第4章
オープンかつシームレスな経済システムの構築に向けて
第1節
ウェイトを高める我が国の対外経済活動(新たなる貿易投資立国)

1.貿易の拡大による経済活動の効率化

(1)我が国の貿易規模は過去最高を更新

 世界経済の回復が継続していることなどを背景として、2006年の我が国の輸出額は71兆6,309億円(前年比14.4%)、輸入額は62兆1,665億円(同18.9%)と、輸出入ともに過去最高を更新した(第4-1-1図)。2006年の我が国の貿易収支黒字は、同−8.4%の9兆4,643億円となった。原油等の一次産品の価格が年後半には下落したものの年平均で見れば前年よりも上昇したことなどを反映して、輸入の伸びが輸出の伸びを上回り貿易収支黒字が縮小した。
 
第4-1-1図 我が国の輸出入の推移
第4-1-1図 我が国の輸出入の推移
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 2006年のみならず近年、我が国経済や我が国企業の活動における対外経済活動のウェイトは高まっている。我が国の輸出依存度(財・サービスの輸出の対名目GDP比)は、1984年の14.9%をピークとし、それ以降10%前後で推移していたが、2001年以降一貫して上昇し、2006年には16.1%と戦後最高の水準となった(第4-1-2図)。輸出先国別では、中国を始めとする東アジア向けの輸出が拡大している。2000年から2006年までの財の輸出の伸びのうち、50%以上が東アジア向け輸出の伸びによるものであり、東アジア向けの財の輸出の対名目GDP比は5.2%にまで拡大している。我が国の輸出が拡大している背景としては、東アジアを始めとする世界市場の拡大、我が国企業の海外現地法人への基幹部素材等の供給の拡大、コスト削減、技術力の向上等を通じた我が国企業の輸出競争力の強化などがある。一方、輸出とともに輸入も拡大しており、1985年以降、貿易収支は若干の変動は見られるものの、毎年10兆円前後の貿易黒字を計上している。
 
第4-1-2図 我が国の相手国別輸出依存度
第4-1-2図 我が国の相手国別輸出依存度
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(2)自由貿易の恩恵を受ける我が国

 このような貿易の拡大が我が国にもたらす影響について見るために、これまでの我が国の貿易構造を振り返ってみると、我が国は戦後から近年に至るまで、自由貿易による恩恵を幅広く享受してきた。資源エネルギーの大部分を海外に依存する我が国は、資源エネルギーを安定的に確保することが国民の消費生活の維持に必要不可欠であるとともに、それらの輸入に要する外貨を獲得するために、工業製品を輸出するという加工貿易により、目覚ましい発展を遂げてきた。我が国の輸出は、輸送用機器、電気機器などのウェイトが高まり、労働集約的な製品からより付加価値の高い製品へとシフトするといった変化が見られる。また、我が国の輸入額に占める原燃料のシェアは1980年代半ば頃までは約60%を占めており、我が国の輸入にとって資源エネルギー確保のウェイトは極めて高かった。しかし、長期的には、原燃料のシェアは1990年代半ば以降30%台で推移するなど低下傾向にあり、その一方で工業製品の輸入シェアが高まりを見せている(第4-1-3図)。
 
