第2章 世界と我が国の通商構造の変化

第1節 我が国をとりまく世界貿易の変遷

2.深化・変容する東アジア生産ネットワーク

ここまで、この10 〜 20 年において我が国が世界通商における存在感を低下させ、他方で中国が圧倒的な経済成長を背景に存在感を高めてきたことを示した。

過去の通商白書でも見てきたように、我が国や中国は、東アジア域内においてダイナミックに経済的補完性を高め、域内分業により最適な生産構造を形成、「世界の工場」としての地位を確立してきた。以下では、ここ20 年における世界通商の構造変化の中で、東アジア生産ネットワークにはどのような影響が及んでいるかを確認する。具体的には、中国が、東アジア域内の生産ネットワークと域外の製品消費地とをつなぐ一大拠点として存在している様を、また、東アジア生産ネットワークの生産物の最終消費地と前提されていた欧米の存在感低下と中国はじめとした域内消費増大による、自律的消費市場としての存在感を示し、すなわち、東アジアネットワークが、最終消費地として必ずしも欧米を前提としない自律的なネットワークの様相を示し始めたことについて検証する。まず、本論の前提として、アジア太平洋地域経済の概要を示す(第2-1-2-1 表)。

第2-1-2-1表 アジア太平洋地域の概観
第2-1-2-1表 アジア太平洋地域の概観

(1)東アジア貿易構造概観

直近のアジア太平洋経済と東アジア各国・地域の生産工程別での貿易構造の変化について簡単に確認する(第2-1-2-2 図)。

生産工程別貿易財の構成について、日本についてみると、2009 年輸出では部品が最大の割合を占めている。1990 年以降、中間財の輸出割合は増加を続け、58.7%と我が国輸出の約6 割を占めるようになっている。輸入では素材の割合が高くなっている。世界に比較的高度な中間財を輸出し、資源等を輸入に頼る我が国の構造は、引き続き維持されていることが見て取れる。

中国についてみると、2009 年輸出で消費財が最大の割合を占め、資本財と消費財の合計である最終財の割合が約6 割(63.2%)と大きな割合を占めている。1990 年からの変化でみると、消費財の割合が減少し、資本財の割合が増加している。これは、産業構造が高度化したこと以外に、生産された消費財が国内で消費されるようになっている可能性も考えられる。輸入については、中間財の占める割合が52%、素材を含めると78.7%にまでなり、引き続き、中間財を輸入し最終財を輸出するという組立・輸出型生産構造の性格が表れている。

韓国についてみると、2009 年輸出では中間財が64.4%と我が国よりさらに中間財輸出の割合が高くなっており、中間財輸出を輸出のメインエンジンとする我が国の構造と似通い、競合する可能性が示唆される。最終財輸出が全体の57%を占めていた1990 年との比較でみると、この20 年の間に、大きな構造の転換がなされたことがわかる。

ASEAN についてみると、素材・部品・加工品・資本財・消費財と比較的バランスのとれた輸出・輸入構造となっているように見える。これについては、ASEAN 域内で各国が補完性を高めていることが背景にあると考えられる。

第2-1-2-2図 東アジア各国・地域の生産工程別貿易財の構成
第2-1-2-2図 東アジア各国・地域の生産工程別貿易財の構成

(2)組立・輸出拠点としての存在感を増す中国

東アジアでは、域内における最適な工程間分業により構築された東アジア生産ネットワークが発展した。具体的には、日本、韓国、台湾等が比較的高付加価値な部品や加工品を生産し、中国、ASEAN 等がその中間財を輸入、組立作業で最終財を生産し、欧米等へ供給するものであった。このように東アジア全体で「世界の工場」として存在してきたことは過去の通商白書においても検証してきた。

ここで改めて、ここ10 年における東アジアと世界の貿易構造の変化について確認する。東アジアにおける2009 年の中間財、最終財の輸出額から東アジア生産ネットワークにおける主な貿易の流れをまとめ、1999 年時点と比較してみる(第2-1-2-3 図、第2-1-2-4 図)。1999 年についてみてみると、我が国から中国・ASEAN に中間財を輸出し、中国・ASEAN から欧米へ最終財を輸出するという構造は見てとれ、東アジア生産ネットワークは成立していることがうかがえる。ただし、一方で、我が国から欧米への最終財輸出についてみると、米国へ944 億ドル、EU へ507 億ドルと、中国やASEAN から欧米への輸出額よりそれぞれ大きくなっている。その額は、我が国から中国・ASEAN への中間財輸出額よりも大きいこともわかる。

