経済産業省
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産業競争力部会(第6回)-議事要旨

日時:6月1日(火)18:00~20:15

議事概要

冒頭、直嶋大臣よりご挨拶。

  • 今日は、大詰めの最終回。産業競争力部会は、まず産業の厳しい現実を直視した上で、今後の日本の産業の将来ビジョンを検討する、という目的で設置した。
  • これまでの議論を踏まえ、産業構造ビジョンで何を実現したいかを整理し、あわせて、今後、日本は何で稼ぎ、何で雇用するのかということを定量的にお示ししたい。
  • 今、岐路に立っている日本をどう立て直すか、官民の力を合わせて、発想の転換を図っていく必要がある。私からは、改めて4つの点を皆様に申し上げたい。
  • 1点目は、産業構造の転換。これまでも議論していただいたように、現在、自動車を初めとする特定の産業に依存した、いわば「一本足打法」の産業構造から、戦略5分野のしなやかな「八ヶ岳構造」へ転換すること。そして、高品質・単品売り型から、システム売り・課題解決型・文化付加価値型へ転換すること。
  • 2点目は、企業のビジネスモデルの転換。垂直統合、自前抱え込みモデルから、オープン・クローズの戦略的な組み合わせモデルに転換すること。多数による国内消耗戦から、グローバル市場を見据えた産業再編、棲み分けへの転換をすること。こうした新たなシステムにおいては、特に国際的なビジネスにおいては、オールジャパンということではなく、外国の企業ともウィン・ウィンの関係づくりが必要だというご指摘をいただいた。この点も大変重要なポイントだと思っている。
  • 3点目は、グローバル化と国内雇用の関係に関する発想の転換。グローバル化を進めることが国内雇用の創出につながるという二者択一的な発想ではなく、グローバル市場で積極的に稼ぎつつ、国内で質の高い雇用を生み出すという発想に転換する必要がある前回、年収 300万円以上のジョブをどうやってつくり出すかというご指摘もいただいた。こうしたご指摘も踏まえて議論をさせていただきたい。
  • 4点目は、政府の役割の転換。戦後から高度成長期にかけて、政府主導による資源配分と個別産業保護といった過度な介入が行われてきたという反省から、90年代以降、国は何もしなくてもいいという市場機能至上主義の風潮があった。しかし、現在は、国家間の付加価値獲得競争が激化をしており、グローバル大競争時代に勝ち抜くための官民連携の新たな姿に転換をしていく必要がある。
(総論)
  • 短期間で、これだけの内容打ち出して、非常に評価している。
  • 成長の5分野についてだが、産業別の切り口とは別に、エリアでの切り口で、アジアの成長を取り込んでいくということをもっと前面に出していくべき。アジアの成長をどう取り込むかによって日本の今後の成長がかなり決まってくる。一体化するアジア市場 の中で、どういう戦略を打っていくか、あるいはどういう具体的な施策を打っていくのか、エリアの面での成長戦略も検討する必要がある。
  • 実行に向けて、具体的なロードマップと各分野への投資額を明示的に示す必要がある。市場規模生産額を示しているが、これも投資額によって大幅に変わってくる。投資額を確定し、それをベースにして、可能ならば、産業連関上の乗数効果を定量的に試算しておくべき。これを欠いてしまうと、後のフォローアップもできないということになりかねない。これまでの成長戦略に欠けていたものなので、何とかやっていただきたい。同時に、定期的な産業分野ごとのベンチマーキングが必要。それに応じて、投資がまだまだ必要になってくるかもしれない。
  • 国家資本主義、社会主義的市場経済圏という中で、どうやって国際競争力を維持していくか、というところが肝ではないかと思う。政府がイニシアチブをとるというのが重要なポイント。EUとのFTAで、韓国との差は何なのかというと、やはりこれは政治のイニシアチブが大きいと思っていた。日本とEUのFTA交渉で4月の日本EUサミット時にハイレベルワーキンググループの設置に合意するという進展を見せたが、これは今回直嶋大臣が強い働きかけを行った結果だと聞いた。こういう「政治の力・イニシアチブ」が、これからは重要だ。
  • スピード感をもった上で、いかに実行、実現していくかが大事。そのためには、財政の問題、年金・介護・医療の社会保障の問題、そして少子化の問題に対して、国民に安心を与えるという大方針とセットで進めていくことが、効果があるのではないか。
