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化学品審議会 安全対策部会・リスク管理部会合同部会中間報告

化学品審議会 安全対策部会・リスク管理部会合同部会 中間報告
〜事業者による化学物質の管理の促進に向けて〜
平成10年9月
化学品審議会 安全対策部会・リスク管理部会合同部会

化学品審議会安全対策部会・リスク管理部会合同部会 中間報告

はじめに

第1章 化学物質の管理の改善、強化の必要性

  1. 化学物質の有用性と管理の必要性
  2. 化学物質の管理を巡る情勢変化

第2章 化学物質の管理の改善、強化の基本的方向

  1. 事業者の管理活動の重要性
  2. 事業者の管理活動の促進の基本的考え方

第3章 事業者による管理活動の推進のためのルール整備

  1. 有害性データの流通の徹底
  2. 化学物質排出量・移動量の登録制度のあり方

第4章 化学物質の管理の推進のための知的基盤の整備

  1. 有害性データの収集と利用の促進
  2. 有害性評価試験法/リスク評価手法の開発・普及
  3. 人材の育成、体制の整備

第5章 国際ハーモナイゼーションの推進

おわりに

はじめに

化学物質の適切な管理の在り方については、平成8年2月の化学品審議会安全対策部会の中間報告において、化学物質の多様な有害性に由来するリスクについて、ライフサイクル全般にわたって総合的な安全管理を進めていくことの重要性が示されるとともに、事業者による自主的な管理活動の促進を図ることが重要であることが指摘された。

その後、我が国においては、MSDS(化学物質安全性データシート)の普及、化学物質の有害性データベース等の整備等事業者による化学物質の管理活動のための基盤整備が進むとともに、有害大気汚染物質に係る自主管理計画の実施、OECDのリスク管理プログラムに対応した事業者の管理の促進等事業者による化学物質の管理活動の促進のための施策が着実に実施されている。

国際的には、国連環境開発会議(地球環境サミット:平成4年)で採択された「アジェンダ21」の第19章において化学物質の管理の問題が取り上げられたのを受け、民間企業の参加した有害性データの収集、事業者の管理活動を中心的役割においた国際協調リスク管理プログラム等、化学物質の管理の改善、強化に向けた国際共同作業が精力的に進んでいる。また、平成8年2月には、発生源での対策等に資するものとしてOECD(経済協力開発機構)によりPRTR(化学物質排出量・移動量登録)の導入勧告が行われた。

このように、化学物質の適切な管理を推進するうえで事業者の管理活動の重要性が一層明らかになるにつれて、管理活動をより効果的なものとするための施策の具体的あり方について掘り下げた検討を行う必要性が明らかとなってきた。

本審議会は、国民の健康の保護や環境の保全を予防的に図る観点から事業者の管理活動を改善・強化することが必要と考えられることから、化学物質と環境を通じた人への健康影響との因果関係が科学的に確立していないことから定量的な基準が設定できず規制の対象外とされてきた化学物質について、その適切な管理を図るための事業者の管理活動の改善、強化のあり方を中心に審議を行い、ここに中間報告を取りまとめることとした。

政府及び関係者が、この報告書の提言内容を踏まえ、施策の具体化を行い、化学物質の適切かつ効果的な管理が一日も早く実施に移され、経済社会の発展に資することを望むものである。

第1章 化学物質の管理の改善、強化の必要性

1.化学物質の有用性と管理の必要性

化学物質は、産業分野のみならず、日常生活においても様々な形で使用される有用な基礎資材である。化学物質を天然物から抽出し、あるいは、合成・加工・利用するという活動は、世界の経済、市場、技術システムの重要な一部分を構成し、化学物質は、現代の経済社会に不可欠なものとなっている。今日、推計で5万から10万種類の化学物質が取引きされ、また、我が国だけでも毎年約300物質の新たな化学物質が開発され、市場に投入されている。

しかしながら、化学物質は、様々な有用な機能、便益を持つ一方で、中にはその固有の性質として何らかの有害性をもつものが少なくなく、その取扱いや管理の方法の如何によっては、基礎資材である化学物質が環境汚染や人への健康影響をもたらす危険性(リスク)を有するものとなる場合がある。このため、化学物質をより適切かつ効果的に管理するための方策を構築することは、化学物質の有用性を活かしつつ、より安全で環境と調和する化学物質の利用を進めていく上での重要な課題である。

2.化学物質の管理を巡る情勢変化

これまで化学物質の管理は、個別の化学物質の有害性に起因して実際に起きた事故や問題に対応して、あるいは人への健康影響との因果関係が科学的に確立しているものについては、影響の種類、程度等に応じて法規制による対応が行われてきた。例えば、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化学物質審査規制法)は、化学物質による環境経由の人の健康被害を防止する観点から、通産省と厚生省が新規化学物質の事前審査(環境中での分解性、濃縮性、毒性を製造、輸入開始前に審査)を行うことにより、PCB類似の有害性*1を有する化学物質の製造・輸入を実質的に禁止する規制を昭和49年から実施している。同法は、昭和61年に改正され、科学的知見の蓄積及び社会の化学物質の管理に関するニーズの変化を踏まえて、環境中に残留することによって人の健康被害を生ずるおそれのあるトリクロロエチレンのような化学物質に対し、製造量の制限、使用に係る技術上の指針を示す等、対象物質、必要となる管理対策の内容を拡大してきた。