第2-1-2-3図 東アジア各国・地域の中間財・最終財貿易動向(1999 年)
第2-1-2-3図 東アジア各国・地域の中間財・最終財貿易動向(1999 年)

第2-1-2-4図 東アジア各国・地域の中間財・最終財貿易動向(2009 年)
第2-1-2-4図 東アジア各国・地域の中間財・最終財貿易動向(2009 年)

次に、2009 年についてみてみると、1999 年時点と比較して概ねそれぞれの貿易関係において輸出額が増大する中、我が国からEU・米国への最終財輸出額のみが、減少していることがわかる(対米944.4 億ドル→ 511.4 億ドル、対EU507.1 億ドル→ 443.3 億ドル)。他方、特に大きく額を伸ばしているのは、中国から欧米への最終財輸出額(対米923.6 億ドル→ 2149.5 億ドル、対EU376.9 億ドル→ 2078.7 億ドル)や、日本、韓国、そしてASEAN から中国への中間財輸出である。中国への中間財輸出について、額でいえば我が国が引き続き最大であるものの、韓国やASEAN の輸出額の伸びは大きく、韓国は744.4 億ドル、ASEAN は640.5億ドルと、我が国(881.4 億ドル)と同程度の水準まで輸出を拡大させている。

他方、我が国や韓国からASEAN への中間財輸出額について、1999 年においては、我が国・韓国ともに、対中国以上に、対ASEAN に中間財を輸出していたが、この10 年において、対中中間財輸出ほどは額が伸びておらず、我が国・韓国ともに最大の中間財輸出先はASEAN ではなく中国となっている。また、ASEAN から対米国・EU への最終財輸出についても同様に、中国の対米国・EU 最終財輸出ほどの伸びは確認できない。

以上より、1999 年では、ASEAN を主な中間財供給地として、我が国・韓国等は中間財輸出を行い、そこで組立て、最終消費地である欧米等先進国へ輸出するという東アジア生産ネットワーク構造が成立していた。それが、この10 年で、深化と変容を遂げていることが示唆される。すなわち、1.東アジア生産ネットワークは、域内における中間財需給を大きく拡大させながら、2.かつては主にASEAN が担っていた「組立・最終財輸出」の工程について、中国の担う部分が圧倒的に拡大し、ASEAN はむしろ中国への中間財供給の役割を拡大することとなった。例えば、我が国の欧米等域外への最終財輸出が減少し、それにとってかわるように中国への中間財輸出が増大していることからも示唆されるように、中国が、東アジア域内の生産構造と、域外の需要とをつなぐいわば一つの「窓口」となってきていることがわかる。

中国から欧米への最終財輸出について見てみると、上述三角図で見たとおり、米国への輸出増以上にEUへの輸出が増加していることが分かる。このように、東アジア生産ネットワークにおいて、中国は絶対的な生産・輸出拠点としての存在を確立し、我が国やASEAN 等東アジアは、東アジア生産ネットワークにおける役割、すなわち中国への中間財供給を果たすことで、中国を経由して域外へ財を供給している構造が浮かび上がってくる。中国が東アジア域内外をつなぐ窓口として存在している様子が見て取れる。上述、三角形で世界の通商構造概念図を示した際、中国が米国、EU と並んで世界通商の極として存在している背景には、東アジア生産ネットワーク構造における我が国・韓国・ASEAN 等の強力な中間財供給があることは忘れてはならない事実である。

次に、特に分業構造が顕著であり、域内貿易額も大きい電気機械について、中国を唯一の組立・輸出拠点と仮定して東アジア生産ネットワークに伴う貿易額を試算した(第2-1-2-5 図)。具体的には、日本・韓国・台湾・ASEAN から中国への中間財輸出と、中国から米国・EU への最終財輸出とを足したものを東アジア生産ネットワークに係る貿易とみなし、その合計額が各国・地域全体の貿易に占める割合の変化を示したものである。これによると、三角貿易構造の中で取引されている貿易額は、2008 年まで一貫して増加している。2009 年には、世界経済危機の影響により、貿易額自体は減少しているものの、全体の貿易額に占める三角貿易構造の中での貿易額の割合は2009 年において23.5%と上昇している。2000 年から見ると、貿易額にして4.9 倍、全体のシェアでは約2.7 倍となっており、中国を組立・輸出拠点とする東アジア生産ネットワーク貿易が、構成国・地域の貿易をけん引する形で増加していることが示されている。

