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グローバルサービス創出研究会(第4回)-議事要旨
日時:平成29年2月7日(火曜日)14時00分~16時00分
場所:経済産業省本館7階 西1右 商務情報政策局1会議室
出席者
(50音順、敬称略)
大石委員、北尾委員、北川委員(座長)、北野委員(代理:松本氏)、清宮委員、鈴木委員、張委員、松﨑委員
議題
- 企業の海外展開における主な問題・課題への対応
- 政府による海外展開支援の対象国・地域のプライオリティ付け
議事概要
第3回研究会のレビューの後、事務局より(1)企業の海外展開における主な問題・課題、(2)政府による海外展開支援の対象国・地域のプライオリティ付け、(3)事業者が海外進出検討に当たって必要とする情報、(4)他国政策調査の4点につき、進捗を説明した。それを踏まえ、上記4点について自由討議を行った。
最後に事務局より、最終回となる第5回研究会はパネルディスカッション形式での公開成果発表とすることを改めて確認し、開催要領の概略を説明。 また、当事業の報告書は今回までの内容で作成すること、素案ができた後に各委員への確認を経て最終的には座長一任で確定させる旨、合意された。
自由討議における委員からの主な意見は、以下の通り。
企業の海外展開における主な問題・課題
(1) 「モノ・コト」
- 他者の活用が重要。例えばECは自社展開より、有力な企業と協力する方が低コスト。SNS決済が進んでいる中国では、そのインフラを活用すべき。物流は、現地の有力企業と組まないとサービス品質を上げられない。
- サポーティングインダストリー(サポイン)の広がりが重要。調達面は勿論、たとえば現地で人材を採用する際は現地の日系人材スカウト会社を活用することが多い。店舗デザイン等は業種を問わないので、1つの業種が進出すれば他の業種にも好影響。
- サポインが整っていない途上国に進出する場合は注意が必要。
- 製造業の海外進出に対する政府のサポイン育成支援のように、サービス産業でも支援を展開できれば企業にとって有益であるが、産業全体を俯瞰した形での取組みは行われていない。
- パートナーとの連携は、資本的なアライアンスより、サービスの質をシェアするという観点で捉えるべき。過去のアンケートでも、企業は「パートナーの選定」を重要と考えているが、パートナー選定における政府の関与の仕方は難しい
(2) カネ・経営
- 韓国に学ぶべきは、少額事業のフランチャイズシステム、及びこれによる海外進出モデル。
- 「日本連合」として進出を促進する際は、サポインも含めた政府の支援が必要。
- 防火等の認可に要する時間が不透明だと、賃料が発生しながら営業できない期間が生じる恐れがある。営業開始と賃借開始が同時となるよう、事前準備を徹底することが大切。
- 契約する前に当該物件の図面があるか、どのような許認可が関与しているか等、リーシングエージェントやクォンティティサーベイヤーを使って事前に調査しないと、例えば改装等に時間が掛かったり、思うように看板を出せない恐れがある。
- 築年数だけで測れない建物の個別のコンディションは、契約書からは簡単には分からないとはいえ、セカンドオピニオンが聞けると有難いのは事実。
- 国/地域によって対応が異なるので、チェックリストを作ると膨大な項目になる。一旦進出した国/地域であれば、現地に法務部門を置いて対応できるが、新規進出の場合は大変。英語圏でないと、文書を読めないという点から始まる。
- 専門家の質は重要。与信をする人への与信が重要なので、主要国の大使館に弁護士を配置して民間企業を支援するなど、政府が何とか担保できないか。大手事務所は料金が高いので、中小企業が簡単に利用できないのも問題。
- 経産省には、法制度などのレクチャー、ビジネスマッチング機会の提供、補助金制度等がある。一部のJETRO事務所では弁護士をリテインしており、セカンドオピニオン等に使える。政策金融公庫は、有利な利率で貸し出している。これらはあまり知られておらず、海外展開の特化した基礎的な情報提供について、検討の余地がある。
(3) ブランド
- ブランドコミュニケーション以前に重要なことは、ブランドアイデンティティの確立。差別化やストーリーの明確化で、魅力を感じてもらえるユニークネスを構築すること。
- 海外でブランドアイデンティティを作るのは大変なので、日本国内でのブランド確立が前提。
- その上で、中国に進出する際は香港、オーストラリアの場合はシドニーまたはメルボルン、欧州であればパリ、中東であればマレーシア、インドであればドバイなど、戦略的に重要な優先進出先がどこかという視点で検討する。ニューヨークやパリでブランドが確立できると、他の国/地域への進出に成功しやすい。
