経済産業省
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第2節 過去最大の貿易赤字と我が国企業の競争力

1.過去最大の貿易赤字の背景

(1)貿易動向の概観

 2012年の貿易収支(財務省「貿易統計」)は、過去最大の-6兆9,411億円となった。これまでの過去最大の赤字額は、第二次石油危機に見舞われた1980年の-2兆6,129億円であったが、これを32年振りに上回った(第Ⅲ-3-2-1図)。

第Ⅲ-3-2-1図 我が国の貿易収支の推移

 昨年に引き続き、世界景気の減速などを背景とした輸出の減少と火力発電用途のLNG需要増などを背景とした輸入の増加により収支が悪化しており、輸出額は前年比-2.7%の63兆7,476億円、輸入額は前年比+3.8%の70兆6,886億円となった。

(2)貿易相手国・地域別及び品目別の貿易動向

 2012年の貿易収支を地域別に見ると、EUとの貿易収支が-1,412億円と初の赤字となった他、中国との貿易赤字が-3兆5,296億円と過去最大となった(第Ⅲ-3-2-2図)。欧州債務危機の影響が残るEU向け輸出が-14.7%(輸出総額前年比寄与度-1.71%)、景気拡大ペースが鈍化した中国向けの輸出が-10.8%(同-2.13%)と、両地域向けの輸出の不振が影響しているものと考えられる。

第Ⅲ-3-2-2図 地域別貿易収支の推移

 輸出を品目別に見ると、幅広い品目で輸出額が減少した。特に、一般機械は輸出額前年比寄与度が-1.47%と大きくマイナスに寄与した。これは、中国向けの原動機、建設用・鉱山用機械等の輸出額減少が大きく寄与したものと考えられる。他方、輸送用機器については、米国向けの自動車及び同部分品の輸出増に支えられ、前年比寄与度が+1.47%とプラスの寄与となった(第Ⅲ-3-2-3表)。

第Ⅲ-3-2-3表 貿易相手国・地域別の輸出額増減寄与度(2012年)

 また、輸入については、鉱物性燃料(原油及び粗油、液化天然ガス等)の輸入額増、とりわけ中東からの液化天然ガス輸入額増の寄与が大きい(第Ⅲ-3-2-4表)。

第Ⅲ-3-2-4表 貿易相手国・地域別の輸入額増減寄与度(2012年)

(3)価格・数量要因から見た貿易収支の動向

 2012年の貿易赤字額(-6.9兆円)は、2011年と比べて、4兆3,763億円ほどの赤字拡大となった。貿易赤字が2011年から拡大した要因を、輸出価格、輸出数量、輸入価格、輸入数量に分解してみると、輸出数量の減少(貿易赤字拡大-4.4兆円に対する寄与分は-3.0兆円)、輸入価格の上昇(同-1.1兆円)、輸入数量の増加(同-1.4兆円)が赤字拡大に寄与していることが分かる。

 2012年の貿易赤字拡大への寄与度の大きさは、輸出数量要因:輸入価格要因:輸入数量要因≒54:19:26となった。2011年の貿易赤字拡大への寄与度の大きさが、輸出数量要因:輸入価格要因:輸入数量要因≒22:57:21であったことと比較すれば、輸出数量減少の影響度合いが大きくなっている。一方、2011年の貿易赤字拡大への寄与度の大きかった輸入価格要因は、2012年初から2012年9月~11月頃まで鉱物性燃料(原油及び粗油、液化天然ガス等)の輸入価格の上昇が鈍化傾向にあったことから、寄与度は小さくなっている(第Ⅲ-3-2-5図)。

第Ⅲ-3-2-5図 貿易収支(前年差)の要因分解

①輸出価格、輸出数量の影響

 上記(2)において確認した通り、主要輸出品目のうちでは輸送用機器を除く幅広い品目で、輸出額が減少している。価格要因・数量要因を見ると、一般機械、電気機器で輸出数量減少の影響が大きく現れている(第Ⅲ-3-2-6図)。

第Ⅲ-3-2-6図 品目別輸出金額の前年比寄与度分解

 輸出数量減少の背景としては、世界景気の減速が主に挙げられるが、次項の分析に見られる通り、我が国企業の輸出競争力が趨勢的に低下してきていることも影響していると考えられる。こうした状況は、新興輸出国企業との競合関係からも確認できる。主要国との輸出構造の類似性指数245を見ると、韓国とは90年代末頃から2000年代央にかけて類似性が高まっており、中国とはほぼ一環して競合度合いが高まってきている(第Ⅲ-3-2-7図)。

245 輸出構造の類似性指数(Export Smilarity Index)とは、比較しようとする2国のそれぞれの輸出総額に占める各輸出品目のシェアを算出し、シェアの小さい方の数値を全ての輸出品目について合計したもの。輸出構造が完全に一致していれば1となる。指数の値が高いほど輸出構造の類似性が高いことを意味している。

第Ⅲ-3-2-7図 主要国との輸出構造の類似性指数の推移

②輸入価格・輸入数量の影響

 既に、2012年の輸入額増加は、高効率火力発電所用の液化天然ガスを中心に鉱物性燃料の輸入増加が寄与していることを見てきた。また、2011年に比して輸入価格要因の縮小、輸入数量要因の拡大という特色があることを確認した。輸入品目別で見ても、同様の傾向が確認できる。即ち、鉱物性燃料の輸入価格上昇と輸入数量増加が、輸入金額全体の増加に大きく寄与している(第Ⅲ-3-2-8図)。ただし、2012年の鉱物性燃料とその内訳である石油及び同製品、液化天然ガスの輸入価格は、いずれも価格上昇のペースが鈍化した(第Ⅲ-3-2-9図)ため、輸入価格要因が輸入額増に与えた影響は2011年に比べて控え目となっている。

第Ⅲ-3-2-8図 品目別輸入金額の前年比寄与度分解

第Ⅲ-3-2-9図 鉱物性燃料等の輸入価格の推移

(4)2012年第4四半期以降の為替変動と貿易動向

 2012年10月頃から為替相場が円安基調に転じている(第Ⅲ-3-2-10図)。この間の為替変動が貿易動向にどのような影響を与えたかを貿易指数により確認してみると、輸出入金額とも2012年10月頃からそれまでとは違った傾向が現れている。