第2-1-2-5図 東アジア生産ネットワークに係る貿易の動向
第2-1-2-5 図 東アジア生産ネットワークに係る貿易の動向

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(3)引き続き中間財輸出を拡大させる我が国

ここで、東アジア生産ネットワークにおける我が国の貿易動向についてより詳細に確認する。我が国は、比較的高付加価値な部品や加工品を生産、中国等のアセンブリ拠点へ中間財として供給する役割を担ってきた。我が国中間財輸出額の仕向地別推移をみると、2000 年までは米国への中間財輸出が大きかったのが、2000 年以降、中国・香港、ASEAN への輸出が米国をしのいでおり、特に中国への供給の伸びが非常に大きく2009 年には、1990 年比で約8.2 倍にもなっていることがわかる(第2-1-2-6 図)。なお、我が国中間財の全世界向け輸出については2009 年(約3,405 億ドル)で1990 年(約1,313 億ドル)比約2.6 倍となっている。同じ我が国中間財輸出額を仕向地別シェアで示すと、1990 年から2009 年にかけ、我が国中間財に占める中国・香港のシェアは約3 倍の31.6%と最大のシェアを占めるようになっている(第2-1-2-7 図)

第2-1-2-6図 我が国からの中間財輸出額の推移(輸出先別)
第2-1-2-6図 我が国からの中間財輸出額の推移(輸出先別)

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第2-1-2-7図 我が国からの中間財輸出額シェアの推移(1990 年、1999 年、2009 年)
第2-1-2-7図 我が国からの中間財輸出額シェアの推移(1990 年、1999 年、2009 年)

(4)域内貿易を拡大させ、自立性を強めるASEAN

ASEAN はかつてより、東アジア生産ネットワーク内において、中国とともにアセンブリ拠点の役割を果たしてきた。具体的には、日本、韓国、台湾等から中間財を輸入し、それらを組み立てて最終消費地である欧米等先進国へ輸出していた。この10 〜 20 年にかけて、中国がアセンブリ拠点としての存在感を大きく増してきた一方で、ASEAN の貿易動向を見ると、従来とは少々違った形で貿易を深化させている様子が見えてくる。1990 年と2009 年おけるASEAN への中間財輸出額の輸出元別シェアをみると、1990 年での中間財調達先は我が国が22.9%と一番大きなシェアを占めていたのが、2009 年になると、ASEAN 域内からの調達が21.1%と、2 位我が国(シェア11.8%)を大きく離してトップとなっている(第2-1-2-8 図)。

すなわち、我が国からの中間財供給は、ASEAN 域内からの供給に代替され、ASEAN が生産において自律的となりはじめた兆しといえるかもしれない。同地域内の消費規模は順調に増大していることから、今後、域内での調達・生産・消費が拡大するという意味で一層の自立性を増すことも考えられる。上述三角形の世界通商概念図を論じた際に、ASEAN は成長著しい新興国地域でありながら、中国・メルコスールとは違って各国・地域との貿易関係を概ね希薄化させていたのは、域内国・地域の高成長を背景に、ASEAN 域内での貿易の深化を遂げていたからである、とも考えられる。

第2-1-2-8図 ASEAN への中間財輸出額シェアの推移(1990 年、1999 年、2009年)
第2-1-2-8図 ASEAN への中間財輸出額シェアの推移(1990 年、1999 年、2009年)

(5)世界の「生産需要ネットワーク」へ

ここまで、生産面から、「世界の工場」である東アジアネットワークの深化について見てきた。以下、従来のとおり中国が組立輸出拠点としてだけではなく、大きな需要地となりつつあることを示し、この東アジアネットワークが「世界の需要地」となっていく可能性を確認する。各国・地域の中国向け最終財輸出額の推移をみると、2000 年頃を境に各国・地域からの最終財輸出は急増している(第2-1-2-9 図)。中でも注目に値するのは、EU・日本等先進国からの、最終財輸出額の伸びとシェアがともに近年目立っていることである。90 年代は、EU、日本、米国の輸出額についてはそれほど大きな差はなかったが、2000 年代を経て、対中最終財輸出額がEU は4.7倍、日本4.1 倍となっており、米国をさらに引き離した。

第2-1-2-9 図 中国への最終財輸出額の推移(輸出元別。倍率は09 年/99 年の値)
第2-1-2-9 図 中国への最終財輸出額の推移(輸出元別。倍率は09 年/99 年の値)

