第4章
オープンかつシームレスな経済システムの構築に向けて
第1節
ウェイトを高める我が国の対外経済活動(新たなる貿易投資立国)

2.投資の拡大による経済活動の効率化

(1)我が国の貿易規模は過去最高を更新

 我が国経済のグローバル化は対外・対内投資とその収益の拡大に表れている。所得の受取については、投資残高の増加や世界的な金利上昇等を背景とした中長期債の利子受取の増加等を要因として証券投資収益の受取が拡大したほか、グローバル化が進んだ我が国企業の海外現地法人の業績好調等を反映して直接投資収益の受取も増加し、2006年の所得の受取は19兆2,831億円(前年比24.1%)と大幅に増加し、過去最高となった3。一方、所得の支払についても我が国への証券投資収益の増加等により5兆5,372億円(同33.2%)と増加基調にある。この結果、2006年の我が国の所得収支黒字は13兆7,457億円(同20.8%)4に達し、過去最高を更新した(第4-1-10図)。

3 デリバティブ取引の計上方法の見直しを行った1996年以降で比較した場合。
4 所得の受取・支払については公表されている月次ベースの数字を加算して年ベースの数値を作成しているため、合計が所得収支と合わない。

 
第4-1-10図 我が国の所得収支の推移
第4-1-10図 我が国の所得収支の推移
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 このような好調な所得収支の拡大の結果、2005年には初めて我が国の所得収支が貿易収支を上回ったが、貿易収支と所得収支の合計で表される経常収支が2006年に前年比8.7%の19兆8,488億円と過去最大の黒字額となる中で、長年の経常収支黒字を背景とした対外純資産の蓄積と円安を背景として所得収支黒字は引き続き拡大し、2006年には経常収支に占める所得収支のウェイトは高まっている。
 
第4-1-11図 我が国の貿易収支と所得収支の推移
第4-1-11図 我が国の貿易収支と所得収支の推移
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(2)海外事業展開の進展による投資活動の活発化

 こうした所得収支黒字拡大の背景として、証券投資収益の受取が拡大していることに加えて、我が国企業の海外事業展開の進展に伴い海外現地法人が計上する利益が拡大していることが挙げられる(第4-1-12図)。所得の受取のうち、直接投資収益の受取は4兆827億円(前年比21.9%)と約21%のシェアを占めるまで拡大している。また、所得収支(フロー)と対外純資産(ストック)の関係について見ると、我が国は、先に述べたような財の輸出や証券投資、我が国企業の海外事業展開等により、対外純資産残高を増加させ、これを原資としてその収益に当たる所得収支黒字を計上させている(第4-1-13図)。我が国の対外純資産残高は2006年末で約215兆円に達するなど、一貫して増加基調にある。
 
第4-1-12図 我が国の所得収支(受取・支払)の推移
第4-1-12図 我が国の所得収支(受取・支払)の推移
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第4-1-13図 我が国の対外純資産と所得収支の関係
第4-1-13図 我が国の対外純資産と所得収支の関係
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 直接投資収益の受取の増加に大きく寄与している我が国企業の海外現地法人の活動状況を見ると、2004年度時点の経常利益は6兆1,152億円、前年度比31.0%増と大幅に増加し過去最高となった(第4-1-14図)。我が国企業の海外現地法人の地域別収支状況を見ると、アジア経済の好調等を背景として2004年度時点にアジアでは2兆2,040億円と最大の利益を生んでおり、売上高純利益率も4.3%と最も高く、アジア現地法人が我が国企業の海外活動における主要な収益源であることが分かる(第4-1-15図)。
 
第4-1-14図 地域別現地法人経常利益の推移(全産業)
第4-1-14図 地域別現地法人経常利益の推移(全産業)
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第4-1-15図 地域別現地法人売上高経常利益率の推移(全産業)
第4-1-15図 地域別現地法人売上高経常利益率の推移(全産業)
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(3)我が国の投資活動の構造

