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第4次産業革命クリエイティブ研究会(第3回)-議事要旨
日時:平成29年1月13日(金曜日)9時00分~11時00分
場所:経済産業省本館17階第3共用会議室
出席者
鷲田委員(座長)、柴田委員、西村委員、林委員、山中委員、澤谷委員、土屋委員、安嶋委員(第3回招聘委員)、浜野委員(第3回招聘委員)
議事概要
本研究会の趣旨について事務局から説明後、地域または中小企業経営へのクリエイティブ導入の事例を2名の招聘委員からご紹介頂いた。その後質疑応答、全体ディスカッションを実施。委員からの主な意見を下記に示す。
日本みらいキャピタル株式会社の発表概要
(1)プレゼンテーション概要
日本みらいキャピタル(株)について
- 社会環境の変化によって、経験による固定観念が時代遅れになったり、有効性を失ったりすることがある。その場合に、個人単位・組織単位で今まで持っていた固定観念を取捨選択することが重要である。その概念をアンラーニングと呼んでいる。
- 「アンラーニング」は従来「学習棄却」と訳され、「棄てる」ことに重点がおかれがちであったが、私たちはこれを「学びほぐし」と言って、外部からの力で個人の考え方を一方的に変えさせるのではなく、「職場」や「個人」の関係性を編み直す場をデザインすることを通じて、その参加者が相互にまた内発的に自分のものの見方を見通す機会を提供している。
- 現場で働く社員による職場横断型ワークショップ(ファシリテーションと呼んでいる)はその試みである。職場、組織が蛸壺化している対象企業が多く、異なる職場間の対話を通して、新たな気づき・行動見直し(アンラーニング)を促すことが必要である。
- 製造企業3社合同のワークショップを実施したケースでは、各企業の独自の営みを相互の営みへと展開し、社員同士がお互いに持つ共感・違和感を語ることから、自分たちが従来当たり前として疑うことのなかった自身のものの見方を振り返ることができた。
- 製造業の現場では技能の伝承が難しいという課題が常にある。見て覚える、人の技を盗む等、自身の日々の仕事の中でいわば無意識に身につけたワザを、後輩に教える方法がわからないという悩みを多くの社員が抱えていた。
- 3社合同のファシリテーションを実施した結果、前提条件(メンタルモデル)を見直す機会となった。お互いそれまで当然だと認識していたことが他社では当然ではないことに気づき、社員が個人で自社を見直すようになった。
- 3社が自律分散型協働(主体的に他社との協業の可能性を模索する活動)、例えば、経営会議に相互に出席することが計画されるようになった。3社がお互いに開かれた関係性を構築することができた。
- 職場・組織の境界を超えた場をデザインし、「異質な知」の出会いにより相互の気付きを引き出す営み(ファシリテーション)、その結果生まれる新たな創発活動、変革活動を継続することが必要である。
(2)質疑応答
- 「3社の関係性の向上」以外でも、ファシリテーションの成果を見る評価軸は。
- 最終的には業績(企業価値)が向上するか。各社の業績にはばらつきはあるが、概ね右肩上がりで業績は向上した。また、定期的にアンケートをとる、インタビューをするなどして参加者の意識の変化を定量的、定性的に把握するように努めている。
- ファシリテーション活動の目的として、個としての発想力・気づき等の能力を高めること、そして組織の力を高めることの両方を狙って行ったのか。
- 個と組織を二元的に捉えていない。年配の社員から若手まで多様な年代が共にゲームを楽しむという環境は簡単には生まれない。ワークショップに取り組む過程で、個や組織の関係性を再構築することで個人、組織が一体的に変化していく。
- ワークショップでは、場をリードする年配の上司や印象的な社員が突出する傾向がある。ワークショップは突出した参加者の魅力・リーダーシップに依存してしまうのでは。
- 個人の個性・キャラクターで場の雰囲気が変わる部分はあるが、リーダーだけが存在してもフォロワーがいないと場は何も動かない。リーダーとフォロワーは相互に関係しているし、時にそれらは立場を入れ替える。第三者(私たち)がファシリテートすることで職場の上下関係に引きずられないよう、一定のコントロールを行っている。
- 中小企業はトップが強い傾向があり、トップも部下もそれぞれ相手に変わってもらいたいと切望している。我々が現場に入って相互関係性に揺さぶりをかけそれを組み替えていくことが重要である。ワークショップを進める中で社員の個性は活かされる。
- ファシリテーション参加者の体験は身体に働きかける内容が多かったと推察されるが、意識して身体的な要素が多い内容にしたのか。
- その通りである。製造業では身体を通して技能を獲得する傾向がある。無意識に先輩社員のまねをする中で身体知としてワザを獲得する。従ってワークショップにおいても、身体を動かしながら新たなストーリーをつくる、ワークなどを通じて参加者の気付きを促していく、などの身体を通じた経験などが重要である。
株式会社 浜野製作所の発表概要
(1)プレゼンテーション概要
株式会社 浜野製作所について
- 浜野製作所は墨田区にある金属部品加工の町工場である。墨田区には工場地域・工業地域が少ない上に大企業の工場がほとんど無い。自宅と工場が統合されている家族経営の町工場が多い。
- 継続的に収益をもつ組織・団体が区内に存在せず経済活動が下火であるため、行政の活発な活動を生み出す契機となった。
