第1章
困難に直面する世界経済と「50億人」市場による新たな発展の展望
第1節
 世界経済の現状


2 国際金融・資本市場の発展と世界経済
(1)国境を越えた金融・資本市場の発展
(国際金融・資本市場の急成長)
 近年、世界各国において、金融・資本市場が実体経済を上回る規模で急速に成長している。
 民間機関の調査30によれば、世界の金融資産規模(証券・債券・公債・銀行預金の総計)は、近年急増しており、2006年には総額167兆ドルに達している(第1-1-24図)。その成長のペースは31 1996年から2006年の11年間で年平均9.1%と、同期間の世界の実体経済の名目GDP成長率(年平均)5.7%を大きく上回っており、実体経済に対する比率は、1990年の約2.0倍から2006年には約3.5倍へと拡大している32

30 McKinsey & Company(2008a), “Mapping Global Capital Markets, Fourth Annual Report, Jan. 2008”.
31 2000年のIT・株価バブル崩壊によって一旦鈍化したものの、2003年以降再び増加に転じている。
32 同機関の推計によれば、こうした金融・資本市場の対GDP比率の拡大は、先進国にとどまらず新興国においても見られ、特に中国では、2006年時点で金融資産残高の対GDP比率が3倍を超え、ドイツに近づくレベルとなっている。
 
第1-1-24図 世界の金融資産規模
第1-1-24図 世界の金融資産規模
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 国境を越えた資金の移動も、特に今世紀に入って、IT・株価バブル崩壊後の世界的な過剰流動性等を背景に活発化しており、ますます多くの資本が直接投資、株式・社債等証券投資、融資及び預金といった様々な形態で国境を越えて移動している(第1-1-25図)33

33 この点について、例えば、BIS(2006)では、国境を越えた資本取引の規模(GDP比)は、実は、第一次大戦以前の方が大きかったが、今日の金融市場における短期取引の数の多さ、金融・資本市場の高い収益、仲介者の多様さ、金融商品の数と複雑さ、新しい情報に対する市場参加者の対応スピードはいずれも前例のないものであるとしている。そして、中南米、中・東欧及びアフリカの多くの国々では、国内金融システムの大部分が外国金融機関で構成され、現地通貨での預金・融資業務も行い、地域経済とますます一体化しつつあるとしている。なお、国境を越えた資金移動の活発化の詳細については、第2章第1節を参照。
 
第1-1-25図 急増する国境を越えた資本取引
第1-1-25図 急増する国境を越えた資本取引
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 こうした国際金融・資本市場の発展の要素としてはは、〔1〕先進各国を中心とした金融資産の規模の拡大と金融技術の進歩による金融・資本市場の発達、〔2〕情報通信技術の発達や規制緩和の進展等を背景とする「金融のグローバル化」の、大きく二つがあると考えられる。以下では、この二つの要因について検証する。

(金融・資本市場の発達の背景)
 各国、特にその起点となった米英における金融・資本市場の発達の背景を検証する。

○ 金融資産の規模の拡大
 経済成長の過程では、貯蓄を行う家計や、そうした貯蓄を活用して企業や政府が投資を行うことにより、固定資本が蓄積されていく。固定資本のうち金融資産34の実体経済に対する規模は、一般に一人当たりGDPが成長するほど、拡大する傾向にある。日本・米国・英国において、各種資産規模の対GDP比の、この20年間の推移をみると、実物資産35が一定の値で安定して推移しているのに対し、特に金融資産は米国、英国を中心に大きく拡大している。こうして拡大した金融・資産が金融・資本市場発達の原資となり、拡大再生産されている(第1-1-26図)。

34 市場での取引が中心となる株、債券等及び預貯金からなる。
35 生産設備等の企業ストック、社会資本等の政府ストック、住宅ストック等で、一般に相対で取引される。
 
第1-1-26図 各種資産の対GDP比の推移
第1-1-26図 各種資産の対GDP比の推移
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○ 金融技術の進歩
 金融技術の進歩は、従来金融取引の対象ではなかった財や資産を金融取引の対象に変えてきた。米国を中心に発達した「証券化」36の技術は、〔1〕企業が保有する動産(売掛金、在庫品等)、〔2〕金銭債権(住宅ローン債権等)、〔3〕不動産等を金融商品へと変貌させてきた。世界の証券化市場は、証券化が最も盛んな米国を中心にここ数年飛躍的に拡大している(第1-1-27図)37

