第2章
 アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み
第5節
 持続的成長実現に向けたアジア共通の課題


1 アジアで進展する少子高齢化
(1)低下に転じるアジアの生産年齢人口比率
 我が国を含むアジア各国は1970年代以降「人口ボーナス」(人口構成、出生率、死亡率の変動に伴って労働力人口の増加率が人口増加率よりも高くなること)の恩恵を受け、持続的な経済成長を実現してきた。しかしながら、出生率の低下等によりアジアの生産年齢人口比率は2015年、生産年齢人口は2035年をピークに減少に転じることが見込まれている(第2-5-1-1図、第2-5-1-2図)。
 
第2-5-1-1図 アジアにおける生産年齢人口比率の推移
第2-5-1-1図 アジアにおける生産年齢人口比率の推移
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第2-5-1-2図 アジアにおける生産年齢人口の推移
第2-5-1-2図 アジアにおける生産年齢人口の推移
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 アジア全体の高齢者比率は、日本の約40年前の水準である。2010年には高齢化社会(高齢者が7%に達した社会)に、2035年には高齢社会(同比率が14%に達した社会)を迎えることが予想されている(第2-5-1-3図)。
 
第2-5-1-3図 アジアと日本の高齢者比率の推移
第2-5-1-3図 アジアと日本の高齢者比率の推移

 各国・地域別にみると、既に我が国では、2000年から生産年齢人口比率が減少しており、アジア最大の人口を抱える中国でも2015年から同比率が減少する見込みである(第2-5-1-4図)。インドにおいても、2045年をピークに生産年齢人口比率が減少に転じ、その他アジアにおいては、2020年頃までに同比率が減少に転じると予想されている。
 
第2-5-1-4図 アジア各国における生産年齢人口比率の推移
第2-5-1-4図 アジア各国における生産年齢人口比率の推移
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(2)早いペースで高齢化が進むアジア
 高齢化社会から高齢社会になるまでの期間をみると、フランスが115年、スウェーデンが85年、英国が47年という中で、日本は24年という比較的短い期間で高齢社会となっている。その他アジア諸国についてみると、シンガポールで17年、韓国で18年、タイで22年など、日本以上のスピードで高齢化が進展することが予測されている(第2-5-1-5表)。
 
第2-5-1-5表 各国が高齢化社会から高齢社会になるまでにかかる期間(倍化年数)
第2-5-1-5表 各国が高齢化社会から高齢社会になるまでにかかる期間(倍化年数)

 一般的に、高齢化は経済成長の制約要因として働く可能性がある。生産年齢人口比率が低下し高齢化が進展すると、労働投入量の減少、国内貯蓄率の低下を通じた投資の減少1とともに、医療費・年金負担の増加などを通じた財政や家計の圧迫をもたらすことが想定される。ただし、労働力人口が減少しても、生産性の上昇率が高ければ、経済がマイナス成長に陥ることはないと考えられる。女性・高齢者等の積極的な活用などによる労働力人口の増加とともに、教育を通じた人的資本の充実、イノベーション(新技術の取り込みと創意工夫)を通じた資本効率の改善など生産性を向上させていくことが重要である。

1 人々が勤労時代に将来に備えた貯蓄を行い、老後にそれを取り崩すという仮説(ライフ・サイクル仮説)に従った場合、高齢化の進展は一国の貯蓄率を低下させる。


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(3)経済水準が先進国と比して低い状況で高齢化に直面するアジア
 アジアの中には、一人当たりGDPがそれほど高くないまま、「人口ボーナス」が終了し、豊かさを十分達成できていない段階で「人口オーナス」(生産年齢人口が急減し、同時に高齢人口が急増する状態)に入っていく国がいくつかあると予想されている(第2-5-1-6表)。日本、韓国、シンガポールなどは比較的高い所得に達した後で「人口オーナス」の時期を迎えるが、中国、インド、一部のASEAN諸国は一人当たりGDPが一万ドル以下で「人口オーナス」の局面に入っていくと予想される。
 
第2-5-1-6表 人口ボーナスが終わるときの所得水準予測
第2-5-1-6表 人口ボーナスが終わるときの所得水準予測


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(4)アジアの高齢化という課題に我が国の経験等を活用
 また、これらの国では、年金・医療・介護などの社会保障制度を整備し、高齢化に備えることが課題となる。高齢化というアジアの共通課題の克服のために、世界の中でもいち早く少子高齢化を迎え、この分野に多くの経験を持つ我が国が、高齢社会への対応や社会保障制度等についてアジア等との支援協力体制を強化していくことが必要となろう2。また、医療・介護・健康関連産業は、今後、高齢社会を迎えるアジア諸国等においても高い成長が見込まれる。医薬品、医療・介護製品・ロボット等の財の海外展開や、外国人患者等の国内医療機関への受け入れの推進などにより、医療関連分野産業を展開していくことが期待される。

2 厚生労働省では、2003年度より、社会福祉と保健医療の分野における人材育成の強化及び日本との協力関係の強化を目的として、ASEAN10か国から社会福祉と保健医療政策を担当するハイレベル行政官を招聘し、ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催。社会福祉及び保健医療サービスの連携と人材育成等をテーマとした情報・経験の共有を図っている。また、本会合はASEAN+3(日中韓)保健大臣会合および社会福祉開発大臣会合の目的を遂行するために日本が行う協力事業として関係国間で位置づけられている。


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