しかし、化学物質審査規制法に限らず、その他の関係法令でも、人への健康影響との因果関係が科学的に確立していない化学物質については、因果関係を踏まえた定量的な基準が設定できず、規制的手法を適用することには限界がある。こうした化学物質については、法律による措置を講ずるのではなく、必要に応じ、事業者の管理活動の取り組みを支援する等により管理の強化が図られてきた。

しかしながら、化学物質の利用が拡大する中で、化学物質の多様な有害性からもたらされる可能性のある環境を通じた人への健康影響を予防的に管理することの重要性を踏まえると、従来からの法規制による化学物質の管理の実施に加えて、化学物質の様々な有害性がもたらすこうした影響を予防的に管理するための新たな施策を講ずることが必要である。

こうした施策は、科学的知見の増大及び社会の化学物質の管理に関するニーズの変化を踏まえて、人の健康を損なうおそれのある化学物質による環境の汚染を防止するため、化学物質の製造、輸入、使用等の各段階で適切な管理対策を講ずるという化学物質審査規制法の背景にある基本的考え方の延長線上にあるものといえよう。

*1 難分解性で生体内で濃縮され、かつ長期毒性を有するという有害性。

第2章 化学物質の管理の改善、強化の基本的方向

1.事業者の管理活動の重要性

人への健康影響との因果関係が科学的にも明らかにされ、人の健康等に影響を与える危険性が許容できるレベルを越えていると評価される化学物質については、影響の種類、程度等に応じて今後とも法規制による対応が必要である。

しかし、数多く存在する化学物質の中には、有害性の評価等の科学的知見は確立しているが、当該化学物質と健康影響との因果関係に関する科学的知見が明らかになっていないものが少なくない。

化学物質の取り扱われ方は、製造、使用等の方法によって千差万別であり、取扱い実態に即して適切な管理を行えるのは第一義的には化学物質を取り扱う事業者自身である。また、事業者は、そうした社会的責任を負っているともいえる。

こうしたことを考慮すると有害性に関する知見があっても、人への健康影響との因果関係まで科学的に明確とはなっていないために定量的な排出基準や環境基準が設定できず、法規制による強制的な管理手法になじまない化学物質については、人の健康の保護や環境の保全の予防的観点から事業者の管理活動を改善・強化することが必要と考えられる。こうしたことから、欧米諸国においては、PRTR(化学物質排出量・移動量の登録制度)制度の導入やMSDS(化学物質安全性データシート)の流通の義務づけなど事業者による化学物質の管理活動を促進するルール設定や非規制的手法による事業者の管理活動の促進等が進んでいる。

また、事業者による化学物質の管理を促進することは、化学物質の管理活動を産業活動の一環に組み込むという点で大きな効果がある。

2.事業者の管理活動の改善、強化の基本的考え方

事業者の管理活動の改善、強化にあたっては、化学物質が多岐多様な形で使用されることから、事業者に多様な管理手段の中から適切な手段を選択することを可能とすることが効果的と考えられる。このような取組みは、レスポンシブルケア活動、ISO14000の認証の取得等、実現化されつつあるが、その参加自体が任意であることに起因する課題もある。したがって、事業者の管理活動の改善、強化のあり方は、行政が化学物質の管理方法を逐一取り決めるというアプローチではなく、行政の役割は事業者の管理活動の促進のために必要となる情報の流通の確保、管理活動に関する基本的な枠組みの設定、事業者による効果的な管理活動の実施に必要となる知的基盤整備の推進等の施策によって、実効性、公平性及び透明性を高めるにとどめ、具体的管理活動の内容については、事業者の創意工夫を尊重するという考え方に立つことが適当である。なお、その際、事業者の事業活動の国際化が進展していることに鑑み、設定されるルールや枠組みは、国際的に整合のとれたものとすることが重要である。

また、こうした施策に加えて、国は、中小企業に対しては、化学物質の管理活動を促進するための技術指導や支援の強化を図るべきである。

第3章 事業者による管理活動の推進のためのルール整備

1.有害性データの流通の徹底

化学物質の取扱い事業者が個々の化学物質を適切に管理するためには、その有害性情報を把握することが前提となる。したがって、化学物質の事業者による管理を実効あるものとしていくためには、化学物質の取引の際に事業者が確実に有害性情報を手に入れることができるようにするための対策を講ずることが必要である。

