第3章 我が国の少子高齢化・人口減少と東アジアの新たな経済的繁栄を目指した経済統合 

(2)少子高齢化・人口減少が経済に及ぼす影響

 一国の経済を成長させる源泉は、労働投入量の増加、資本投入量の増加及び技術進歩等による全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)の成長に分けられる。このうち、今後迎える少子高齢化・人口減少の影響として、まず直接的には、労働力人口の減少を通じた労働投入量の減少が考えられる。次に、高齢化によって退職世代が増加することが予測でき、貯蓄を行う年齢層に比べ、取り崩す年齢層が増加することを通じて、一国全体の貯蓄が減少することが考えられる。これは投資に回る資金が減少することを意味し、将来の資本ストックの成長を阻害する可能性がある。
 このように、今後の少子高齢化・人口減少社会は、労働投入量の減少と資本ストック形成の阻害を通じて経済の供給側にマイナスの影響を与え得る。しかし、その影響の程度は、その国の経済成長の原動力が何であるかに依存する。例えば、労働集約的な経済であれば少子高齢化・人口減少による労働投入量の減少は、経済成長に大きくマイナスの影響を与え得るし、逆に資本集約的な経済では、労働投入量の減少ではなく資本ストックの形成阻害の影響の方が大きな影響を出すかもしれない。
 そこで、以下においては我が国における人口動態の変化による労働力の減少と貯蓄の減少が、経済の供給サイドへ及ぼす影響について検討を行う。

  〔1〕労働力の減少の経済的影響

(我が国の労働力人口の推移)
 まずはじめに我が国の労働力人口の推移を見ていこう。総務省「労働力調査」によると、我が国の労働力人口は1955年に4,194万人であったものが、総人口の増加に伴って1998年の6,793万人まで増加を続けてきた。しかし、この時期の景気の悪化等を受けて、1998年をピークに現在に至るまで減少に転じている。また、2002年の厚生労働省推計によれば、今後の労働力人口の推移は、高齢化と総人口の減少によって、2025年に6,296万人となり、1998年のピーク時から約500万人減少することとされる(第3-1-9図)。

 
第3-1-9図 労働力人口の推移

第3-1-9図 労働力人口の推移
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(戦後の我が国の経済成長の源泉)

 次に、これまでの我が国における労働力人口の増加と経済成長との関係を見ていく。第3-1-10図は実質GDP成長率と労働力人口増加率を時系列に比較したものである。GDP成長率は1960年に13.1%成長でピークを記録し、近年になるに従い徐々に成長率が低下傾向にある。他方、労働力人口は最も増加率が高かった1966年でも2.2%と比較的安定して推移しており、両者の間に明確な相関関係は見られない。このことから、過去の我が国の経済成長は、労働投入以外の寄与が大きかった可能性がある。 そこで、「成長会計」12の手法を用いて、経済成長を労働、資本、TFPの寄与に分解し、この点について確認する。第3-1-11図は1960年以降の我が国の経済成長について、5年間ごとに上記3要因について要因分解をしたものである。高度経済成長期後半に当たる1960年代後半を見ると、平均成長率12.0%のうち、資本の貢献が4.6%、TFPの貢献が5.7%、労働の貢献が1.6%となっており、労働の寄与は比較的小さかった反面、資本蓄積及びTFPの増加の寄与が大きかったと言える。一方、成長率が大きく低下した1990年代においては、労働者数の伸び悩みや1992年に制定された「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(時短法)」による労働時間の減少等の影響から、労働投入がマイナスに寄与している。しかしながら、経済成長率低下への寄与度という観点からは、やはり労働以外の資本とTFPの寄与度が低下したことの方が説明要因としては大きい。
 以上のことから、我が国経済においては、労働投入よりも、資本やTFPの増減の方がその経済成長の説明要因としては大きな影響を与えるものであったこと、すなわち、高度経済成長期の工業化を経た、現代のサービス経済の中においては、労働力の増加よりもむしろ資本蓄積や知的資産の活用等によるTFPの増加によって経済成長がもたらされているということが言える。このことは、労働力が減少しても、資本蓄積や知的資産の活用を通じて、それ以上に生産性を向上させることで、労働力減少分のマイナスを補うことができれば、今後とも経済成長を達成することが可能であることを示唆するものでもある。

