第1章
世界経済の現状と今後の課題(持続的成長に向けて)
第4節
高成長を遂げるインド経済

1.特異な経済成長を遂げるインド経済の特徴と課題

 インド経済は、1990年のイラクのクウェート侵攻に伴う原油価格の高騰及び中東への海外出稼ぎ者による送金減少などの影響から、外貨準備が輸入の約2週間分まで減少するという深刻な国際収支危機に見舞われたことを契機として、1991年から経済自由化路線へ変更する経済改革を開始した。具体的には、国内における産業規制の緩和や、貿易・諸外国からの投資の自由化を徐々に進展させ、高い経済成長を実現してきた。その成長過程は、ソフトウエアやITサービス事業といった最先端分野での存在感を急速に増大させるなど、これまでの東アジア諸国の経済成長とは異なる様相を見せている面もある。以下では、インドの経済成長の特徴及びその成長を持続的なものとするための課題を見ることで、その実像を明らかにしていく。

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(1)世界経済における存在感を徐々に高めるインド経済

 インドは1991年の経済改革以降、おおむね高い経済成長を実現している。2005年の名目GDPでは7,854億ドルと米国の約17分の1、日本の約6分の1にすぎないものの、購買力平価1ベースで見れば、2005年時点で米国、中国、日本に次ぐ、世界第4位の規模となっている(第1-4-1図)。

1 購買力平価とは、実際の購買力に即した比較を行うために、一物一価の考えに則り、同じ物・サービスを同価格とした為替レートにて評価し直すこと。名目GDPの比較には、名目為替レートを使用してドル換算を行うが、同じ1ドルでも国・地域によって購買力に差があるため、自国通貨が強い国・地域のGDPは過大評価される。従って、ここでは可能な限り、実際の購買力に即した比較を行うために購買力平価ベースのGDPを使用した。
 
第1-4-1図 各国のGDPの推移(購買力平価ベース)
第1-4-1図 各国のGDPの推移(購買力平価ベース)
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 人口規模の面では、国連統計によると2005年時点で、インドの人口は11.3億人と、世界人口の17.4%を占め、中国の13.1億人に次ぐ世界第2位である。将来的に見ても、同じく国連統計の中位推計の予測では、2025年時点でインドの人口は14.47億人と中国の14.45億人を上回り、世界人口に占める構成比も18.1%に拡大することが見込まれている。さらに、その人口構成を見ると、「一人っ子政策」を採ってきた中国が急速に高齢化するのとは対照的に、インドの高齢化の進展は緩やかである(第1-4-2図)。このことは、15歳〜64歳の生産年齢人口の比率が長期的に拡大していくことを意味し、今後も豊富な労働力が供給され続け、その存在感が増大していくと考えられる。
 
第1-4-2図 インド・中国・日本の生産年齢人口比率の推移
第1-4-2図 インド・中国・日本の生産年齢人口比率の推移
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(2)サービス産業がけん引し成長を遂げるインド経済

 インドの経済成長における産業別寄与度を見ると、商業、運輸、金融、社会・個人向けサービスといったサービス産業がけん引していることが分かる(第1-4-3図)。
 
第1-4-3図 インドの実質GDP成長率(産業別寄与度)の推移
第1-4-3図 インドの実質GDP成長率(産業別寄与度)の推移
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 サービス産業の発展は、インドの経常収支にも表れている。貿易収支では赤字が継続している一方、サービス収支の黒字幅は拡大しており、サービス産業は貿易収支の赤字を補う貴重な外貨獲得手段としてもインド経済に寄与している(第1-4-4図)。
 
第1-4-4図 インドの経常収支の推移
第1-4-4図 インドの経常収支の推移
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 こうしたサービス産業中心の経済成長を遂げるインドの産業構造をその他の東アジア諸国と比較すると、中国・ASEAN諸国では、概して農林水産業の割合が減少することに伴い鉱工業の割合が徐々に高くなっているのに対して、インドは、鉱工業の割合が20%台にとどまる一方、サービス産業の割合が50%を超えており、発展途上国としては特異な構造となっている(第1-4-5図)。
 