  • 国を挙げて産業競争力強化に乗り出すということを強いメッセージで示しており、評価したい。また、「何で稼ぎ、何で雇用するか」ということがビジュアルで示されていて、雇用と人材育成に非常に配慮した書きぶりになっていることも評価したい。
  • ビジョンの実現に向けて、まず、短期的には、デフレを脱却して、名目GDPが持続的に増えていくという軌道に乗せることが重要である。戦略5分野で 140兆円以上の市場創出とあるが、20年間もデフレに陥っている中では、140兆円という数字は非常に大きく見える。短期にデフレを脱却し、名目GDPを増やしていくという政府の強い姿勢が前提となってはじめて、このような市場が生まれてくる。
  • 産業構造が転換していく過程では、当然、伸びる産業は成長して伸ばしていかなければいけないが、他方、衰退する分野もでてくる。この衰退する分野では、失業者を外に出すのではなく、職業訓練、能力開発をして、新しい分野に移ってもらうという、公正な移行のための措置が必要である。全体として失業者を出さずに産業構造を転換していくプロセスを注視していく必要がある。
  • 他省庁の基盤戦略、政策との整合性とシナジーについて問題提起させていただく。例えば、「制約要因を課題解決へ」という問題意識が大変重要だと思う。しかし、「産業構造の転換」という言葉よりも、「産業構造の安定化」という文脈で私はいいと思う。日本経済の最大の弱点は、資源・食料・エネルギーの外部依存の高さにある。今後、資源・食料・エネルギーの外部依存の高さを懸命に抑制していく、戦略的に立ち向かっていくという問題意識はすごく重要だと思う。例えば、食料について、農水省の食料自給率6割を目指すという政策との整合性において、今、日本は年間約6兆円の食べ物を外から買っているが、食料の輸出もほぼ 5,000億円のレベルに来ている。今後、例えば食料の輸出を2兆円目指すという具体的な目標を掲げて――どうして経産省とそれが関係あるかというと、それをやるためには先端的な技術を食や農業分野に注入しなければいけない。産業で培ってきた先端的技術――例えば保冷とか、いわゆる物を腐らせない技術とか、バイオの技術とか、種子にかかわる技術とか、あらゆる意味で日本のその種の分野の技術を、ロジスティクスの技術も含めて、注入しないと、食料輸出を2兆円規模までに伸ばすのは難しい。
  • アジア、中東において、日本の食材や食品はスーパーに並び、非常に人気である。このチャンスを生かし、農水省の戦略と経産省の産業政策論との整合性をとって、インセンティブをつけて、食料の外部依存度というものを下げていくプログラム――しかも、そのためには年収 300万円以上の雇用をどう創出するのかというときに、食と農業の分野で雇用を創出するというのは大変重要になってくると思う。
  • 農業分野で 100万人の 300万円以上の収入が得られる雇用を創出するということになると、例えば、生産法人や流通法人といった仕組みに産業技術を注入していくような仕組みをしないで、補助金を持ち込めばいいというような話ではない。資源についても、希少金属を含めて項目が出ているが、日本の海洋テリトリーで、希少金属とかメタンハイドレートを含め、エネルギーの開発などに相当な戦略意思をもって立ち向かわなければいけない。それによって、資源と食料とエネルギーの外部依存を抑えて、安定感のある産業構造の国へ転換できる。
  • 情報通信産業(ICT)は、成長への寄与率を過去5年平均で見て、成長の34%分で、ICT産業が日本の場合は支えている。こうした中で、すべての産業を強化していくためには、基盤インフラの整備が不可欠。100メガ級のICT基盤インフラを5年以内に整える、という総務省の動きに対して、経産省はどう呼応してインセンティブをつけて軌道に乗せるのか、整合性をとることが非常に重要。
  • アジアとの共存共栄、アジアの成長力を取り込むことはすごく重要。例えば、単にインフラだけではなく、ASEANのブレインタンクとして、経産省がERIAに年間10億円もサポートしているが、アジア開発銀行などとも連携して、日本が主導していく大型のプロジェクト構想力をもつことが重要。
  • 県境を越えた広域地域連携を図ることは、今後、戦略5分野を育てていく上では絶対に必要になる。地域との連携を強化し、県境を越えた連携の仕組みをサポートしていくべき。