第Ⅲ-3-2-10図 為替相場の推移

 輸出金額については、2012年10月頃から前年比でのマイナス幅が縮小してきており、2013年3月、4月(速報値)と輸出金額は前年比プラスで推移している。輸出金額を、輸出価格と輸出数量に分解してみると、輸出価格は、円安基調の継続を背景に上昇傾向を辿っている一方で、輸出数量は前年比マイナス領域で低迷していることから、輸出価格上昇の影響により輸出金額が上向いてきていると言える。為替相場の円安傾向の継続は、輸出企業の価格競争力の向上を通じて輸出数量を増加させる効果が期待されるが、輸出数量は持ち直しの兆しがみられるものの、2013年4月までのところ、依然として前年比ではマイナス領域を推移している。

 他方、輸入金額については、円安を背景とした輸入価格上昇と、鉱物性燃料等に対する需要の底堅さを背景とした輸入数量の横這い推移により、上昇傾向を辿っている(第Ⅲ-3-2-11図)。

第Ⅲ-3-2-11図 貿易指数(前年比)の推移

2.我が国企業の競争力の現状

(1)世界輸出に占めるシェア

 最近の我が国の輸出動向を見ると、リーマンショック後の回復が遅れている(第Ⅲ-3-2-12図)。既に欧米やアジア主要国がリーマンショック以前の水準を超えて拡大する中で、我が国はリーマンショック時の水準にも回復していない(第Ⅲ-3-2-13図)。震災等の影響があるとしても、長期的に見て輸出競争力が低下している可能性がある。

第Ⅲ-3-2-12図 日本の貿易額の推移

第Ⅲ-3-2-13図 主要国の輸出額の推移(2008=100)

 我が国の輸出を品目別に見ると、主要輸出品3品目、一般機械、電気機械、自動車(3品目で総輸出の過半を占める)のうち、リーマンショック前の水準を取り戻しているのは一般機械のみとなっている(第Ⅲ-3-2-14(1)図)。特に貿易黒字(輸出-輸入)に着目した場合、電気機械の黒字額はむしろリーマンショック前から低下に向かっている(第Ⅲ-3-2-14(2)図)。我が国の輸出を第1部第1章の産業の分類に基づいて示すと、一般機械、輸送用機械、化学、金属、電気機械の我が国の輸出に占めるシェアが高いことが分かる(電気機械は2000年以降急速に我が国の輸出に占めるシェアを減らしている(第Ⅲ-3-2-15図))。

第Ⅲ-3-2-14図 日本の主要品目の貿易額の推移

第Ⅲ-3-2-15図 日本の輸出に占める産業別シェア

 そこで、我が国の輸出競争力が本当に低下しているのかどうか、2つの指標(世界の輸出額に占める日本のシェア、貿易(輸出)特化係数)をもとに評価を試みる。具体的にはこれらの指標を通じて我が国の長期的な輸出(総輸出及びその主要輸出品目)の推移を見るとともに、他の主要国についても同様に分析し比較する。

 2つの指標のうち、まず世界の輸出額に占めるシェアを通じた分析から始める。既に我が国の「輸出額」については見たが、「世界の輸出額に占める日本の輸出額のシェア」を見る意味は、たとえ我が国の輸出が伸びていても、他国も伸びていれば競争上の地位は変わっていないことになるからである。

 我が国の世界輸出に占めるシェアを示したのが第Ⅲ-3-2-16表であり、その長期的な推移をグラフ化したものが第Ⅲ-3-2-17図である。これを見ると、我が国の総輸出のシェアは緩やかに低下している。その中で主要な輸出品として2011年輸出額の上位10品目を選んでシェアの推移を見ると、一般機械、自動車、電気機械、精密機械等のシェアが傾向的に低下していることが分かる246

第Ⅲ-3-2-16表 日本の主要輸出品の世界輸出に占めるシェア(2011年)

246 我が国と他国の比較を行うことを念頭に世界共通の関税品目コードであるHSコード(Harmonized Commodity Description and Coding System : 商品の名称および分類についての統一システム)を利用して分析を行う。HSコードは6桁の数字で表記され、上から2桁、4桁、6桁と桁が下がるごとに細分化されていく。ここではHSコードの2桁分類で輸出額の大きな品目を選び、必要に応じてその細分に当たる4桁分類におりて分析する。なお、HSコードの品目名は簡略化してある。

第Ⅲ-3-2-17図 日本の主要輸出品の世界輸出に占めるシェアの推移

 それでは、一般機械、自動車、電気機械、精密機械の中で、具体的にはどのような細目がシェアを低下させているのか見てみる。

 一般機械の中で主要な品目として、2011年輸出額の上位10品目のシェアを掲げたものが第Ⅲ-3-2-18表であり、その長期的な推移を図示したのが第Ⅲ-3-2-19図である247。なお、参考に現在では輸出額が低下してしまったが1995年当時は上位にあった品目等も併せて掲載した248

247 原則として貿易データは、国連Comtradeのデータを利用(国連Comtradeから直接、または世銀WITSのシステムを通じて入手)。HSコードのバージョンについては、時系列推移を見るために国連Comtradeが提供する1992年版を最新年まで通して利用している。このため、途中年におけるコード変更の影響も補正されているが、それでも品目によっては補正しきれない統計上の不連続が残っている場合がある(印刷機HS8443等)。また、途中年に新設されたコード番号が表示されないという弱点もある(半導体製造装置HS8486等)。このような場合は必要に応じて注釈を付す等対応した。

248 1995年を始点としているのは統計整備の関係。HSコードは1988年に導入が始まったが国によってデータの利用可能な開始年が異なるため。1995年であればHSコードで世界の総輸出額がほぼ把握できると見られる(別の品目コードであるSITCで集計した総輸出額に対して、1988年は31.4%しかカバーしていないが、1995年であれば99.5%をカバーしている)。

第Ⅲ-3-2-18表 世界の輸出に占める日本のシェア(一般機械/2011年)

