第1章 グローバリゼーションの中での東アジア経済の変容とこれからの日本 

3.我が国の経済集積の特徴と経済集積間の連携

(1) 我が国の経済集積における多様性

1)我が国の経済集積の特徴

 我が国の経済集積の特徴はどのようなものであろうか。ここでは、その特徴を示すものとして、集積地における産業の特化度や多様性について考察する7。この特化度及び多様性の水準の算出には、その前提として経済活動の地理的分布と産業分類を決定することが重要である。ここで、地理的分布については、通勤行動を基準として市区町村から構成される都市圏設定を用いて、全国を118か所の都市圏に分類した。産業分類に関しては、製造業、卸小売り業及び飲食店、サービス業に属する小分類332業種を分析の対象とした。以上の118都市圏・332業種における雇用者数データを用いて、1981年以降の特化度及び多様性の水準について算出している。
 以上の試算の結果、我が国の経済集積の特徴として、高い水準にある多様性が挙げられる。すなわち、単一的な産業群の集積ではなく、大都市を中心に数多くの産業、企業が集積し多様な経済圏を形成している。特に、我が国の都市圏は、県庁所在地等の地域の中核都市を中心に多様性の水準が高い(第1-2-25表)。これは、行政機能を備えた県庁所在地は、幅の広い産業構造を持つ傾向が強く、特定の産業に特化する傾向が弱いことを示している。例えば、多様性の水準の高い上位10都市圏は、1981年、1999年のいずれもすべて県庁所在地を含む都市圏となっている。他方、特化の水準においても、111位以降はすべて県庁所在地を含む都市圏となっている。
 さらに我が国に特徴的なことは、ほとんどの都市圏において年を追うごとに多様性の水準が高まっていることである。つまり、我が国の都市圏においては、特定の産業が急速に発展するよりも、産業構造が多様化する傾向の方が強いことを示している。
 このような高い多様性の水準は、集積地における高いポテンシャルを示していると考えられる。すなわち、多様な経済圏の形成は、異なる企業間や異業種間の知識波及を促進し、イノベーションを行う基礎的条件となる。また、産業構造の転換の際にも、単一の産業に特化することよりも、多様性を有することの方が、持続的な成長を維持しやすい。このことは歴史的に見ても、19世紀のイギリスにおける都市の盛衰に関して観察されている。繊維産業について極めて効率的な生産システムを築いていたマンチェスターがその後停滞し、雑多で非効率に見えたバーミンガムがその後発展した事実について、マンチェスターは産業の多様性を欠き、バーミンガムは多様性を有していたことがその理由であると考えられるのである。
 以上を踏まえ、我が国の経済集積を見ると、大都市ほどそのポテンシャルが高いことがわかる。特に、東京都市圏は多様性の水準が高く、特化の水準は最も低いことから、我が国では最も多様な産業構造を持つと考えられ、その傾向も強まっている。また、大阪市圏は、東京都市圏に比肩する多様性を有している。近年、経済の低迷が続く大阪市圏であるが、成長の基礎となる多様性は十分に確保されていることがわかる。

 
第1-2-25表 日本の都市圏における特化と多様性
第1-2-25表 日本の都市圏における特化と多様性
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7 特化、多様性の指標の計算式については付注1-2-2参照。都市の成長と特化度及び多様性の関係について、代表的な文献としては、Duranton and Puga(2000)がある。

 

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