  • ビジョンを今後、どういう体制で進めていくかは非常に大事。加えて、メリハリと時間軸を決めてやらないと、何も進まずに終わりかねない。国際社会で、「日本が変わったな」という印象を与えるような動きが一番いいと思う。そのためには、法人税引き下げを、スピード感をもって、そして、できれば5%ではなくて10%ぐらい下げるとインパクトがある。それによって、海外企業や人材の呼び込みに繋がるし、日本企業も国内での生産にとどまる。また、アジアの中の総合拠点化が非常に大事で、アジアの中で日本のポジションを高めるためにも、日本の存在感をもっともっと強めていかないといけない。
  • 戦略分野を5つに分けるのも大変いいことだが、環境・エネルギー、安心・安全というテーマでくくったら一体どういうことになるのだろうか。日本が世界にこれから飛躍していくときに、環境・エネルギーの問題、あるいは安心・安全という問題に取り組んで世界をリードしていくのだという気概をもってやる必要があるのではないかという気がする。例えば、インフラ関連・システム輸出の中で、原子力、水、鉄道等とあるが、これはすべて環境・エネルギーの問題にかかわってくる話である。また、環境・エネルギー課題解決産業は、例えばスマートコミュニティで考えれば、これはインフラ関連とかシステム関連といった社会システムのことをいっている。日本を環境やエネルギーに大変優しい、省エネルギーの国、あるいは、低炭素社会の構築といった観点でくくったら一体どういうことになるのだろうか。それを先端技術開発から、システム開発、販売サービスまで、スルーで見ていくとどういうことになるのかというストーリーを作ってみると、違う絵がみえてくるのではないか。
  • 9つの横断的政策が戦略分野にどのようにビルトインするかという視点で考えていただきたい。羅列するのではなく、戦略分野にどのように織り込んでいくのかを考えて整理すれば、より包括的・総合的な表現になっていくのではないかと思う。「日本から海外へ出て行き、そこでどうやって付加価値を獲得するか」、「日本に残し、磨きをかけるものを残すためには何をすべきか」、海外の活力をいかに取り込むかの3つの視点で、横断的政策を考えていくべき。
  • ビジョンの進み方について、大事なのは、いつまでに、だれが、どういう仕組みで、どのくらいの金を使って、どのようにやっていくか――5W1Hを明確にすることだと思う。中国は国を挙げて、猛烈なスピードで変化している。日本も、そのようになるには、省庁間の連携、国と地方の連携、企業間の連携を真剣に取り組んでいかなければならない。
  • 非常に短い期間の中で、これだけの分析をし、整理できたことは非常に大きな意味があると思っている。しかし、ビジョンの施策を実現するに当たって、他省庁、その他いろいろな分野との連携なくしては、課題解決ができない。戦略とロードマップを策定し、分野ごとに、実効フェーズを含めて継続してやっていくことが非常に重要。
  • それぞれの分野について、今後、スムーズにテイクオフできると思えるものは一つもなくて、それぞれに現状解決すべき課題をたくさん抱えている。そこで、国を挙げてやるのだという強いメッセージとしては、やはり法人税改革は非常に有効だと思う。
  • 一つ一つの施策や産業競争力にとって共通のキーワードとして重要なのは、グローバルである。「国を挙げて産業競争力強化に乗り出す」というメッセージに、ぜひとも「国際」もしくは「グローバル」という言葉を盛り込んで欲しい。
  • 「行き詰まりの直視」と「成功神話からの脱却」は、要するに従来モデルを磨くのではなく、従来モデルの「創新」である。しかし、内容的にまだ変わりきってない部分がある。1点目は、既存産業の縦割り政策である。産業の区分・区分けが、従来のように自動車や電力などはっきりと分けることができなくなっている。しかし、経済産業省自身がまだ縦割りで、「連携して対応する」よりも、もう一歩踏み込んでほしい。また、省庁横断的な施策も多いので、経済産業省が是非リードして、産業政策としての方向性を共有していくべき。
  • グローバル市場を見据えた産業再編・棲み分け」とあるが、従来のスケールメリットの発想からくる産業集約、と誤解を与えかねないので、既存の産業単位がそのままではなくて、既存の産業単位自身がもう変容してしまうので、従って、再編が必要だという印象が出るように、是非書きぶりを工夫していただきたい。
  • 政府の役割の転換というのは、まさに市場機能万能主義からの脱却ということだと思う。今後、産学官・公と民の関係が変容し、多様化していかなければならない。官と民が従来のように、代替関係ではなく、相互に補完する関係になってくる。単なる協調ではなく、相乗関係を築くことが重要になってくる。また、官民のみならず、国と地方の産業政策についても大きく変わってくる必要がある。さらにイノベーションに目を向けると、日本のみならず、世界から知を取り込もうという考えも非常に重要になってくる。日本を取り巻くモデル自身が変わっていかなければならない、という部分を強調していただきたい。