(1)MSDSの現状と問題点

1) 市場で取り引きされる化学物質の有害性情報の伝達手段としては、MSDS(Material Safety Data Sheet:化学物質安全性データシート)がある。MSDSとは、化学物質の名称、物理化学的性質、有害性情報、取扱い上の注意等を記載した一定の形式を備えた書類であり、事業者間の化学物質の取引の際に交付することによって、化学物質の有害性や適切な取扱い方法に関する情報を受け取り側に提供するものである。
2) 我が国では、MSDSの導入・普及のための活動は、(社)日本化学工業協会(日化協)の自主取り組みとして平成3年から始まった。平成4、5年には、労働省、通産省/厚生省が、行政運用(告示)によりMSDSの普及を促した。その間、MSDSの役割は、化学物質の適切な管理についての社会的関心が高まるにしたがって、労働安全の確保という当初の目的に加え、環境保全、製品安全の確保、更には、化学物質をライフサイクル全般にわたって適切に管理するための重要な情報伝達手段へと変化してきている。実際、MSDSの情報は、化学物質ユーザーの原材料の選択、最終製品の取扱情報等の提供のためにも有用なものとなっている。
3) しかしながら、化学物質の製造事業者によるMSDSの作成は相当程度進んできているものの、その流通は必ずしも徹底されているとはいえない状況にある*2。 これは、MSDSを化学物質の取引きの際にMSDSを提供することが化学物質の取引のルールとして定着していないためと考えられる。
 なお、米国、EU諸国、カナダ、オーストラリア等の先進国では、化学物質の取引きの際に、MSDSを化学物質製造業者、販売業者等から使用業者に提供することが法律上義務付けられている。

(2)MSDSの流通を徹底させるための方策

化学物質を取り扱う事業者には、本来、規制の有無に関わらず、人の健康や環境への悪影響をもたらさないよう化学物質を適切に管理する社会的責任がある。しかしながら、化学物質の種類や有害性は多様であり、化学物質を使用する事業者がその性状、有害性、適切な取扱い方法に関する情報を全て把握することは実際上困難である。他方、化学物質の製造・輸入事業者は、使用事業者に比べて圧倒的に化学物質の有害性情報を入手しやすい立場にあるが、化学物質の有害性情報は、商品情報と異なり、取引の際に積極的に提供されにくい性質の情報であるので、有害性情報の伝達に係るルールが存在しなければ、化学物質の取引の際に有害性情報が使用事業者に伝達されることを確保することは困難と考えられる。

こうしたことから、化学物質使用事業者の管理責任の遂行を補完し、化学物質の管理を促進するため、科学的知見に基づき有害性が確認されている物質を特定して、化学物質及びその混合物等の製造事業者、販売業者等に化学物質及び混合物等の譲渡又は提供の際にMSDSを提供すべきことを義務づけることが適当である。また、MSDSの内容を変更した際の改訂情報の提供のあり方、混合物に係るMSDSの取扱いについては、以下のようにすることが適当である。

1)MSDS記載情報の改訂等、その内容に重大な変更を行った場合には、MSDS対象物質を提供した事業者は、速やかに提供を行った相手方に対して変更後の安全性情報を提供することに努める、
2)後述のPRTR対象物質が混合物中に含有される場合、当該混合物を提供する事業者は、成分中に含まれるPRTR対象物質名及び含有量についての情報をMSDS中に記載する。

なお、少量化学物質であっても化学物質の適切な管理が必要であることから、有害性が確認されている物質については、MSDSに係る義務の対象とすべきである。

また、MSDSの提供の義務化にあたっては、MSDS内容の質の確保に資するため、国はMSDS対象物質に係る有害性データベースの整備を行うとともに、中小企業への周知、技術指導等の所要の支援策を併せて講ずべきである。

*2 平成9年に通産省が(社)日本化学工業協会に対して行った委託調査結果によると、請求してもMSDSを入手できないことがあるとした回答が全体の36%あり、他方請求しなくても全てのMSDSを入手できるとした回答は全体の2%に留まっている。

2.化学物質の排出量・移動量の登録制度のあり方

(1)PRTRとは

PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)とは、「様々な排出源から排出又は移動される潜在的に有害な化学物質の目録若しくは登録簿(OECD定義)」をいい、具体的には、
1)事業者が、対象となる化学物質毎に工場・事業場等から環境中への排出量や廃棄物等としての移動量を推計により自ら把握し、国等へ報告し、
2)その結果を何らかの形で集計し、公表するという内容からなる。
PRTRの実施により得られる効果としては、一般的に以下のようなものが挙げられる。

(a)事業者による化学物質の管理の促進

下記の(2)に述べるように、PRTRの導入により、事業者の化学物質の管理活動が改善、強化されることが期待できる。

(b)化学物質の排出状況に関する国民の理解の増進

化学物質の排出状況についての情報が提供されることによって、化学物質の管理問題についての国民全般の理解が深まることが期待できる。

(c)国、地域における環境対策、化学物質管理対策等の行政施策への反映

PRTRの実施により、推計値であることに起因する一定の制約はあるものの、化学物質の排出量が把握・集計され、国、地域における環境対策、化学物質管理対策等の行政施策に資する基礎的資料となることが期待できる。

(2)PRTRの導入によって期待される事業者の活動

PRTRの導入により、事業者の化学物質の管理の改善、強化が促され、化学物質の有する潜在的悪影響等の予防管理につながることが最も重要である。事業者の化学物質の管理活動にもたらす効果に着目してみると、事業者の管理活動は、PRTRの実施によって以下のような要因で改善・強化されると考えられる。

