
警戒区域の設定と一時立入りの基本的考え方
平成23年4月21日
原子力安全・保安院
警戒区域の設定について
- 避難指示区域(福島第一原子力発電所半径20km 圏内)は、安全上の大きなリスクが懸念されるため、これまで立入りの禁止を要請。
- 今般、関係自治体との調整も整ったことから、20km圏内の安全・治安を確保するため、原子力災害対策本部長たる内閣総理大臣が関係市町村長に対し、避難指示区域を警戒区域に設定することを指示(原子力災害対策特別措置法に基づく指示)。当該指示に基づき、関係市町村長は、4月22日午前0時に警戒区域を設定。
- これにより、当該区域に消防隊、警察、自衛隊等の緊急事態応急対策に従事する者以外の者が市町村長の許可なく立入りを行うことは禁止されることとなる(違反した者に対しては、10万円以下の罰金又は拘留)。
一時立入りについて
- 20km 圏内の被災者の方々は、事故発生時に緊急に避難したため、必要な物資を持ち出せなかった者がほとんどであり、御自宅への一時立入りの強い希望あり。
- 警戒区域の設定に併せて、以下の基本的考え方に基づき、一時立入りを認めることとする。
- 立入対象区域
半径20㎞圏内の区域とし、以下の区域を除く
・東京電力株式会社福島第一原子力発電所から半径3㎞圏内の区域
・高い空間線量率等により、立入りのリスクが大きいと考えられる区域
・津波の被害を受けた区域であり、一時立入者に危険を及ぼすと考えられる区域
- 安全確保策
安全確保に万全を期す観点から、立入りは以下の態様による。
・一世帯あたり代表者を一名、バスを利用し集団で行動。
・警戒区域への入域に際しては、タイベックス・スーツ又は雨合羽等を着用し、各人、線量計やトランシーバーを携帯。
・帰る際にはスクリーニングを確実に実施。
・持ち出し品は、財布、通帳等必要最小限のものとし、在宅時間は最大2時間程度。
また、立入りが出来なければ著しく公益を損なうことが見込まれる法人等についても、個別に判断の上、立入りを認めることとする
実施にあたっては、今後、この基本的考え方に基づいて、20㎞圏内のモニタリングを行い、安全を確保し、具体的な実施手順を関係自治体と調整の上、準備が整い次第実施予定。

警戒区域への一時立入許可基準
平成23年4月23日
原子力災害対策本部長
「警戒区域の設定について」(平成23
年4
月21
日原子力災害対策本部)に基づき、当面の一時立入りの許可基準を次のとおり定める。
- 基本方針
原子力災害対策特別措置法(平成11 年法律第156 号)第28 条第2 項において読み替えて適用される災害対策基本法(昭和36 年法律第223 号)第63 条第1 項の規定に基づき福島第一原子力発電所から半径20km 圏内に設定された警戒区域への一時立入りについては、原則として、
①立入りができなければ著しく公益を損なうことが見込まれる者、
②警戒区域内に居住する者であって、当面の生活上の理由により一時立入りを希望する者
を対象とする。
- 一時立入りの対象者の条件
- 立入りができなければ著しく公益を損なうことが見込まれる者
個別に市町村長が原子力災害現地対策本部長と調整の上、公益性が認められる場合には、立入態様に関する条件を付して一時立入りを許可する。
- 警戒区域内に居住する者であって、当面の生活上の理由により一時立入りを希望する者
当面、一世帯1名を限度とする。また、15 歳未満の子ども及び高齢、病弱その他の理由により移動に何らかの支援を必要とする者は対象としないものとする。
- 一時立入りの範囲及び条件
- 警戒区域において、立入りを認めない地域は、次のとおりとする。
・福島第一原子力発電所から半径3km 圏内の区域
・高い空間線量率等により立入りのリスクが大きいと考えられる区域
・ 今般の津波により被害を受けた地域であり、一時立入者に危険を及ぼすと考えられる区域
- 警戒区域内の滞在については、原子力安全委員会の「避難区域への一時帰宅に関する助言」(平成23 年3 月28 日)を踏まえ、立入者の受ける線量が一回当たり最大1.0mSv以内とすることを条件とする。
- 一時立入りの前に実施する当該区域内のモニタリング結果や一時立入りの当日に実施する空間線量率の計測結果等を踏まえながら、必要に応じて立ち入る範囲及び時間の調整を行う。
- 当日の一時立入り可否の判断
当日の一時立入りの可否については、原子力災害現地対策本部長が、原子力発電所の状況や気象条件等を踏まえ判断し、実施市町村及び県に伝達する。
- 一時立入りに関するリスクの周知
警戒区域への一時立入りの実施に当たっては、汚染の可能性を含めてリスクが存在することについて周知し、一時立入り者の理解をあらかじめ得ることとする。