36 証券化(Securitization)とは、狭義には、不動産や債権などの資産を本来の帰属主体(オリジネーター)から分離して他の主体(特別目的会社や信託銀行)に帰属させ、当該資産によるリスク及びリターンを有価証券の形で投資家に販売する取引をいう。
37 我が国でも、欧米に比べればその規模はまだまだ小さいものの、着実に証券化市場が拡大している。
 
第1-1-27図 米国の証券化市場規模の推移(発行残高)
第1-1-27図 米国の証券化市場規模の推移(発行残高)
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 また、金融工学に基づく高度なリスク評価技術は、先物、オプション、フォワード等、各種の金融派生商品(デリバティブ)を生み出した。世界におけるデリバティブの市場規模は、他の金融商品(株式、債券)に比べ急速に成長しており、2000年から2006年にかけて約3倍に拡大した(第1-1-28図)。また、デリバティブの元本となる資産(想定元本)の規模も急速に拡大しており、2007年1月時点で516兆ドルの規模にまで達している。
 
第1-1-28図 世界におけるデリバティブ市場規模の推移(発行残高)
第1-1-28図 世界におけるデリバティブ市場規模の推移(発行残高)
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 こうした証券化技術やデリバティブ38がリスク管理の手法を変えている。そして、米国や英国を中心に、金融は、後述する組成・転売型ビジネス・モデルのような「取引」志向となり、資本市場が、これまで銀行システムが果たしてきた金融仲介の役割をますます担う「市場型」金融が中心になってきている。

38 米国では、様々な担保による証券化が行われたり、新しいオプション取引が次々と考案され特許を取得したりするなど、証券化やデリバティブは金融ビジネスにおける主要技術として位置づけられている。


(金融のグローバル化の背景39

39 IMF(2002a)、中尾武彦(2008)、Berger A.N., Young, R.D., Genay,H. and Udell, G.F.(2001)

 以上のように各国において、金融・資本市場の発展が進む一方で、1990年代以降、各国の金融・資本市場や金融業を隔てていた「国境」が取り払われ、企業や投資家は自国の市場にとらわれず、より有利な条件の市場を選択して取引や資金調達、投資を行うことが可能となっている。その要因としては、大きく以下の四つに整理することができる。

○ 情報通信技術の発展
 急速に進展する情報通信技術の進展により、金融市場参加者は情報の収集・加工や金融リスクの管理が容易となった。また、国際金融センター間にまたがる大量の金融取引の履歴を、簡便かつ正確に蓄積・管理することが可能となった。

○ 実体経済活動のグローバル化に伴う国際金融サービスへのニーズ拡大
 財・サービスの国際取引が進展する(生産・消費の国際分散)とともに、世界中に張り巡らされたネットワークを活用して生産・物流・販売を行う多国籍企業が台頭した。こうした実体経済の統合により、国境を越えたファイナンスに対する需要が生まれ、金融のグローバル化が進む契機となった。

○ 各国における金融関連の規制緩和の進展40

40 規制緩和については、米国、英国でいち早く進められた。米国においては、証券会社による株式売買手数料の自由化(1975年)、銀行金利の自由化(譲渡可能定期預金金利自由化(1970年)から預金金融機関規制緩和法(1980年)の成立にいたる銀行金利の段階的自由化。1982年に終了)、銀行の州際業務規制の解禁(1970年代から州ごとに互いに銀行店舗の買収を認めるようになり、「リーグル=ニール法(Riegle-Neal Act)」(1994年)により州際業務規制を解禁)、銀行と証券会社の分離規制の撤廃(「グラム=リーチ=ブライリー法(Gramm-Leach-Bliley Act)」(1999年))と、金融産業をめぐる規制緩和が進んだ(第4章で後述)。英国では、1986年、取引所会員権の開放、手数料の自由化、ジョバー(顧客との直接取引は行わず、ブローカーとのみ取引する業者)とブローカー(顧客からの売買注文をジョバーに中継ぎする仲介者)の兼業の解禁を内容とする証券取引所の大改革(いわゆる「ビッグ・バン」)が行われた。加えて欧州では、EUの市場統合の過程で、域内の資本移動の自由化や金融サービスの自由化を目指した一連の指令(Council Directive 88/361/EEC(1988年)、第一次(1977年)・第二次(1989年。施行は1993年)Banking Coordination Directive)が出された。

