DX-#06 2019/03/12 ITの力で中小企業の“経営力”向上へ。経産省のデジタル・トランスフォーメーションが見据える先

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約360万者。

これは、2016年時点外部リンクでの中小企業・小規模事業者の数だ。全企業数の99.7%を占め、日本の雇用の約7割を創出している。この国の経済にとって、彼らの成長は欠かせない。

そんな中小企業を取り巻く状況は厳しい。国内の労働力人口は減少の一途を辿りPDFファイル、多くの事業者が人手不足に悩まされている。中小企業にこそ、生産性向上が急務だ。
「中小企業の成長には、デジタル化が不可欠です」と語るのは、経済産業省 中小企業庁 企画調整官 西谷香織。中小企業庁におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)全体の企画・調整およびマネジメントを担う。中企庁DX室は次長をヘッドとした約50名で構成され、民間出身のITのプロや国会対応も併任するコアメンバーが事務局となり、中企庁DXを推進している。

経産省では、ITによる行政サービスの向上や、データにもとづく政策立案を目指すデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めるに当たり、中小企業を対象としたDXにも注力している。「中小企業支援プラットフォーム構想」は、その要となる取り組みだ。構想の背景にある課題意識や具体的な内容、最終的なゴールについて西谷に話を聞いた。

紙書類に煩雑な手続。構想の背景に横たわる課題

中小企業庁は、全国約360万者を超える中小企業の育成や発展に向け、補助金をはじめとする様々な支援制度や、サポート体制を用意している。ただ、この支援にはいくつかの壁が存在している。そのひとつが手続の煩雑さだ。手続のほとんどは未だに紙が中心。必要書類は、種類も枚数も多く、作成から保管までそれぞれの工程に負荷がかかっていた。

西谷 「一つの行政手続に必要な申請書の枚数は、多い場合は10枚以上、それに加えて添付書類も必要です。申請にあたり一定の負担は避けられないとしても、その過程には重複や無駄が発生しています。また、手続の煩雑さゆえに、士業の方などが代理で書類作成するケースも少なくありません。 紙で提出したものは再利用できないので、別の行政手続が発生すると、再び同様の書類の作成が必要です。行政は、これら膨大な数の書類を大変なコストをかけて処理しています。事業者だけではなく、行政にとっても非効率な仕組みになっているのです」

問題は、手続の煩わしさだけではない。中小企業の行政手続にまつわる情報は膨大な上、省庁や支援機関など複数のウェブサイトに点在している。「ウェブサイトで調べるより、とりあえず支援機関に駆け込む方が早い」と感じる事業者も少なくない。結果、事業者と支援機関の双方に負荷がかかっているのが現状だ。

こうした状況を変えていくことで、中小企業や支援機関はもちろん、行政もより本来業務に集中できるようになると西谷は語る。

西谷 「事業者の皆様がせっかく意思を持ってウェブサイトを検索しても、欲しい情報にすぐに到達できないとモチベーションが低下します。何より事業者の貴重な時間を奪ってしまっています。支援情報を検索しやすい形で、ウェブで提供できれば自立的に自社にあった支援を見つけられ、活用してみようという事業者も増えるはずです。 また、これまで事業者に対する支援情報の提供に時間をかけていた支援機関は、より本質的な経営指導を通じて、より付加価値の高いサポートに注力できる。そして、行政は中小企業のどの層がどの支援情報に関心を持っているのか、支援を活用した結果どうだったのか等、データから様々なファクトがわかるようになれば、それらを政策の分析・立案に活かせる。より本質的な中小企業行政を事業者、支援者の皆様に還元できるようになります」

「ワンスオンリー」「リコメンデーション」で電子申請をスムーズに。

手続の煩雑さを取り除くだけでなく、中小企業の経営力向上を支援する。この両方を実現しなければ、真に中小企業の成長を促すDXを形にすることはできない。中小企業庁が立ち上げた「中小企業支援プラットフォーム構想」は、この両方の課題解決に取り組もうとしている。

同プラットフォームの軸となるのは、オンラインで一度情報を入力すると他の手続で再利用でき、手続の煩雑さを解消する「ワンスオンリー」と、得られたデータを活用し個々の事業者に合わせた支援を提案する「リコメンデーション」だ。