第1-4-5図 インド・中国・ASEAN・日本の産業構造
第1-4-5図 インド・中国・ASEAN・日本の産業構造
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(3)内需中心の経済成長
(外需や投資主導の中国・ASEANに比べて内需主導のインド経済)

 インドの経済成長を需要項目の面から見ると、1991年の経済改革以降、輸出・総固定資本形成の対GDP比率が上昇してきているものの、2004年時点でも家計消費が対GDP比で61%を占めており、内需主導での成長を果たしていることが分かる(第1-4-6図)。
 
第1-4-6図 インド・中国・ASEAN・日本の家計消費・総固定資本形成・輸出の対GDP比の推移
第1-4-6図 インド・中国・ASEAN・日本の家計消費・総固定資本形成・輸出の対GDP比の推移
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 これは、中国が輸出・総固定資本形成が同37.6%、同38.5%となっており、外需と投資を中心とした成長を遂げていること、また、ASEAN諸国がアジア通貨・金融危機の影響もあり総固定資本形成が同20%前後と低迷する中で、輸出は同40%以上の水準を保ち、外需を中心とした発展を遂げていることと対照的である。
 また、中国、ASEAN4が経済成長を遂げる過程で外資を積極的に取り込んできたことに比べ、インドの直接投資の受入れは、対外開放の進捗に伴い近年上昇しているものの、その経済規模に対比して低水準である(第1-4-7図)。
 
第1-4-7図 インド・中国・ASEAN4の対内直接投資の対名目GDP比率の推移
第1-4-7図 インド・中国・ASEAN4の対内直接投資の対名目GDP比率の推移
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(経済成長に伴う市場の拡大)
 こうした内需主導の経済成長を支える消費者層の拡大については、経済成長に伴い年間の世帯収入が90,000ルピー(約1,850ドル2)を超える中所得層以上が占める割合が1995年度の9.5%から2001年度には28%まで拡大しており、いわゆる中間層が増大していることが分かる(第1-4-8図)。

2 2002年3月29日時点の為替レートである1ドル=48.7ルピーで換算。
 
第1-4-8図 インドの所得別世帯構成比の推移
第1-4-8図 インドの所得別世帯構成比の推移
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 次に、所得の伸びに伴う消費支出拡大をけん引している層を確認するため、2004年度の都市部における産業別世帯1人当たりの月間消費支出の分布を見ると、IT関連産業に代表されるサービス業及び製造業に従事する世帯において消費支出の多い層の割合が比較的高く、こうした業種の就業者が、好調な消費をけん引していると考えられる(第1-4-9図)。

 
第1-4-9図 インドにおける産業別世帯1人当たり月間消費支出内訳(都市部<2004年度>)
第1-4-9図 インドにおける産業別世帯1人当たり月間消費支出内訳(都市部<2004年度>)
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 また、消費支出の内訳の推移を見ると、特に都市部を中心として財・サービスに対する消費市場が拡大していることがうかがえる(第1-4-10図)。
 
第1-4-10図 インドにおける1人当たり月額消費支出の内訳の推移
第1-4-10図 インドにおける1人当たり月額消費支出の内訳の推移

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 また、消費市場の拡大は、インドにおける自動車及び二輪車の販売台数の増加や、携帯電話の加入者数が近年急速に拡大していることなどにも表れている(第1-4-11図、第1-4-12図)。具体的には、インドの国内自動車販売台数は、2001年度の82万台から2006年度には185万台と2倍以上になっており、大幅な伸びを示している。また、携帯電話加入者数は、2006年12月時点で1億人の大台を突破し、中国、米国に次ぐ世界第3位となるなど、世界でも有数の市場となっている。
 