 上記の実体経済の統合に伴う国境をまたいだ金融サービスに対する需要の増加は、各国の金融・資本市場の規制緩和を促した。IMFが推計する金融・資本市場の規制緩和指標の推移を見ると、1980年代後半以降先進国を中心に規制緩和が急速に進展している41。こうした規制緩和の進展により、国境をまたぐ金融取引が制度上可能である国・地域の範囲が広がった。

41 IMF(2002b)を見ると、先進国の資本取引現制指標(規制が全くない場合は0,完全に禁止されている場合は1)は,1970年の0.8前後から1995年には0.1前後まで大幅に低下している。


○ 金融技術の進歩・金融の自由化に伴う金融仲介業の発達
 多くの国の金融当局が幅広い主体に金融仲介サービスへの参入を認めた結果、多様な金融仲介業者が登場した。投資銀行、証券会社、保険会社、ヘッジファンド等の多様な主体が、従来は銀行が担ってきた金融仲介サービスを提供するようになった。
 このような金融・資本市場の発達と各国・地域に大量に流入する資本は、資金の借り手による海外資金へのアクセスを容易にし、リスク分散と価格設定の効率化を促進するなどの恩恵をもたらす反面、世界経済の安定にとって、大きな影響を与える場合もある。

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(2)金融・資本市場の発達と組成・転売型ビジネス・モデルの確立
(世界の金融システム構造)
 世界各国での金融経済の発展は、特に資本市場の拡大を背景とした組成・転売型の金融ビジネスモデル(以下「組成・転売型ビジネスモデル」という。)の発達によるものである。米国や英国等で普及しているこのビジネスモデルでは、貸し手である金融機関と借り手との長期的な関係はあまり重視されず、金融機関が金融・資本市場を通じて原債権の信用リスクを投資家等に分散させることによって、資金を必要とする主体(個人、企業)と資金運用を求める主体(投資ファンド、投資家など)とを結びつけ、これら主体間でのリスクとリターンの効率的な分配を実現することを狙ったものである。金融機関と借り手の長期的な関係を基本に、金融機関が最終的な資金運用主体と資金調達主体との間で仲介を担うことで、貸し手が債務者の状況をモニタリングし、債権管理を行うという伝統的な組成・保有型の金融ビジネスモデル(以下「組成・保有型ビジネスモデル」という。)とは異なるものである。金融のグローバル化が進む中で、組成・転売型ビジネスモデルが普及することで、リスクが、借り手の所在する国の金融機関だけでなく、世界中に広がり、広く薄く分散されるようになった。市場を通じたリスク分散は、同時に、市場を通じた円滑な流動性供給にも寄与する(第1-1-29図)42

42 実際、銀行預金から資金を引き上げた投資家は、銀行以外の投資ファンド、投資信託などのノンバンクを通じて投資することによって、リスク負担と同時に流動性の円滑な供給を行っていることになる。
 
第1-1-29図 金融ビジネスモデルの概念図
第1-1-29図 金融ビジネスモデルの概念図

 組成・転売型ビジネス・モデルでは、貸付債権等金融債権の資本市場への売却可能性によって融資判断が行われる傾向がある。その融資判断においては、基本的に、株価、経済成長率等のマクロ経済指標及び企業決算報告などといった公開情報が重視される。また、貸付債権を短期間で市場に売却することによって金融機関のエクスポージャーが相対的に小さく抑えられることから、金融機関は融資先の拡大が可能になるとともに、個人や企業は資金の借り入れ先が拡大する。更に、最新の金融工学の成果を最大限に活用して複雑なリスクを定量化することによって、リスクに応じた価格設定を実現し、世界中の投資家の資金を惹きつけることに貢献している。その結果、住宅ローン等の証券化商品など数多くの複雑・高度な金融商品が生み出され次々に市場に投入されている。