2つの機能を、事業者・支援者向けサービスとして『ミラサポplus外部リンク』に実装していく。

西谷 「『ミラサポplus』の前身となる『ミラサポ外部リンク』では、中小企業の支援にまつわる情報提供や専門家の派遣申請など、中小企業をサポートする情報を広く提供してきました。今後は電子申請機能を強化し、一度提出した情報は再度の入力が不要となる『ワンスオンリー』機能を実装することで、事業者・支援者の入力負担を軽減させます。 また、登録情報や行動パターンに基づき、事業者ごとに最適な支援制度を知らせる『リコメンデーション』機能を加えていきます。さらに、財務情報を登録した事業者には、経産省が提供している、事業者の経営状態を診断するツール『ローカルベンチマーク外部リンク』をベースとし、経営診断に基づくより精緻な『リコメンデーション』を提供することを検討しています」

中小企業庁は、2020年の「中小企業支援プラットフォーム」完成を目指し、2018年から調査に着手。2019年2月から、『ミラサポplus』ベータ版を事業者や支援者に向けて公開し、声を集め始めている。小さく作り、フィードバックを得て、改善を繰り返す。過去のサイトが抱えていた使いづらさを解消すべく、事業者と共にサービスをより良くしようとしている。

西谷 「まず着手したのは、メニューを中心とした情報整理の部分です。『ミラサポ』では、立ち上げから時間が経過するにつれて情報が複雑になり、事業者から『使いづらい』といった声が寄せられることも少なくありませんでした。 たとえば、調べものをするにもメニューの場所がわかりづらい。また、メニューを開いても項目の粒度が様々で、必要な情報を見つけにくい状況でした。 『ミラサポplus』では、事業者や支援機関にとって使いやすいものにするためにも、当初は、必要最低限の情報に絞りつつ、どうすれば利用者にとって使いやすいインターフェースを実現できるか、こういった声を集めながら、改善していく体制を整えています」

改善例 1:トップページ

小さくわかりにくかった①支援メニューの入り口を大きく、さらに②「事業者向け」「支援者向け」に分けて、ユーザーの立場に適した情報にたどり着きやすいよう改善。

改善例 2:支援メニュー検索画面

自分に適した情報を見つけにくかった①支援メニュー一覧を、事業の成長段階別に②「起業」「経営」「継承」の3つのステージに分類し、企業ステージごとにニーズの高い情報を見つけやすいよう改善。

行政と中小企業は成長に向けて走る“パートナー”へ

「行政と事業者の間に、事業成長に向けたパートナーシップを育んでいきたい」と語る西谷らの想いは、行政からの一方通行ではなく、意見を集め共にサイトを作り上げていく姿勢にも表われている。

この力強い言葉の背景には、リニューアルのためのヒアリングを通して出会った、事業者たちの姿がある。

西谷 「ヒアリングの際、補助金を活用されている事業者から『国から一定の税金を投入してもらっているので、その分しっかり事業を強化し、より多く税金を返せるようにしたい』といった声をいただきました。行政が支援する側、事業者が支援される側になるのではなく、互いの成長のために切磋琢磨していく。そうした関係をつくっていきたいと感じています」

国と企業とがお互いを高め合う。その関係性が回ることで、中小企業、ひいては日本経済の発展に寄与する——そこへ辿り着く手段として、西谷らは、DXと真摯に向き合い続けている。

西谷 「中小企業は、日本の雇用の約7割を支えています。彼らが元気になれば、日本経済の未来も明るい。そのために、一刻も早く『中小企業支援プラットフォーム』を形にし、行政手続は簡素化することで、中小企業が経営に集中できる環境を整えていきたいです」

「日本の経済を発展させる」

西谷の挙げたゴールは、中小企業の事業成長なくしては決して成し遂げられない。行政と中小企業が対等な“パートナーシップ”を結び、成長に向けて進んでいく必要がある。

『ミラサポplus』はそうしたパートナーシップの基盤に過ぎない。行政と中小企業が手を取り合う未来に向け、引き続き経産省では、中小企業の事業成長に寄与するDXの形を追求していく。