 
第3-1-10図 実質GDP成長率と労働力人口増加率の関係

第3-1-10図 実質GDP成長率と労働力人口増加率の関係
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第3-1-11図 経済成長の要因分解

第3-1-11図 経済成長の要因分解
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12 「成長会計」は、生産物(経済全体で言えばGDP)の成長を、資本と労働という2つの「生産要素」の増大によって説明される部分と、それでは説明できない「全要素生産性(TFP:Total Factor Productivity)」による部分に分解し、それぞれが経済成長にどれだけ寄与したかを分析する手法である。


  〔2〕貯蓄率低下の経済的影響

 上記において、これまでの我が国の経済成長は、労働投入だけで規定されるものではなく、むしろ、資本蓄積とTFPの貢献が大きかったことについて見てきた。しかし、少子高齢化・人口減少は、労働力の減少にとどまらず、資本蓄積にも影響を与え得る。すなわち、「ライフサイクル・恒常所得仮説」13に従えば、一国全体の人口構成の高齢化は家計貯蓄率の低下をもたらし、その結果、将来的な資本蓄積を阻害する可能性がある。そこで、以下では貯蓄率の動向とその背後にある高齢化との関係について分析した上で、今後の我が国の資本蓄積の動向とその経済的影響について考察する。

(諸外国と比較した我が国の貯蓄率の動向)

 まず、我が国の一国全体の純貯蓄率(国内貯蓄率)の水準を先進7ヵ国の間で比較してみる。第3-1-12図を見ると、我が国の国内貯蓄率は1980年代までは16〜20%で推移しており、他の先進6ヵ国と比較して非常に高い水準であった。しかし、1990年代に入ると急激に国内貯蓄率は低下し、2000年には8.6%でカナダ(11.3%)に抜かれ、2001年には米国(3.4%)、英国(4.2%)、ドイツ(4.7%)に次ぐ低さの6.9%に低下している。我が国はもはや高貯蓄率の国ではなくなってきている。
 そこで、1990年代に入って、国内貯蓄率が急激に低下してきた背景を探るため、我が国の貯蓄の動向についてもう少し詳しく見ていこう。第3-1-13図は我が国の貯蓄主体を大きく家計部門、企業部門、一般政府部門に分けた上で、それぞれの純貯蓄額の推移について表したものである。家計部門の貯蓄額については、1980年代から1990年代初頭までおおむね順調に増加してきたものの、1991年の43兆2,086億円をピークに減少に転じ、2003年には22兆1,529億円と1991年の約半分の水準にまで低下している。一方、企業部門については、家計部門とは逆に1980年代から1990年代前半にかけて10兆円から20兆円の間で推移していたのに対し、1990年代後半以降は増加傾向にあり、2003年には33兆4,822億円にまで達している。政府部門については、1980年代後半にかけて増加基調にあったが、1991年の29兆6,531億円をピークに減少に転じ、1998年には3兆8,012億円の支出超過となり、2003年には超過規模が26兆1,762億円にまで拡大している。
 このように、各主体別に見ると、1990年以降の国内貯蓄率の低下については、家計と政府の貯蓄額の減少が影響している。他方、1990年以降は、我が国の高齢化が急速に進展した時期に当たり、家計と政府の貯蓄額の減少との間には何らかの関係があるように思われる。そこで、以下においては、家計部門と政府部門の貯蓄の減少を高齢化との関係で見ていくこととする。

 
第3-1-12図 先進諸国のGDPに占める純貯蓄の割合

第3-1-12図 先進諸国のGDPに占める純貯蓄の割合
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第3-1-13図 制度部門別純貯蓄額の推移

第3-1-13図 制度部門別純貯蓄額の推移
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(我が国におけるライフサイクル仮説の妥当性に関する検証)

