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新ものづくり研究会(第1回)‐議事要旨
日時:2013年10月15日(月曜日)10時~12時
場所:経済産業省 本館17階 第1特別会議室
出席者
新宅座長、朝比奈委員、内原委員、小笠原委員、京極委員、柴沼委員、田中委員、冨山委員、新野委員、野口委員、山中委員、渡邊委員
議題
- 新たなものづくりの展開について
- その他
議事要旨
委員からの主なコメントは以下のとおり。
- 3Dプリンタを一生懸命作っても、日本のGDPにつながるような付加価値づくりができなければ意味がない。3Dプリンティングで価値源泉がどう変わるかを議論すべき。今後、3Dプリンタが伸びていく時のビジネスモデルがまだ読めず、工作機械におけるファナックのように、戦略性のある会社が日本から出るか否かが勝負。
- 産業組織論的な変化として、オープンソースによるネットワーク化が進んでいくと、必ずしもものを作らない人がバリュー・アグリゲーターになる。つまり、世界中で誰かが作ってくれる世界になると、単なるものづくり企業は搾取されるだけの構造になるのではないか。むしろ、スモールインダストリー、スモール・バット・グローバルの方が、日本が得意な戦型に持ち込めるのではないか。
- インターネットも、日本語でメールが書けるようになり普及が進んだ。これと同様に、3Dプリンタも日本のものづくりの強みを発揮できるような、複雑な造形を作っていくことが重要ではないか。
- 良い機械だけでなく、その使われ方が大事であり、プロセスとアプリケーション双方の研究が大切。3Dプリンタの価格帯は10万~2億円と広がりがあり、その性能に誤解が広がっている。パソコンのように普及するか否かはまだわからないが、DMMのようにある程度投資をしてボリュームを稼ぐ必要がある。
- 樹脂3Dプリンタは素材接合の強度が特に課題。いずれにせよ、(1)マス・カスタマイゼーションや、(2)超複雑形状品などの高付加価値品が生きるようなニッチ市場を狙うビジネスモデルを考えていく必要がある。ただし材料メーカーが小ロットでの材料供給を好まないという課題がある。
- 試作品の3Dデータの出力サービス事業を行っており、顧客からの依頼は増加しているものの、顧客から納品されるデータは不完全なものが多く、目下、商売にする部分は目鼻の効く人が参入してきているものの、CADデータへの落とし込みなど足回りの人材が不足している印象。
- クラウドファンディングでものを作る流れは加速化しており、ビジネスとして成立することを示すことが大切。また、少量品を超えて、量産品を作る場合には更なる投資が必要であり、考慮していく必要。
- 専門家に対する考え方と、民生品に対する考え方は分けて考える必要があるものの、3Dプリンタにおいてはソフトのみならずハードも欧米に劣後していることは大きな問題。さらに言えば、仮に良いハードを作れたとしてもソフトの開発を進めておかないと結局負けてしまう可能性がある。
- 3Dプリンタを利活用したビジネスモデルは3種類あると考える。1つ目は完全なオープン型であり、ノウハウ等がデジタル化されることによって、利益を独り占めするバリュー・アグリゲーターが登場してくる恐れがある。2つ目は渡邊委員がプレゼンテーションで説明した頭蓋インプラントのような、専門性の高いものづくりモデル。3つ目は大企業内部の開発におけるラピットプロトタイピングである。
- 前述の3種類それぞれに、親和性の高いデータ形式が存在。1つ目に対応するのが、デジタルデータ。2つ目に対応するのは、「職人の手触り」のようなデータ化しにくい部分。3つ目については、砂型鋳造のような、アナログ技術とデジタルデータの組み合わせがそれぞれ親和性が高いと考えられる。いずれにせよ、これらのビジネスモデルについてその市場の到来時期をしっかり見極めていく必要がある。
- 高専の低学年の学生に3次元CADを修得させ、3Dプリンタで実体を作る教育体制を確立したところ、ものづくりに興味を持たせることに成功した。3Dプリンタの良いところは加工ノウハウがいらないというところで、これを生かして現状のプリンタを中等教育以下にも活用し、将来のものづくり技術者を育成して欲しい。
- 中小企業においては、3Dプリンタの前提としての3DCADの普及が、加工には図面が未だ必要であるという理由で遅れている。3DCADの、プロダクトモデルとしての確立と普及を促進することで、3Dプリンタを含めて、デジタルデータを用いたデザインから製造までの一気通貫のものづくりの仕組みが必要である。
- 3Dプリンタとなるとインフラやフレームの話になりがちであるが、コンテンツも重要。具現化すべきキラーコンテンツとして日本に何があるのかを議論する必要がある。伝統工芸品を含む、日本が蓄積しているコンテンツの力を活かせないか。特に、素材は日本が得意とする分野であるが、3Dプリンタは、新しい素材の性質を引き出せる可能性があり、素材産業そのものが変革する可能性も秘めていると思う。
- 3Dプリンタは高速で何度も試行錯誤が可能であり、これはクリエイターにとって非常にありがたい点。
- 3Dにおける日本の技術に関する標準戦略を早急に立てていく必要がある。標準戦略で成功している欧米企業はの中には、一部の技術をオープンにして、その技術方式が市場で広く採用されるようにしつつ、周辺技術を特許でクローズにして結果として特許料収益を上げる戦略などを実行して大きな成果を挙げている。賢い技術標準戦略をたてて、その戦略に沿って標準化会議に参戦することが重要。
- 3DものづくりビジネスにはB to BとB to Cのビジネスモデルがありそうだが、いずれも著作権、意匠などについては従来の2Dにおける権利処理がそのまま援用できる。B to Cはプラットフォーマーが覇権を握るため、3Dでは日本でのプラットフォームビジネス構築の環境整備を急ぐべき。特にB to Cの場合、動画共有サイトにおけるピア・プロダクションの例に見られるように、ユーザーが法律を知らずに違反してしまう可能性が否定できないため、プラットフォーマーの責任については、3Dにおいても米国のデジタルミレニアム著作権法に見られるような事業者の責任限定策を明確にして、安心して事業展開できる環境を整えることが重要。
- 3Dの発展により素人でもものづくりの世界に容易に参入することが可能となった。このため中国のものづくりが発展し、日本の試作メーカーや金型メーカーは厳しい状況。3Dプリンタはツールに過ぎないが、この登場によりさらに中国などとの競争が厳しくなるのではないか。例えば、スイスにおける時計産業の年間の生産量は3,000万台、売上高が1兆円であるのに対して、日本は8,000万台、1,000億円。日本のものづくり産業はいかに付加価値を付けていくか考えていくべき。
- 3Dプリンタというツールをどのように活用していくか、また、発展途上であるツールをいかに仕上げていくべきかが重要であることがわかった。現在多くの日本企業で用いられている3D-CADは、もともと欧米の現場で使いやすいように設計されており、欧米と全く異なるものづくりをする日本のものづくり現場には合っていない。3Dプリンタの環境づくりにおいては、日本の製造業の強みを活かせるような戦略を講じていく必要がある。
以上
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最終更新日:2013年11月6日