第1章 世界経済の成長メカニズムと不均衡問題 

(3)外貨準備保有高について5

 外貨準備とは、「通貨当局が為替介入に使用する資金であるほか、通貨危機等によって、他国に対して外貨建債務の返済等が困難になった場合に使用する準備資産」(日本銀行Webサイト)である。つまり、外貨準備の一定程度の蓄積は、その国の通貨安定のために必要であると考えられる。特に、東アジア諸国・地域においてはアジア危機という大きなショックを経験していることからも、通貨危機に対する備えという意味を持って外貨準備の蓄積が進められてきた経緯もある。そこで、以下では、近年急増している東アジア諸国・地域における外貨準備保有高の規模について考えてみることとする6
 外貨準備保有高の適正水準については、様々な見解があり必ずしも統一的な指標は確立されていないため7、ここでは、実務的な観点からの外貨準備保有高の評価として、IMF(2000)等でも分析されている輸入額や短期債務残高との比較を参考として紹介する8。まず、「外貨準備保有高/輸入額」は、輸入代金を外貨準備保有高でどの程度の期間支払うことが出来るのかを表わしており、目安として輸入の3か月分以上は必要であることが指摘されている。その観点から、第1-5-11表の輸入額比の数値を見ると、アジア危機発生前に比べて総じて数値が上昇しており、その水準は3か月分を大きく上回り、フィリピン、香港を除いては6か月以上の数値を示している9。次に、「外貨準備保有高/短期債務残高」は、対外ファイナンスが困難になった場合の当該年に支払期限が来る債務に対する外貨準備保有高での支払能力を表わしており、1年分相当がベンチマークとして使用されている10。短期債務残高比を見ると、1996年の数値では外貨準備保有高が短期債務残高を大きく下回っている国・地域が散見されるのに対し、2003年の時点では全ての国・地域の数値が1.0倍を上回り、フィリピンを除くと1.5倍以上の水準に達しており、大幅に改善されていることが確認される。

 
第1-5-11図 外貨準備の輸入額及び短期対外債務に対する比率

第1-5-11図 外貨準備の輸入額及び短期対外債務に対する比率
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5 本項では、特に大谷・渡辺(2004)を参考とした。
6 また、外貨準備保有高に関する理論的な研究については、バッファー・ストック・モデルという最適外貨準備保有高の決定理論がある(大谷・渡辺(2004))。
7 吉國(2003)によれば、外貨準備保有高の適正水準については、専門家の間でも意見の一致は見られないとしている。
8 この他にも、IMF(2000)では、居住者による資本逃避が生じた場合の影響を示す指標として「外貨準備保有高/マネーサプライ」等を評価手法として、紹介している。
9 IMF(2000) によれば、「外貨準備保有高/輸入額」の比率は、目安として、3か月分は最低限必要であるだろうとしている。
10 IMF(2000)によれば、「外貨準備保有高/短期債務残高」の比率について、ベンチマークは1.0倍としているが、1997年時点のマレーシアは、1.5倍という高い水準であるにもかかわらず、アジア危機の被害にあっていること等1.0倍という水準が絶対ではないことを指摘している。この他、IMF(2003)を参考。


 第5節 世界経済が抱える「不均衡」

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