ふれあいニュースレター
(政府原子力被災者生活支援チームからのお知らせ)
第9号
平成24年1月15日
○今週の「ほっと・ニュース」
「日本再生に歩み始める最初の年」
―今日から始まる一年は、日本再生に歩み始める最初の年です。「希望と誇りのある国・日本」を目指して、確かな一歩を踏み出したと実感できる年にしなければなりません。
(平成24年1月1日 野田内閣総理大臣 年頭所感より)
○ニュース
・区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題を決定
原子力災害対策本部は12月26日、警戒区域及び避難指示区域の見直しについての基本的考え方及び今後の検討課題を発表しました。
以下では、区域の見直しに関する基本的な考え方を概説しますが、実際の見直しに当たって発生しうる諸課題への対応、新しい区域の運用などについては、県、市町村、住民の皆様など関係者との協議を踏まえ、検討・実施していきます。また、市町村毎、個人毎の様々な状況にきめ細やかな対応を行うとともに、避難中から帰還、そして生活再建まで切れ目のない総合的な支援策を、政府一丸となって、責任を持って講じてまいります。
「警戒区域の解除に向けた検討を開始」
ステップ2の完了により、原子力発電所の安全性が確認され、今後、原子力発電所から大量の放射性物質が放出され、住民の生命又は身体が緊急かつ重大な危険にさらされるおそれはなくなったものと判断されることから、立入りを禁止する警戒区域は、基本的には解除の手続きに入ることが妥当です。今後、インフラの安全確認や防災・防犯対策などの準備を整えた後、早ければ4月、大きく遅れない一定期間後に解除を行う方向で、県や市町村などの関係者との協議を行っていきます。
「3月末を目途に3つの新たな区域設定を検討」
県、市町村などと協議の上、現在設定されている避難指示区域((1)発電所半径20kmの区域及び(2)半径20km以遠の計画的避難区域)を一体的に見直し、3月末を一つの目途に、新たに次の3つの避難指示区域の設定を目指していきます。
1)「避難指示解除準備区域」
現在の避難指示区域のうち、年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であることが確認された区域に設定します。この区域では、当面、避難指示は維持するものの、住民の皆様の早期の帰還に向け、子どもの生活圏をはじめとする除染やインフラ復旧、雇用対策など、復旧・復興に向けた支援策を迅速に実施します。これらの進捗を踏まえ、市町村等との十分な協議を踏まえ、段階的に解除していくことを考えています。
2)「居住制限区域」
年間積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれがある地域に設定します。この区域では、将来的に住民が帰還し、コミュニティを再建することを目指し、除染やインフラ復旧などを計画的に実施していきます。
3)「帰還困難区域」
5年間が経過してもなお、年間積算線量が20ミリシーベルトを下回らないおそれのある地域(現時点で50ミリシーベルト以上の地域)に設定します。この区域では、関連する市町村や住民の皆様と緊密な意見交換を行いながら、長期化する避難生活や生活再建のあり方、自治体機能の維持などについて、国として責任を持って対応していく考えです。
○特集
・「除染」に関する国、県、市町村の取組
政府では、平成23年8月26日、原子力災害対策本部において取りまとめた「除染に関する緊急実施基本方針」及び本年1月1日に全面施行された「放射性物質汚染対処特措法」に基づき、県や市町村等との連携の下、除染の実施推進に努めています。
これらの方針等に基づいた、国、県、市町村の取組について、概要をご説明いたします。
【国の取組】
・市町村の「除染計画」策定への専門家派遣等
福島県や福島近隣県において、除染に関する市町村説明会を実施しています。また、市町村の「除染計画」策定支援のため、順次個別に市町村への訪問や専門家の派遣などを行っています。
この他、「福島県内(警戒区域及び計画的避難区域を除く)における生活圏の清掃活動(除染)に関する基本的な考え方」のとりまとめや「市町村による除染実施ガイドライン」の策定、公表を行っています。
・東日本大震災復旧・復興予備費の確保(9月9日閣議決定)
緊急実施基本方針に基づく取組を推進するため、除染事業等に要する経費として約2,200億円の予備費を確保しました。
・除染モデル実証事業の実施(11月〜)