- 事業概要は(1)設計・開発(2)試作・検証(3)量産加工(4)組込・組立・検証の4つで構成されている。かつては(3)量産加工専門だったが、現在は(1)設計開発(2)試作も手がけている。ものづくりの総合支援施設(Garage Sumida)を立ち上げ、デジタル工作機械を取り揃えて試作品製作のサポートをしている。
- 当社は大学・企業・地元行政と連携して多様なプロジェクトを実施している。多様な組織との連携によって、優良技術をもちつつも自社の技術の高さを理解できていない町工場に、自社の優良技術の自覚を促すことができる。
- 当社は基盤技術の金属加工が強みである。現在はメーカー800社と中小企業で構成されている全国のネットワークの企画・運営をしている。今後は中小企業自らが情報発信して、業界・業種を横断するような業務に取り組む必要がある。
- (1)情報の上流からコミット(地産地消型のものづくり)(2)下請け体質からの脱却(3)ネットワークの活用を今後の中小製造業のテーマとして掲げている。
- Garage Sumidaをハブとして、墨田区内や全国でものづくりネットワークを作る。最近の成果として、アーリーステージだけでない製品開発の段階にまで事業拡大できた町工場が増えた。今後の展開としては、町工場だけでなく周辺の中小企業にも事業をつないでいきたいと検討している。
(2)質疑応答
- 中小企業がものづくりの上流から参画することにより、他社と共にアイディアを共創して新たなマーケットを開拓しているのが興味深い。他社との共創という今までにない世界への進出を思いついたきっかけは何か。
- 2000年6月31日に工場が火事になった上に、大手住宅メーカーが補償前日に倒産になった。その際に支えたくれたのが従業員、地域や業界の先輩たちだった。苦しい際に受けた恩を皆様に返そうというのが大きなきっかけとなった。
- 量産加工だけでは乗り切れない現状がある。量産加工から事業を拡大するに当たり、設計開発・試作の点で元々独自の技術やノウハウを持っていたのか。それとも他社から持込があり、試作を実際に行って、その流れで事業拡大の判断に踏み切ったのか。
- 量産加工の海外展開が見込まれる中で、少量多品種生産を学ぶ必要があると父親から告げられた。試作の工場に丁稚奉公にいったり、量産加工の依頼が減ってきたりする中、社会人としての選択肢は少量多品種生産しかなかった。
- 量産加工の下請けは1対1に近いスキルだが、幅広いネットワークを作って多様な人とコミュニケーションをとる、というまるで異なるスキルセットを獲得している。全てが必要に迫られて会得したものなのか、元々のスキルなのか。
- 会社全体で多様なスキルを獲得しようとする気概があった。
- 金属加工以外でベースとして持つ技術はあるか。依然としてものづくりにこだわってコアにされている理由は何か。職人の伝統的技術を保有していたことが創業のきっかけだったと推察されるが、ものづくりにこだわる判断・価値観は何か。
- 金属の溶接は当社独自の技術だと捉えている。今から工場を立ち上げる企業は早々ないと推察される中、町工場を守って次につなげたいという意識があった。
全体ディスカッション
- 幅広いネットワーク参画に積極的な体制は墨田区全体で構築されているのか。
- 隣の工場同士で依頼内容について尋ねたり、職人を取り次いだりはしている。必要なことは、この企業に相談すれば何らかの回答を得られるという印象を顧客に与えること。他の地域ではない圧倒的な情報の循環が起こっている可能性がある。
- プロトタイピングが重要視される風潮になってきた。どのくらいの時期からプロトタイプメイキングそのものがビジネスとして成立すると意識されたのか。自身の経験上2000年半ば位から、プロトタイプのビジネス化が始まったと思われる。
- 2014年4月16日にガレージスミダを創設した。試作のための装置・研究を行いたいという依頼が多かった。試作のための設備・技術がなく、依頼先がみつけられない潜在顧客が多いと気付いたのが2年位前である。
- 工場内にデザイナーという肩書きの人がいるのか。町工場のネットワークでデザイナーを採用した工場はあるのか。
- 当社にはデザイナーはいない上に、町工場でデザイナーを抱えているところはきわめて少ないと思われる。
- デザイナーと組んで、工場で新しいプロダクトを生み出すことは今後あるのか。
- デザイナーはかっこいいものを生み出す人ではなく、ビジネス全体のデザインに明るい人として本研究会では扱うものと認識している。加工の技術はあるものの、(1)ビジネス全体のデザイン(2)かっこいいデザイン、(1)と(2)の両方のデザインについて明るい人は町工場では少ない。
- 町工場がデザイナーと組まない理由として、デザイナーと組んだ経験がなくデザイナーと協働する方法が分からないことが大きく影響している。現場に一緒に入って、社員と情熱・思いが共有できれば、デザイナーと町工場が協働することは可能である。
- 情熱・思いの共有もデザイナーとの協働を考える上で必要だが、更にビジネスモデルで対立が生じない形を考えていく必要がある。
今後はアンケート調査・ヒアリング調査を実施し、2回の研究会を開催する。今年度末に本調査・本研究会の成果を公表する最終報告会を開催する。
以上
関連リンク
お問合せ先
商務情報政策局 生活文化創造産業課(クリエイティブ産業課)
電話:03-3501-1750
FAX:03-3501-6782
最終更新日:2017年3月8日