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「世界が驚く日本」研究会(第2回)-議事要旨
日時:平成28年11月18日(金曜日)13時00分~15時00分
場所:経済産業省別館2階238会議室
出席者
桐山委員(座長)、イエンセン委員、井上委員、榎田委員、大西委員、垣貫委員、澤田委員、高橋委員、渡邉委員、生駒委員、鈴木委員、増田委員
議事概要
I.「日本らしさ」を再検討する意義
- 前回の東京オリンピック開催時、日本は戦後経済成長の真っ只中で、日本の製品・サービスは発展途上であった。当時の日本企業は「QCD(Quality、Cost、Delivery」」の価値軸で商品価値を高め、競争を続けてきたが、現代では従来の3つの軸に加え「感性」が重要視されていると考えている。
- 経済産業省としては、日本の「感性」を活かしたブランドの構築・発信をこの10年ほど進めてきた。
- 昨今では、日本食のユネスコ世界遺産への登録、ミラノ万博での日本館への高い評価、訪日外国人旅行者数の2000万人突破など、さらに日本に対する関心が高まっており、今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、改めて日本の「感性」を発信していくという観点から、この研究会において、日本の感性を表現するコンセプトを取りまとめたい。
II.世界を驚かせる日本人ならではの感性・価値観を表すキーワード
各委員からの発表
第1回の研究会での議論を踏まえ、国内外有識者ヒアリング、外国人留学生ワークショップ等を経た結果、日本人の自然観を表すキーコンセプト、自然と日本人との関係性によって培われた日本人独特の価値観を表すキーワード、さらに、日本人の生活、及びそれを支える商品・サービスに表されている世界を驚かす5つのキーワードを事務局より提示し、検討を行った。主な発言は以下の通り。
- ものを言わない、外国人から見てファジーな存在だった日本人を言い表す際に「間」というキーワードを用いるのは面白い。
- 文化の根源は、自然の脅威に対する民族の姿勢に由来するが、西洋文明は自然をどう支配するかという考え方で成り立ち、日本人は自然と共生することを選び、畏怖や畏敬の念から、自分と同等もしくはそれ以上のものとして扱ってきた。
文学では、本居宣長の「もののあはれ」という言葉が示す通り、日本人は他に寄り添う心、自分ではなく、他に心をあずける感覚を培ってきた。また、自然を大切にし共存してきたことで、枕草子の「やうやう白くなりゆく山ぎは・・・」のような自然に対する感性を千年を超えても失わずに来たのである。例えば、自然が維持されたことでトキ色のような自然にある物の色が使い続けられ、近代まで日本の色はわずか300色ほどだった。自然が大きく変化した欧米では、白や黒、青のような一万を超える抽象色が作られたが、日本では自然の色の無限の美しさを、物の名と多様な形容詞で表現したのである。伝統と現代を国内外に分かりやすく繋ぐことが重要であり、提示された検討ステップでそれが実現できればと思う。 - 素材、おもてなし、安心・安全、クラフトマン、技術力、美とアート、その他ポイントがあると思うが、概ね事務局の整理に賛同。
「受け入れる(共存する)」には、多様性を認めるという特徴がある。「素材を活かす」には、素材そのものの魅力という点が挙げられる。テキスタイルも食も、季節感が日本の素材をつくり、その先にそれをどう活かすかという考え方から生みだされたもの。「アレンジする」では、日本人の器用さにより、異質なものを組み合わせ、新しい価値観を生み出している。「極める」では、先進性と伝統の融合という点が将来に向けての日本の強みになる。
総合すると5つのキーワード、「『間』の感覚」は理解できるが、キーコンセプトとして挙げられている「自然との共生」については、これに相対する概念を提示した方が良いと感じた。 - 「受け入れる」という点では、外国人をあまり受け入れていない、保守的な印象。「自然との共生」についても日本人特有の感覚ではないのでは。景観が破壊されていたり、家も輸入材で建てられていることが多く、今の日本では当てはまらないように感じる。
