第1章 国際経済の動向と構造変化 |
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コラム 1
石油依存型経済からの脱却に向けた取組と課題〜サウジアラビアとアラブ首長国連邦の経済動向〜 産油国は、石油輸出収入の拡大もあり、景気を拡大させている。一方で産油国経済については、〔1〕石油(天然ガス)依存型経済となっており、原油の国際市況に景気が大きく左右されやすい構造となっていること、〔2〕石油(天然ガス)部門以外の産業が十分に育っていないこと17、等の課題が指摘されている(コラム第1-1図)。
17 原油等天然資源が将来的にも枯渇しなければ問題は生じないが、実際には、資源は有限であることから、天然資源部門以外の産業基盤が育っていない場合、天然資源が枯渇すると経済に大きな影響を与えることとなる。こうした状況を経済学において、「オランダ病」と称することもある。
コラム第1-1図 サウジアラビア、アラブ首長国連邦の産業別経済成長への寄与度
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こうした産油国経済の抱える課題を踏まえ、このコラムでは、我が国の原油輸入の大宗を占め、我が国とのEPA/FTA交渉が開始される予定となっている湾岸協力会議(GCC)の中心であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の経済動向について見ていくこととしよう。 (産油国の産業多角化に向けた取組) サウジアラビアとアラブ首長国連邦では、安定的な経済成長を持続させていくため、石油依存型経済からの脱却を進めている。 サウジアラビアは、石油依存型経済からの脱却と工業化推進の柱として、石油化学産業の発展を進めている。1976年に創設されたサウジアラビア基礎産業公社(SABIC)は世界でも有数の石油化学事業会社となり、中東における非石油部門の最大収益を誇っている18。サウジアラビアの石油化学産業は、足下での景気の拡大から、新規・拡張計画が目白押しとなっており、我が国企業の受注も増加している19。
18 ポリエチレンでは世界第3位、ポリプロピレンでは世界第6位の生産量となっている(2004年)。
19 サウジアラビア投資庁によれば、2000年4月10日から2005年11月15日までの認可額で日本は全世界の中で第1位(484億リヤル、第2位は米国(187億リヤル))となっている。 アラブ首長国連邦は、首長国ごとに独自の経済政策を展開している。アブダビ首長国は石油資源を豊富に有しており、製造業でも石油化学部門が中心となっている。他方、ドバイ首長国は人口が少なく、石油資源にあまり恵まれない中東諸国のお手本ともいえる「ドバイ型経済発展モデル」を着実に進めつつある。ドバイ首長国では、1985年にジュベル・アリ自由貿易区を設け、他の湾岸諸国やアフリカ等の物流の窓口としての機能を果たすとともに、世界的なe−コマースの拠点を目指すドバイ・インターネット・シティ等の構想を次々と実現させている。さらに、2005年9月にはドバイ国際金融センターを公式に開設し、物流のみならず、バーレーンに代わる中東での金融拠点への飛躍も企図している20。
20 World Bank(2005)「Middle East and North Africa」(『Economic Development and Prospects 2005』)。
こうしたサウジアラビアやアラブ首長国連邦における産業多角化の動きは、急速な人口の増加が予想され(コラム第1-2図)、雇用吸収能力を有する産業の育成が急務となっていることから、更に加速化していくと考えられる。
コラム第1-2図 サウジアラビア、アラブ首長国連邦の人口の推移予測
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(グローバル化への対応を進める産油国) サウジアラビアやアラブ首長国連邦では、産業多角化を進める一環として、グローバル化への対応も進めている。 サウジアラビアでは、2000年に外国投資法の改正、サウジアラビア投資庁の設置等、投資環境を大幅に改善するとともに、2005年12月のWTO加盟に際し、輸入関税率の低減21、サービス部門の開放を約束している22。アラブ首長国連邦でも、フリーゾーン区域においては徹底した自由化・開放政策を進めている反面、フリーゾーン区域以外では外資比率を49%以下に制限していたが、現在70%まで引き上げることを検討している23。
21 関税率は農産物で平均12.4%、農産物以外は平均10.5%に低減。
22 保険、銀行、通信、卸・小売部門の開放を約束。 23 石油資源を豊富に有し、石油輸出により莫大な収入が得られるアブダビ首長国は外資導入に消極的な一方、ドバイ首長国は外資の導入に積極的である等アラブ首長国内でも温度差がある。 また、サウジアラビアやアラブ首長国連邦では、他の湾岸諸国とともに、2003年にGCC関税同盟に合意24、2010年の通貨統合を目指しており25、共通経済圏の確立に向けて進んでいる。こうした共通経済圏の形成によりGCC諸国は交渉力を強化しつつ、現在、EU、中国、インド等との間のFTA交渉を進めている。また、バーレーン、オマーン、アラブ首長国連邦は個別に米国とのFTAを進めつつある26。我が国も、既にGCCとのFTA交渉を開始することに合意している。
24 2004年1月1日から対外共通関税として5%を導入、GCC域内貿易の関税を原則として廃止した。
25 通貨統合の条件について2005年12月のGCC首脳会議で合意。 26 バーレーンは既に調印・批准、オマーンは調印、アラブ首長国連邦は現在交渉中。 他方、世界的な水準から見れば、依然として産油国への海外からの直接投資は低い水準にとどまっている27。この背景として、産油国経済における公的部門の役割が大きく、外資を含む民間への開放が十分に進んでいないことが考えられる。そのため、サウジアラビア、アラブ首長国連邦においては、現在進められている公的部門の民営化や外資を含む民間への開放をこれまで以上に進めることが、グローバル化を進める鍵となっている。
27 World Bank(2005)「Middle East and North Africa」(『Economic Development and Prospects 2005』)。
公的部門の民営化や外資への開放は、〔1〕石油収入資金の投資機会の創出、〔2〕外資の有する最新の技術へのアクセス機会の付与、を通じて石油産業以外の産業の発展につながるとともに、経済の安定に伴う上流開発投資の安定も期待される。 以上のような産油国の動きに対応して、我が国としてもGCCとのFTA交渉を推進していくとともに、EPAや二国間での経済関係を強化する取組を進め、貿易・投資環境の整備を進めていくことが、エネルギーの安定供給のみならず、我が国企業のビジネスチャンスを拡大する面からも重要となっている28。
28 既に、産油国の市場を目指した進出は始めている事例もある。例えば、サウジアラビアの保険業については外資参入規制対象(「ネガティブリスト」対象業種)だったが、2003年2月から外資の参入が認められたことを受け、2005年3月に日系企業が進出している。
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第3節 原油価格上昇・高止まりがもたらす新たな国際経済の構図 |
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