会見・スピーチ

初閣議後大臣記者会見の概要
平成18年9月26日(火)
                        23:16〜23:43
                         於:記者会見室
 
経済産業大臣を拝命いたしました甘利明でございます。よろしくお願いいたします。
 私にとりまして、経済産業政策はライフワークです。それはなぜかといえば、無から有を生み出すというか、国富を生み出す。それぞれの政策分野は全て大事だと思いますが、いずれも予算を使って施策を執行していくと思いますが、その原資を生み出す政策は経済産業政策しかないと思います。政策の中の政策を担当するのが本省であるという思いで、ライフワークとして行ってきたものですから、総理からのご指名を大変ありがたく思っています。
 いくつかの点についてご説明します。まず総理からは、経済成長戦略が大事であり、ここをしっかりやってくれと言われました。ご案内のとおり、財政再建は過去にも橋本内閣当時取り組みましたが、失敗しました。なぜ失敗したかというと、出入りの調整に終始してしまって、バックボーンたる経済成長に少し重きを置かなかったからです。景気が失速すると同時に、歳出歳入改革は水泡に帰したという反省点があります。ですから、歳出歳入改革の前提として健康な経済、成長経済が必要であるということです。
 特にマイナス要因として、人口減少社会が到来しているということがあります。人口が減少するということは、放っておけばGDPが下がるということになります。人口が減少していく中で、どのようにして経済成長を保つかが大きな課題です。ご案内のとおり、経済成長というの成長の3要素としては、資本、労働、そして生産性があります。
 資本について、高齢化社会でいわゆる蓄えを切り崩すという資本ストックの減少があると思いますが、しかしこれは外資を積極的に導入する方法でしのいでいけるはずです。FTA、EPA等を通じて経済国境を広げていく、消費対象を多くすることも一つの戦略であり、対内投資を増やしていくことで、投下資本量を増やすこともできます。
 一方で、労働の点で、労働力人口が減りますので、これに対しては労働力に参画する人たちの数を増やします。これは高齢者に目を向けることも一つですし、あるいは女性を労働市場にいかに参画しやすくするかということも一つです。外国人の問題もあると思います。また労働の質を高めるということであり、スキルアップをどうしていくか、1の労働力を2にも3にもしていくということで、量と質の面で向上を図る手だてを考えることが大事だと思います。
 3つ目が生産性の向上です。総理もおっしゃっていますけれども、イノベーションを通じて生産性を高めていきます。イノベーションは技術革新と一言で言われますけれど、私は技術革新だけではなくて、制度革新も含めて取り組むべきだと思います。規制緩和はまさに規制を突破するイノベーションであると思いますし、あるいは技術開発だけではなく、新商品開発もあるでしょう。それから、流通ルートをどう革新していくかもあるかと思います。いろいろなイノベーションがあります。こうした3要素をブラッシュアップすることによって、人口減少というハンディキャップを抱えている中でも、健全な経済成長は可能だと思っています。
 同時に、格差ということが言われています。格差の是正につきましては、2つのアプローチがあると思います。
 1つはパイを大きくするということです。大きなパイであれば、その格差の底上げをすることができるということがあります。
 もう1点は、自由主義市場経済ですから、チャンスを増やしていく、チャンスの格差をなくしていかなければならないと思います。いかなる人生のライフステージにおいても再チャレンジが可能な社会をつくっていくことが大事です。
 正規、非正規の問題も取り上げられています。私自身はかつて労働大臣も務めました。非正規雇用が増えて、正規雇用が減っていくことを大変心配していましたが、近年正規雇用の減少に歯止めがかかり、反転になりました。非正規でも希望すれば正規に組み入れられるという努力を企業には要請したいと思っています。
 中央、地方の格差の問題があります。以前は地方の格差を是正するのに公共事業がよく使われました。しかし、いままでの公共事業の使われ方は、どちらかというとその事業が執行されている間は底上げができますけれども、でき上がった後に逆に足を引っ張ります。道路、港湾、下水道等だけではなく、その公共事業に関連する箱物行政もありましたが、作るまではいいのですけれど、作った後のランニングコストに足を引っ張られることがあります。地方の活性化と公共事業の関係で言えば、それができ上がった後、地方の資源になっていくという視点が大事だと考えています。地方の資源、本省で言いますと中小企業のノウハウ、技術、スキルのようなものがあると思いますし、それを産業クラスター政策で持っている知恵やノウハウを製品につなげていく努力は行ってきました。まだ、このマーケットにレビューをさせることが足りないわけですが、マーケティングをどう支援していくかということもあろうかと思いますし、地域の資源で言えば、自然資源や歴史資源などいろいろあると思います。それらと物産、つまり経済産業省の範囲だけではなく、それ以外の役所とのコラボレーションをどう図っていく、そこで公共事業がそれをつなげていく役割をどう果たしていくかということです。
 例えば、観光開発でいえば、取り付け道路はつくった後、地域を活性化する手当になっていくと思いますし、そういう視点で公共事業を考える、いろいろある資源をつなげていく努力をしていくことが地域を底上げしていくことになるかと思っています。
 日本の物理的な国境エリア、あるいは人口減少の中での限界説がありますけれども、これからは成長地域のその力を日本に取り入れていくことが大事です。FTA、EPAは、アジアの成長、あるいはBRICsの成長を日本の成長に取り入れる効能がありますから、これは積極的に進めていきたいと思います。WTOとバイの関係は二頭立てでいくことが大事だと思っています。
 エネルギーの関係について、私は原子力の未来を信じて推進してきました。厳しい環境下にあっても必ず日の目を見ると思ってやってきた責任者です。ようやく原子力も環境の面からも、あるいはエネルギー危機の面からも再認識されるようになりました。
 さらに、日本が持っている自主エネルギーは省エネ技術です。この省エネ技術を自主エネルギーとして効率の悪いところに輸出していくことも国際社会にとって大事な取り組みであると思います。
 中小企業の活性化は言うに及びません。中小企業にとってもどうしてもネックになるのは、一度事業で失敗をすると再チャレンジができないことです。それは個人保証という制約があるからです。失敗したら身ぐるみはがされるという対応ではなく、個人保証に頼らない金融の道をさらに開いていく必要があると思います。
 アメリカが何でもいいと私は思いませんけれども、アメリカでは失敗した経営者が意欲を持って次にチャレンジすることには、初めてのチャレンジャーよりも評価されます。それは失敗を経験として身につけているからです。日本もそうした再チャレンジが可能な中小企業政策にしていく必要があります。それは金融の面で個人保証依存型からの脱却ということを考えていかなければならないと思っております。
 消費者保護を始めとする国民の安心、安全の確保にも全力を尽くしていきたいと思います。以上でございます。
 