第4-1-3図 我が国の品目別輸入比率の推移
第4-1-3図 我が国の品目別輸入比率の推移
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 自由貿易の意義として、各国がそれぞれ相対的に生産効率の高い財の生産に特化し、貿易によって必要な財をやり取りすることによって、財をすべて国内で生産する場合よりも高い効用を得ることができるという比較優位の原理をいかすことができるという点が一般的に指摘される。このような比較優位をいかした生産の特化は、規模の経済による生産性の向上につながる。また、消費者にとっても、より安価で良質な財・サービスの選択肢が拡大するメリットが貿易によって得られることになる。近年では財のみならずサービスの輸出入も拡大しており、財・サービスの輸出入によって、海外市場の獲得、優れた海外製品の利用等を通じ、競争優位産業の発展、経済全体の生産性の向上、消費者メリットの拡大を実現していると言える。
 先に述べたように、我が国は近年貿易の規模を堅調に拡大させているが、その規模の対名目GDP比は世界の貿易全体の平均(約28%)よりも大幅に低い。一般的に、先進国では世界貿易全体の平均よりも低い比率となる傾向にある中で、我が国は米国や欧州の域外貿易の比率を徐々に上回りつつあるものの、カナダや韓国などに比べれば大きく下回った状態である(第4-1-4図、第4-1-5図)。 我が国の資源エネルギーの自給率が低いことや、欧州が異なる経済環境、産業構造にある国との域内貿易を通じてメリットを大きく受けていることを考慮すれば、我が国は、先進国の中でも他国を上回る貿易規模を実現し、貿易を通じた産業構造の高度化、効率化を一層進めていくことが必要である。我が国の貿易収支の対名目GDP比は、90年代後半以降2%前後の黒字で安定的に推移しており、我が国は輸出と輸入をバランスさせつつ貿易規模を拡大させ、安定的に貿易収支黒字を計上している(第4-1-6図)。 我が国の少子高齢化の進展の中で貿易収支の動向は黒字基調から今後変化していくものと考えられるが、貿易収支の状況にかかわらず、貿易総額の拡大は十分に可能であり、我が国が貿易を更に拡大させ、貿易による効率化等のメリットを追求する余地は大きいと考えられる。このように貿易の規模を拡大して経済全体の生産性を高めることで、経済の成長を高め、貿易収支黒字を継続していく可能性も拡大していくと考えられる。
 
第4-1-4図 主要国の輸出依存度の推移
第4-1-4図 主要国の輸出依存度の推移
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第4-1-5図 主要国の輸入依存度の推移
第4-1-5図 主要国の輸入依存度の推移
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第4-1-6図 主要国の貿易収支対名目GDP比の推移
第4-1-6図 主要国の貿易収支対名目GDP比の推移
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(3)貿易の拡大が国内経済に及ぼす影響

 次に、このような貿易の拡大が我が国経済に及ぼす影響についてマクロ面から検証する。2006年の実質GDP成長率は2.2%1と7年連続のプラス成長となり、2002年以降から景気回復局面にある2。このようなGDP成長における貿易の役割を見るために、GDPの伸びに対する寄与を国内需要、輸出及び輸入に分解してみると、輸出(財及びサービス)の寄与率は、2002年〜2006年で約66%、1995年〜2006年で見ても約52%に達している(第4-1-7図)。 景気拡大等に伴う輸入の拡大がGDP成長にマイナスの寄与率(2002年〜2006年で約−32%、1995年〜2006年で約−28%)を示しているものの、輸出の寄与率はこれを大きく上回るものとなっている。また、設備投資についても輸出の影響は大きく、業種別では電気機器、自動車等の設備投資額のシェアが大きい業種において輸出の売上高比率が高いことから、これらの業種の輸出増は設備投資を活発にすると見られる(第4-1-8図)。実際に、経済全体で見ても、2002年以降前年比でプラスに転じた輸出に一定期間遅行しながら設備投資が回復する傾向にある(第4-1-9図)。 こうしたことから、輸出の伸びが直接、間接にけん引する形で国内景気が回復していることが分かる。

1 2次速報値ベース。
2 月例経済報告の基調判断における回復期間を示した期間であり、政府として景気拡張期間を公式に示したものではない。正確な景気拡張期間を確認するには、内閣府経済社会総合研究所で開催する景気動向指数研究会による景気基準日付の設定を待つ必要がある。

 
第4-1-7図 我が国のGDP成長率の需要項目別寄与
第4-1-7図 我が国のGDP成長率の需要項目別寄与
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第4-1-8図 我が国の輸出と設備投資(製造業)の推移(前年同期比)
第4-1-8図 我が国の輸出と設備投資(製造業)の推移(前年同期比)
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第4-1-9図 我が国の業種別の設備投資及び輸出売上高比率(2005年度)
第4-1-9図 我が国の業種別の設備投資及び輸出売上高比率(2005年度)
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