 まずはじめに、家計貯蓄率について見ていこう。先述したライフサイクル・恒常所得仮説を前提とすれば、人口構成の高齢化によって相対的に貯蓄を取り崩す家計が増え、家計全体としての貯蓄率が低下することにより、国内貯蓄率が低下することとなる。そこではじめに、そもそも日本の家計にライフサイクル・恒常所得仮説が妥当しているか否かを検証する必要がある14
 ライフサイクル・恒常所得仮説の妥当性について検証するためには、理論的には年齢別の貯蓄率のデータを用いて、若年層の貯蓄と、高齢者の貯蓄取り崩しを示さねばならない。そこで、総務省統計局の「家計調査」を用いて各年齢ごとのフローの貯蓄率の推移を示したものが第3-1-14図である。これを見ると、1990年代後半まで60歳以上を除いて各年齢層とも家計貯蓄率は緩やかに上昇傾向にあり、近年は横ばいまたは緩やかに低下傾向にある。世代別に見ると、30歳代が最も貯蓄率が高く、年齢が高くなるにつれ、徐々に貯蓄率は低下していき、60歳以上になると急激に貯蓄率が低下していることがうかがえる。特に近年はこの傾向がより鮮明になっている。しかしながら、現時点でも高齢者は毎月の所得の10%以上を貯蓄しており、高齢者が貯蓄を取り崩している(貯蓄率がマイナスになっている)様子は見られない。これは、家計調査における年齢階級別貯蓄率の調査が勤労世帯を対象としていることから15、高齢者においても依然として働いて所得を得て、貯蓄を行っている世帯が調査対象となっているためである。そこで、1995年から家計調査年報に掲載された無職高齢者世帯の貯蓄率の動向について見てみると第3-1-15図のとおりである。貯蓄率は大きくマイナスを示しており、貯蓄を取り崩していることが分かる。
 これは、退職した高齢者が貯蓄を取り崩している状況を推測させるものであり、我が国においても一定程度ライフサイクル・恒常所得仮説が妥当している可能性を示している16。したがって、今後の少子高齢化・人口減少社会においては、高齢者の就業割合が増加しない限り、急速な高齢化は、高齢者の貯蓄が取り崩され、我が国の家計貯蓄率を押し下げる要因となり得る。

 
第3-1-14図 世帯主年齢階級別家計貯蓄率(勤労者世帯)

第3-1-14図 世帯主年齢階級別家計貯蓄率(勤労者世帯)
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第3-1-15図 無職の高齢者世帯の貯蓄動向

第3-1-15図 無職の高齢者世帯の貯蓄動向
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(我が国の高齢化と家計貯蓄率の関係について)