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(3)組成・転売型ビジネスモデルの発達とその世界経済への影響
(組成・転売型ビジネスモデルの特色)
 組成・転売型ビジネスモデルの特色を、IMF(2006)を参照し、組成・保有型ビジネスモデルとの対比で整理すると以下のとおりである。

〔1〕借り手である企業部門との関係
 組成・転売型ビジネスモデルは、産業・地域間の資源再配分を効率化するという特色がある。組成・保有型ビジネスモデルのもとでは、従来からの取引慣行が既存の産業や企業に有利に働くことになり、取引実績のない新規参入者には不利と言える。このため、技術革新や経済のグローバル化による新しい成長機会への対応では、組成・転売型に比べて効率性が低下しやすい。他方、組成・転売型ビジネスモデルでは、借り手との長期的関係はあまり重要視されず、基本的に公開情報にのみ依存して取引が行われるため、例えば、衰退する産業・地域から成長する産業・地域への資源再配分が効率的に行われることとなる。また、必要な公開情報さえ入手可能であれば、基本的に、取引に際して国境が意識されることは少ないと考えられる43

43 IMF(2006)では、近年、労働生産性の上昇率が高い英国、米国、豪州などでは、このような組成・転売型の金融ビジネス・モデルが、効率的な資源再配分を通じた産業構造の迅速な転換に大きく貢献しているとしている。


〔2〕借り手である家計部門との関係
 組成・転売型ビジネスモデルの普及により、個人が住宅資産を担保に借入を容易に拡大することが可能となる。このことは、家計にとっては流動性制約を低下させる効果を持つ44。その結果、臨時の出費や所得の低下などに備えようとするいわゆる予備的動機に基づく貯蓄の必要性が低下し、その分を消費に回すことが可能となり、消費性向が上昇する。実際に、米国では、住宅を担保とした低利での借入手段が充実している45

44 例えば、家計が金利低下による住宅価格上昇のメリットを享受しようと思った場合、住宅は株式等と異なり、一部分を売却してキャピタル・ゲインを実現することは困難であるため、住宅資産の価値増加分を支出に振り向けるためには借入の機会が必要となる。また、金利低下により、貯蓄よりも消費の方が魅力的になった場合も、現に得ている所得や資産を超えて消費を増やそうとすれば、同じく借入の機会が用意されていなければならない。
45 具体的には、まず、住宅を担保とした低金利での借入手段が充実しているという点が重要である。住宅資産を担保とした借入には、大きく分けて、(a)既存の住宅ローンの借り換え時に、ローン設定時以降の住宅価格の上昇分だけ手元の現金を増やすためローン残高を積み増す「キャッシュ・アウト型借換え」と、(b)住宅の純資産価値(住宅の時価からモーゲージローンの未払残高を除いた部分)を担保にローンを設定する「ホームエクイティローン」の二つがある。米国では、2001年以降、住宅ローンの借り換えは顕著に増加したが、その際、単純な「利払い負担節約」型の借り換えとともに、住宅価格の堅調を背景にした「キャッシュ・アウト」型の借り換えも大幅に増加した。ホームエクイティローンの残高も1995年以降、住宅の純資産価値の増加にほぼ見合う形で、堅調に増加した(峯岸・石崎(2002)より)。なお、米国における住宅価格と個人消費の関係の詳細は本章第2節を参照。


〔3〕複雑かつ広範な取引関係
 組成・転売型ビジネスモデルが持つ取引関係の複雑さは、金融監督行政の円滑な実施や市場による的確な情報把握に影響する。何らかの原因で金融システム不安が発生した場合、債権者と債務者の二者しかいない伝統的な金融ビジネスモデルでは貸し手も含めた責任の所在が明確である一方、組成・転売型ビジネスモデルでは、世界中の不特定多数の金融機関、投資家などが取引に関与することで、極めて複雑かつグローバルな取引関係が形成されており、貸し手責任の所在があいまいになりやすい。このため、システミックリスクが生じた場合の貸し手責任の追及が極めて困難となる。同時に複雑・広範な取引関係は、市場が損失の所在や全体像などを的確に把握することを妨げ、金融機関、投資家及び債権者の心理的不安や不信感を必要以上に増幅させる。