- 口コミの影響が大きく、同じ価格であっても口コミ評価次第で売上高が大きく変わる。外食は、現地で影響力のあるガイドに載るか否かで大きく違う。
- SNSが浸透している国/地域では、SNSをブランディング・販促手段として活用できる。
- 好立地に出店して知名度を上げ、便利さを知ってもらえれば軌道に乗る。
- 量的に拡大すると、模倣サービスが現れる。人材育成や技術・サービスの原点に戻り、質を保つことでブランドが維持できる。それこそが企業理念、ブランドアイデンティティ。
- 印僑や華僑の影響が強い。彼らに知られれば、本国に戻った時にブランドを広めてくれる。
- 政府として考えるべきは、ジャパンブランドを高めること。ブランドアイデンティティとブランドエクイティは密接に関係している。受け手が理解できることが重要。韓国は経済危機を契機に、国を挙げてブランド構築政策を展開している。
- 日本は製品品質に注力してきたが、ブランド構築への影響は、一番に国、二番に経営品質(経営者の質やマインド)、三番に製品品質。日本ブランドのイメージは悪くはないだろうが、日本の製品やサービスが選ばれるほどの力を持つか。
- 昨年度、経済産業省では世界にまだ知られていない優れた日本の地域産品500を選定した「The Wonder 500」事業で、個々の商品に関わる作り手の思いや文化のストーリーを英語化し、冊子にまとめて発信したところ、日本文化への理解度が上がった。特にパリやニューヨークで日本ブランドを発信すると世界に影響力が与えることが出来る。
- 「クールジャパン」として個々の商品だけではなく、国自体のブランディングが必要。日本のものづくり、サービスを生み出す背景にある日本固有の文化を深掘りし、発信することで日本全体のブランディングにも取り組んでいる。
(4) 情報
- たとえば「年間所得15,000ドル以上」は顧客となる可能性を見極める1つの基準だが、実際に進出するとなると現地で該当者がどこに住んでいるかが分からないと意味が無い。国がベースを整備し、その上で企業が自業種固有の必要な情報を追加収集していくのがベスト。
- 二次産業型の情報収集~提供では限界がある。三次産業型の手法が必要。
- 一番頼りになる情報は、地元で生活する人の実感。内容に責任を持てないが、口コミを一覧化できれば、それに自分で収集した情報と組み合わせて意義を持つ可能性がある。
- パートナーの与信に関するトラブルが多いにもかかわらず、その情報が日本に入ってこない。基本的に個社で努力する領域とは言え、政府やアカデミアで支援できる余地はないか。
- 問題は情報の有無よりも、取るべきステップ。国/地域や参入形態によって異なるリスクの所在がどこかを開示してもらえるだけで違う。最終判断は自分で行うしかないが、事前準備の段階で参考になる情報があるといい。
(5) ヒト・人材
- 日本を理解している留学生に対し、日本に暮らすインセンティブを出すと良い。帰国する留学生を通じてフランチャイズを展開するなど、日本に繋げることを促進する方法もある。
- 理美容では、ビザと国家資格が障壁となり、外国人の研修はできても実務面で店に立たせられない。
- 日本人従業員については、20代後半で海外に派遣すれば育つ。20代後半の優秀な社員を選定して海外に派遣し、30代前半で現地の小さな単位の責任者にして、財務や物流等、全てを管理させるようなプログラムを、各企業が用意するといい。
- サービス産業におけるグローバル人材の研究が脆弱、アカデミアによる貢献の余地が大きいと考えられる。
日系サービス事業者の展開支援優先国・地域
- 進出の難易度という尺度が必要ではないか。たとえばチリは中南米で最も規制が弱く、経済連携の観点でも多くの国をカバーしている。
- サービスにおいては都市別の分析がほしい。本分析ではカルチャー、アドミニストレーション、地理、経済の4つのカテゴリーをベースにしており、分析の方向性としては問題ないが、都市単位で見ると考えると、そのままでは使えない。
- データ収集の網羅性やデータソースの信頼性、「政府」として対峙する単位を念頭に置くと、都市ではなく国レベルを単位にせざるをえない部分もある。
- 企業としては、あえてリストに入っていないニッチな場所を攻めるという使い方もできる。既に日本企業の海外子会社が多い先進国やアジア諸国は、進出余地が小さいとも言える。
- 国際経済学の観点で見ると、海外進出はアクセスの容易な場所から始め、そこで学習して次の場所に移るというのが定石。
以上
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商務情報政策局 サービス政策課
最終更新日:2017年3月13日