内製造工程要件に関し国産品優先補助金(補助金協定第3条1(b))に該当するとのパネル判断を覆した。さらに、輸出企業に対する税制恩典については、禁止される輸出補助金(補助金協定第3条1(a))に該当するとのパネル報告書の判断を覆した。
  4. 禁止される国産品優先補助金(補助金協定第3条1(b)、第3条2)であると認められた各措置について、遅滞なき廃止を勧告。

 

【参考】 パネル報告書の判断

  1. 情報通信分野の税制恩典
    ア 情報通信分野の税制恩典の4つのプログラムのすべてについて、国産品を利用することを条件として各種連邦税の減免を認める点が、国産品に比して輸入品を差別しているとして、内国民待遇義務(GATT第3条2,同条4)に整合しないと判断。
    イ また、これらの措置が投資関連措置であるとしてTRIMs協定第2.1条にも整合的ではないとし、また、補助金協定第3条1(b)、第3条2で禁止される国産品優先補助金に該当するとし、90日以内の撤廃を勧告。

  2. 自動車政策(「イノバール・アウト」)
    ア 自動車政策から裨益するための認定要件(国内製造工程要件等)、自動車の製造における国産品使用の比率等に応じて減税のためのクレジットの付与、同クレジット行使について、輸入品に比し、国産品を優遇するとして、内国民待遇義務(GATT第3条2,同条4)に整合せず、同措置が投資関連措置であるとしてTRIMs協定第2条1にも整合的ではない、また、補助金協定第3条1(b)、第3条2で禁止される国産品優先補助金に該当するとし、90日以内の撤廃を勧告した。
    イ また、完成車に関し、メルコスール産の自動車は30%の工業品税の自動減税が受けられ、日本車を含むその他の自動車はこれが受けられないとする点が最恵国待遇義務(GATT第1条)に整合しないと判断。

  3. 輸出企業に対する税制恩典(PEC及びRECAP)
    総売上のうち一定割合の輸出を行うことを条件として、機械、装置、原材料等の購入・輸入に係る各種連邦税の減免・繰延を認めるPEC及びRECAPは、輸出が行われることに基づいて交付される補助金であるとし、補助金協定第3条1(a)、第3条2で禁止される輸出補助金に該当するとして、90日以内の撤廃を勧告。

3.今後の予定

上級委員会報告書は30日以内にWTO紛争解決機関会合(DSB)において正式に採択されます。
我が国は、ブラジルが本報告書の勧告を早期に履行し、WTO協定に整合しないと認定された措置を速やかに是正することを求めます。

4.意義

本件は、ブラジルの貿易歪曲的な補助金政策を是正させるのみならず、新興国等に多く見られる保護主義的な市場歪曲措置がWTO協定上容認されないことを改めて明確にした点で意義があると考えます。

担当