  • 今回のビジョンで示していただいているデータを見て、日本経済の深刻さに、幾度も衝撃を受けた。意外と、国民は日本経済の現状を知らない。まずは、この厳しい現実を、国民と共有するところからスタートするべきだと思う。
  • 日本経済は本当に転換点に置かれている。この審議会のとりまとめから政府全体の議論になったとき、省庁間や与野党間などの、矮小化した議論ではなく、本当に日本にとって今何が必要かを議論し、具現化に向けて、全力で向かっていくべき。
  • 私どもの企業は、仕事の大半を海外でやっている。売り上げの90%は海外で、利益も90%は海外。既に何十年も海外を中心に事業を展開している。
  • 日本国内で、そして国内を相手にした事業は、今後下り坂であることは間違い。日本に拠点を置き、貿易をする事業は今後横ばいで、日本に拠点を置きながら、海外にも拠点を作り、事業を展開している企業は今後伸びていくと考えている。私どもの会社でも、ここ数年の間に海外拠点を随分つくった。現在、日本の拠点から海外に向けて投資をしているが、遠くない将来には、海外の拠点から海外の投資をするという形をとっていきたい。その理由は非常に簡単で、結局、日本の産業の活路はそこしかないと思っている。日本に拠点を置いて、日本から出ていくというだけでは、力はついてこない。したがって、海外に拠点をつくって、国内拠点と連携していかないと、競争に負ける。
  • インフラ受注を含め、アジアの成長は著しい。しかし、アジアをどこまで含めるか。私は、アラブなどミッドイーストやノースアフリカもアジアと捉えるべきだと思う。そこにも大きな需要がある。しかし、アジアの需要をいざ取りに行こうとしても、中国の脅威は大変なものがある。日本企業が単独でいってもまったく太刀打ちできない。日本企業のみならず、海外のパートナーと一緒に、勝てるコンソーシアムを組んでやっていかなければならない。要は、どういう形であれ、利益を日本に持って帰る、この利益で新しい事業を始めることが重要。稼ぐためには、狭いアジアではなく、アラブでもノースアフリカでも、獲りに行くことが重要。
  • また、日本企業の運営活動の海外拠点から海外事業への投資を日本国内の企業活動として見てほしい。海外に拠点を作った場合、日本政府から支援をもらえない。こういう中で、中国や韓国と競っていくのはなかなか厳しい。
  • ビジョンを具現化して行くに当たって、政府は一切遠慮する必要はない。政府の強いリーダーシップを民間の我々が求めているわけなので、民業圧迫などにテイクケアして、矮小化していては、実現に至れない。思い切ってやってほしい。
  • 産業構造ビジョンを実現したいことの中で、国を挙げて産業競争力強化というのは主眼であって、これを通じて新しい国づくりというのは明治維新以来ということではないかと思う。IBMが2年前から、「より賢い地球」ということで、スマーター・プラネットということを提唱されて、スマーター・シティーズというフォーラムを何度が開いている。企業が率先して、プロジェクトを推進している非常に良い事例である。今後、ビジョンを具現化して行くに当たって、リーダーを決めて、責任所在を明確化していくべき。個人を指名してやるぐらい思い切ったことをやってもいい気がする。そのもとで各省庁が連携して、画期的なことをやらないと、進んでいかない。
  • スマーター・プラネットに関連しての話だが、なぜ日本の企業にこういうソーシャルイノベーションのコンセプトを出せる企業がないのか。日本は、これまでのように、物をつくり、そして物をみせるという考え方はもう通用しない。コンセプトを出せるコンセプトメーカーの人材は不足している。いいコンセプトというのは、後ろ側にいいモデルが透けて見える。コンセプトはモデルの体現であって、すなわちモデルを変えるときにどれだけ新しいコンセプトが出せるのかが問われる。政府が変わるというお話があったが、もう一方で、企業の側もコンセプトが出せるぐらい変わっていただきたい。
  • コンセプトのところのワーディングだが、例えば、「何で稼ぎ、何で雇用するか」と、これは大変いいフレーズのように見えるが、稼ぐ前に、何を提供できるのかが問題である。稼ぎ方が下手だから日本の産業はだめになったわけではない。価値が提供できないからだめになった。従って、どんな価値を獲得できるのかということを問う前に、企業はどんな価値を提供できるのかということを問うというところにまずいかなければいけない。「アジア経済の取り込み」という言葉についても、取り込む前に、アジア経済が成長するために日本はどんな貢献をするかがまず問われている。オールジャパンで攻め込んで全部奪うというのではなく、どうやってウィン・ウィンを築きながら、価値をお互いに得るのかという、この姿勢が求められている。
