第2章 我が国の貿易・投資の構造と変容

第1節 我が国の通商・経済の変遷と構造変化

4.「国産化率」と「国内残存率」を使った比較

(1)「国産化率」を使った比較

次に、各国の違いを、生産部門別に分けて示す。まず産業間の連関をまとめた、財の供給と生産における国産の比率を示す「国産化率」の変化を見てみる。「国産化率」は、「波及効果」と異なり、生産工程をさかのぼらずに国産と輸入の構成を見る方法である。ここでは「国産化率」の内、「供給面の自給率」と「生産面のローカル・コンテント率」の比較を行う18。ただし、EU27は、その産業連関表の精度の問題から、2000年のグラフを参考値として掲載する。

まず「供給面の自給率」とは、車を例にすると、国内で流通する車に占める国産車の比率、つまり供給に占める国産の比率である。

これを国別に比較すると、我が国と比較して、米国とドイツは全般的に、特に第二次産業の値が低い。また、EU27全体は「12.電気機械」、「13.情報・通信機器」、「15.精密機械」などを除けば、我が国と同じ程度であることが分かる。

一方、この「供給面の自給率」の変化は、いずれも減少傾向であることが分かる。また、部門別には「2.鉱業」だけでなく「4.繊維製品」、「13.情報・通信機器」、「15.精密機械」の大幅な減少が確認できる。つまり、エレクトロニクス関連の「供給面の自給率」が減少している。(第2-1-4-1図)

18 藤川(1998)で用いられている四種類の「国産化率」の内、二種を用いた。


第2-1-4-1図 各国、地域の「供給面の自給率」の比較
第2-1-4-1図 各国、地域の「供給面の自給率」の比較

Excel形式のファイルはこちら


一方、「生産面のローカル・コンテント率」とは、同じく車を例にすると、車の生産に必要な中間財の国産比、つまり生産で使われる財の国産比率である。この「生産面のローカル・コンテント率」を比較すると、同じく全体的に減少傾向であることが分かる。

各国の「生産面のローカル・コンテント率」を比較すると、米国の「生産面のローカル・コンテント率」は我が国に比べて低くないことが分かる。ただし、「供給面の自給率」が低いということと合わせると、生産自体の国産率は高くても、生産そのものの水準が低いことになる。一方、ドイツの場合は「生産面のローカル・コンテント率」が全体的に低く、特に第三次産業の値が低いことが分かる。またEU27を見ると、総じて「生産面のローカル・コンテント率」が高い。この値は、国際分業がEU27内で完結していれば高くなることから、EU27全体で見た場合は「経済圏」として独立性が高いことが分かる。(第2-1-4-2図)

第2-1-4-2図 各国、地域の「生産面のローカル・コンテント率」の比較
第2-1-4-2図 各国、地域の「生産面のローカル・コンテント率」の比較

Excel形式のファイルはこちら


(2)「生産工程」と「全行程」の「国内残存率」

次に、国内の経済の構造を詳しく見るため、産業別に分け、産業間の連関構造で「波及効果」がどれだけ国外に流出しやすくなったかを示す。そのため、「国内残存率」を使った分析を行う。「国内残存率」とは、ある最終財の需要によって生じる、ある生産部門の「波及効果」の内、国内に残る率を示す行列のことである。ここでは「生産工程」と「全行程」の二種類の「国内残存率」を用いる。

「生産工程」:
国産の最終財が消費されたことを前提に計算した「国内残存率」
「全行程」:
最終財消費での国産と輸入の選択を含めて計算した「国内残存率」

二つの値の違いは、最終財消費における輸入を含めて計算するかどうかであり、例を用いてこの違いを示す。まず、最終財の生産から、「部品」、「加工品」、「素材」の順で「波及効果」が流れ、「素材」を除く国産財の購入率は一律80%であるとする。その状況で生じる「生産工程」、「全行程」の「国内残存率」の比率を示したのが、第2-1-4-3図である。

第2-1-4-3図 輸入による「国内残存率」の変化の例
第2-1-4-3図 輸入による「国内残存率」の変化の例

Excel形式のファイルはこちら


第2-1-4-3図にある比率は、「最終財」がそれぞれの生産部門に与える「波及効果」の「国内残存率」になる。このように、生産工程をさかのぼるほど、国内に残る「波及効果」は、乗数(かけ算)で小さくなっていく。

(3)「国内残存率」の計算方法とグラフ化

この第2-1-4-3図で示したような値を、最終財別に縦に並べると、第2-1-4-4図左の表になる。つまり、第2-1-4-4図左の表の「車」の値は、第2-1-4-3図右の値を縦に並べたものである。なお、「素材」の列(縦)など幾つかの欄は、その生産工程での消費が存在しないことをゼロの場合と区別するため、値を記入していない。

また、「国内残存率」の値の数は生産部門数の2乗と多数になり、それらの数値を網羅するのは困難である。そこで第2-1-4-4図右のように、サーモグラフィーの表現を用い視覚化している19。サーモグラフィーの表現では、「波及効果」が国内に残る率が高い箇所は赤や黄などの暖色系になり、残る率が低い箇所は水色から青の寒色系になる。なお、第2-1-4-4図左の空白、第2-1-4-4図右の灰色は値が存在しないことを示し、ゼロやそれに近い値と区別がつくようにしてある。

19 この表現は『通商白書2011』第2章第3節でも用いたものであり、我が国の産業分類に基づき、1990年から2005年の変化を見る場合は、こちらを参照。


第2-1-4-4図 「国内残存率」の数値例と視覚化
第2-1-4-4図 「国内残存率」の数値例と視覚化

PowerPoint形式のファイルはこちら


(4)「国内残存率」の比較

この「国内残存率」を用いて、各「経済圏」の産業連関構造を示す20。ただし、EU27の「国内残存率」は、その産業連関表の精度の問題から、2000年のグラフを参考値として掲載する。