(質疑応答)
 
【就任の抱負】
 
Q: まず、大臣、ご就任おめでとうございます。
 いま大臣もおっしゃいましたけれど、経済産業政策はライフワークだということで、今回の大臣のご就任というのは、非常にはまったポストなのかなという気もしますけれども、改めていまいろいろ個々のお話を伺いましたけれども、大臣に就任しての抱負をお聞かせいただけますか。
 
A: 日本はないないづくしの国でしたけれど、今や世界第2位の経済大国になりました。それは、大事なものはハンディキャップだと思っている点を実は利点として生かすという逆転の発想があったからできたのだと思います。国土が狭い、しかし狭い国土であるがゆえに、効率的に活用することができる。資源がないがゆえに、世界中から一番コストの安い方法で調達ができる。労働力が高くなってきたときに、それをしのいでいくために技術開発、ファクトリー・オートメーションでしのいでいきました。環境問題が出てきたときに、それを克服する技術開発をしました。車も環境対応の車をつくって、一時は大変でしたけれど、それがいまの日本の車の世界市場での活躍につながっています。困難が来たときに、それをただ困難として嘆いていないで、逆手にとるという発想は私は大事だと思いますし、それが日本を今日まで押し上げてきたと思っています。その意味で、非常にやりがいのある役所であり、やりがいのある政策分野だと思っております。
 