 我が国の所得収支の構造を確認するため、所得収支を受取と支払に分解すると、名目GNI比で受取が3.1%、支払が0.8%(2005年)である。それに対して、英国は受取15.0%、支払12.7%、ドイツは受取6.2%、支払5.8%、フランスは受取5.9%、支払5.4%、米国は受取3.8%、支払3.7%(いずれも2005年)などと高く、我が国は受取、支払ともに先進7か国中最低水準である(第4-1-16図、第4-1-17図)。我が国は、ネットの収支は大きいものの、受取、支払の規模がそれぞれ小さいことを特徴としている。また、所得収支の受取、支払はそれぞれ対外直接投資、対内直接投資の規模に密接に関連している。我が国の対外直接投資残高及び対内直接投資残高の対名目GDP比は欧米諸国に比して低調である上、近年欧米諸国との差は更に拡大している(第4-1-18図)。これらの直接投資の拡大は、新たな技術や経営ノウハウの導入、内外の企業による多様な競争等によって経済の効率化・活性化等に資することから、我が国は対外直接投資、対内直接投資の拡大に向けた取組を積極的に講じていくことが重要である。こうした取組についてはそれぞれ第3節、第4節で詳しく述べる。
 
第4-1-16図 主要国の所得収支(受取)の対名目GNI比の推移
第4-1-16図 主要国の所得収支(受取)の対名目GNI比の推移
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第4-1-17図 主要国の所得収支(支払)の対名目GNI比の推移
第4-1-17図 主要国の所得収支(支払)の対名目GNI比の推移
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第4-1-18図 主要国の対外直接投資残高及び対内直接投資残高の対名目GDP比の推移
第4-1-18図 主要国の対外直接投資残高及び対内直接投資残高の対名目GDP比の推移
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コラム 12
海外関連事業活動の拡大による国内事業活動への影響

 海外への直接投資の拡大を通じ、我が国企業の海外の事業活動が活発化しており、そのウェイトが高まっている。我が国製造業の売上高(日本国内法人及び日系海外現地法人の売上高の合計)は2004年時点で約490兆円であり、うち海外現地法人での売上高は約80兆円で、海外現地法人売上比率は16.2%と過去最高を更新した。業種別では、近年東アジアを中心に海外事業ネットワーク展開を進める輸送機械(36.0%)、電気機械(21.3%)の海外現地法人売上比率が拡大傾向にある(コラム第12-1図)。
 
コラム第12-1図 現地法人の海外売上高と海外生産比率の推移
コラム第12-1図 現地法人の海外売上高と海外生産比率の推移
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 我が国企業の活動における対外経済活動のウェイトの高まりは海外現地法人の売上高の比率の高まりにとどまらない。我が国製造業の国内法人の売上高のうち、海外市場向けに輸出される製品の売上や、輸出される製品の生産のために投入される部素材等の売上については、海外需要を満たすためのものと考えられる。そこで、我が国の製造業全体について、〔1〕海外現地法人の売上高、〔2〕国内法人の輸出、及び〔3〕産業連関表を用いて輸出により誘発された国内生産高の合計による海外関連売上高を試算すると、2004年度の我が国製造業の売上高(約490兆円)のうち、約40%(約197兆円)が海外関連売上高(海外現地法人の売上高(約79兆円)、輸出(約58兆円)及び輸出により誘発された国内生産高(約60兆円)の合計)で占められる5。輸送機械(約69%)、電気機械(約48%)では海外関連売上高の比率が製造業平均よりも高く、売上高の多くが海外需要によって直接、間接にもたらされていることが分かる(コラム第12-2図)。

5 我が国からの輸出には海外現地法人向け輸出も含まれること、また国内及び海外のいずれにおいても最終製品及び原材料の売上高が重複して計上されている可能性があることに注意を要する。ただし、仮に海外現地法人売上高から我が国からの仕入高を差引いて同様の試算を行った場合でも、我が国製造業の海外関連売上高比率は約38%となり結果に大きな差はない。
 
コラム第12-2図 我が国製造業の売上全体に占める海外関連売上の比率(2004年度)
コラム第12-2図 我が国製造業の売上全体に占める海外関連売上の比率(2004年度)
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