第1-4-11図 インドの自動車・二輪車販売台数の推移
第1-4-11図 インドの自動車・二輪車販売台数の推移
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第1-4-12図 インドの携帯電話契約者数の推移
第1-4-12図 インドの携帯電話契約者数の推移
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 耐久消費財については、保有世帯比率が順調に増大しているものの、2005年度時点で保有比率は、自動車が約5%、カラーテレビが約20%と水準はいまだ低く、潜在的な市場拡大の余地は大きいと言える(第1-4-13図)。
 
第1-4-13図 インドの耐久消費財の所有世帯数(100世帯当たり)の推移
第1-4-13図 インドの耐久消費財の所有世帯数(100世帯当たり)の推移
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(4)セクター別に見たサービス産業の成長
(各セクターが成長に寄与)

 インドの経済成長をけん引しているサービス産業について、各セクター別の経済成長への寄与度を分析すると、2000年度以降、ごく一部の例外を除き、一貫して各セクターが成長に寄与しており、特に、商業、運輸、通信、ビジネス向けサービスなどの寄与が大きい(第1-4-14図)。
 
第1-4-14図 インドの第三次産業のGDP成長に対するセクター別寄与度の推移
第1-4-14図 インドの第三次産業のGDP成長に対するセクター別寄与度の推移
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(経済成長とともに拡大するサービス需要)
 サービス産業の成長の背景について、まず、需要面から見ると、経済成長に伴う貿易取引の拡大や国内外での人の移動の増大などを反映し、港湾でのコンテナ取扱量が2000年以降年平均13.8%で拡大しているほか、航空旅客数も2002年以降年平均21.1%で増大しているなど、運輸関連のサービス需要が大幅に拡大している(第1-4-15図、第1-4-16図)。
 
第1-4-15図 インドの港湾コンテナ取扱量の推移
第1-4-15図 インドの港湾コンテナ取扱量の推移
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第1-4-16図 インドの航空利用客数の推移
第1-4-16図 インドの航空利用客数の推移
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 欧米を中心としたインドからの調達の拡大に伴い、コールセンター業務に代表されるビジネスプロセス・アウトソーシング事業、ソフトウエアの委託開発事業などといったIT関連産業も、急速に売上高を伸ばしている。このIT関連産業は、2004年度時点で対GDP比4.5%程度の売上高ではあるものの、財・サービス輸出の約4分の1を占めるなど貴重な外貨獲得産業となっている。さらに、IT関連産業の売上高の拡大は、通信分野の需要増大にも寄与している面もある(第1-4-17図)。
 
第1-4-17図 インドのIT産業売上高及び対GDP比の推移
第1-4-17図 インドのIT産業売上高及び対GDP比の推移
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 また、企業のサービス需要の拡大とともに、先に述べたように、所得の向上に伴う財やサービスに対する家計の需要も高まっており、商業や対個人向けサービスの成長にも寄与していると考えられる。実際、小規模事業者が大多数を占めているインドの小売業界において、近年、デリー、ムンバイといった大都市圏で大型のショッピングモールも開設され始めるなど新たなサービス形態が誕生しており、商業分野の発展の様子がうかがえる。

(サービスセクターの効率化の進展)
 次にこうした需要面の拡大とともに、サービス産業の成長に対し、規制緩和の進捗などによる供給側の効率化の進展が寄与していることを見ていく。
 サービス産業の成長を、資本投入、労働投入、全要素生産性(TFP)に分けてその推移を見ると、全要素生産性の向上が大きく、規制緩和の進展やそれに伴う新たなサービス形態の導入などが成長に寄与していると考えられる(第1-4-18図)。
 
