| 第1章 世界経済をめぐる主な動向 |
(取締役会と業務執行の分離)
米国の取締役会は単層構造であり、独立した社外取締役によって構成される各委員会は存在するが、1つの機関の中に業務執行機関と経営監督機関が存在する形式である。同じく単層構造であるイギリスが取締役会会長とCEOの分離を近年のコーポレート・ガバナンス改革の中で進めているのとは違って、監督機能のトップである取締役会会長と業務執行のトップであるCEOは大半の企業で兼務36されているのが現状である。両役職を兼務することは、自らの業務執行を自らが監督するという不合理が発生するのと同時に、強大な権限を有するリーダーの存在を認めることとなり、経営者の独走等の経営リスクは増加する。また、監督機能が期待される社外取締役は一般的に他企業のCEOであることも多く、自身の業務が多忙であるため、当該企業の業務に精通し経営を常に考えているCEOに対抗することができない。また、当該企業に関する情報はCEOから提供されており、情報提供が偏るおそれも生じている。
CEOや他の取締役の選任のため、多くの企業が社外取締役から成る指名委員会を有しているが、多くの企業は、CEOが推薦したリストを株主総会に提出することを承認するにとどまっており、指名委員会は限定的な効果しか持たないとの批判もある。
以上からもわかるように、米国の企業構造において、CEOへ広範な経営権が集中しており、取締役会の実行性の確保がコーポレート・ガバナンスの大きな論点となっている。
(監査委員会、指名委員会、報酬委員会)
経営を監督する機関として取締役会に各委員会が設置されている。いずれの委員会も会社法では設置を強制されていないが、NYSEとNASD(全米証券業協会)によって、上場企業には監査委員会(3名以上の社外取締役によって構成される)の設置が強制されている。また、取締役の報酬について決定する報酬委員会37と、CEOを含めた新任取締役候補者の選定、現行取締役の再任を行う指名委員会38の設置がある。
上記3委員会はいずれも、取締役会の職務の明確化、自主性確保を目的としており、好ましいコーポレート・ガバナンスを維持するために重要な役割を果たす組織とされる。
(会計監査(外部監査))
外部の公認会計士、監査法人による会計監査は、財務諸表を外部から客観的にチェックするものであり、好ましいコーポレート・ガバナンスを実践するために必要なチェック・アンド・バランスの重要な一部を構成するものであるとされている39。しかし、会計監査は、基準の解釈に幅があることや、監査法人が監査以外の分野、例えばコンサルティング分野等で業務を企業に提供することによって適切な監査が実施されないおそれがあり、SECは監査人に支払われる監査報酬と非監査業務報酬の明確化等の情報開示を求めるようになっていた。それにもかかわらず、そうした情報開示制度が十分でなかったことが、2001年12月に当時過去最大の破産となったエンロン事件でも明らかになった。同社の委任状説明書では、監査報酬と非監査業務報酬の金額が明示され、独立性についても記載されていたが、不正な会計処理と不明朗な簿外取引により、最終的に破綻に至る事態に陥った。こうした状況を踏まえ、2002年7月に成立した企業会計改革法では、外部監査人に対する新たな監督機関を設立し監督を強化するとともに、同一企業に対する監査業務と非監査業務の重複を大幅に制限した。
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