第Ⅲ-3-2-19図 世界輸出に占める日本のシェアの推移(一般機械)

 これを見ると、一般機械の中でブルドーザーは高水準を維持しているが、自動データ処理機械(パソコン等)、事務用機器部品が大きく低下している。その他に、エンジン部品、ポンプ、ギアボックス、ベールベアリング、内燃機関等も低下している。

 また、複数のコード番号を合計して工作機械のシェアを求めてみると、緩やかに低下してきたものの、最近は上昇して高い水準を回復している。なお、新設されたコード番号のため長期の時系列比較ができないものの、半導体製造装置は世界輸出の約1/3を日本が占めている。

 同様に電気機械について見てみると、1990年には日本の主要輸出品を形成していたものの、その後はコモディティ化が進んだといわれているテレビ、ラジオ、ビデオレコーダー、ブラウン管、磁気テープ・ディスクの日本シェアが低下している(第Ⅲ-3-2-20表、第Ⅲ-3-2-21図)。一方、現在の主要輸出品の中では、コンデンサーが高いシェアを維持しているものの、集積回路、半導体デバイス、無線電話、ビデオ・デジタルカメラ等のシェアが低下している。

第Ⅲ-3-2-20表 世界の輸出に占める日本のシェア(電気機械)

第Ⅲ-3-2-21図 世界の輸出に占める日本のシェアの推移(電気機械)

 自動車の中では、モーターサイクルが急速にシェアを低下させている(第Ⅲ-3-2-22表、第Ⅲ-3-2-23図)。また、乗用車はリーマンショックまで安定的に推移したが、リーマンショック後はシェアの低下傾向が見られる。

第Ⅲ-3-2-22表 世界の輸出に占める日本のシェア(自動車)

第Ⅲ-3-2-23図 世界の輸出に占める日本のシェアの推移(自動車)

 精密機械の主要輸出品の中では、レンズ・プリズム・鏡で日本のシェアが大きく低下(第Ⅲ-3-2-24表、第Ⅲ-3-2-25図)。また、液晶デバイス、光ファイバー等のシェアが一旦は上昇したものの、その後低下に向かっている。

第Ⅲ-3-2-24表 世界の輸出に占める日本のシェア(精密機械)

第Ⅲ-3-2-25図 世界の輸出に占める日本のシェアの推移(精密機械)

 次に日本以外の主要国の動向を見てみることにする。2011年の世界輸出に占めるシェアの上位国を調べてみると、1位が中国、2位がドイツ、3位が米国、日本は4位であった(第Ⅲ-3-2-26図)249。上位10か国について過去に遡ってシェアの推移を見ると、中国が急速にシェアを上昇させており、韓国も緩やかにシェアが上昇していることが確認できる(第Ⅲ-3-2-27図)。一方、先進国はシェアを低下させている国が多く、特に米国のシェアが大きく低下している。

249 各国の輸出額順位、世界輸出に占めるシェアは国連Comtradeのデータから計算しているが、データベースによって、為替レート、対象国・地域等の関係から若干の相違が生じることがある。

第Ⅲ-3-2-26図 世界の輸出に占める主要国のシェア(2011年)

第Ⅲ-3-2-27図 世界の輸出に占める主要国のシェアの推移

 新興国の中から中国及び韓国、先進国の中から米国及びドイツを選び、各国の輸出概要を確認するとともに、先の分析で日本がシェアを低下させていた一般機械、電気機械等の品目に関して動向を見ていく。

(韓国)

 まず、韓国から見てみる。世界シェアを上昇させている韓国は輸出額自体が増加傾向にある。主要輸出品として輸出額上位10品目を見ると、電気機械の輸出額が突出し、自動車、一般機械等が続いている(第Ⅲ-3-2-28図)。貿易黒字の上位品目を見ると、自動車、電気機械の貿易黒字が大きい(第Ⅲ-3-2-29図)。なお、一般機械は輸入も大きいため黒字額としては余り大きくはない。

第Ⅲ-3-2-28図 韓国の主要品目の輸出額の推移

第Ⅲ-3-2-29図 韓国の主要品目の貿易黒字額の推移

 韓国の世界輸出に占めるシェアは2000年代に入ってから緩やかに上昇している。主要輸出品(輸出額上位10品目)の中では、自動車が上昇するとともに、精密機械の急速な上昇が目立つ(第Ⅲ-3-2-30表、第Ⅲ-3-2-31図)。電気機械は1990年代から2000年代にかけて上昇し、その後は安定的に推移している。

第Ⅲ-3-2-30表 韓国の主要輸出品の世界輸出に占めるシェア(2011年)

第Ⅲ-3-2-31図 韓国の主要輸出品の世界輸出に占めるシェアの推移

 日本がシェアを落としている一般機械、電気機械、自動車、精密機械について、韓国のシェアを細目に降りて見てみる。韓国の一般機械の主要品目(一般機械の中で輸出額上位10品目)の中では、ブルドーザー等がシェアを拡大している一方で、自動データ処理機械(パソコン等)は大きく低下している(第Ⅲ-3-2-32図)。

第Ⅲ-3-2-32図 世界の輸出に占める韓国のシェア(一般機械)

 電気機械では、無線電話、ビデオ・デジタルカメラはシェアが高いものの、振幅が大きい(第Ⅲ-3-2-33図)。また、集積回路、電信機器用部品は2000年代に入って上昇基調で推移している。

第Ⅲ-3-2-33図 世界の輸出に占める韓国のシェアの推移(電気機械)

 自動車では、主要品目のうち、乗用車、自動車部品がシェアを上昇させている(第Ⅲ-3-2-34図)。10人乗り以上の自動車(バス等)はシェアが大きいものの、その変動が大きい。

第Ⅲ-3-2-34図 世界の輸出に占める韓国のシェアの推移(自動車)

 急速にシェアが拡大している精密機械の中では、液晶デバイス、光ファイバーのシェアの上昇が顕著(第Ⅲ-3-2-35図)。

第Ⅲ-3-2-35図 世界の輸出に占める韓国のシェアの推移(精密機械)

(中国)

