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令和2年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.5

経済産業大臣表彰/鈴木 輝彦(すずき てるひこ)氏
ソニー株式会社 R&Dセンター Distinguished Engineer

映像信号符号化技術で、エンターテインメントをより身近に、より美しく実現

「標準化は、もはや私にとってのライフワーク。」と話すのは、ソニー株式会社の鈴木輝彦氏。専門は映像信号符号化技術で、1992年の入社以来、映像技術の進化とともに標準化活動に取り組み続けている。

符号化技術とは、映像や画像などの情報を処理・伝送・記録するための、デジタルデータに変換する技術のことだ。高圧縮の技術が標準化されるようになったことで、モバイルデジタル放送やストリーミングなど、どこでも気軽に映像を楽しめるようになった。

 
HDR映像符号化技術の
国際標準が搭載された製品例
【8K液晶テレビ】
8K液晶テレビ
【フルサイズミラーレス一眼カメラ】
フルサイズミレーレス一眼カメラ

HDR映像符号化技術は、目で見た実世界をそのまま撮影し、鮮烈な光の輝きや深い黒が緻密に表現され、あたかも目の前に存在するようなリアリティーな映像を実現できる。
(画像提供:ソニー株式会社)
鈴木氏はハイビジョンを超える高解像度の4K、8Kに加え、実際に見える色に近い表現が可能なHDR(ハイダイナミックレンジ)映像符号化技術の国際標準化を積極的に推進。日本の多数の技術が国際標準に採用された。高精細の解像度だけでなく、映像の輝度(明るさ・暗さ)の範囲を拡大することでリアリティーも増している。

こうした技術の基盤となる規格を作ってきたのが、ISO/IEC JTC1(国際標準化機構と国際電気標準化会議の情報技術に関する合同専門委員会)/SC29(音声、画像、マルチメディア、ハイパーメディア情報符号化分科委員会)だ。鈴木氏はここで多くのプロジェクトに参加し、積極的に標準化を推進することで日本の立場を向上させてきた。

ISO/IEC 23008 | ITU-T Rec.H.265(HEVC : 高効率ビデオ符号化)もその一つ。鈴木氏はITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)/SG16(マルチメディア符号化、システム及びアプリケーション)との共同プロジェクト発足時から標準化に参加し、従来の圧縮形式に比べて約2倍の圧縮効率となる符号化技術の製品化を他国に先駆けて推進した功績がある。

さらに、2017年からはISO/IEC JTC1/SC29の国際議長としても活躍。SC29が扱う技術には2つあり、写真などの静止画像をデジタルデータとして圧縮するJPEG形式とオーディオ・ビデオの動画をデジタルデータとして圧縮するMPEG形式に分かれる。「SC29は30年ほど前に作られた組織。技術の進歩とともにJPEGとMPEGのグループのしていることに重複が出てきた。」という。以前はデジタルカメラでは静止画しか撮れず、ビデオでは動画しか撮れなかったのが、カメラとビデオの境界線があいまいになってきた。放送局でさえデジタル一眼カメラでビデオの制作ができる時代である。

そこで、鈴木氏は国際議長として組織改編を主導。将来の技術にも対応するため、「まずは適用範囲から見直した。静止画(二次元の映像)から、VRのような三次元空間、実空間が撮れるようになってきた今、符号化技術を使って、どのように新しい分野を開拓していくのか。2年かけて議論し、新しい市場に対応できるような組織に改編。持続的に国際標準化に取り組めるような体制を構築した。これで終わりではなく定期的に見直すことが大切だ。」と話す。

標準化は世界中からトップレベルのエンジニアが集まり、技術を競う場

SC29の特徴として、1か国がまとまった技術を提案するのではなく、複数の国の提案として提出されることが多い点が挙げられる。各国がいろいろな技術を持ち寄り、新しい技術を作っていく。そのため「非常にアクティブであり、各国が技術にしのぎを削り提案書を提出してくる。1度の会議で提案書が1,000件を超えることもある。それを事前にまとめるのはかなりパワーが必要だ。」と、苦労を語る。

これまで、最新の技術の応用先は、主に人が楽しむためのものだった。それが最近は、自動運転のために多数のカメラが自動車に搭載されるなど、映像の用途は多様化してきている。「技術が発達してきて、3次元情報として記録できるようになった。この情報を効率良く圧縮して、今後は多くの分野に貢献したい。」と鈴木氏は語る。

SC29はIT系のR&D(研究開発)に特に力を入れている。欧州や中国、韓国からは学生が参加し提案をしているが、日本の学生はあまり参加していない。「標準化は世界中からトップレベルのエンジニアが集まり、技術を競う場でもある。ここで切磋琢磨して、自分自身をトップレベルまで引き上げていくことができる。他国のエンジニアとのネゴシエーション能力や、グループ運営能力などもどんどん身についてくる。学生のうちから国際的な競争に加わるのは、とてもいい経験になるはずだ。」と明言し、日本の学生たちの参加を期待しているという。
 

【標準化活動に関する略歴】
1992年 東京工業大学大学院理工学研究科 博士前期課程 修了
1992年~現在 ソニー株式会社入社
1995年~現在 ISO/IEC JTC1/SC29/WG11(動画像符号化)エキスパート
2003年~現在 ISO/IEC JTC1/SC29/WG11エディタ
2002年~現在 ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)/
        SG16(マルチメディア符号化、システム及びアプリケーション)委員
2007年~2010年 IEC/TC100(オーディオ・ビデオ マルチメディアシステム及び機器)/
         TA6(放送業務ストレージ)プロジェクトリーダー
2004年~現在 情報規格調査会SC29ビデオ小委員会 委員、幹事、主査
2017年~現在 ISO/IEC JTC1/SC29 国際議長

最終更新日:2020年11月30日