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以下、各国・地域から中国に集まる2009 年の最終財の輸出額をまとめ、1999 年時点と比較すると、この10 年で各国・地域からの最終財輸出が大きく伸びていることがわかる(第2-1-2-10 図、第2-1-2-11 図)。また、上図でも確認したとおり、EU と我が国から中国への最終財輸出は特に目立っている。EU や我が国からの最終財輸出の伸びが顕著であるということから、中国がEU・日本等の生産する比較的高付加価値な最終製品を需要するようになってきていることが示唆され、中国市場が、「量」においてだけでなく「質」においても水準が上がっていることがうかがえる。ここしばらく、「世界の工場」として欧米への製品供給をしていた東アジアネットワーク構造が、中国需要の圧倒的な拡大により、「世界の需要地=中国」を内包する自律的なネットワークとなる可能性の萌芽が見え始めている可能性もある。それは世界経済危機を背景に、東アジアネットワークにおける欧米市場の存在感が希薄化したことも大きな背景の一つであり、その意味で、世界経済危機は東アジア生産ネットワークの変容をもたらすきっかけとなったとも言えるかもしれない。

第2-1-2-10 図 中国への最終財輸出の流れ(1999 年)
第2-1-2-10 図 中国への最終財輸出の流れ(1999 年)

第2-1-2-11 図 中国への最終財輸出の流れ(2009 年)
第2-1-2-11 図 中国への最終財輸出の流れ(2009 年)

以上、各国・地域から中国への最終財輸出が増えており、中国が東アジア域内外にとっての大きな需要地として存在してきていることを示した。以下、中国最終財輸入について簡単にみてみる。中国が輸入する最終財につき、資本財と消費財の内訳をみると、1990年、2009 年ともに、消費財に比べて資本財の占める割合が大きいことがわかる(第2-1-2-12 図)。この資本財の内容としては、中国の旺盛なる建設需要や設備投資需要に由来する生産要素的なものが多いと考えられる。つまり、上記みてきた中国最終財輸入の増大は、中国内の生産能力増強につながるものであり、中国企業のさらなる競争力強化に資するものとも考えられる。つまり、各国・地域から中国への最終財輸出が増えている事実について、輸出国にとって中国が巨大な「世界の需要地」となりつつあることは確かである一方で、輸出国が巨大な中国「消費」市場を輸出により獲得しつつあるとは、一概には言えないことに注意が必要である。

第2-1-2-12 図 中国への最終財輸出の内訳(生産工程別)
第2-1-2-12 図 中国への最終財輸出の内訳(生産工程別)

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ただし、中国の所得拡大、中間層・富裕層人口の増大は確実に起こっており、消費市場としての潜在力は非常に大きい。我が国としては、東アジアネットワークのもと深化させてきた緊密な貿易投資関係をいかし、中国市場に訴求する製品を供給していくことが今後より一層重要となってくる。中国をはじめとした拡大するアジア消費市場については第3 章においてより深く分析する。

(6)東アジア貿易投資ネットワークに組み込まれるインド

近年の東アジアにおける貿易・投資構造を概観すると、インドが、地域の貿易・投資ネットワークに組み込まれつつあることも注目される。インドについては、近年、高い経済成長を続けており、IMF の見通しによると、2011 年には8.2%の成長が見込まれている。こうした中、成長するインド市場をターゲットに、企業の進出が続き、地域の貿易・投資ネットワークにおけるインドの存在感が高まっている。

我が国との関係を例にとれば、両国間の貿易額は9,391 億円(2009 年)から1 兆2,906 億円(2010 年)と1 年間で約1.4 倍に拡大している。インドから日本への輸出は、鉄鉱石や、宝石・宝飾品等の伝統的な輸出品に加え、近年は石油製品の輸出量が急速に拡大しており、日本からインドへの輸出は、一般機械、電子機器、鉄鋼製品、輸送機器の輸出量が拡大している。直接投資は2,401 億円となっており、進出企業数は2010 年には725 社(2007 年の約2 倍)に拡大している(第2-1-2-13 図)。企業向けアンケートによれば、インドは中期的(今後3 年程度)な有望事業展開先として中国に次いで第2 位となっている2。企業が進出先としてインドを有望視する理由としては、現地市場の成長性に着目する企業が多いことが特徴的である。アンケートでは、市場の成長性を理由とする企業が回答全体の89%を占めており、安価な労働力(44%)、組立メーカーへの供給拠点(22%)等を大きく上回る。