1)事業者は、PRTRの導入により、対象となる化学物質毎に工場・事業場等から環境中への排出量や廃棄物等としての移動量を自ら把握することによって、自己の化学物質の管理、排出状況についての認識・評価を行う契機を持つことになる。
2)排出量・移動量データが物質、業種、地域、企業規模等毎に集計・整理され、公表されることによって、事業者は、それらの情報を参考にして自社の排出量・移動量の位置づけを認識することが可能となり、自社の化学物質の管理のあり方について評価し、見直すことが可能となる。
3)事業者が自ら化学物質の管理、排出状況に関する情報等を関係者へ提供することに努めることよって、化学物質の管理努力について関係者の理解を深めることが可能となる。

(3)PRTRを巡る国内外の状況

OECD理事会は、PRTRに関し、平成8年2月、加盟各国がPRTRシステムを適切に構築するよう取り組むことについて勧告し、併せて3年後(平成11年2月)に加盟国のPRTRの導入に向けた取り組み状況を理事会に報告することを指示しているが、PRTRの各国における在り方は、事業者に排出量、移動量の報告を求め、それを何らかの形で集計し、公表するというPRTR制度の基本的骨格に係る部分を除き、PRTRの制度化の目的、PRTRデータの利用方法を含め、OECDが提示しているPRTRに関する原則を考慮して、各国に最も適した形で導入が図られるべきとしている。

海外では、既に、米国、イギリス、フランス、カナダ、オランダ、韓国でPRTRに相当する制度が導入されており、その他の国でもその導入が検討されているが、その目的は様々である。例えば、米国のTRI(Toxic Release Inventry:有害物質排出量目録)は、化学物質を取扱う事業所における国内外の事故を契機として制度化され、有害性が科学的に確認されている約600の化学物質毎に、個々の施設からの年間排出量の推計値の届け出を義務づけ、これを集計・公表するとともに、各施設毎のデータを企業秘密を確保した上で一般に公表している。

EUの各国のPRTRは、概ね、施設の操業許可の際に義務づけられた排出量報告を施設の公的登録簿に記載するとともに、中央政府が報告された排出データを集計し、物質毎の総排出量、地域毎の総排出量の公表を行っている。また、個別施設の排出量については、データ請求があった場合には、請求に応えてデータを提供する、又はデータベースによる閲覧を可能とするといった形で情報を提供している。

我が国では、産業界が通産省からの支援を受けて、化学物質の管理を推進する観点からPRTRの導入に取り組んできている。具体的には(社)日本化学工業協会は、平成4年からPRTRに関する取り組みを開始し、平成8年の調査結果から毎年、その結果を一般に公表している。こうした取り組みは、平成8年から産業界全体の取り組みへと発展している。(社)経済団体連合会は、平成8年にPRTRについての検討を開始し、平成9年に全国規模では初めての広範な産業分野を対象としたPRTR調査を45団体の参加を得て実施し、平成10年6月にその結果を公表した。また、平成9年10月には、欧米諸国におけるPRTRの実施状況を調査するため、実態調査団を派遣した。また、環境庁は、平成9年に、神奈川県の一部及び愛知県の一部で地域パイロット事業を実施し、平成10年5月にその結果をとりまとめ公表した。

このような取り組みを通じて、特に本格実施から3年目になる化学業界においては、PRTRの円滑な実施に必要となるプロセス毎の排出量推計方法等の様々な有用な技術的蓄積が進んだこと等により、化学物質の管理活動の強化・改善の効果が実際に現れ始めている。しかし、一方でこうした活動への非参加者の存在の問題、事業者による管理活動の内容・成果の透明性の向上の必要性等、自主的活動、地域を限った限定的実施の問題点も指摘されている。

(4)PRTR制度の具体的あり方

PRTRがもたらす重要な効果、OECDのPRTR導入勧告、さらには諸外国においてもPRTRの導入が進みつつあること、自主的、地域限定的PRTRの限界等を考慮すると、我が国においても関係省庁との意見調整を図り早急にPRTRの法制化を図ることが必要と考えられる。これまでの国内におけるPRTRの実施経験、欧米諸国の類似制度の内容、関係者の意見等を参考にすると、PRTR制度の内容としては以下のようなものとすることが適当と考えられる。

なお、制度のあり方については、必要に応じ関係者の意見を聴取するとともに、適宜見直しを行うことが必要である。

1)対象物質の特定

国は、科学的根拠に基づき有害性があると判断され、物性、生産・使用等の状況から環境中に残留する可能性がある化学物質の中からPRTR対象物質を特定し、事業者の管理の改善・強化を促す観点から、当該化学物質の取扱い事業者に対して排出量、移動量の推計値の届出義務を課すことが適当である。具体的な対象物質の特定は、科学的にかつ様々な専門分野の知見に基づいて行う必要があることから、各分野の専門家から成る委員会の検討を経て行うことが適当である。

なお、規制対象物質であっても、上記考え方に対応するものについては、事業者の化学物質管理を促す観点から、対象とすることが適当である。

2)対象事業者及び排出量等の届け出先

PRTR対象化学物質を取り扱う広範な分野の事業者に対し、事業所毎に対象物質の年間排出量・移動量の届け出を義務づけることが適当であるが、排出量の推計等に要する手間等事業者に係る実施上の問題を考慮し、諸外国の例も参考にして企業規模、事業所における化学物質の有害性及び取扱量等を勘案した適切な裾切りを設けることが適当と考えられるので、この点についての検討が必要である。なお、対象とされなかった事業者を含む業種全体や地域等の排出量、移動量についても下記5)の国が実施する推計の対象とすることがPRTR実施の効果を確保するために必要である。