 以上のように、データの制約上ライフサイクル・恒常所得仮説が完全に妥当しているか否かについては結論に幅をもってとらえる必要があるものの、我が国においても今後の少子高齢化が一定程度家計貯蓄率を押し下げる説明要因となり得ることが分かった。それでは、その影響の程度はどのくらいなのだろうか。ここでは、1990年代以降の我が国の家計貯蓄率の低下に関して実証分析を行った古賀(2004)を紹介しながら、我が国の家計貯蓄率を変化させる要因について考察する。
 家計の消費・貯蓄行動を分析する理論的枠組みとしては、上記のライフサイクル・恒常所得仮説が主流であるが、これを基本としつつ所得の不確実性の上昇等の将来不安からくる予備的貯蓄17の存在も考慮する研究が最近では一般的となっている。
 古賀(2004)は、上記を踏まえ、所得不確実性下での家計の最適な行動と人口動態の変化を織り込んだモデルを用いて実証分析を行っている。具体的には、マクロの家計貯蓄率の変化を人口動態要因、一時所得要因、予備的貯蓄要因の3つの要因に分解した上で理論的に推計される家計貯蓄率18を用いて、それぞれの寄与について測定を行っている。まず、人口動態要因19としては、年齢層ごとに貯蓄行動が異なることから、少子高齢化により高齢者が増加することを通じてマクロの家計貯蓄率を低下する効果のみならず、若年層よりも高い貯蓄率をもつ中高年層の比率が増加することによって、マクロの家計貯蓄率を押し上げる効果があり、その双方を勘案する。すなわち、前者の効果が強ければ人口動態要因はマクロの家計貯蓄率を押し下げる方向に働き、後者が強ければ押し上げる効果を持つ。次に、一時所得要因20は、自らの能力に応じて将来にわたって得られるであろう平均的な所得(恒常所得)を上回るないし下回る所得を得た場合に、それが貯蓄に与える効果を勘案する。すなわち、景気の善し悪し等の変化によって所得が一時的に増減した場合に、個人の貯蓄行動にどのような影響を与えるかを示したものである。最後に予備的貯蓄要因21については、所得環境の悪化や所得の不確実性が高まると、将来に備えて貯蓄を行い、貯蓄率が高まる方向へ働く。
 以上のような枠組みで1990年代以降の我が国の家計貯蓄率の変動要因を見たものが第3-1-16図である。これは、家計貯蓄率への3つの要因を寄与度分解し、それぞれについて1990年第1四半期の水準に対する寄与度及び実際の家計貯蓄率を基準値とした時の、各期における基準値からの乖離幅をグラフにしたものである。これを見ると2002年第3四半期においては、高齢化を背景として人口動態要因は、1990年第1四半期と比べて家計貯蓄率を6.4%押し下げる要因となっている。他方、一時所得要因は1%前後の比較的軽微な寄与であるのに対し、経済低迷等による将来所得の不確実性を背景に予備的貯蓄要因は2002年第3四半期で貯蓄率を2.5%押し上げており、足下の貯蓄率の下支え要因として働いていることが分かる。
 以上より、家計貯蓄率については、景気動向や将来所得の不確実性による予備的貯蓄動機を勘案しなければならないものの、今後の高齢化により低下する可能性があることを示している。

 
第3-1-16図 家計貯蓄率低下の要因分解

第3-1-16図 家計貯蓄率低下の要因分解
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(高齢化の進展と政府部門の支出超過)

 次に、政府部門の貯蓄について見ていく。第3-1-17図は政府の部門別財政収支について見たものである。地方を含めた一般政府全体では、1980年代後半からの税収増や財政再建によって一時貯蓄超過(財政黒字)となったが、バブル崩壊とその後の景気低迷や減税等により歳入が減少したこと及び数度にわたる景気対策の実施と急速な高齢化による社会保障費の増大等によって歳出が増大した結果、1992年度以降再び投資超過(財政赤字)に転じて、近年その赤字幅は拡大傾向にある(2002年度:GDP比−8.2%)。一般政府について、中央政府、地方政府、社会保障基金に分けてそれぞれの動向を見てみると、中央政府及び地方政府の収支が大きく悪化するとともに、これまで一貫して貯蓄超過主体であった社会保障基金が2001年度にはGDP比−0.1%と投資超過主体へ転じた22
 社会保障基金の収支悪化の原因としては、1990年代以降の急激な高齢化による社会保障給付の増大等が考えられる。第3-1-18図に示すとおり、社会保障給付を医療、年金、福祉その他の3部門に分類してそれぞれの給付総額の推移を見てみると、医療給付及び年金給付が1990年代前半まで総人口に占める65歳以上人口の割合の増加とともに増加してきたことが分かる。他方、1990年代後半について見てみると、医療給付については、医療制度改革の進展もあり、伸びは緩やかになっている。年金給付については高齢化が進展するのと軌を一にして増加傾向にあるが、2004年に、長期的な給付と負担の均衡を確保し、社会経済と調和した持続可能な制度を構築するための制度改正を行ったところであり、マクロで見た年金給付費の経済に占める規模は、おおむね横ばいになると見込まれている。仮に、一般政府全体の歳入歳出構造が現状のまま推移するとともに、今後の更なる高齢化の進展に伴う社会保障給付の増大等によって社会保障基金の収支が悪化した場合、一般政府の財政赤字が更に拡大することでマクロの国内貯蓄率を一層押し下げる圧力となり得る。このことは、投資資金の制約を通じて資本ストック形成を阻害する可能性がある。
 以上見てきたように、家計貯蓄率については、短期的には景気変動や予備的貯蓄によって左右されるものの、急速な高齢化は長期的には家計貯蓄率を押し下げる可能性がある。また政府については、中央政府における歳入歳出の不均衡や高齢化等に伴う社会保障基金の収支悪化等によって財政赤字が増大すると、投資超過を拡大させる圧力となり得ることが分かった。
 なお、国内貯蓄が高齢化による影響で減少した場合でも、海外からの資金流入により必要な資本は確保できるとの考え方もある。しかしながら、我が国の国内総資本形成に占める対内直接投資の割合は2003年で0.58%と、他の先進国と比較して非常に小さいことが分かる(第3-1-19表)。すなわち、我が国においては、依然として国内資本ストック形成の動向は国内貯蓄の動向に規定されている。今後海外から資金を惹きつける投資先としての魅力を高める等、対内直接投資を活性化させない限り、今後の少子高齢化・人口減少社会においては、中長期的に投資抑制を通じて経済成長が阻害される可能性がある。

