第3章 「持続する成長力」のために取り組むべき課題 

(2)経常収支発展段階説から見た所得収支の拡大

 近年の我が国の所得収支の増加については、経常収支発展段階説によって説明することができる。
 経常収支発展段階説7とは、各国の国際収支構造を、〔1〕債権国(所得収支がプラス)か債務国(所得収支がマイナス)か、〔2〕資本輸入国(資本収支がプラス)か資本輸出国(資本収支がマイナス)か、という2つの基準を主に用い、国際収支の発展段階によって6段階に分けたものである8(第3-4-5表)。

7 Crowther(1957)「Balance and Imbalances of Payments」による分類。この分類によれば、本節で比較した英国、米国は「成熟した債権国」〜「債権取崩国」の位置にある。
8 ただし、Crowtherもある程度循環的にとらえており、第六段階の債権取崩し国は一国の経済発展の終焉を意味していない。


 これによれば、我が国は貿易・サービス収支、所得収支ともに黒字であり、資本収支が赤字であることから、第四段階の「未成熟な債権国」の位置にある。今後は、〔1〕人件費を中心としたコスト増から自国製品の国際競争力は減退し、貿易・サービス黒字は減少、〔2〕過去に蓄積した経常黒字による海外資産の増加効果から所得収支は増加、〔3〕資本収支は経常収支の黒字幅減少により赤字幅を減少、という動きにより、第五段階の「成熟した債権国」に移行していくとされる(第3-4-5表)。
 
第3-4-5表 経常収支発展段階説
第3-4-5表 経常収支発展段階説


 実際、第3-4-1図に示したとおり、我が国の貿易黒字幅は徐々に減少し、逆に所得収支は徐々に増加している。また、将来に向けても、アジアを中心とした海外投資は今後とも拡大が予想される。

 第4節 「投資立国」の実現に向けて 〜「単線的」構造から「複線的」構造へ〜

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