  • 「システム輸出」という言葉だが、これも誤解を招くのではないかと思う。単体製品ではなくて、システム化というと、物づくりのイメージがまだついてしまう。今、世界では物とサービスが連携して価値形成する。iPodとiTunes storeが一緒になって総合的な価値形成をして価値を提供するのが典型的なモデルである。自動車も、従来の自動車ではなく、まちづくりの中でサービスと連携して価値を提供することが重要である。システム輸出というと、単体製品じゃなくて、システム化すればよいという誤解を招いてしまう。
  • 「課題解決」についてだが、問題は「解決」するかもしれないが、課題は「遂行」ないしは「達成」するものである。
  • 施策を実現するに当たって、どれ一つをとっても、1つの課あるいは局でできるものではない。そういう意味では、ライン業務をとにかく減らしていって、こういうプロジェクトを一つ一つ――例えば産業再編成だが、これは大変なエネルギーとリーダーシップが必要で、一つのプロジェクトとして責任者を決めて遂行しなければ、ビジョンや目標をつくっても達成できない。
(人材について)
  • 和魂洋才の精神を持つこと。ビジョンを具現化するに当たって、人材であれ、マネジメントノウハウであれ、日本だけではできないことが多々ある。一方で、諸外国にノウハウや人材が多く存在している。それを活用することが非常に大事である。日本において、例えば、PPPとPFIについて、実際に日本で十分に活用・運用された実績があるところは少ない。空港のマネジメントを民間に委託するにしても、そういう経験を有する企業は少ない。ベンチャーキャピタルについても、実際にインキュベーションからマネジメント指導までできるノウハウをもったところも少ない。都市開発などでコンソーシアムをつくり、それをマネジメントするようなノウハウをもったところも少ない。そういう部分はまず海外から力を借りて、それを自分たちのものにしていくという意味での、和魂洋才を再度考えていく必要がある。
  • 高度人材育成・呼び込みについて。日本人の若者の資質は全然劣っていないと思うし、それを覚醒させるための仕組みをぜひ作っていただきたい。外国人の留学生、意欲のある人、やる気のある人、根性のある人、そういう人たちと日本人の学生が英語で一緒に学ぶ環境をできるだけ多くの大学でつくっていただきたい。
  • 雇用の質という点で、例えば介護分野だが、介護人材の担い手がなかなかいないという問題がある。介護の所得が低く、そのために、介護を志しても途中で挫折する人たちがいるというのが実態である。この問題の解決のためにも、ディーセントな雇用を目指していくことが必要である。
  • 人材育成について、成長戦略という視点を考えた上で、初等教育からの教育という視点がやはり足りない。今やっている教育にいい部分もたくさんあるが、リーダーを育てようという部分が足りない。例えば小学校をみると、児童会とか児童会長というものがもうなくなっているし、過度に横並びをとった形になっている。産業とか成長という視点を入れて、その部分にフォーカスした形で、教育を見直していく必要がある。高度な人材を海外から呼び込むとともに、日本でせっかくお金をかけて教育した若者を、生かしていくことも非常に重要。また、不況になると、そのしわ寄せが新卒の学生に行ってしまう。若者に頑張ってほしいといっても、個別企業ではどうしても採用を絞るというのが現状。こういうことも含めて、若い人材をどうやって次の成長に結びつけていくのか、官民一体となって、取り組んでいただきたい。
  • 文化産業について、アニメの制作現場の話を聞くと、相当低い賃金でやっていると聞く。この背景には、発注する側と受注する側との、優越的地位の乱用があって、受けるアニメの制作現場に行けば行くほど値段がたたかれているという実態がある。公正競争というルールをきちんと貫いていかないと、せっかく雇用が生まれても、それがディーセントな雇用にならず、持続的な成長に結びついていかないという問題がある。