第1-4-18図 インドのサービス産業成長の要因分解
第1-4-18図 インドのサービス産業成長の要因分解
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 例えば、通信分野は従来国営企業によって担われてきたが、1994年に携帯電話市場3、1998年にインターネット市場4への民間企業の参入が認められるなど、一連の規制緩和が進展した。2006年4月末時点で携帯電話市場では外資を含む民間10社、国有系2社がサービスを提供しており、新規参入企業が活発な事業展開を行うことで、サービス料金が1分間の通話が1セントと言われるほど低下し、インド政府が2015年に5億件の契約を目標にしている利用者も、2006年11月の月間増加数が680万件となるなど、世界最大の大幅な増加件数を示している。その結果、加入者数が2006年末時点で1億4,950万件に達している。
 こうした規制緩和等により、サービス産業のGDPに占める公的部門のシェアは、年々低下しており、1993年度と比較した2004年度の公的部門シェアの低下の状況は第一次産業、第二次産業よりも著しい(第1-4-19図)。これは、非効率な国営企業の民営化の進展や規制緩和による民間企業の参入の結果であり、このことが、サービス産業における効率化を進め、生産性の向上につながっていると考えられる。

3 1994年の国家通信政策(National Telecom Policy1994:NTP)で新規に民間企業(外資の上限49%)の参入を許可した。その後、通信事業者への外資規制を緩和し、2005年には上限が49%から74%に変更された。
4 1998年のISP政策(Internet Service Provider Policy)で新規参入を許可し、国有系会社による独占体制を廃止した。
 
第1-4-19図 インドの産業別公共部門のシェアの推移
第1-4-19図 インドの産業別公共部門のシェアの推移
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(5)インド製造業の動向

(製造業の成長の停滞要因)
 先に述べたようにインド経済は、その他の東アジア諸国に比べ、GDPに占める製造業の割合が低いまま、経済の高成長を実現してきている。この背景としては、1991年まで続いた混合経済体制5の下で、輸入代替工業化を基本とする公共部門主導の硬直的な工業化政策を採ってきたことの影響が大きいと指摘されている。特に、大規模な民間企業は、産業ライセンス制度によって硬直的で厳しい許認可行政の対象とされた一方、小規模工業部門(SSI:Small Scale Industries6)は、当該規制の対象外とされ、税制上の恩典、政府調達、金融面などで様々な優遇措置が受けられるものとされた。さらに、「留保制度」によって、特定品目を小規模工業のみの生産に指定し、大規模企業の参入を排除した。こうした小規模企業優先の硬直的な規制・制度は、民間大企業の成長を歪めるとともに、過度に保護された小規模工業部門が、その資本の上限枠を超える設備投資による生産の拡大や生産性の向上へのインセンティブを阻害する結果となった。

(製造業の成長率も近年再上昇)
 1991年以降の経済改革で、産業ライセンス制度の廃止、輸出入の自由化、対内投資に関わる外資規制の緩和が進展したことなどに伴い、耐久消費財産業を中心に投資が増大し、製造業も高成長を実現した。ただし、1990年代後半になると、内販が想定した程に拡大しなかったことなどの影響から、結果として過剰設備となり、その後成長率は低下していた(第1-4-20図、第1-4-21図)。

5 混合経済体制とは、市場経済を基本としつつも、政府が大規模かつ積極的に市場経済に介入する当時のインド経済体制を示す表現である。
6 インドでは、工場や機械への投資額1,000万ルピー以下の企業をSSIと分類。
 
第1-4-20図 インドの農林水産業・製造業・サービス業の成長率の推移
第1-4-20図 インドの農林水産業・製造業・サービス業の成長率の推移
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第1-4-21図 インドの産業別の総資本形成の推移
第1-4-21図 インドの産業別の総資本形成の推移
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 しかしながら、先に述べたように、近年の堅調な消費市場の拡大や更なる自由化の進展などを受け、投資額を見ても2002年度以降回復し生産能力を高めつつあり、成長率についても再度上昇傾向となっている。実際に製薬・バイオ産業、鉄鋼業などで国際的にも競争力のある企業も出てきている。
 また、インド政府としても、2007年1月に発表した自動車産業の長期ビジョン(Automotive Mission Plan 2006-2016)において特別自動車部品工業団地・経済特区(SEZ)の設立促進や、より柔軟な雇用形態の実現に向けた労働法改正に言及するほか、同年3月には半導体製造のプロジェクトに対して総コストの25%(SEZ立地の場合は20%)を当初10年間にわたって負担するなどの特別優遇措置の実施を正式通達するなど、製造業の強化に向けた産業振興策を実施している。