警戒区域、計画的避難区域等に指定されている12市町村の森林、農地、宅地、大型建造物・建物、道路などを対象に、除染の効果的な実施のために必要な技術を明らかにすべく、除染モデル実証事業を実施しています。現在、大熊町、葛尾村、川内村、田村市、富岡町、川俣町、楢葉町、広野町、浪江町、飯舘村、南相馬市の11市町村16ヶ所において事業を進めています。
・除染技術実証試験事業の実施(11月〜)
今後の除染作業に活用し得る技術の実証を行う25件を選定し、除染技術実証試験事業を実施中です。具体的には、除染作業を効率化する技術、除染作業で発生した除去物を減容化する技術、運搬や一時保管等に関する技術等、4つの分野の技術について実証試験を行っています。
・「除染技術カタログ」の作成(11月22日)
内閣府原子力被災者生活支援チームは、これまでの除染に関する様々な取組から得られた知見等をもとに、「除染技術カタログ」をとりまとめました。国や地方公共団体、地域の皆様が除染を行う場合にも活用できるよう、家屋や道路、公園、農地などについて、それぞれ除染方法や必要な機器・人員、安全対策、注意点などの項目を設けて、わかりやすく整理しています。
・「除染関係ガイドライン」の作成(12月14日)
環境省は、放射性物質汚染対処特措法に基づき、土壌等の除染等の措置の基準や除去土壌の処理の基準を定める環境省令などを具体的に説明する「除染関係ガイドライン」を策定、公表しています。
・自衛隊による役場の除染の実施(12月7日〜19日)
今後、警戒区域、計画的避難区域の11市町村における国直轄の除染事業が本格化することとなります。本格的な除染事業を開始するにあたっては、除染の前線基地となり自治体の行政機能の中心となる役場を優先的に除染する必要があり、緊急的な対応として、自衛隊が平成23年12月7日から19日にかけて、楢葉町、富岡町、浪江町及び飯舘村の各役場の除染を実施しました。
・除染技術実証事業の公募開始(12月28日〜2月29日)
環境省は、今後の除染作業等に活用し得る技術を発掘し、除染効果、経済性、安全性等を確認するための技術実証試験の公募を開始しました。応募のあった技術については有識者により構成される委員会において審査し、採択された技術については詳細な調査計画を策定した後、実証試験を実施する予定です。
・今後の予定
今後、平成24年1月に発足した福島環境再生事務所において、市町村の「除染計画」策定に向けた専門家派遣等を引き続き行うとともに、国直轄で進める除染については、準備が整った市町村から、役場及びその周辺施設の先行的な除染や、本格的な除染事業を順次開始していきます。また、除染の工程表を策定する予定です。
【県の取組】
・「生活空間における放射線量低減化対策に係る手引き」の作成(10月31日改訂)
住民の皆様が自ら身近な生活空間である通学路や住宅などを除染する場合の除染方法や注意点をとりまとめた「生活空間における放射線量低減化対策の手引き」を作成し、広く配布しています。
・福島県面的除染モデル事業の実施(11月〜)
国が作成した「市町村による除染実施ガイドライン」に基づき、福島市大波字滝ノ入・小滝ノ入・大滝地区内の約10haを面的に除染し、除染技術の実証と放射線量低減の効果を検証しています。また、検証結果に基づき、今後、市町村が実施する大規模な面的除染を進める際の手引書等を作成します。
・福島県除染技術実証事業の実施(12月〜)
広く除染技術を公募し、除染の効果的・効率的な方法を普及させ、県内各地で行われる除染活動を促進するため、除染技術実証事業を実施しています。現在、屋根、壁面等の除染技術(6件)、汚染された土壌(農地を除く)の減容化技術(除染作業で発生する汚染土壌の容量を減らすための技術)(10件)、その他の除染技術(4件)について20件を選定し、実地試験を行っています。
・市町村の「除染計画」策定に向けた支援等
市町村の「除染計画」策定支援として、「市町村除染計画策定マニュアル」を作成し、市町村へ配付しています。このマニュアルには、除染の実施主体や優先順位など除染計画の記載例などが示されています。
・「除染業務講習会」の開催
県内の除染業務に従事する方を対象に、作業を適切かつ安全に行うための基礎的な知識と技能習得を目的とした「除染業務講習会」を実施しています。
昨年10月から12月にかけて計10回開催し、延べ1,108名が受講、今年1月から3月にかけても、約2,500名を対象に、県内5地域で開催予定です。
・「安全・安心フォーラム」の開催
現在行っている行政の取組、放射線のモニタリングと健康影響、除染の必要性と課題について、対話形式により、参加者の疑問を解消し、除染に関する理解を深める「安全・安心フォーラム」を開催しています。
