第2章 「アジア・ダイナミズム」と国際事業ネットワークの形成 |
(4)為替制度の柔軟化が進んだ場合の人民元レートと経済に与える影響
(為替制度の柔軟化が進んだ場合の人民元レート)
為替レートは、市場の需給に基づいた自由な取引が認められていれば、経済成長や物価・金利動向等経済ファンダメンタルズや政治的・社会的要因等様々な動機に基づく取引で決定される。そのため、中国において今後、為替制度が一層柔軟化した場合であっても、人民元レートがどのような水準となるか予測することは困難である。例えば、全米製造業者協会では、人民元は対ドルレートで約40%過小評価されていると主張している一方、相対的購買力平価仮説106を用いた研究では、1995年を基準に2003年時点で約7.3%過小評価されているとの推計107もある等、人民元レートの評価においても大きなかい離が存在しており、また経済ファンダメンタルズの変化等によっては、逆に減価の可能性も否定できず、人民元のレートの水準、その動きの方向について、一概に見通しを述べることは困難である。
他方、人民元の対ドルレートが増価しても、ドルとの連動性が高い状態では、国際的な外国為替取引における円ドルレート、ユーロドルレート等の影響を大きく受けることとなるため、必ずしも、円やユーロに対して人民元が増価するとは限らないことに留意が必要である。
(マクロ経済への影響)
人民元の増価による影響については、10%増価した場合には、中国GDPに対して1.9%、20%増価した場合には3.9%押し下げる効果があるとの試算がある。一方で、アジア経済について見ると、マレーシアのみがマイナスの影響を受けると試算されているものの、他の国では、輸出市場での中国の競争力の相対的な低下によりプラスの影響を与えると試算されている(第2-3-71表)。
第2-3-71表 人民元切り上げによるアジア各国への影響試算
(中国進出日系現地法人に与える影響)
中国に進出している日系現地法人(製造業)に与える影響について見ると、業種によって異なる影響があると見込まれる。
人民元が切り上げられた場合、中国進出日系現地法人への影響として、プラスの面では輸入価格の低下による調達コストの削減、マイナスの面としては、中国から輸出している製品の価格競争力の低下が考えられる。
人民元が切り上がった時の影響を、輸出入数量、コスト、売上構造に変化がないと仮定した上で試算すると、為替差益と為替差損を考えることができる。そこで業種別に為替差益と為替差損を試算し、両方合わせた影響を観察すると、鉄鋼や化学等の素材型産業、国際事業ネットワークの進展が見られる電気機械、現地販売の大きい輸送機械ではプラス、我が国向け輸出が売上高の大部を占める繊維においてはマイナス、製造業全体で見ると若干のマイナスの影響が想定されるという結果が得られる(第2-3-72図)。
第2-3-72図 人民元が20%増価した場合の日系現地法人に与える影響(2003年度)
第3節 国際事業ネットワーク形成における進出先としての中国とASEAN4の経済環境と投資・事業環境 |