 次に中国を見ると、輸出額は急増しており、特に、電気機械、一般機械の2品目が突出して拡大している(第Ⅲ-3-2-36図)。貿易黒字では、一般機械が大きく伸びており、これに電気機械、衣類等が続いている(第Ⅲ-3-2-37図)。

第Ⅲ-3-2-36図 中国の主要品目の輸出額の推移

第Ⅲ-3-2-37図 中国の主要品目の貿易黒字額の推移

 中国の世界輸出に占めるシェアは一貫して上昇している。主要品目(輸出額の上位10品目)のシェアの動きを見ると、衣類、家具などの軽工業品に加え、電気機械、一般機械等の幅広い品目でシェアが上昇している(第Ⅲ-3-2-38表、第Ⅲ-3-2-39図)。そのため、衣類等を中心に世界シェアが極めて高い水準に達している。例えば、衣類、履物は世界輸出の約4割、電気機械、一般機械は約2割を中国が占めている。

第Ⅲ-3-2-38表 中国の主要輸出品の世界輸出に占めるシェア(2011年)

第Ⅲ-3-2-39図 中国の主要輸出品の世界輸出に占めるシェアの推移

 一般機械の主要品目のシェアの推移を見ると、多くの品目で急上昇している。特にエアコンは世界輸出の約半分、自動データ処理機械(パソコン等)は約3割を中国が占めるまでに至っている(第Ⅲ-3-2-40図)。

第Ⅲ-3-2-40図 世界の輸出に占める中国のシェアの推移(一般機械)

 電気機械でも主要品目でシェア上昇が顕著。湯沸器のような家電製品とともに、無線電話、ビデオ・デジタルカメラ、印刷回路、半導体のようなIT製品もシェアが上昇(第Ⅲ-3-2-41図)。

第Ⅲ-3-2-41図 世界の輸出に占める中国のシェアの推移(電気機械)

 自動車に分類される主要項目の中では、自転車が高いシェアを有するとともに、モーターサイクルは完成品・部品ともシェアを上昇させている(第Ⅲ-3-2-42図)。

第Ⅲ-3-2-42図 世界の輸出に占める中国のシェアの推移(自動車)

 精密機械の中では、液晶デバイス、光ファイバー、眼鏡、レンズ・プリズム・鏡がシェアを上昇させており、特に液晶デバイスのシェア上昇が顕著(第Ⅲ-3-2-43図)。

第Ⅲ-3-2-43図 世界の輸出に占める中国のシェアの推移(精密機械)

(ドイツ)

 ドイツの主要輸出品を見ると、一般機械、自動車、電気機械が大きい(第Ⅲ-3-2-44図)。輸出額はリーマンショック後大きく落ち込んだが回復してきている。貿易黒字では、一般機械、自動車の2品目が突出している(第Ⅲ-3-2-45図)。なお、電気機械は輸入も大きいため黒字額はそれほど大きくない。

第Ⅲ-3-2-44図 ドイツの主要品目の輸出額の推移

第Ⅲ-3-2-45図 ドイツの主要品目の貿易黒字額の推移

 ドイツの世界輸出に占めるシェアは微減している。主要品目を見ると、自動車及び航空機はシェアが上昇している。一般機械、電気機械等はシェアが微減しているが2000年以降は安定的に推移している(第Ⅲ-3-2-46表、第Ⅲ-3-2-47図)。また、医療用品のシェアも高い。

第Ⅲ-3-2-46表 ドイツの主要輸出品の世界輸出に占めるシェア(2011年)

第Ⅲ-3-2-47図 ドイツの主要輸出品の世界輸出に占めるシェアの推移

 一般機械は、主要品目のシェアが比較的安定的に推移250。ギアボックス、エンジン部品におけるシェアが高い(第Ⅲ-3-2-48図)。

250 2007年に印刷機(HS8443)が大きく低下しているのはコード改訂の影響。2007年のコード改訂によって、複写機、ファックス、これらの部品が追加されたため、正確には統計が継続しない。

第Ⅲ-3-2-48図 世界の輸出に占めるドイツのシェアの推移(一般機械)

 電気機械は、トランスフォーマーが上昇、電気回路スイッチ、電動機・発動機が安定的に推移するが、集積回路、スイッチ・配電盤部品等がシェアを低下させている(第Ⅲ-3-2-49図)。

第Ⅲ-3-2-49図 世界の輸出に占めるドイツのシェアの推移(電気機械)

 自動車では、乗用車のシェアが緩やかに上昇(第Ⅲ-3-2-50図)。自動車部品も安定的に推移している。

第Ⅲ-3-2-50図 世界の輸出に占めるドイツのシェアの推移(自動車)

 精密機械の主要品目の中で、輸出額第1位の医療用機器が堅調に推移するとともに、レントゲン、測定用・検査用機器が高水準を維持(第Ⅲ-3-2-51図)。一方、液晶デバイスはシェアが低下している。

第Ⅲ-3-2-51図 世界の輸出に占めるドイツのシェアの推移(精密機械)

(米国)

 米国の輸出動向を見ると、輸出額では、一般機械、電気機械、自動車が大きい(第Ⅲ-3-2-52図)。リーマンショック後に大きく落ち込んだが、回復しつつある。貿易黒字では、航空機が突出しており、穀物、種・果実、プラスチック等が続く(第Ⅲ-3-2-52図、第Ⅲ-3-2-53図)。

第Ⅲ-3-2-52図 米国の主要品目の輸出額の推移

第Ⅲ-3-2-53図 米国の主要品目の貿易黒字額の推移

 米国の世界輸出に占めるシェアは緩やかに低下してきている(第Ⅲ-3-2-54表)。主要輸出品を見ると、航空機が高いシェアを維持する一方で、一般機械、電気機械、自動車、精密機械、有機化学品等幅広い品目でシェアが低下(第Ⅲ-3-2-55図)。

第Ⅲ-3-2-54表 米国の主要輸出品の世界輸出に占めるシェア(2011年)

第Ⅲ-3-2-55図 米国の主要輸出品の世界輸出に占めるシェアの推移

 一般機械では、輸出額1位の自動データ処理機械が緩やかにシェアを低下させるとともに、高いシェアを有していたガスタービン、荷役用機械部品のシェアも低下(第Ⅲ-3-2-56図)。