また、排出量の届け出先については、各種の集計を速やかに行い公表することが重要であること(下記3))、地域をまたがって複数の事業所をもつ事業者の届け出の利便性を確保すべきであること、届け出事業者からの種々の技術的な問い合わせに統一的にかつ一元的に応えることが必要であること及び企業秘密の確保を適切に図る必要があること(下記4))等から、国を届け出先とすることが適当である。

3)データの集計・公表のあり方
(a)国による集計・分析及びそれらのデータの公表

国民の化学物質の排出状況についての理解を増進するとともに、事業者が取扱い物質毎、業種内、地域内等における自社の位置づけを認識すること等を可能とするため、国は、届け出られた対象化学物質の排出量・移動量のデータを物質別、業種別、企業規模別、地域別等の観点から集計・分析し、公表することが適当である。

(b)個別事業所データの取扱い

事業者は、自らの化学物質の排出状況を明らかにすることによって、事業者による管理努力とその成果についての正当な評価を得ることができる。こうしたことから、事業者は、自ら管理、排出状況に関する情報を国民に提供することに努めることが望ましい。

同時に、国は事業者の管理活動の状況に係る情報についての透明性を確保することが重要である。このため、国民からの請求に基づき、届け出られた個別事業所毎の排出量、移動量データを開示することが適当と考えられる。この際、国は、米国等諸外国におけるPRTR制度と同様に企業秘密について厳格な判断を行いつつ、企業秘密と判断された情報については秘密情報の確保を図るための措置を講ずることが必要である。

なお、個別事業所データの取扱いは、審議の中で最も活発な議論があったポイントである。その論点は、開示される排出量、移動量の数字の受け取られ方に関すること、化学物質の管理に関する事業者の活動等について如何に国民の理解を得るかということに関わるものであった。こうした課題は、化学物質のリスク問題に関する対話(リスクコミュニケーション)への積極的な取り組みとその積み重ねによって解決されていくと考えられるが、事業者が管理、排出状況に関する情報の提供に努め、国民の理解を得ていくことの重要性について引き続き関係者の理解を得ていく必要がある。

(c)地方自治体へのデータの提供

地域の状況に応じた化学物質の管理対策、環境対策の実施を可能とするため、国は、集計を地域別にも行い公表するとともに、収集したデータを集計データとともに地方自治体に提供することが適当である。

4)企業秘密の保護の具体的なあり方

事業者に排出量、移動量データの届け出を義務づけるにあたって、企業秘密を確保するための措置を講ずることが必要である。他方、企業秘密の判断は、PRTRの目的に沿って客観的な基準に照らして厳格にかつ限定的に行う必要があることは言うまでもない。また、その判断は、統一的に行われる必要がある。こうしたことから、企業秘密の判断には、事業者の属する業種の技術事情、競争環境に詳しい専門的知見を有する行政機関が一元的にあたることが必要である。

なお、企業秘密と認められた情報についても、例えば、化学物質名を化学物質分類名に置き換えることにより集計、公表し、又はデータの請求に応えて開示することにより、化学物質の排出状況を明らかにするというPRTRの意義を可能な限り損なわないように工夫すべきである。

5)届出対象事業所以外からの排出量・移動量の国による推計

化学物質は、届け出対象事業所からのものに限らず、自動車等の移動発生源からのもの、農地等への化学物質の散布等分散発生源からのもの、裾切りされた中小事業所からのもの等、様々な発生源から排出される。こうした様々な発生源別の情報が公平に評価され、それを踏まえた合理的な化学物質の管理対策が進むことが必要である。したがって、国はこのような届け出対象事業所以外の発生源からの排出量・移動量について、PRTR対象物質の環境への排出・発生に係る情報収集と推計手法の改良のための調査研究に努めるとともに推計を行い、その結果を届け出対象事業所からの排出量、移動量のデータと併せて公表すべきである。

6)周到な準備の必要性

PRTR制度の効果が所期の目的どおりに発揮されるためには、国民、事業者を含む幅広い関係者に対してPRTR制度についての十分な周知が図られることが重要である。このために、十分な普及、啓蒙活動を行うことが必要である。

また、排出量・移動量データの把握、それらの信頼性の確保、リスクコミュニケーションへの取り組み、このための企業内体制の確立や国による基盤整備等に周到な準備が必要となることから、その実施にあたっては十分な準備期間を確保すべきである。

