第2章 「新たな価値創造経済」と競争軸の進化 

第3節 個人の競争軸 〜スキルスタンダードを基準とする人的資本投資

第3節 要旨
1.3か国における若年者を対象とした積極的労働市場政策の概要
 英国、ドイツ、スウェーデンにおけるそれぞれの若年者を対象とした積極的労働市場政策の概要を紹介した。
2.若年者を対象とした積極的労働市場政策についての評価
 各国の評価においては、研修や訓練を実質的な雇用創出に結び付けるために、具体的なスキル内容を媒介して、企業のニーズ、教育、研修との関連を深め、実需に基づく統合的な仕組みとすべきことが指摘されている。
 地域の労働市場の実態を分析し、企業の実需を反映するとともに、具体的な教育や職業訓練プログラムの実施につなげていくためには、共有されかつ実態に合わせて更新されたスキルスタンダードの存在が重要である。スキルスタンダードは、変化する労働市場において将来の需要に応じた適切な能力開発を行い、失業というリスクに直面した場合には円滑な労働移動を行うためのインフラである。
3.スキルスタンダードについて
 英国、ドイツにおけるスキルスタンダードの例について紹介した。
4.我が国の取り組みと今後の課題
 経済成長と雇用創出を確実に結び付け、企業のIT投資や組織改革と組み合わせた人的資本の向上を行い、公共政策における人的資本投資に対する評価を意義あるものとし、地域の個性に応じた人材育成を的確に行う上でも、日本におけるスキルスタンダードの整備は重要な政策課題となっている。
 コード化することが可能な部分の人材の評価尺度については、スキルスタンダードとしてきめ細かに整備することが、多様なスキルを有する人材を組み合わせたチームワークを実現していく上での基盤となり得るものである。そうした基盤が整備されることにより、個人が個性を活かしながら人材市場で競争するという新たな競争軸を構築していくことになる。
 これまで述べたとおり、企業は新たな競争環境の下で、知的資本を活用しながら価値創造力を高めることが求められている。また、地域経済においても、自らの地域の経済循環構造を分析するとともに、地域の固有資産を把握し、その2つを結び付ける形で、総合的な地域再生戦略に取り組むことが求められている。
 これらと同様に、個人も、グローバルな競争環境が変化する中で新たなチャレンジに直面している。すなわち、第1章第1節で述べたように、企業の価格決定力が低下する中で、景気回復が必ずしも雇用創出に結び付かないという傾向が生じている。また、経済環境の変化に伴い、個人に求められるスキルや能力も変化に晒されることとなる。本章第1節で議論したとおり、企業そのものが人的資本を含めた知的資本を重視した経営へと転換していくことも重要であるが、あわせて、政府としては、経済環境が変化した場合に、雇用移動を円滑に進めるための環境を整備する必要がある。殊に若年者の場合、景気変動の影響を受けて失業状態に陥りやすく、就業を進めるための努力が特に求められる。
 欧州諸国は1980〜1990年代にかけて高い若年失業率を含む失業問題を経験した(第2-3-1図、第2-3-2表)。これに対応するため、1990年代後半には各国において若年層への対策を中心にいわゆる積極的労働市場政策を導入する動きが広がり、単に失業給付を継続する等の消極的な対応ではなく、若年者が職業訓練や実習経験を通じて技能を修得し、それによって就業能力を向上させる政策に重点が置かれることとなった。欧州諸国において積極的労働市場政策が採用されるようになってからほぼ5年が経過し、こうした政策に対する評価も行われつつある。我が国においても若年層の失業問題が重要な政策課題となっている。以下においては英国、ドイツ、スウェーデンの3か国における若年者を対象とした積極的労働市場政策の概要と評価を紹介し、我が国の政策に対する示唆を得ることとしたい。

 
第2-3-1図 1990年以降の若年失業率の推移

第2-3-1図 1990年以降の若年失業率の推移
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第2-3-2表 最近の若年失業者数の推移

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