第Ⅲ-3-2-56図 世界の輸出に占める米国のシェアの推移(一般機械)

 電気機械では、集積回路、半導体デバイスのシェアが大きく低下(第Ⅲ-3-2-57図)。

第Ⅲ-3-2-57図 世界の輸出に占める米国のシェアの推移(電気機械)

 自動車は、乗用車におけるシェアが2000年代半ばから緩やかに上昇し、自動車部品のシェアは低下傾向(第Ⅲ-3-2-58図)。なお、装甲車両においては世界シェアの約半分を占める。

第Ⅲ-3-2-58図 世界の輸出に占める米国のシェアの推移(自動車)

 精密機械は、医療用機器のシェアが高い。シェアが低下しているもののオシロスコープも世界輸出の約1/4を占めている(第Ⅲ-3-2-59図)。

第Ⅲ-3-2-59図 世界の輸出に占める米国のシェアの推移(精密機械)

(個別品目)

 ここまで各国別に主要品目の動向を見てきたが、日本がシェアを低下させている個別品目に焦点を当てた場合、どの国がシェアを拡大しているのだろうか。ここからは個別品目における日本を含む上位国のシェアの推移を見ることにする。対象品目としては、一般機械、電気機械、輸送機械、精密機械の細目(HSコード4桁分類)における日本の主要輸出品(輸出額の上位品目)であり、かつ、日本のシェアが低下している品目に焦点を当てる。

 その結果、多くの品目で、中国のシェアが急速に拡大していることが確認された(ただし、中国に立地する外資系企業の輸出を含む)。また、集積回路等一部の品目では、韓国、台湾のシェアも拡大している。一方、日本及び米国はシェア低下が散見される。

 それでは一般機械に属する品目で、内燃機関、ディーゼル機関、エンジン部品から見ていく(第Ⅲ-3-2-60図、第Ⅲ-3-2-61図、第Ⅲ-3-2-62図)。これら品目では上位3位は日米独が占めている。内燃機関は日本のシェアがわずかに低下。米国も低下する一方、ドイツ、オーストリアが堅調。ディーゼル内燃機関では日本が緩やかに低下してきたが最近はやや戻している。ドイツ、米国が低下する一方、英国がシェアを回復。エンジン部品は日本が緩やかに低下してきたが最近はやや戻してきている。反対に首位のドイツが最近はやや低下。一方、中国のシェアが次第に上昇。

第Ⅲ-3-2-60図 世界の輸出に占めるシェア(内燃機関HS8407)

第Ⅲ-3-2-61図 世界の輸出に占めるシェア(ディーゼル内燃機関HS8408)

第Ⅲ-3-2-62図 世界の輸出に占めるシェア(エンジン部品HS8409)

 ギアボックス、ボールベアリングは長期的にはシェアが低下(ただし、最近はやや戻る動きも見せている)(第Ⅲ-3-2-63図、第Ⅲ-3-2-64図)。先進国では最近はやや低下したもののドイツが比較的堅調に動いており、途上国では中国のシェアが着実に上昇している。

第Ⅲ-3-2-63図 世界の輸出に占めるシェア(ギアボックスHS8483)

第Ⅲ-3-2-64図 世界の輸出に占めるシェア(ボールベアリングHS8482)

 自動データ処理機械(パソコン等)では、日本、米国が低下する一方、中国のシェアが急速に上昇(第Ⅲ-3-2-65図)。事務用機器部品では、日本、米国が低下する一方、中国、香港が大きく上昇(第Ⅲ-3-2-66図)。また、欧州ではオランダが上昇、アジアではシンガポールが堅調。

第Ⅲ-3-2-65図 世界の輸出に占めるシェア(自動データ処理機械HS8471)

第Ⅲ-3-2-66図 世界の輸出に占めるシェア(事務用機器HS8473)

 電気機械の中では、電子部品といわれる集積回路や半導体デバイスから見ていく。集積回路においては、日本、米国のシェアが低下し、シンガポール、香港、台湾、韓国、中国のアジア勢のシェアが拡大している(第Ⅲ-3-2-67図)251。半導体デバイスでは、日本の低下と中国の急速な上昇が顕著である(第Ⅲ-3-2-68図)。

251 台湾のデータについては、国連Comtradeにないので、Global Trade Atlasデータベースから取得した。また、 国連Comtradeデータで算出した品目別世界輸出合計には台湾が含まれていないので、台湾のシェアの高い品目(集積回路、半導体デバイス等)については、台湾を含めた世界輸出合計を算出したうえでシェアを求めた。

第Ⅲ-3-2-67図 世界の輸出に占めるシェア(集積回路HS8542)

第Ⅲ-3-2-68図 世界の輸出に占めるシェア(半導体デバイスHS8541)

 電気回路スイッチでは、2000年代はドイツが堅調な一方、日本、米国は低下し、それに代わって中国、香港が上昇している(第Ⅲ-3-2-69図)。電信機器部品では、日本が低下し、米国も2000年代半ばまで低下した後は横ばい(第Ⅲ-3-2-70図)。これに対して、中国、香港、韓国が上昇している。

第Ⅲ-3-2-69図 世界の輸出に占めるシェア(電気回路スイッチHS8536)

第Ⅲ-3-2-70図 世界の輸出に占めるシェア(電信機器部品HS8529)

 自動車においては日本のシェアが緩やかに低下している(第Ⅲ-3-2-71図)。一方、ドイツ、韓国が緩やかに上昇。米国は2000年代半ばまで低下してきたが、最近は回復してきている。

第Ⅲ-3-2-71図 世界の輸出に占めるシェア(乗用車HS8703)

 モーターサイクルは日本が大きく低下し、中国が急速に上昇(第Ⅲ-3-2-72図)。米国、ドイツ、イタリアが堅調に推移。モーターサイクル部品は、日本、台湾が大きく低下する一方、中国が急上昇(第Ⅲ-3-2-73図)。

第Ⅲ-3-2-72図 世界の輸出に占めるシェア(モーターサイクルHS8711)