- 自然を「感じる」、「受け入れる」には、「感謝する気持ち」が含まれる。自然観には「八百万の神」という考え方があり、繊細さにも表れる「何事にも感謝する」気持ちは、私たち日本人の特徴。
それに付随し「敬う気持ち」がある。例えば「労働」という概念は、古事記や日本書紀では「祝福」という意味合いがあった。日本人の根底には、神様が見ているからさぼってはいけないという考え方があり、「感じる」、「受け入れる」姿勢の根底に、こうしたスピリットが流れている。
また、フランス人から見た日本人の魅力は「神秘性」。黙って静かにしている性格が神秘的で好感を持たれているほか、雄大な自然や高野山のような神秘性が評価されており、アピールしなくても海外の方々を惹きつけている。日本らしいアピールの仕方も検討すべき。 - 江戸、明治、大正、昭和、戦後と、日本人の考え方も変化してきた。戦後の日本は自然を破壊し、化学調味料を大量使用、大量生産してきた時期もあれば、過去を反省し自然を大事にし、素材を活かそうと考え直している部分もあるなど、時代毎に異なる。そのため、これらのキーワードの使用目的、使い方が非常に大事。
今回の事業を通して、日本らしさを表すコンセプトを日本人に対しても伝え、人生を豊かにするために日本を変えていこうという運動として捉えることができれば、結果的に外国人にも訴えることに繋がる。 - 先日、中国人を案内した際、日本の「部活動」について、「ダオ(道)」を感じ、子供の頃から「道」という考え方を教えているところに日本人の優秀さの一端を見たと指摘された。
人間は2足歩行により動物的な体構造から解放されたが、人間の体の中で、自然に則した部分(他の動物に共通する部分)と、人工的な部分(人間ならではの部分)が、常にせめぎ合っている。日本人は、自らの内なる自然を見つめ、そこから文化が生まれ、「道」という概念が出てきた。「道」という概念によって、体構造へ回帰しようとする衝動と、解放されたいという衝動との分裂を防ぎ、繋ぎとめている。それが「道」という考え方の起源。
人の身体や感覚を変化させるために重要なポイントを表す「機度間(きどま)」という言葉がある。「機」は機会、「度」は度量、「間」は繋がり、関係性を表す。この場合の「間」は、元来、身体の持つ対立する衝動を繋ぎとめることを指す。だから、間があるものを見ると人は安心する。また、間が論理的、構造的かつ美しく昇華された体系が「道」の起源である。
内なる自然と外部の自然との調和を日本人は考えてきたので、そこから整理するべき。
人が魅力を感じる感覚は言語化されていない。これまで政策として「伝える」活動は膨大に実施しているが、「伝わる」メカニズムについての行動分析はできていない。それこそ政府が主導して取り組むべき。 - 「自然との共生」は納得。とあるオンラインゲームのイベントで約2000人が同時に踊ったが、皆の振りがすぐに合い、ここに働く共感とは何かと考えると、自然との共生から来る古来のお祈り、お祭りに通じる感性が我々の中に今も残っているのではないか。
日本に行きたいが日本がまだよく分からないという外国人は多く、情報発信の機会が大事であると改めて感じており、東京ウォーカー、横浜ウォーカーを翻訳し海外で出版しているが、現地サイドで彼らが行きたい・見たい日本に置き換わってしまう。こうした視点をどう取り込んでいくのか、彼らとともにどう日本という像を作り上げていくのか、というアプローチが現実的には伝わりやすい。 - ブランディングの視点から、今回目指すべき方向性は、外国人の心に響かせたい、欲しい・行ってみたい・学びたいと感じてもらうこと。どの国にも固有の風土があり、日本特有の風土から展開することは、外国人に分かり易い。「『間』の感覚」は、他の言語には類を見ず興味を引くだけでなく、日本人が日本らしさを発見する導入としてもよいキーワード。
キーワードは、英語表現で何というかを意識すること。また、概念としてのキーワードがどこに現れているのか、感覚的に分かるような具体例を挙げてほしい。
相手国には無いが日本にはある、その差異として生じる憧れを見極め、発信することで、バイヤーや旅行会社は自分達の実利に繋がる情報として拡散してくれる。旅行では歴史や自然、ものづくりの面では匠の存在やその姿勢。世界の人々から見て憧れを抱いてもらえそうな要素を、しっかり具体的な例でまとめて頂けることを期待したい。 - 一般の人が理解し使えるキーワードは包括的にこの5つでまとめられる。地方では地場産業、農業など、世代交代が進み、若く志のある作り手が生まれており、このキーワードに刺激を受けてものづくりを進めてくれたらと感じる。