  • 横断的施策の「産業構造転換に対応した人材力強化」だが、今、日本が国際競争力を失ってきていて、システム輸出を推進していくためには、プロジェクトを推進していける人材を育てていくことが必要になる。それは単なる語学力だけではなく、法制度、金融、異文化などを外国人と共有して、かつマネジメントできる人材力が必要。そのためには、アメリカにはプロジェクト・エンジニアリング・スペシャリストの資格制度のように、各企業をまたいで、そういう資格制度を設計していくべき。日本が今までやってきたことの間違いの多くが、グローバル化時代に対応するために、大学にMBAと法科大学院をつくっていけば、国際プロジェクトに向き合えるのだと思っていたところである。MBAというような特殊な金融スキルだけを磨いても、なかなか太刀打ちできない。グローバル時代に勝ち抜くには、総合的に身につく必要がある。
(少子高齢化)
  • 少子化対策について、少し長い目で考えておく必要がある。2055年には、今の1億 2,700万人が 9,000万人を切るという推計がある。トランジッションのマネジメントさえうまくできれば大丈夫、という考えもあるが、成長の三要素のうちの投下労働力が経常的に減少していく中で、生産性を飛躍的に向上させていくことも非現実的であるので、この部分について、成長戦略の中長期的な本質的問題として、対策を打ち出していただきたい。
  • 日本の若い世代がグローバルでしっかりと英語で大議論ができるような意見をもつことと、プレゼンスを高めるということは必要。そのための教育が大事である。企業としてもできる限りのことをやろうとは思うが、政府として徹底的な支援を考えていただきたい。
  • 「何で稼ぎ、何で雇用するか」ということで、2007~2020年までの間にこれだけふやすという目標を、これから10年かけて実現していくと思うが、その中で、グローバル高度人材(リーダークラスの人材)が非常に重要である。2020年までのスパンで考えたときには、既にその対象になる人材は、若くても今の大学生、あるいは既に社会人になっている人材が中心。いかにそれぞれの現場で活躍してもらうかが重要になってくると思うが、その部分は報告書から抜けている。
  • 人材育成は終点ではなくて起点で、これを具体的にどうするかというのが極めて重要。今、第一線の企業人が鍛えられないともう間に合わない状況で、とにかくイノベーションマネジメントを徹底的に第一線の人たちに学んでいただく、そういう機会を早急に施策として打ち出していただきたい。長期で人材育成というのは極めて重要なことだが、即効性がないと間に合わない。プロジェクトのエンジニアリング・スペシャリスト、プロジェクト・プロデューサーや、ビジネス・プロデューサーのような人が育たないと、政策は動かない。海外から連れてきても構わない。
(研究開発)
  • 研究開発投資については、「GDPの1%を目指す」とあったが、20年までに1%を目指してやっていてはもたない。日本の政府の研究開発投資の寄与率が低いことは歴然。その分の負担は全部民間が背負ってきた。一刻も早くGDP1%以上を実現していただきたい。
  • 研究開発に資金を費やして、いざ、新興国での事業展開をしようとすると、マーケティング費用を捻出できない。二番手、三番手で余り開発費を使わずにやってきた韓国勢に膨大な額のマーケティング費用で負けてしまうというケースがたびたび起こっている。
(法人税)
  • 法人税の減税については、思い切って、10%以上をやっていただきたい。5%ぐらい下げただけでは、なかなか効果がない。世界的に、法人税の減税競争が進行している中で、一挙に10%以上法人税を下げるべき。ただし、この10%以上の減税分によって得られる利益を民間企業が可能な限り成長のための再投資に持ち込む必要がある。
  • 法人税だが、5%ぐらい引き下げても、効果が少ないという意見もあるが、一で、即効性はないにしても、日本の方向性を意思表示するだけでも、相当意味があるように思う。しかし、法人税の引き下げに併せて租特を見直すようなことをすると、特にナフサを使っている産業にとってみると、うちの会社の場合3,000億ぐらいのマイナスになるので、どんなに法人税を下げてもらっても、大きな赤字になってしまい、意味をなさないということになってしまう。
  • 法人税減税について、「租税特別措置等の見直しなどを前提として」とあるが、深読みすると、実効税率はほとんど変わらないという印象も受ける。企業の実負担を減らすよう、検討してもらいたい。
  • 法人税改革だが、実効税率が下がらなければ意味ないと思う。また、実際の法人税引き下げを要求する過程で、法人税の引き下げにより、日本経済はどう活性化していくか、明確な論理構成が必要。また、財源、消費税など税体系全体の中で法人税のバランスどう確保するかが重要。