第2-1-2-13図 インドへの進出日系企業数の推移
第2-1-2-13図 インドへの進出日系企業数の推移

インドと東アジア地域との貿易・投資関係も拡大の傾向にある。2009 年時点において、インドの輸出総額(1,652 億ドル)に占めるASEAN10 か国向け輸出額は173.7 億ドル(構成比10.5%)であり10 年前の1999 年の20.8 億ドルと比較して8.4 倍となっている。また、中国向け輸出額は101.5 億ドル(構成比6.1%)であり、1999 年の5.0 億ドルから比較し20.4 倍にもなる。他方、インドの輸入については、2009 年時点において、ASEAN10 からの輸入額は239.4 億ドル(構成比9.3%)と1999 年(42.9 億ドル)比で5.6 倍であり、中国からの輸入は288.3 億ドル(構成比11.2%)と1999 年(11.8 億ドル)比で24.5 倍にもなる。

次に、東アジアの中間財・最終財貿易の中でのインドの貿易動向を確認する。東アジアからインドへの中間財輸出と、インドから欧米への最終財輸出はともに急拡大しており、インドが新たな中間財組立・輸出拠点の一つとして東アジアネットワークに組み込まれてきている可能性が考えられる(第2-1-2-14 図、第2-1-2-15 図)。東アジアからインドへの中間財輸出は、2009 年時点で418.9 億ドルと、1999 年比で5.4 倍となっている。その中でも、中国からインドへの中間財輸出は2009 年時点で144.4 億ドルと、1999 年比で15.5 倍と飛躍的に伸びている。一方、東アジアからインド向けの最終財輸出についても、2009 年時点で196.3 億ドルと、1999 年比で9.4 倍となる等大きく伸びており、飛躍的な経済成長や拡大する人口規模等を背景とした、一大需要地としての存在感を増している(第2-1-2-16 図、第2-1-2-17 図)。

第2-1-2-14 図 インドを中心とする中間財・最終財貿易の動向(億ドル)
第2-1-2-14 図 インドを中心とする中間財・最終財貿易の動向(億ドル)

第2-1-2-15 図 インドを中心とする中間財・最終財貿易の動向(億ドル)
第2-1-2-15 図 インドを中心とする中間財・最終財貿易の動向(億ドル)

第2-1-2-16 図 インドへの最終財輸出の流れ(億ドル)
第2-1-2-16 図 インドへの最終財輸出の流れ(億ドル)

第2-1-2-17 図 インドへの最終財輸出の流れ(億ドル)
第2-1-2-17 図 インドへの最終財輸出の流れ(億ドル)

こうした中、アジアに進出している日本企業の中でも、進出先からの輸出先としてインドを重視する企業が増えている。JETRO の「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」によれば、特にシンガポール、タイ、インドネシアにおいてインドを最重要市場とする日系企業が多い。シンガポールにおいてインド進出を重視する日系企業を業種別にみると、「運輸・倉庫業」が71.4%と顕著であるが、これは同国のインド向け物流の拡大とインドへのアクセスの良さが背景にあると考えられる3

このように、インドは東アジアにおける貿易・投資ネットワークに組み込まれつつあるが、同国の事業環境については、様々な課題が指摘される。前記アンケート調査によれば、インフラの未整備(回答数の48%)が最大の課題として指摘されている。このほか、他社との激しい競争(32%)、法制の運用の不透明性(27%)等を指摘する企業が多い4。こうした課題については、二国間の協力事業やEPA の発効5 とともに、「アジア総合開発計画」6や東アジア包括的経済連携構想による東アジアワイドでの取組によって改善していくことが期待される(第2-1-2-18 図、第2-1-2-19 図)。

第2-1-2-18 図 2011 年2 月16 日の日印EPA 署名式の様子
第2-1-2-18 図 2011 年2 月16 日の日印EPA 署名式の様子

第2-1-2-19 図 アジア総合開発計画の概要
第2-1-2-19 図 アジア総合開発計画の概要

2 JBIC「我が国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告2010年版」。

3 JETRO「在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査」。

4 JBIC

5 日印EPA は2011年8月1 日に発効(予定)。

6 ERIA が中心となって策定した、アジア所得倍増に向け、域内のハード・ソフトのインフラ開発、産業振興を一体的に進めるための戦略。2010 年8 月の東アジア経済大臣会合で合意され、10 月の東アジアサミットで報告され、各国首脳から評価された。地域毎の具体的なハードインフラ開発プロジェクトのリストとして、約700 のプロジェクトを列挙し、プロジェクトの優先順位付けを行った。投資総額は約3,900億ドル。





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