【エネルギー政策】
 
Q: 大臣のお話にもありましたけれども、エネルギー政策、あるいは経済成長戦略、非常に安倍政権にとって大きいテーマだと思います。これを具体的にどういうふうに取り組んでいくか、特にエネルギー政策についてはサハリン2ですとかアザデガンとか、なかなかいま困難に直面している状況でもありますし、そういった問題に対してどういうふうに役所として取り組まれていかれるおつもりなのか、お聞かせください。
 
A: サハリン2もアザデガンも、あるいは東シナ海も我が省だけで解決できない大きな問題と絡まっていますから、こうすればすぐ解決できますという処方箋はありませんが、まずあまりびっくりしないということだと思います。そして、きちんと現状を把握、分析をするということであります。
 サハリン2について言いますと、何かこの計画自身が全面白紙に至ってしまったような錯覚を与えていますが、環境分野の見直しをしようということですから、基本計画を全部白紙に戻すということではないはずです。そこで、ロシア側が指摘している点は、確かに政治的な意図もあるのではないかということもいわれているところはありますけれども、表立って指摘している点についてきちんと精査して答えていくということだと思います。環境破壊であるならば、どのような視点、どのようなところが指摘されていて、それに対して政府も我が方も含めて、どこまできちんと対応したのか、残りの部分についてはどう対応する用意があるのか、これをきちんと精査して、その上で無理難題の部分があったとしたら、そこをきちんと指摘していくということになると思います。
 アザデガンの話は、もっと大きな課題の難しい問題がある点だと思いますので、これはしばし民間側の進み具合を見守っていくことになると思います。政治的な部分が関与してきますから、軽々な発言はできませんが、まだまだ事業着手に至るまではやるべきことはたくさんありますので、それを見守りたいと思っております。
 
【靖国神社参拝】
 
Q: ちょっと話題が変わるのですけれども、靖国神社の参拝についてですけれども、大臣は閣僚時代に参拝するお考えがあるか、もしそれであれば時期としていつぐらいを考えていらっしゃるのかということをお聞かせください。
 
A: 現時点では、そういう計画はありません。
 
Q: それは閣僚中には行かないということではなく、あくまで現時点ということですか。
 
A: 現時点では、参拝するということは予定しておりません。
 
Q: 安倍新総理のご発言は、行くか行かないか、オープンにしないということですけれども、そういった総理のお考えそのものはどうですか。
 
A: 安倍総理は非常に気を遣った、気配りをした言い回しをしていると思います。総理のご発言は、行くとも行かないとも、行ったとも、行かなかったとも明らかにしないということです。つまりこれは靖国問題を政治の場からなるべく遠いところに置くという意思表示です。そういう意味では、安倍総理は一歩前に出たわけです。ですから、中国側も韓国側もぜひ一歩前に出てほしいというメッセージを送っているのだと思います。そこはぜひ中国、韓国もこのメッセージを受けとめてほしいと思っております。
 
【安倍新内閣】
 
Q: 今回の閣僚の顔ぶれを大臣ご自身がご覧になって、この内閣はどういうふうな内閣だと言えるでしょうか。
 
A: 論功行賞内閣と言われると私の立場がないので、適材適所内閣、仕事師内閣と言っていただきたいと思います。それぞれの持ち味を生かした、エキスパートがみんなそれぞれ対応しています。私は経済産業政策をライフワークとして行っている、それは確固たる信念に基づいてライフワークとしているわけですから、その指揮がとれることは、本当にモチベーションが上がりますから、それぞれ見てみるとこれは良い人材配置だと思っております。
 なおかつ官邸は相当若々しくなりましたから、安倍総理自身が戦後最年少総理、戦後生まれ初の総理という持ち出しも官房長官、あるいは官邸スタッフを見るとよく理解できますから、清新でフレッシュで仕事ができる人をきちんと配置したバランスよいメンバーだと思っております。
 
【対中政策】
 
Q: 中国との関係ですけれども、二階大臣はかなり冷え切っていた日中関係を正常な状態に戻すということ、あるいは以前に増して緊密に連携するような方策をとってきていたのですけれども、この路線を継続されるおつもりですか。
 
A: ぜひそうすべきだと思います。総理ご自身が日中、日韓関係の打開については、相当意欲を持っておられると思います。私としても、それをしっかりサポートしていきたいと思います。私自身も日中友好議員連盟の幹事長あります。
 