第Ⅲ-3-2-73図 世界の輸出に占めるシェア(モーターサイクル部品HS8714)

 精密機械の中では、液晶デバイスにおいて、日本のシェアが長期的に低下、ただし最近は緩やかながら回復に向かっている(第Ⅲ-3-2-74図)。一方、2000年代前半に台湾、中国、韓国のシェアが上昇。このうち、台湾は2000年代中頃から低下に向かう。直近では中国、韓国が各々世界シェアの約3割を有し、台湾が約2割、日本が約1割とアジア勢で大半を占めている。

第Ⅲ-3-2-74図 世界の輸出に占めるシェア(液晶デバイスHS9013)

 光ファイバー(第Ⅲ-3-2-75図)は、首位であった米国のシェアが低下する中で、日本が2000年代半ばまでシェアを拡大。しかし、その後は日本のシェアが急速に低下。反対に、中国、韓国、台湾が着実にシェアを伸ばしている。

第Ⅲ-3-2-75図 世界の輸出に占めるシェア(光ファイバーHS9001)

 写真機では、日本のシェアが急速に低下(第Ⅲ-3-2-76図)。米国、シンガポールのシェアが緩やかに上昇するとともに、一時は低下した中国のシェアが反転上昇している。レンズ・プリズム・鏡では、日本のシェアが低下し、中国、香港、オランダが緩やかに上昇(第Ⅲ-3-2-77図)。

第Ⅲ-3-2-76図 世界の輸出に占めるシェア(写真機HS9006)

第Ⅲ-3-2-77図 世界の輸出に占めるシェア(レンズ、プリズム、鏡HS9002)

(2)貿易(輸出)特化係数

 ここまで世界輸出におけるシェアを見てきたが、ここからは貿易(輸出)特化係数を利用して日本の輸出競争力を見てみる。

 貿易(輸出)特化係数は各産業がどれだけ輸出に特化(輸出超過)しているかを示しており、「1」は完全輸出特化、「0」は輸出入均衡、「-1」は完全輸入特化となる。輸出への特化度合いにより輸出競争力を計測している。

 貿易特化係数=貿易黒字額/貿易総額=(輸出-輸入)/(輸出+輸入)

 日本の貿易特化係数を図示したのが第Ⅲ-3-2-78表及び第Ⅲ-3-2-79図である252。日本の総輸出入について貿易特化係数の長期的推移を見ると緩やかに低下している。これまでと同様に主要輸出品(輸出額上位品目)を見ると、自動車、鉄鋼の貿易特化係数が安定的に推移している。また、一般機械は1990年代低下し 2000年代を通じては一定の水準を保っているが、電気機械、精密機械は低下している。

252 貿易特化係数の分析における開始年は原則として1990年とした。これは世界シェアと違って世界輸出合計を求める必要がないことによる。ただし、国によってデータの利用可能な開始年が異なるため、結果的に日本、韓国、ドイツは1990年、米国は1991年、中国は1992年からの分析となった。

第Ⅲ-3-2-78表 日本の主要輸出品の貿易特化係数(2011年)

第Ⅲ-3-2-79図 日本の主要輸出品の貿易特化係数の推移

 それでは、低下傾向を示している電気機械の中で主要品目の動きを見ると、コモディティ化の進んだといわれる品目の特化係数が低下しており、1990年には主要輸出品であったものの、現在ではほとんど輸出されていないテレビ(HS8528)、ビデオ(HS8521)、ラジオ(HS8527)等が大きく低下している(第Ⅲ-3-2-80表、第Ⅲ-3-2-81図)。

第Ⅲ-3-2-80表 日本の主要輸出品の貿易特化係数(電気機械/2011年)

第Ⅲ-3-2-81図 日本の主要輸出品の貿易特化係数の推移(電気機械)

 その他に、有線電話(HS8517)、無線電話(HS8525)の貿易特化係数がマイナスとなるとともに、電信機器部品(HS8529)がゼロ近傍まで低下。

 また、電気機械とともに低下傾向にあった精密機械については、1990年代の主要輸出品であった写真機(HS9006)の係数が輸出額の減少とともに低下(最近は係数が反転上昇しているが輸出額が小さいため全体を引き上げるには力不足)(第Ⅲ-3-2-82表、第Ⅲ-3-2-83図)。レンズ、プリズム(HS9002)の係数も低下。その他には、医療用機器(HS9018)の係数がマイナスに転化。一方、分析用機器(HS9027)、液晶デバイス(HS9013)は上昇。

第Ⅲ-3-2-82表 日本の主要輸出品の貿易特化係数(精密機械/2011年)

第Ⅲ-3-2-83図 日本の主要輸出品の貿易特化係数の推移(精密機械)

 一般機械の貿易特化係数は、1990年代後半から2000年代初めにかけて低下したが、その後は堅調に推移している(第Ⅲ-3-2-84表、第Ⅲ-3-2-85図)。1990年に輸出額の大きかった自動データ処理機械(パソコン等)(HS8471)、事務用機器部品(8473)の特化係数が大きく低下。その他に、印刷機(HS8443)、エンジン部品(HS8409)、気体ポンプ(HS8414)等の係数が、やや低下しているが水準は低くはない。ブルドーザー(HS8429)は高水準を維持している。

第Ⅲ-3-2-84表 日本の主要輸出品の貿易特化係数(一般機械/2011年)

第Ⅲ-3-2-85図 日本の主要輸出品の貿易特化係数の推移(一般機械)

 自動車の貿易特化係数は高い水準を維持している。モーターサイクル(HS8711)、その部品(HS8714)、特殊用途自動車(HS8705)がやや低下しているものの、輸出額の大半を占める乗用車、(HS8703)、貨物自動車(HS8704)、10人乗り以上の自動車(バス等)(HS8702)等が高水準を維持(第Ⅲ-3-2-86表、第Ⅲ-3-2-87図)。

第Ⅲ-3-2-86表 日本の主要輸出品の貿易特化係数(自動車/2011年)

第Ⅲ-3-2-87図 日本の主要輸出品の貿易特化係数の推移(自動車)

(他の主要国)