- 立ち入る際の装備
立入りに当たっては、原子力安全委員会の助言を踏まえ、個人線量計を着用するとともに、タイベック・スーツ又は雨合羽、放射性物質の吸入及び汚染防止のために必要なマスクその他の装備を着用することとする。
警戒区域内の移動に供する車両等についても、原子力安全委員会の助言を踏まえ、必要な養生を行う。
責任者は、緊急時に備えて、所要量の安定ヨウ素剤を携行する。
- スクリーニング
スクリーニングについては、あらかじめ定めた実施場所において、原子力安全委員会の助言に基づき実施する。スクリーニングの結果、基準値を上回った場合には除染を行うものとする。
- 一時立入りの基準等
警戒区域内に居住する者であって、当面の生活上の理由により一時立入りを希望する者(2(2))についての一時立入りの基準等は、以下のとおりとする。
- 実施主体
国及び県の支援を得て、市町村が実施する。
- 移動手段
避難所等から中継基地、中継基地から警戒区域内の集合場所への移動手段は、原子力災害現地対策本部が確保したバスとし、個人での移動は認めない。
したがって、自家用車その他の移動手段による立入りは、認めないものとする。
- 一時立ち入りの体制
- 現場責任者
原子力発電所の不測の事態による一時立入りの中断その他の緊急事態が発生した時においても、一時立入者の安全を確保し、迅速かつ的確な避難を行うため、一時立入りの実施市町村が現場責任者を置くこととする。また、現場責任者は、国及び県の支援を得て、原子力発電所、気象等に関する情報、通信手段等を確保する。
- ブロック割
一時立入りは自宅の位置が近接している一つのまとまりを持った地区の者(ブロック割)により行うこととし、一時立入りの統制を図るためその代表者(地区代表者)を選定する。
- 引率者等
ブロック割ごとに、引率を行う自治体職員等(引率者)、放射線管理を行う東京電力(関連会社等を含む。)の職員を配置する。
- 滞在時間
警戒区域内の滞在時間については、移動時間を含めて5 時間を基準とする。一時立入者による自宅への立入時間は2 時間を限度とする。
- 一時立入者との連絡手段の確保
引率者は、衛星電話やトランシーバ、拡声器等により、現場責任者及び一時立入者との連絡手段を確保しておくものとする。
- 持ち出せる物
一時立入者が持ち出せる物の範囲、数量、種類は、原子力安全委員会の助言を踏まえ、必要最小限のものとする。
自家用車については、別途検討し、原子力災害現地対策本部長が実施のための計画を別に定めるものとする。
食品や家畜等の生物については、持出しを認めない。ペットについては、別途検討し、原子力災害現地対策本部長が実施のための計画を別に定めるものとする。
- その他
この許可基準に規定する事項の細則及びその他一時立入りの実施に必要な事項については、原子力災害現地対策本部長が定める「警戒区域への一時立入実施計画」によることとする。
参照条文
災害対策基本法(昭和36年法律第223号)
(市町村長の警戒区域設定権等)
第六十三条原子力緊急事態宣言があった時から原子力緊急事態解除宣言があるまでの間において、人の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、市町村長は、警戒区域を設定し、緊急事態応急対策に従事する者以外の者に対して当該区域への立入りを制限し、若しくは禁止し、又は当該区域からの退去を命ずることができる。
2
前項の場合において、市町村長若しくはその委任を受けて同項に規定する市町村長の職権を行なう市町村の職員が現場にいないとき、又はこれらの者から要求があつたときは、警察官又は海上保安官は、同項に規定する市町村長の職権を行なうことができる。この場合において、同項に規定する市町村長の職権を行なつたときは、警察官又は海上保安官は、直ちに、その旨を市町村長に通知しなければならない。
3
(略)
※下線部は、原子力災害対策特別措置法第28条による読替後第百十六条次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の罰金又は拘留に処する。
二第六十三条第一項の規定による市町村長(第七十三条第一項の規定により市町村長の事務を代行する都道府県知事を含む。)の、第六十三条第二項の規定による警察官若しくは海上保安官の又は同条第三項において準用する同条第一項の規定による災害派遣を命ぜられた部隊等の自衛官の禁止若しくは制限又は退去命令に従わなかつた者
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