(金融システム不安の実体経済への波及懸念〜増幅される景気変動の影響(フィナンシャル・アクセラレータ))
 以上のような特色を有する組成・転売型ビジネスモデルの下では、証券化や金融派生商品等を通じたリスクの移転は、それぞれの市場が機能している限り、非常に効果の高いものとなる。
 しかしながら、IMF(2006)によれば、組成・転売型ビジネスモデルは、資産価格の変動に対して影響を受けやすいと言われている。その背景には、このビジネスモデルでは、公開情報に基づいて巨額の運用資金を迅速に世界中の有望な投資対象に展開させることで高収益をあげる一方で、いったん、投資先の懸念を伝える情報や憶測が伝わると、即座に資金を引き上げ、他の投資対象に振り向ける、現金化して利益を確定させるといった行動が日常的に行われ、資産価格が急激に変化することがあると考えられる。
 実際、不動産価格に大きく依存して信用供与を行っている組成・転売型ビジネスモデルは、伝統的な金融ビジネスモデルと比較して、一般に不動産価格変動に対する感応度が高い46。すなわち、不動産価格の上昇局面においては、収益期待の高まりを受けてより多くの資金が不動産市場に流入することで価格の上昇を加速させる。その結果、資産担保価値の上昇を通じて家計の借入能力が高まり、消費はますます拡大する好循環を形成することになる(正のフィナンシャル・アクセラレータ)。

46 実際に、伝統的な金融ビジネスモデルが主流とされる我が国においても、1980年代の不動産バブルの時期には、顧客との長期的な関係の有無にかかわらず、不動産価格に大きく依存した信用供与が活発に行われていた。このような事実は、不動産価格への高い依存は、組成・転売型ビジネスモデルと組成・保有型ビジネスモデルを区別する決定的な要件ではないことを示している。

 逆に、不動産価格の下落局面では、担保価値が減少することで家計の借入能力が減少する。資金繰りが困難となった家計による担保資産の売却が増えるに従い、価格はさらに下落する。担保資産価値の下落に応じて金融機関の融資は縮小されるため、借入は一層困難となる。こうして、不動産価格に依存した金融システムの存在によって、価格下落の要因となった景気後退等による直接的な影響が増幅される悪循環が形成される(負のフィナンシャル・アクセラレータ)。これらの効果は、家計の借入能力が不動産価格に依存する度合いが高い国ほどより顕著に現れるとされる(第1-1-30図)。
 
第1-1-30図 住宅バブル崩壊が各国の個人消費に与えた影響(1970年〜2005年)
第1-1-30図 住宅バブル崩壊が各国の個人消費に与えた影響(1970年〜2005年)
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 また、金融資産についても、組成・転売型ビジネスモデルが主流の国では、個人消費が株価変動による資産価値変動の影響をより強く受けることが指摘されている(第1-1-31図)。
 
第1-1-31図 株価バブル崩壊が各国の個人消費に与えた影響(1985年〜2005年)
第1-1-31図 株価バブル崩壊が各国の個人消費に与えた影響(1985年〜2005年)
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 更に、組成・転売型ビジネスモデルが主流の国では、企業部門においても景気循環の影響が増幅されている。景気後退期における設備投資の減少幅は、組成・転売型ビジネスモデルが主流の国の方が大きいとされる(第1-1-32図)。
 
第1-1-32図 景気循環が各国の設備投資に与えた影響(1985年〜2005年)
第1-1-32図 景気循環が各国の設備投資に与えた影響(1985年〜2005年)
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 実体経済を大きく上回る規模で国境を越えた金融取引が行われるようになった現在では、このような組成・転売型ビジネスモデルが有する高い資金移動性とフィナンシャル・アクセラレータ機能は、ひとたび、金融システム不安が発生した際には、世界的な規模で金融部門の悪化と実体経済の悪化が連関し悪循環を引き起こす懸念がある。すなわち、信用収縮によって資金調達を阻害された企業・家計部門の資金繰りの悪化が世界の経済成長を鈍化させ、それが更なる信用収縮を招来しかねないことが懸念される。

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