産地側でもライフスタイルの変化に合わせて変革しようという機運が出てきているが、地方の若い生産者たちが、日本のものづくりの極意が詰まったコンセプトとして、今回のキーワードに注目し、活かしていくようになれば良い。 - 日本らしさについて5点コメントしたい。1点目は、日本が注目されている「結果」よりも、その「原因」に世界は関心を持っている。2点目に、日本は、技術など文明的なもので評価されたが、これからは文化で評価を集める時代になってくる。3点目に、資本主義が人間の幸せとかけ離れていく危惧を世界が感じ始めている。4点目は、戦後にものづくりを頑張ってきた日本が、中国の台頭で厳しい状況におかれている今、工業化を進める上で日本の風景や日本人が元々有する良さを潰してしまったことへの反省の機運が生まれている。5点目に、そもそも日本人とは何だろうか、ということへの関心が国内でも高まった結果、日本人の特徴として、「利他」の心、シェアリングエコノミーといった言葉がキーワードとして現れている。
日本人は情報処理能力に長けている。“間”の概念にも通じてくるが、日本人は相手との関係性によって、「自分」という表現を幾通りも使いこなすがアメリカは”I"のみ。こうした、日本人の情報処理能力が今後活かされてくる。
中国に『知日』という雑誌があり、中国が日本に学ぶために5年前に創刊された。一つのテーマで一冊の本を編集しているが、テーマは「禅」、「武士道」、日本の「礼儀作法」、「富士山」、「太宰治」、「萌」など。中国人が知るべき日本のコンセプトの編集視点などを参考にしてほしい。 - 共感・進化・発見を通して、伝わる方法論をいかに確立するかが重要。1点目として、運動体にしていくことが大事。5つのキーワードがどう「伝わる」ように政策を作っていくのか、それを経営手法とか、地域の発展にどう落とし込めるかが大切。こうした運動体にしていくための共感発生装置をどこに作るのか、どう置くのか、どう仕組み化するのかを考えていく必要がある。2点目に、意図的にどう進化を起こしていくのか。インバウンドにおいて日本をどう再解釈するか、日本のクラフトをどう再編集していくか、など。3点目は発見。一番テコ入れしなくてはいけないのは日本人そのもの。明治以降に和魂洋才という考え方のもと洋の才能を導入してきたが、そろそろターニングポイントに来ている。日本らしさを発見する機会を例えば企業の中、政策の中、学校の中にキーワードとしてどう意図的に置いていくのかを考えていくべき。
一つの手法として、全てを伝えきらず受け手に考えさせるというやり方もある。他にも、例えば化学反応をする時に二つのアクションが必要。一つは異質の物を混ぜ合わせること。もう一つ忘れていけないのが「触媒」の存在。意図的に進化を起こすためには、何かと何かをつなぎ合わせる「触媒」となるような仕組みやサポートや強化のプロセスが必要なのだろうと思う。 - CJ機構での業務を通じ、海外から日本に対する期待感は、まずはクリエイティブ&テクノロジー、次に伝統的な文化がある。「間」と言う言葉にもあるとおり、どこか肉声のもの、縦横斜めの論理性にないゆらぎのようなもの、ある種のいい加減さ、といった言葉が海外からよく聞かれる。5つのキーワードも、良い意味での「いい加減」さが枕言葉にあり、色々なワードを置いてみると、海外の方々の期待に合うのではないか。120%作りこんだものを出してしまうとお客様が引いてしまう。8割方に留め、残りの2割が受け手の関心を呼び込むような仕掛けが必要。
III.今後の進め方
- 第三回研究会では、コンセプトブックの編集案を事務局より提示し、第二回で意見の出たキーワードの伝え方、ブックにおける表現の仕方を議論して頂く。また、キーワードの発信について、コンセプト発信検討委員の皆様よりご意見を頂きながら検討し方向性を定める。
関連リンク
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最終更新日:2017年1月5日