また、特に中小企業に対しては、排出量、移動量の算出方法等に関する周知、技術指導を行う必要がある。

7)有害性データの収集・提供等

国は、事業者の協力を得つつPRTRの実施に必要となる化学物質の有害性データの収集を行い、その提供に努めることが必要である。

また、MSDSの流通の義務化は、原材料等に含まれる化学物質の成分情報を供給する観点から、PRTRの制度化にとっても有用である。

8)リスクコミュニケーションの促進とそのための基盤整備

事業者は、自らの管理、排出状況に関するデータを提供し、化学物質の管理努力について関係者の理解を深めるようリスクコミュニケーションに努めることが望まれる。こうした努力は、事業者による管理努力とその成果について正当な評価を得るために重要であるとともに、国民の化学物質の管理、排出状況に関する理解の増進にもつながるものである。

また、国は化学物質に係るリスクコミュニケーションが円滑に進むような環境を整えることが必要である。このため、国民、事業者に対して排出量、移動量に係る解説情報、リスクコミュニケーションの実践に役立つ参考資料等の整備を行うこと等により、健全なリスクコミュニケーションの進展がなされるよう基盤の整備を図ることが必要である。

また、国、学界、産業界、消費者等の関係者が協力して、化学物質の安全問題に関して一定程度以上の知識と理解を有し、求めに応じて化学物質と人の健康等への影響に係る解説・対話を行うことのできる人材の養成に取り組むことが望まれる。

(5)PRTR制度と各種規制法との関係

PRTRの実施は、事業者によるPRTR対象物質の管理の改善・強化を促し、化学物質の有する潜在的悪影響等の予防管理につながると考えられる。他方、特定の化学物質について、科学的知見の進歩等により、人への健康影響との科学的因果関係が明らかになれば、それに応じて定量的な排出基準や環境基準を設定するとともに、環境汚染の現状からみて人の健康に悪影響を及ぼす危険性があると評価される場合には、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、化学物質審査規制法等の法規制の管理下に移行させ、適切な管理を行うことが必要である。

(6)PRTR制度を契機とする事業者の管理活動の促進と排出抑制効果

PRTR制度の導入を契機とする事業者の管理活動の促進効果と排出抑制効果を最大限引き出すような施策も併せて講ずることを検討することが適当である。

化学物質の有害性と人の健康への影響等に係る科学的因果関係が明確でないものを規制措置の対象とすることは適当でないが、諸外国においては、米国の33/50プログラム*3、カナダのARETプログラム*4等のように、PRTRの結果を活用しつつ、事業者のより効果的な管理対策を促す自主的な排出削減プログラムが実施されている。同プログラムにおいては、参加企業が自主的に具体的削減目標を掲げその実施に努めることにより、実際に大きな効果をあげている。我が国においてもPRTR制度が実施に移された後の将来の課題として、今後このような取り組みのあり方について検討することも必要となろう。

また、化学物質の管理を強化するための設備改善等に対しては、金融面での支援を行うことも検討すべきである。

(7)地方自治体に期待される役割

地方自治体には、国から提供される当該地域に係る化学物質の排出量、移動量のデータ及び解説情報、資料等により、地域住民と事業所との間のリスクコミュニケーションの円滑な進展を図ること及び地域の事業者に対する化学物質の管理活動の改善、強化に係る技術支援等地域の状況に応じた化学物質管理対策、環境対策の企画立案とその適切な実施を行うことが期待される。

(8)事業者・事業者団体による自主的PRTRの取組の推進

国として最低限必要と認める対象物質以外に、事業者が、同様の製造・使用工程をもつ業界団体内において共通の関心を有する対象物質を特定し、排出量・移動量の把握、集計、公表に自主的に取り組むことによりPRTRを実施することは、事業者の自主的取り組みによる化学物質の管理が継続的に促進される原動力になるとともに、同業者間において管理技術情報の交流・普及の促進につながることから、今後ともこうした取組が実施されることが奨励される。

海外においてもカナダでは、事業者による自主的なPRTR制度と義務的な制度が密接に連携して実施されており、国全体として効果的な仕組みとして機能していると評価されている。

*3 米国の33/50プログラムは、連邦政府の要請により1991年に開始された産業界による自主的なプログラムであり、本プログラムへの参加は企業の自主性に委ねられる。プログラム全体の目標は、有害性のある化学物質のうち、高生産量で、かつ、排出削減の可能性がある物質として選定された17物質について、1988年の排出量を基準年として、92年末までに33%、95年末までに50%削減することが揚げられたが、実際の企業毎の削減目標の設定、実施は、各企業の自主的努力に委ねられている。この結果、プログラムに自主的に参加した約1,200企業により、削減目標が1年前倒しで達成された。

*4 ARET(Accelerated Reduction/Elimination of Toxics)プログラムは、1994年から開始された産業界により自主的に実施されているプログラムで、カナダの全産業の40%をカバーする主要8業種の143企業が自主的に参加。参加企業は、削減する対象化学物質を特定し、自社の排出削減目標を示した行動計画を策定・公表、成果についての自己評価を行う。ARETの実施の結果、95年12月までに、49%の排出削減が達成された。

第4章 化学物質の管理の推進のための知的基盤の整備

化学物質からもたらされる可能性のある環境汚染や人への健康影響をその科学的根拠によって規制措置あるいは事業者の管理活動の改善・強化によって、より適切かつ総合的に管理することを可能とするためには、化学物質の有害性データの収集・蓄積、有害性及びリスクの評価手法の開発等化学物質の管理に必要となる知的基盤の整備を図ることが極めて重要である。