 貿易特化係数についても、他の主要国の動きを見てみる。韓国の貿易特化係数は、アジア通貨危機後に一旦上昇し、その後やや戻った後は、2000年代を通じてほぼ横這いの品目が多い(第Ⅲ-3-2-88表、第Ⅲ-3-2-89図)。その中で精密機械だけは急速に上昇。

第Ⅲ-3-2-88表 韓国の主要輸出品の貿易特化係数(2011年)

第Ⅲ-3-2-89図 韓国の主要輸出品の貿易特化係数の推移

 中国の主要輸出品の貿易特化係数は、電気機械、一般機械、鉄鋼製品、造船で上昇(第Ⅲ-3-2-90表、第Ⅲ-3-2-91図)。衣類、家具等の軽工業の特化係数が引き続き高い水準を維持している。

第Ⅲ-3-2-90表 中国の主要輸出品の貿易特化係数(2011年)

第Ⅲ-3-2-91図 中国の主要輸出品の貿易特化係数の推移

 ドイツの場合、主要品目間の差異が小さい。狭いバンドの中に収まっており、時系列で見て係数が比較的安定している(第Ⅲ-3-2-92表、第Ⅲ-3-2-93図)。自動車の特化係数が高く緩やかに上昇。航空機も上昇している。一方、電気機械は低い水準にとどまっている。

第Ⅲ-3-2-92表 ドイツの主要輸出品の貿易特化係数(2011年)

第Ⅲ-3-2-93図 ドイツの主要輸出品の貿易特化係数の推移

 米国は、主要輸出品でも赤字を計上している品目が多く、貿易特化係数はマイナスのものが多い(第Ⅲ-3-2-94表、第Ⅲ-3-2-95図)。穀物が突出して係数が高い他は、プラスチック、精密機械等がプラスを維持するのみ。精密機械を除き、機械製品は軒並みマイナス。

第Ⅲ-3-2-94表 米国の主要輸出品の貿易特化係数(2011年)

第Ⅲ-3-2-95図 米国の主要輸出品の貿易特化係数の推移

(3)まとめ

 ここまで見てきたことをまとめると、まず日本の輸出の回復が遅れている。主要国がリーマンショック以前の水準を取り戻す中で、日本はまだそこまで回復していない。震災等の影響があるとしても、長期的に見て輸出競争力が低下している可能性がある。例えば、日本の輸出主要3品目、一般機械、電気機械、自動車(3品目で総輸出の過半を占める)のうち、リーマンショック前の水準を取り戻しているのは一般機械のみで、特に貿易黒字(輸出-輸入)に着目した場合、電気機械の黒字額はリーマンショック前から低下に向かっている。

 日本の輸出競争力を世界の輸出に占めるシェアで見ると、日本は緩やかに低下している。特に主要輸出品である、一般機械、電気機械、自動車等が軒並みシェアを低下させている。具体的な品目としては、一般機械では、ブルドーザーが高水準を維持する一方で、自動データ処理機械(パソコン等)は大きくシェア低下。電気機械では、コモディティ化が進んでいる、テレビ、ラジオ、ビデオ、電話が大きくシェア低下。電子部品も半導体デバイスが急速に低下、集積回路も緩やかに低下。自動車では、モーターサイクルが急速に低下。乗用車はリーマンショックまで安定的に推移したが、リーマンショック後にシェアが低下。精密機械では、レンズ、光ファイバー、液晶デバイスでシェア低下。

 他の主要国の様子を見ると、まず各国の輸出動向としては、韓国は増加傾向で、電気機械が突出している。中国は輸出が急増しており、特に電気機械、一般機械が大きく拡大。ドイツの輸出は、一般機械、自動車が大きく、電気機械が次ぐ。米国は一般機械等の機械類の輸出額が多い。

 次に主要国の世界輸出に占めるシェアの推移を見ると、中国が急速にシェアを上昇させており、韓国も緩やかにシェアが上昇。一方、米国はシェアが低下。

 さらに各国の主要輸出品(上位10品目)をベースにシェアを分析すると、韓国のシェアは2000年代に入って緩やかに上昇。品目別には輸送機械が緩やかに上昇し、精密機械は液晶デバイス、光ファイバーを中心に急上昇。電気機械は1990年代から2000年代にかけて上昇し、その後は安定的に推移。無線電話、ビデオ・デジタルカメラはシェアは高いものの、振幅が大きい。集積回路、電信機器部品は2000年代は上昇基調。中国は、繊維、家具などの軽工業品に加えて、電気機械、一般機械等の幅広い品目でシェアが上昇。ドイツは、2000年にかけて幅広い品目で若干の低下傾向にあるが、2000年以降は安定的にシェア維持又は微減。自動車は上昇している。米国は、一般機械、精密機械、有機化学、プラスチック等幅広い品目でシェアが低下。

 日本のシェアが低下している個別品目に焦点を当てて、主要輸出国のシェアの変化を見ると、エンジン関係(内燃機関、ディーゼル機関、エンジン部品)は日米独3国のシェアが高いが、この中で日米がシェアを低下させている。反対に内燃機関ではドイツ、オーストリア、ディーゼル機関では英国、部品では中国がシェアを上昇させている。自動データ処理機械(パソコン等)は日米のシェア低下と中国の急速なシェア上昇が鮮明。集積回路、液晶デバイス、光ファイバーでは、日本が低下する一方、中国に加えて韓国、台湾のシェアが上昇している。乗用車では、日本が近年低下する一方で、ドイツ、韓国のシェアが緩やかに拡大。モーターサイクルでは日本の低下、中国の上昇が顕著。

 貿易(輸出)特化係数で見ると、日本は全体としては長期的に低下。主要品目の中では、電気機械、精密機械で低下。その細目を見ると、電気機械は、コモディティ化の進んだテレビ、ラジオ等の家電が大きく低下するとともに、無線電話、通信機部品等でも特化係数が低下。電子部品は集積回路で高い水準を維持するも、半導体デバイスでは低下している。精密機械は、分析機器、液晶デバイスは高水準を維持するも、写真機、レンズで低下するとともに、医療用品がマイナスに転化。一般機械では、自動データ処理機械(パソコン等)が大きく低下して全体を引き下げたが、2000年代は一般機械全体としては横ばい。自動車は高い水準を維持。