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(6)持続的な成長に向けた課題

 ここまで、経済改革以降のインド経済の高成長について概観してきたが、引き続き高成長を持続していくためには解決すべき様々な課題がある。ここでは、〔1〕事業環境面での課題、〔2〕貧困問題、〔3〕財政赤字について見ていく。
〔1〕事業環境面での課題

 インドの製造業及びサービス業の更なる成長のためには、新たな技術・マネジメント手法等をもたらす外資系企業の誘致が重要であるが、インドは事業環境面で種々の課題を指摘されている。具体的に我が国企業が直面している課題を見ると、半数の企業がインフラの未整備を挙げているほか、法制面や労務面などの課題を指摘している(第1-4-22表)。
 
第1-4-22表 インドのビジネス環境の課題
第1-4-22表 インドのビジネス環境の課題
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(インフラの未整備)
 電力については、電力コストが割高であるとともに、電力供給そのものが不足している。ピーク時電力の需給ギャップを見ると、近年では改善傾向にあるものの、2005年12月時点で不足率が10.5%となっており、経済成長に伴う需要の伸びに供給が追いついていない状況である(第1-4-23図)。加えて、電力供給が不安定な要因として「送電ロス」が挙げられる。送電線網の老朽化などにより、送配電ロスは約3割に及んでおり、供給能力の向上とともに、こうした老朽化設備の改修も重要な課題となっている(第1-4-24図)。
 
第1-4-23図 インドのピーク時電力需給ギャップの推移
第1-4-23図 インドのピーク時電力需給ギャップの推移
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第1-4-24図 インド・中国・ASEAN4の送配電ロス率
第1-4-24図 インド・中国・ASEAN4の送配電ロス率
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 次に道路について見ると、道路輸送は最も代表的な輸送手段として、貨物輸送の約65%、旅客輸送の約80%を担っている7とされ、総延長距離が331万6,452kmと世界第2位の規模を誇るものの、概して車線数が少なく、維持管理に大きな問題があるとされている(第1-4-25表)。インド政府としても、主要都市を結ぶ「黄金の四角形(Golden Quadrilateral)8」と「南北回廊(North-South Corridors)と東西回廊(East-West Corridors)9」プロジェクトのもとで、複数車線化など改善に努めているが、増大する物流需要を支えるにはいまだ不十分と言われている。

7 National Highway Authority of India Webサイト。
8 デリー、コルカタ、チェンナイ、ムンバイの四大都市を結ぶ全長5,846kmの道路の複数車線化事業。
9 南北回廊(カシミール州スリナガル〜タミルナードゥ州コモリン岬)と東西回廊(グジャラート州ポールバンダル〜アッサム州シルチャル)の全長7,300kmの道路の複数車線化事業。
 
第1-4-25表 インドの国道の車線数
第1-4-25表 インドの国道の車線数
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(法制面の課題)
 法制面では、NOC(Non Objection Certificate)規制がある。当該規制は、既にインド企業と合弁・技術提携・商標契約を行っている外国企業が、同一業種で新たに会社を設立する場合や新契約を結ぶ場合は、提携先の同意が必要とすることを規定したものである。2005年1月の改正によって、新規進出の外国企業の場合は契約書に同意条項がない限り適用されないなどの一定の改善がなされたものの、既進出企業に対するメリットは少なく、インドにおける外資系企業の事業活動を阻害する一つの課題として指摘されている。
 また、硬直的な労働法制も課題として挙げられている。具体的には、現状のインドの労働法では、100人以上の従業員を雇用している企業が事業所を閉鎖する場合、州政府の許可取得が求められているため、撤退時の困難さが進出判断時の懸念要因となり、積極的な進出を阻害している側面もあると指摘されている。