また、化学物質の有害性データの収集・蓄積等の知的基盤の整備は、リスク・コミュニケーションの実施にとって極めて重要である。

1.有害性データの収集と利用の促進

(1)基本的考え方

化学物質をより適切に管理するためには、化学物質の有害性に関する科学的知見を収集・蓄積し、国民や事業者が使いやすい形で利用できるようにしていくことが必要である

有害性データの収集に関する国と民間の役割分担についての考え方は、主要国間でも若干の差は存在するものの、国は基礎的な有害性データを収集・評価し、より詳細な有害性データの収集の必要性を明らかにするという役割を果たす一方、化学物質の製造・輸入事業者はデータ収集の最終的な責任を負うという点で一致している。

国は、既存化学物質点検等の実施により、引き続き基礎的有害性データの収集を行うとともに、OECD(経済協力開発機構)等で行われている国際協力による有害性データの収集・評価作業*5への積極的参加及び情報交換体制の整備を行うべきである。一方、事業者は、製造物質の有害性データを収集・提供すること等により、国による有害性評価、データの収集に積極的に参加すべきである。

(2)事業者による有害性データ収集の促進、データの有効活用の促進

事業者は、自らが製造する化学物質について、その有害性データの収集に努めることが必要である。

事業者による有害性データの収集を促進し、事業者の保有する有害性データの有効活用を図るためには、企業秘密に関する配慮、資金を投じて収集したデータを公開する経済的インセンティブの欠如の問題等を可能な限り解消すること等により、データ収集に取り組む事業者の意欲を阻害しないような体制を構築する等の検討が必要である。また、国が有害性データの収集に係る個別具体的ニーズ(有害性データの収集が必要な対象物質、有害性項目等)を明らかにし、事業者自身が有害性データの収集の必要性を明確に認識できるようにすることも重要である。

また、化学物質審査規制法の新規化学物質の審査に用いられたデータ等、法律の施行に基づいて民間企業から国に提出された有害性データについては、企業秘密の取扱いに配慮したルールと手続きを明確化したうえで、その活用を進めていくことが必要である。

(3) 有害性データベースの整備

収集された有害性データについては、国民や事業者の利用しやすい形で整理・提供されることが重要である。その際、有害性データ、特に有害性の概要情報は、一種の公共財として国際的にも取り扱われていることを考慮すると、このようなデータについては、国が中心となってその提供体制を整備し、その物質数及び内容について逐次拡充していくことが重要である。特に、国の保有する有害性データについては、早急に国民や事業者の使いやすい形で提供する体制を整備すべきである。

データベースの構築にあたっては、内外のデータベースとのリンクも構築し、一般の利用者が当該データベースにアクセスさえすれば他のデータベースにあるデータも入手できるような利便性の高く、かつ、わかりやすいものとすべきである。具体的には、こうした基本的考え方の下で通産省により整備が進められている2000年までに約2000物質の総合的有害性データを整備する計画を着実に実行するとともに、その後も計画的に整備を進めていくことが必要である。

2.有害性評価試験法/リスク評価手法の開発・普及

化学物質の有害性やその人への健康影響は、科学的に評価することが必要であり、国は、国際基準との整合性を確保しつつ、そのための試験・評価のための統一的な基準・手法(「ものさし」)等を開発、整備するとともに、事業者による有害性データの収集を促進していくための環境整備としてその普及に努める必要がある。

このため、内分泌攪乱効果をもつ化学物質の選別・確定試験法等、新たな有害性に係る試験法の開発作業への積極的参加を行うことが重要であり、OECDにおけるテストガイドラインの策定作業に主体的かつ積極的に参加し、迅速に開発を進めていく必要がある。また、開発作業の結果、OECDテストガイドラインとして国際標準化された試験法は、JIS(日本工業規格)化を図り、国内において普及を促進していくことが必要である。

また、リスクコミュニケーションの実施を支援するために、化学物質を取扱うことから発生する人への暴露量、リスクの程度等を簡易に算出できるシステムの開発を行い、普及を促進していくことが重要である。

3.人材の育成、体制の整備

我が国で継続的に化学物質の安全性情報の整理・体系化や総合的有害性評価の仕事に携わっている専門家の数は、欧米諸国に比べて著しく少ない。また、化学物質を適切に管理するための諸作業の多くは国際協力により実施されているが、こうした作業に主体的に参加できる専門家の数も極めて限られている。今後は、国においては産・官・学や、NGO等の専門家の連携のもとにこの分野の人材育成に取り組むことが必要である。

また、産業界においては、化学物質の適切な管理に関する調査研究、試験実施等を国際的に、かつ、産学官で連携しつつ行う中核的かつ中立的な試験評価研究機関の整備を既存機関の活用も含めて進めることが期待される。

*5 OECDでは、OECD加盟29カ国の1カ国で年間1,000トン以上の生産量のある化学物質(高生産量化学物質)を対象に、各国の分担で基礎的ハザード・データの収集・評価作業を1991年(平成3年)から行っている。我が国は、全体の約1/4を分担することとされている。