 他の主要国の貿易特化係数は、韓国が自動車で高水準。電気機械は輸入も多いために特化係数が突出して高いわけではないが緩やかに上昇。精密機械は2000年代に入って液晶を中心に急速に上昇。中国の特化係数は、もともと衣服、家具等の軽工業品が高水準を維持するとともに、電気機械、一般機械が上昇。ドイツの特化係数は突出して高い品目がないかわりに長期的に安定した推移を見せている。米国は機械類の輸出額が多い。貿易特化係数は、機械類が貿易赤字のため、マイナスで推移。

 このように見てくると、日本の輸出競争力は、世界輸出におけるシェア、貿易特化係数で見て緩やかに低下している。品目別に見ると、電気機械、精密機械はシェア、特化係数とも低下している。一般機械、自動車は特化係数を維持しているがシェアは低下しており、一定の黒字を稼いでいるものの、世界の総輸出額の成長ほどには輸出を伸ばしていない。

(4)マーケティングデータベースでの世界シェア

 ここでは、(1)「世界輸出に占めるシェア」の分析で我が国の輸出シェアが低下傾向にある製品を中心に、現地生産を含む販売面でも日系企業の製品の競争力が失われているのかを検証するため、日系企業の世界販売シェアの動向を確認する。

 販売シェアの調査対象は次の5製品とする253。(a)カメラ及びビデオカメラ、(b)ビデオプレーヤー、(c)テレビ(受信機などの周辺機器を含む)、(d)電子レンジ、(e)乗用車及び小型トラック。

 調査方法は、(a)~(d)については、各製品の最新世界販売シェアから上位15社を抽出して、本社の国別にシェアの推移を確認する254。また、(e)については、販売企業グループの国別にシェアの推移を確認する255

 なお、(1)の分析の輸出シェアが金額ベースであるのに対して、本調査の販売シェアが小売販売数量ベースであることには注意を要する。

 上記条件の下、日系企業の世界販売シェアの動向を概観すると、(a)カメラ及びビデオカメラは2004年より一貫して上昇傾向にあり、(b)ビデオプレーヤーも2008年以降は上昇傾向にある。その一方で、低下傾向にあった(c)テレビ(受信機などの周辺機器を含む)は2009年より一旦上昇したものの、2011年は再び低下している。また、(d)電子レンジは2003年から大きな変動はなく、(e)乗用車及び小型トラックは2009年より低下傾向にあったが2012年には回復している。

 いずれの製品も我が国の輸出シェアに比べて日系企業の世界販売シェアが大きく、世界販売シェアが上昇傾向にある製品もみられる。これらの結果は、我が国の輸出競争力と現地生産を含めた日系企業の世界販売競争力が必ずしも同じ動きを示すものではないことを具体的に示している。

 以下では、製品別に、競合国を含めた世界販売シェアの動向を確認する。

253 (1)の輸出シェア分析と本調査で利用するデータベースが異なることから、これらの対象製品の区分が全て一致するわけではない。例えば(a)のカメラは、輸出シェア分析がデジタルカメラのみを対象とし、アナログカメラを含まない一方で、本調査ではアナログカメラも含む。

254 最新のデータは2011年又は2012年時点。各製品とも上位15社で世界販売の6~8割をカバーしている。ユーロモニター社のデータベースを利用。

255 一部の企業グループについては、メーカー又はブランド名により国を分けている。マークラインズ社のデータベースを利用。

(a)カメラ及びビデオカメラ

 我が国の輸出シェアは2011年時点で4.4%。日系企業の世界販売シェアは2004年以降一貫して上昇傾向にあり、2011年には約70%と圧倒的なシェアを持つ(第Ⅲ-3-2-96図)。

第Ⅲ-3-2-96図 カメラ及びビデオカメラの世界販売シェアの推移

(b)ビデオプレーヤー

 我が国の輸出シェアは2011年時点で1.5%。日系企業の世界販売シェアは2004年以降、低下傾向にあったが、2007年を底に上昇傾向にあり2011年には35%まで回復している。韓国系企業も25%近くまでシェアを伸ばしている(第Ⅲ-3-2-97図)。

第Ⅲ-3-2-97図 ビデオプレーヤーの世界販売シェアの推移

(c)テレビ(受信機などの周辺機器を含む)

 我が国の輸出シェアは2011年時点で1.2%。日系企業の世界販売シェアは2002年の27.6%から低下傾向にあり、2009年より回復しつつあったが、2011年には再び低下して19.3%となっている。韓国系企業が一貫してシェアを伸ばしている(第Ⅲ-3-2-98図)。

第Ⅲ-3-2-98図 テレビ(受信機などの周辺機器を含む)の世界販売シェアの推移

(d)電子レンジ

 我が国の輸出シェアは2003年以降0.5%近辺で推移していたが2009年以降は低下傾向にあり、2011年時点で約0.1%256。日系企業の世界販売シェアは2003年以降、20%近辺で推移している。近年中国系企業がシェアを伸ばしており、日系及び韓国系企業のシェア争いに加わる形となっている(第Ⅲ-3-2-99図)。

256 我が国の輸出金額が小さいことから、(1)の輸出シェア分析には載せていない。

第Ⅲ-3-2-99図 電子レンジの世界販売シェアの推移

(e)乗用車及び小型トラック

 我が国の乗用車輸出シェアは2011年時点で13.8%。日系企業の世界販売シェア(乗用車及び小型トラック257)は2009年以降低下傾向となり、2011年には東日本大震災やタイの洪水による大幅な減産の影響を受けたこともあり28.0%まで低下したが、2012年は30.2%に上昇している(第Ⅲ-3-2-100図)。

257 国によって車種の定義が異なるため厳密ではないが、中・大型トラック及びバスの他、主に商用車に利用されると考えられる車種を除いたものを抽出した。また、車種が不明な国は全車種を対象とした。

第Ⅲ-3-2-100図 乗用車及び小型トラックの世界販売シェアの推移

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