開催日程(1月以降)
日程 |
開催場所 |
会場 |
24.1.29 |
郡山市 |
郡山女子大学 |
24.2.12 |
南相馬市 |
ロイヤルホテル丸屋 |
24.2.19 |
いわき市 |
いわき明星大学 |
この他、「福島県農林地等除染基本方針(森林編・農用地編)」の策定、農用地等の放射性物質除去・低減技術実証事業の実施、専門家やボランティアの派遣等支援などを行っています。
【市町村の取組】
・市町村の「除染計画」の策定
放射性物質汚染対処特措法に基づく「除染計画」の策定及びその実施に向けて作業を進めています。平成23年12月28日時点で、福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村、郡山市、田村市、鏡石町、浅川町、三春町、白河市、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、新地町、相馬市、南相馬市、広野町、川内村、いわき市の25市町村において「除染計画」が策定されています。
○ニュース
・平成24年度予算案を閣議決定(平成23年12月24日)
<原子力災害復興関係経費 4,811億円を計上>
政府は12月24日、平成24年度予算案を閣議決定しました。予算案では、東日本大震災からの復興に全力で対応するため、「東日本大震災復興特別会計(仮称)」を創設、3兆2,500億円を計上しています。
このうち、原子力災害復興関係経費としては、放射性物質に汚染された土壌等の除染や廃棄物の処理、中間貯蔵施設の検討・整備などの事業に4,513億円、長期避難のために放置された公共施設の機能回復等を進めるための「福島避難解除区域生活環境整備事業」に42億円など、合計4,811億円を計上しました。
○ニュース
・低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループが報告書をとりまとめました(12月22日)
平成23年12月22日、政府の低線量被ばくのリスク管理を検討するワーキンググループは、低線量被ばくのリスク管理に関する次の3つの課題について、科学的見地から検討結果をとりまとめました。
1)現在の避難指示の基準となっている年間20ミリシーベルトの被ばくによる健康影響はどの程度か?
→年間20ミリシーベルトという数値自体は、他の発がん要因(喫煙、肥満、野菜不足や受動喫煙など)によるリスクと比べて十分に低く、除染や食品の安全管理などでリスクを回避できる水準である。
→今後より一層の線量低減を目指すにあたってのスタートラインとしては適切である。
2)子どもや妊婦に対する対応について、特に配慮すべきことは何か?
→成人と同様、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでは、他の要因による発がんの影響に隠れてしまうほど小さいが、高い被ばく線量では、思春期までの子どもは、成人よりも放射線による発がんの感受性が高いことから、子どもに対して優先的に放射線防護のための措置をとることは適切である。
3)低線量被ばくの健康リスクに関する放射性物質や線量の情報をいかに適切に伝えるか?
→住民の目線に立って情報を提供するリスクコミュニケーションが必要である。
→住民が参加した取組が不可欠である。
これらの検討結果を踏まえ、ワーキンググループでは次の5つの提言を行いました。
1)除染にあたっては、適切な優先順位を付け、漸進的に目標を設定して行うこと。
2)子どもたちの生活環境の除染を優先すべきこと。
3)特に子どもの食品に配慮し、適切な基準の設定、遵守を行うべきこと。また、食品の放射能測定器の地域への配備を行うこと。
4)正しい理解の促進と対策の実施のため、政府関係者や専門家が被ばくによる影響をはじめとする健康問題等に関して、住民と継続的に対話を行うこと。
5)福島県が全国でがん死亡率が最も低い県を目指すこと。
これまでのワーキンググループでの検討状況の詳細につきましては、
内閣官房のホームページをご覧ください。
○読者コーナー<ご意見・ご質問・近況報告など>
「ふれあいニュースレター」に関する「読者アンケート」には、1,926人の方のご協力をいただきました。ご協力ありがとうございました。読者アンケート結果は、同封の「
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○「守ります!福島〜政府原子力被災者生活支援チームQ&A〜」(ラジオ番組)
○「モバイルJAEA」
発行 政府原子力被災者生活支援チーム