第5章 国際ハーモナイゼーションの推進

「アジェンダ21」第19章において化学物質の適切な管理を着実に進めていくための諸課題が世界各国の重要共同作業課題として明記されて以来、そのための共同作業がOECD(経済協力開発機構)、WHO(世界保健機関)、UNEP(国連環境計画)、ILO(国際労働機関)等の関係国際機関で、緊密な連係*6がとられつつ精力的に進められてきており、その重要な具体的成果が生まれてきている。

こうした作業が、国際機関を共同作業の場として着実に進められている背景には、化学物質の管理問題に係る諸作業が、国際協力による資源投入を必要とするものであること、場合によっては化学物質の人又は環境に与える影響が国境を越えて他国に及ぶ可能性があること等の理由がある。加えて有害性データの収集、リスク評価手法、リスク評価に係る基準等の作成作業が、化学産業の国際化、化学品の国際間取引の拡大にも影響を及ぼす可能性があり、これらの手法・基準等の国際間の調和を確保しつつ、化学物質の適切な管理を進めていくことの重要性が国際的に認識されていることもその重要な理由である。

我が国としても、このような国際的な枠組みの中で積極的に協力していくとともに、我が国の化学物質の管理の体系が国際的にも整合性のとれたものとしていくことが必要である。

今後の重要な課題としては、OECDリスク管理プログラムやPIC(特定有害化学物質及び農薬の国際貿易に関する事前通報同意手続)条約及びPOPs(残留性有機化学物質)条約交渉といった国際協調の下での化学物質の管理に向けた取り組みや国際的な有害性評価プログラムに積極的に参画していくとともに、有害性に係る試験・評価方法や有害性分類・表示等の国際調和作業に今後一層積極的かつ効果的に参加していくことが挙げられる。また、化学物質の取引のグローバル化が進む中、化学物質の国際取引に係る技術的障壁を取り除いていく観点からも、今後我が国の有害性分類・表示システムが国際的に調和したものとなるよう、関係省庁が連携して国内諸制度の改善に取り組むことが必要である。このための基盤整備のための一つの方策として、国際整合性のとれた化学物質の有害性分類・表示に係るJIS化等標準化を進めていくことが考えられよう。

*6 化学物質のリスク管理に係る諸課題を実施しているこれら国際機関の活動は、IFCS(Inter- governmental Forum for Chemical Safety)の場で活動内容、事業の優先順位等が調整されるとともに、連携関係が確認される。IFCSは、アジェンダ21第19章の実施状況のフォローアップを行うための国際的なメカニズムとして設立されたフォーラムで、IFCSではその名称にかかわらず化学物質の適正管理問題に関係する全ての利害関係者(発展途上国を含む政府、学界、産業界、労働組合、環境団体、消費者団体等の代表)が参加し、様々な問題についてのコンセンサスを形成する。

おわりに

本報告書は、化学物質の利用の拡大と化学物質の有害性に係る科学的知見の蓄積に伴って、国民の化学物質への関心が高まっていることを受けて、化学物質のより適切な管理のあり方について検討した結果をまとめたものである。特に、人の健康への影響との科学的因果関係が未だ明らかでないために定量的な基準を設定できず、従来の規制的手法になじまない化学物質を如何に適切な管理下におくかということが、検討に当たっての基本的な問題意識であった。

化学物質の取り扱われ方は、製造、使用の方法によって千差万別であり、取扱い実態に即して適切な管理を行えるのは第一義的には化学物質を取り扱う事業者自身であること、また、事業者は、適切な管理を行う社会的責任があることから、事業者自身が創意工夫しつつ、管理活動の改善、強化を図ることにより化学物質の管理に対応することが必要である。こうしたことから、国の事業者に対する関与を必要最小限にとどめ、透明性、公平性を確保しつつ、事業者による管理活動の改善、強化を図ることが適切との考えのもとに、事業者の管理活動の実効性を確保するための必要なルールの整備と化学物質の管理活動のための基盤整備に係る具体的な施策のあり方に係る提案を本報告でとりまとめた。

この報告は、約1年間に亘る審議を踏まえ、2回のパブリック・コメントの募集の結果寄せられた意見も参考にしてとりまとめられものである。化学物質の管理の改善、強化に対する国民の関心には高いものがあり、本提言を踏まえて関係省庁が緊密な連携を図ることにより、法制化を始め速やかに具体的な対策を講ずることが望まれる。こうした施策の実施により、国際的にも遜色のない化学物質の管理体制を構築することが可能となり、化学物質の有用性を活かしつつ、より安全で環境と調和する化学物質の利用の実現につながることが期待される。

今後、この報告書で提言された諸制度の具体化、PRTR実施後のPRTR情報等を活用した施策の展開のあり方、実施経験を踏まえた制度の見直しに関し、化学品審議会としても必要に応じて審議を行い、事業者の管理活動の改善、強化策の充実に貢献することが必要と考える。

また、事業者による化学物質の管理活動の改善、強化を促す施策の一つとして本審議会で審議したPRTRについては、その導入のあり方について他の審議会においても最近になって検討が開始された。化学品審議会としても本報告書の内容を踏まえ、他の審議会とも積極的に意見交換を図りたいと思う。

 

最終更新日:2010年3月31日