【東シナ海における資源開発問題】
 
Q: 先ほどの官邸でのご質問にも答えていらっしゃいましたけれども、ガス田協議に関する友好の海ということでおっしゃっていますけれども、まだ対話が中断している状況ですけれども、今後の方針について対応方針をお聞かせください。
 
A: 前任者の二階大臣が大変な中国通でいらっしゃって、そういう路線を敷いていただいたのだと思います。ただ、それは国益がぶつかり合うところでもあり、向こうが投げてきたボールをそのまま受け取ってしまいまうと、これはとんでもないことになりかねませんから、お互いがボールを投げ合って、妥協点を見出していくことが大事だと思います。
 共同開発がお互いにとって良いという概念的な理解は、双方がしているはずです。それを具体的にどこをどうするとなると、まだ主張がぶつかり合いますから、これは少しずつ話し合いを重ねて、お互いが譲り、ここまでなら譲り合える、あるいは譲ってほしいというところに到達すると思いますので、そのための努力を続けていくべきだと思います。
 
【貸金業対策】
 
Q: 若干経済産業省自体の話からは少し離れるのですが、先ごろ問題になっていた貸金業の上限金利の引き下げ問題で、我々が取材していると甘利大臣はどちらかというと引き下げに反対側に立って話をされていたというふうに聞きまして、その辺どういったお考えでご自身の信念としてお話しされたのですか。
 
A: 私は一番大事なことは、健全なニーズがあるとしたら、その人たちを無理矢理に闇金の世界に追いやってしまうことは絶対にいけない、つまり被害を出さないということが大事だということを申し上げていました。上限金利については、私は要するに下げれば全部解決するという発想はよくなくて、どんなに低い金利であろうと際限なく借りれば返せないわけであり、総額管理をきちんとせよ、これ以上は貸せませんということをやりなさいと申し上げました。しかもそれには全事業者が登録をしていないと、登録をしていないところに行き、また新たに借りてしまうので、借りられないということにすることが大事です。そして、違法な取り立てについては厳罰に処せということを私は申し上げたのです。その上で、上限金利が何が適切かというのが国際的な標準というか、常識があるので、それをよく参考にしながら、お決めになったらどうですかということです。
 私は今回の議論には参画しておりません。フリーディスカッションのときに、最初の一回か何かのときに、持論としてとにかく総額管理をし、これにはセンター登録を全部にさせて、違法取り立ては厳罰に処し、それから、上限金利については、適切な水準を専門家に判断させよと申し上げました。もちろんグレーゾーンはなくしなさいというのが私の持論であり、それ以降は政調会の役員ですから、すべてを金融調査会にお任せするということで、一度も会議には出ておりません。
 
【再チャレンジ政策】
 
Q: 再チャレンジで、中小企業のところで出てきたのですけれども、どのように取り組まれていくかをお聞かせください。
 
A: 先ほど申し上げましたように、中小企業にとっては個人保証ということから脱し、いままでもいろいろな金融のスキームがありますけれども、身ぐるみはがれないようなスキームをまず政府系からつくっていって、そして民間の金融機関にもその要請をしていくということだと思います。
 それから、人の問題では、スキルアップするためのいろいろな手だてをつくるということだと思います。人生のあらゆる段階に複線を単線ではなくて、乗り換えができるような線を敷いておくことですから、社会に出てまた学校に戻ることも行き来が自由である、あるいはスキルアップするためのいろいろな手だてがあるとか、これから考えていくことですけれども、単線思考でない複線思考をいろいろな場面に敷いていくことが大事だと思っています。
 いままでも、規制改革の中で1円起業は行いました。それから、ビジネスプラン融資ということも行ってきました。つまり原資がなくてもアイデアがあれば、それを評価して会社を起こせすことができる。たしか3万7,000社ぐらいはそれで起業できました訳ですし、マザーズなどに上場したところもあります。そのような従来型の経営資源がそろっていないと、何事もうまくいかないということではなく、何か1つあればうまくいくような、後をフォローアップするような仕組みを世の中にたくさん敷いていくということではないかと思います。
 
                                 (以 上)
会見・スピーチトップ