 
第3-1-17図 一般政府の部門別財政収支

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第3-1-18図 部門別社会保障給付と65歳以上人口比率の推移

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第3-1-19表 国内総資本形成に占める対内直接投資の割合

第3-1-19表 国内総資本形成に占める対内直接投資の割合
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13 家計の消費・貯蓄行動を現時点の所得だけにとどめず、より長期的な観点で説明しようとする代表的な経済理論に「ライフサイクル仮説」と「恒常所得仮説」とがある。「ライフサイクル仮説」とは、フランコ・モジリアニ、R.ブランバーク、アルバート安藤によって唱えられたもので、個人の消費行動は今期の所得によって決められるというよりも、生涯所得の大きさによって決められるとされ、現役世代は働いて得た所得の一部を貯蓄に回し、退職後にその貯蓄を取り崩して消費するとする仮説である。同様の考え方に基づくものとして、ミルトン・フリードマンによる「恒常所得仮説」がある。この考え方では、所得を将来の自己の所得稼得能力に基づく「恒常所得」と、景気等によって変動する「一時所得」に分け、個人の消費は「恒常所得」に依存するとするものである。本書においては、両者をまとめて「ライフサイクル・恒常所得仮説」と呼ぶ。
14 以下、我が国におけるライフサイクル仮説の妥当性に関する検証についてはHorioka(2004)を適宜参照した。
15 この他の理由として、例えばHorioka(2004)は、「家計調査」の対象範囲や調査方法について、[1]調査対象が世帯単位であり、個人ではないこと、[2]年齢別貯蓄率データは世帯主の年齢で区分けされること、という特徴があるためと考えられる。
16 他方で、Hayashi(1986)は、たとえ貯蓄率がマイナスになっていても、それは生前贈与や遺産等の世代間移転によるものであり、自らのために取り崩したのではない可能性があり、ライフサイクル・恒常所得仮説を証明したことにはならないと指摘しており、結論については幅をもって解釈する必要がある。
17 予備的貯蓄とは、「将来所得に不確実性がある場合に、確実な時に比べて多く保有する貯蓄」のことである。
18 古賀(2004)で推計された理論上の家計貯蓄率と国民経済計算(93SNA)上で得られる家計貯蓄率の実績値の間にはかなりの整合性が見られることから(古賀(2004)中図表6を参照)、ここでは実績値と3要因の寄与度について比較することとした。
19 人口動態要因については、脚注15で示したように、年齢層ごとの貯蓄率のデータに制約があることから、あらかじめ代表的個人について山型の貯蓄率のライフサイクルカーブを仮定し、モデル内で当該仮定が妥当するかについて事後的に検証している。その結果、当該仮定が妥当するという結論を得ることができた。
20 一時所得要因については、可処分所得を国民経済計算の可処分所得を利用し、恒常所得を雇用者報酬を用いて推計した。
21 予備的貯蓄要因については、内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数を用いた。
22 なお、直近の2003年度では、社会保障基金は0.2%とわずかながら再度貯蓄超過主体へ転じている。


 第1節 少子高齢化・人口減少社会と知的資産・人材の重要性

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