〔2〕貧困の解消

 今後も継続的に内需を拡大していくためには、貧困を解消していくことが重要である。インドの貧困人口比率の推移を見ると、経済成長とともに順調に減少してきているものの、1999年度時点で26.1%といまだ約2.6億人が貧困者層であり、非常に多い(第1-4-26図)。
 
第1-4-26図 インドの貧困人口の推移
第1-4-26図 インドの貧困人口の推移
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 また、貧困者層は農村部に多く見られ、かつ農村の就業者の大半が農業に従事している。インドの農業の労働生産性を見ると、他のアジア諸国に比べて低くなっており、こうした効率性の低い農業部門の改革を行い、生産性を高めて所得の向上を図ることが、貧困問題の解決には必要である(第1-4-27表)。
 
第1-4-27表 国際比較によるインド農業の特徴(2002年)
第1-4-27表 国際比較によるインド農業の特徴(2002年)
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 また、農業部門の生産性を高めていくことと並行して、その過程で発生する余剰労働力をサービス業、製造業で吸収していくことも重要である。しかしながら、これまでのインドの産業別就業者数の推移を見ると、セクターごとの就業者数に大きな変化がなく、セクター間での労働力の移動が適切に行われていないのではないかと推測される(第1-4-28図)。
 
第1-4-28図 インドの産業別就業者数構成比の推移
第1-4-28図 インドの産業別就業者数構成比の推移
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 今後、セクター間で労働力の移動を進展させていくためには、前述のサービス業、製造業の発展による余剰労働力の吸収とともに、柔軟な労働市場の構築や、その前提となる全体的な教育レベルの底上げが重要である。インドは、高度な教育レベルの人材が強みとなっている一方、人口全体の識字率は、その他のアジア諸国と比較して低いレベルにとどまっているのが現状である(第1-4-29図)。アジア諸国が、識字率の改善に伴いセクター間での労働移動を行ってきたことを踏まえれば、インドにおいても、教育の向上により識字率の改善を行っていくことが、セクター間の労働移動を促すための重要な要素の一つだと考えられる。
 
第1-4-29図 インド・中国・ASEAN4の識字率の推移
第1-4-29図 インド・中国・ASEAN4の識字率の推移
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〔3〕財政赤字

 こうしたインフラ整備や貧困解消に向けた各種政策を実施する際、その資金源の一つとして重要となる政府の財政は赤字が継続している。中央政府と州政府を合わせた財政赤字は、近年低下傾向にあるものの、対名目GDP比で7%と高く、かつ、債務残高で見ると対名目GDP比で78%と高い水準となっている(第1-4-30図)。また、財政赤字を支えるため、国内の商業銀行に対しては、預金総額の25%を国債などの公債の購入に充てることを義務付けた法定流動性準備率規制(SLR : Statutory Liquidity Ratio)を適用している。このような財政赤字は、インフラ整備のための公共投資を抑制することにつながる可能性があるほか、法定流動性準備率が民間部門への資金供給を阻害することにより必要な民間投資が行えなくなる可能性があり、インド経済の更なる成長に向けて改善が必要と指摘されている。こうした中、インド政府としても、2004年に財政責任・予算管理法(Fiscal Responsibilities and Budget Management Act)を施行し、2007年度までに中央政府の財政赤字の対GDP比を3%まで引き下げ、2008年度までに経常赤字を無くすことを目指している。
 
第1-4-30図 インド統合政府(中央政府+州政府)の財政赤字及び債務残高の対名目GDP比の推移
第1-4-30図 インド統合政府(中央政府+州政府)の財政赤字及び債務残高の対名目GDP比の推移
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