(立地補助金)
  • 低炭素型の雇用創出産業立地推進事業費補助金制度についてだが、これは大変有効であった。しかし、 297億円の規模では極めて一過性で、インパクトが少ない。国内に工場を残すどうかに迷っているような事業も多々あるので、年間 1,000億円、少なくとも10年間続けるという大きなインセンティブを提供することで、ものづくり現場を維持する意味では、非常に重要。
(医療・介護分野)
  • 医療・介護分野の輸出について、医薬品や医療機器が当てはまるが、医療機器が大型化になると、海外に持ち込むというわけにはいかないので、輸出先でオペレーティングしているのを見せる場がないといけない。中日友好病院のようなところへ持ち込んで、そこをショーウィンドー化するというようなことをしないと、なかなか輸出は伸びないと思う。
  • また、医療ツーリズムについて、諸外国の患者を呼び込もうという時に、JTBの調べでは、中国で調べても、日本の医療が高度であるということを知っている方は皆無であるというデータが出ている。まずそれを改善しないには、幾ら日本の検診が優れていても、患者さんは来ない。
  • アメリカのジョンズ・ホプキンスは、六本木のミッドタウンに既にショーウィンドーをつくっている。まだ小規模だが、MDアンダーソンもがん研に以前から働きかけて、提携をしないかと打診が来ている。南アジアには幾つかの拠点をつくっているということで、日本では全くその動きがない。それについて、項目として入れるべきではないか。サテライト・クリニックみたいなものが必要である。
  • 医療体制についてだが、病院がいずれも小規模で、集約化が一番必要なのが医療の現場である。医療クラスターを作り、その周囲に医療産業を呼び込むことが必要である。しかし、日本では、町づくりや医療施設の設計など、外国に比べ、数段遅れている。病院の規模が小さいので、十分にできなかったのも大きな原因である。亀田病院や幾つかの先駆的な病院のみが、先進的な取組をやっているだけ。集約化をして、日本オリジナルなシステムを開発し、輸出していくという方向性を改めて考えていく必要がある。
  • 超高齢化社会が進んでいる中で、医療・介護・健康・子育てサービスを育ていくには、地方自治体、政治、宅配の事業者、交通事業者、NPOなどいろいろな方たちが連携をしながら内需を拡大していくことが需要。まずは、暮らしの安心・安全のための内需の拡大というところに焦点を当てていただきたい。また、消費者志向のニュービジネスという部分でも、かなり有望なビジネスはあると思うので、消費者の声を新製品の開発の段階から入れ、そういう部分も内需拡大に繋がっていく。
(インフラ輸出)
  • 高効率石炭火力等、環境性能はいいが、割高な日本メーカーの大型インフラを相手国に売り込むには、公的金融支援、とりわけ円借款の果たす役割が大きい。石炭火力の分野等に記載があるように、円借款の弾力的運用と拡充の公的支援を是非進めてもらいたい。
  • 円借款はアンタイドがほとんどで、日本製品の適用というのは2割程度にとどまっていると聞く。VGF、あるいは二国間CO2クレジット制度などをうまく絡め、国際ルールに準拠しつつも、円借款事業における日本製品への適用率を高める仕組みもぜひ検討して欲しい。
  • 原子力は現状、ODAの対象外となっている。当面は周辺インフラ整備にODAを積極的に活用していくということと思うが、長期的な視点でみれば、原子力のODA対象化についても国際的な議論を進めて欲しい。
(地域について)
  • 地域では、ビジョンの検討を受けて、既に地域戦略を検討しつつある。例えば、九州において、雇用を生み出すのは、観光であり、健康であり、あるいはスマートシティという分野である。九州の場合、アジアに近いという特徴を生かして、中国を始めアジアの成長を取り込んだ地域発展モデルがあり、早急にアクションを起こしていくことが重要。例えば環黄海会議など産学官で動いているネットワークがあり環境やエネルギー問題が中心議題となっている。環境やエネルギーの課題はインフラビジネスより大きなビジネスニーズがあり、地域の中小企業にも多くのビジネスチャンスがある。出来るだけ早く国家ビジョンを明確に打ち出して、その実現と歩幅を合わせて形で地域の発展モデルが必要。
(文化産業について)
  • 文化産業はこれまで、90%が輸入で、90%が中小企業で成り立っている産業である。これを輸出振興に転換していくときに、果たしてアジア諸国に本当に勝てるか不安。