第2-1-4-5図〜第2-1-4-8図は、各「経済圏」の「生産工程」、「全行程」、それらの変化をグラフにしたものである。これらを比較する形で、我が国の変化を明示する。

20 本節では、28部門表を用いている。しかし、第三次産業の「国内残存率」は高く、変化も少ない。そこで「国内残存率」では、「19.商業」から「28.対個人・事務所サービス」までを一部門に統合した。19部門表を用いた。


第2-1-4-5図 我が国の「国内残存率」の変化
第2-1-4-5図 我が国の「国内残存率」の変化

Excel形式のファイルはこちら


第2-1-4-6図 米国の「国内残存率」の変化
第2-1-4-6図 米国の「国内残存率」の変化

Excel形式のファイルはこちら


第2-1-4-7図 ドイツの「国内残存率」の変化
第2-1-4-7図 ドイツの「国内残存率」の変化

Excel形式のファイルはこちら


第2-1-4-8図 EU27、2000年の「国内残存率」(参考)
第2-1-4-8図 EU27、2000年の「国内残存率」(参考)

Excel形式のファイルはこちら


まず第2-1-4-5図の、我が国の変化を見る。1995年の「生産工程」を見ると、横方向は「1.農林水産業」、「2.鉱業」以外が赤く、国内に「波及効果」が残りやすい状況であったことが分かる。これが2005年になると、多くの部門が緑色になることから、「国内残存率」が大きく落ち込んでいることが分かる。またこれは左下の「生産工程の変化」の多くが濃い青色をしていることからも分かる。

次に、我が国の「全行程」の「最終財消費」の色の変化を見ると、「4.繊維製品」、「12.電気機械」、「15.精密機械」が低くなっていることが分かる。つまり、最終財におけるこれらの製品の国産率が大きく低下したことになる。また、この最終財の輸入を受けて、生産がされなくなった分、国内の生産部門に流れる「波及効果」が少なくなっている。

また、右下の「全行程の変化」を見ると、最終財消費では赤色の箇所が多く、生産工程では青色の箇所がほとんどである。これは国内の産業連関構造が寸断され、生産活動の産業連関を通して「波及効果」が行き渡りにくくなったと同時に、輸出の増加により最終財に占める国産の比率が増加したことを意味する。これは、産業連関表では輸出を全て「最終財」として扱うため、他国との生産工程の国際分業が進んだことで中間財輸出が増加してもデータ上は最終財の増加として表現されることによる。

次に、第2-1-4-6図の米国の「生産工程」を見ると、米国は1995年時点から、「11.一般機械」から「15.その他の製造工業製品」までの重工業の中間財の調達を、輸入に依存していたことが分かる。これが2005年になると、「4.繊維製品」以降の製造業全般に及んでいる。

また、米国の「全行程」を見ると、「4.繊維製品」と「12.電気機械」から「15.その他の製造工業製品」までの最終財消費における国産購入率が低くなっており、これにより「全行程」の「国内残存率」が低下している。また右下の「全行程の変化」を見ると、我が国と比べて、「最終財消費」の赤の部分が少ない。これは、第2-1-2-1図で示したように、米国では輸入が増加しているのに対し、輸出は増加していないためである。

次に第2-1-4-7図からドイツの変化を見てみると、ドイツは1995年の時点で既に緑色をしている。これは、1995年の時点で既に、欧州他国との強い経済的なつながりが存在していたことを示している。次に、左下の「生産工程の変化」を見ると我が国とは部門は異なるが、同様に「国内残存率」は低下していることが分かる。

また、ドイツの「全行程」を見ると、最終財消費の「1.農林水産業」、「4.繊維製品」、「12.電気機械」の値が低い。また右下の「全行程の変化」を見ると、我が国と同様に、最終財消費における国産購入率が増加している部門が多いことが分かる。しかし、第2-1-2-7図のEU27内の貿易額の増加、また第2-1-4-8図EU27の「国内残存率」が高いことと合わせて考えると、EU27という「経済圏」の加盟国とのつながりが強まったことによるものと考えられる。

(5)「国内残存率」を使った輸入面のまとめ

以上、「内需」、「外需」によって誘発される「波及効果」がどれだけ国内に留まるかを示した、「国内残存率」を使った分析の結果を示した。

これらの結果をまとめると、まず我が国の「国内残存率」は1995年から2005年にかけて大きく減少した。一方、ドイツは1995年の時点で「国内残存率」が我が国に比べて相当低かったこと、また2005年までの10年間で我が国と同じ程度に「国内残存率」が減少していた。また我が国とドイツでは、中間財輸出の増加により「最終財」に占める国産率が増加し、中間財輸入の増加により生産工程の「国内残存率」は減少するという共通した傾向が見られた21

ただし、ドイツは元々、輸出と輸入のGDP比が共に我が国の2倍以上あり、この状況で更に「波及効果」が流出しやすい状況になっていることから、我が国よりも深刻であるかに見える。しかし、第2-1-3-6図では、我が国の「波及効果の自給度」が横ばいであったのに対し、ドイツは増加しており、この結果と反している。この相反する性質が同時に存在する構造を知るには、輸入による「波及効果の流出」面だけではなく、輸出による誘発面を含めた、「波及効果の自給度」を見る必要がある。

21 産業連関表では中間財輸出は最終財輸出との区別無く、輸出として扱われる。また、輸出財の国産率は100%となるよう表が作成されるため、中間財輸出が増加すると、国産率が増加する。





前の項目に戻る   次の項目に進む