  • 韓国の企業(サムスン等)は、会議に参加する人間によって、韓国語、中国語、英語を自由に使い分けている。グローバルでのやり方を徹底的に教育されている。それが競争力に繋がっている。しかし、日本において、海外に出ていこうという若者でさえ少ない。そんな中、強敵な中国人や韓国人を相手にマーケットを獲りにいくとなると、非常に厳しい。
  • 日本のある有名ラーメンチェーンが、拠点を日本から法人税の低い(17~13%)シンガポールに移し、今後、ロンドンを初め世界戦略に打って出ると聞いている。現実に、こういうような、進出意欲もまだあって、世界を拠点に活躍できる人間もまだ日本に存在している。アパレル産業を輸出振興に変えるというマインドをどう活かすかが重要。
(エンジェル税制)
  • エンジェル税制について、100万件の中小企業を創出するのだという方針があるが、日本では、エンジェル税制の知名度はまだまだ低い。実際にアメリカでは、エンジェルが3兆円ぐらい投資しているし、イギリスでも、日本の40倍ぐらいの投資をしている。個人投資家が投資できる環境をし、税制の見直しもぜひお願いしたい。
(中小企業について)
  • 中小企業について、従来は、国内は中小企業で、大企業が海外だった。しかし、グローバル化が進む中、企業のサイズではなく、世界的中小企業、国内大企業というかたちもあって良いと考える。ただし、例えば、アパレルでは90%ぐらい中小企業で、これはほとんど家業である。今後、家業がいかに事業になり、企業になり、産業に育っていくかが重要になる。これは、家業が大企業になればいいということではない。中小企業でも世界で活躍できるような支援策を工夫していただきたい。

最後に、直嶋大臣、増子副大臣、近藤政務官よりご挨拶。

(直嶋大臣)
  • 大変重要なご指摘をいただき、ありがとうございます。人材の部分について、率直にいうと、どう方策を実現していくのか、まだよくわからないところがある。これは経済産業省だけというよりも、教育制度を含めて様々なことがかかわってくる。成長戦略の中でどこまでやれるか、現実化に向けて、いろいろな壁もありまして、なかなか難しいと思う。今後、議論を重ね、努力していきたい。
  • 政策を打ち出し、今後はちゃんと実行していかなければいけない。例えば、事業化を目標に研究開発をやり、さらに、これをどう普及をさせていくのかが重要なポイントになる。できるだけこういう視点も政策の中に入れて、実現に向けて、努力していきたい。
  • 今回のビジョンは、経済産業省が競争力強化のためにまとめたものであるが、それにとどまらず、成長戦略にもきちっと織り込んでいかなければいけない。その際に、国民の皆さんの理解が当然必要になると思う。報告書をとりまとめた際には、私のほうから国民の皆さんになんらかのメッセージを出したいと思っている。ビジョンで実現したいこと、その結果として国民にどういう成果が還元されるかをわかりやすい言葉で出していきたい。
  • きょうは最終回、頂戴したご意見も踏まえて、事務方のほうで整理をさせていただいて、個別にまたいろいろご相談させていただくかもしれないが、是非よろしくお願いを申し上げたい。
(増子副大臣)
  • 横断的な施策の整合性、法人税の扱い、海外展開などについて、たくさんのご指摘をいただいた。私が最近、部分最適と全体最適の調和という言葉をよく使う。皆様から頂いたご指摘は、それぞれ部分最適として最も必要なことだと思う。問題は、それを全体最適としてどうとりまとめていくか。ここが最後の勝負どころ。同時に、政策をどう実行するか。これまで、10年間で10本の成長戦略できたが、実行できなかったのはなぜかという問題点はだれでもわかっている。こういう点を含め、せっかくいい物語をつくって、いいプレイヤーがいるので、これをどう早急に実行して成果を上げるかが重要である。大臣を先頭に私どもはしっかりとまとめていって、実行したいなと思っている。まさに、ここは政治力が問われるところだと思う。政治の指導で決定権をもって、霞が関経産省の仲間と一緒にしっかりと実行していきたいと思う。
(近藤政務官)
  • 今後、6月の中旬にこの中身を新成長戦略に閣議決定するべく動き出さなければいけないと考えている。今日の日経平均株価の終値は 9,711円だが、こんなに安いはずはないと、これはおかしいと思っているので、ビジョンの中身をしっかり盛り込んで実行すれば、まだまだ日本は元気になれると思う。
 
 
最終更新日:2010年6月21日
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