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令和2年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.15

経済産業大臣表彰/鈴木 知道(すずき ともみち)氏
東京理科大学 理工学部 経営工学科 教授

測定結果の精度を高める、統計的方法の適用に関する標準化を推進

調査研究、産業、行政など、「統計」はさまざまな領域で日常的に利用されており、私たちの生活に密接に関わっている。例えば製品の品質管理や改善、あるいは行政施策の立案や評価。そのような場面で統計データを用いるときは、どのようにデータを集めるか、集めたデータをどのように解析するかといった、適切な「統計的方法」が必要になってくる。また、量産品における合否判定や品質管理方法、測定や分析における結果の判定などあらゆる場面で用いられるものの、生産活動、試験活動においても学術的にもあまり脚光を浴びることはなく、地道な活動ではあるが、その結果に大きな影響を与える極めて重要な分野である。

統計的方法の種類は多数あるが、同じような目的で違う方法が使われていることがある。そのため、ある方法を使えば「合格」、「陽性」、「検出」となり、別の方法を使えば「不合格」「陰性」、「非検出」となり結果にばらつきが出ることがある。東京理科大学教授の鈴木知道氏は、そのような結果の不確定さを回避するための統計的方法の適用について、研究活動を通じて長年にわたりISO(国際標準化機構)及びJIS(日本産業規格)での標準化活動に尽力してきた。

鈴木氏が活動してきたISO/ TC69(統計的方法の適用)では、全ての規格に横断的に適用される水平規格を作成している。鈴木氏は、測定方法そのものの良さについて議論を行う同TCのSC6(測定方法及び測定結果)/ WG5(検出能力)のコンビーナを16年、結果の精度についての議論を行う同SCのWG1 (測定方法の精確さ)のコンビーナを7年にわたり務めてきた。

鈴木氏の代表的な功績に、ISO5725シリーズ(測定方法及び測定結果の精確さ)及びISO11843 シリーズ(測定方法の検出能力)の制定・改正を主導したことが挙げられる。

ISO5725シリーズは、「例えば、製品の有効成分が1グラムとした時に、その数字をどのくらい信用できるのか。それをデータに基づいて統計的に解析し、科学的に示す方法論を規定する規格。」と鈴木氏。主に試験・分析の場で使用されており、例えば、鉄鉱石の中に含まれる稀少金属の分析において、僅か1グラムの違いであっても、鉄鉱石の取引は何万トン何十万トンというオーダーで行われることから、その違いは莫大な損益につながり、極めて実用的かつ重要な場面で用いられている。

ISO11843シリーズは、「例えば、ある物質に放射線が含まれているかどうか調べるとする。測定する際に、自然界に既にある放射能まで拾ってしまうため、その物質の放射線量がゼロのものを測ろうとしても、測定結果は、ゼロにはならない。測定結果の数値が自然界に既にある放射能を拾ったことによるばらつきなのか、それとも本当に正しい数値なのか、統計的に判断する規格。」と鈴木氏。本シリーズに関しては、日本人のプロジェクトリーダーと共にシリーズの一部を新たに提案した際、「実用的でない。不要な規格だ。」と却下されたこともあるという。しかし、「諦めずに、妥協できるところは妥協し、実用性を上げて規格化を実現した。」。提案を却下されることが珍しくない国際標準化活動の場では「すぐに諦めてはいけない。地道な準備はもちろん、常日頃から近い研究分野の人々とコネクションを作り、既に使用されている事例を探すことが大切。」と話す。

検出能力の概念図
測定器で、ある物質の量(例えば濃度ppm)を測定したい場合、その量が直接求められるのではなく、データは電圧(V)となる(縦軸:応答変数)。
従って、測定者は電圧から校正関数(検量線)を用いて電圧から濃度(ppm)を導き出す必要がある。ここで、それぞれの山は、測定のばらつきを示している。
(出典:「JIS Z 8462-1:2001 図1から引用(赤・青・緑の線及び文字、並びに吹き出しは鈴木氏が追記)」
また、鈴木氏は2018年からはSC6の国際議長に就任し、「国の違いよりも、統計の流儀による違い、適用する分野の違いなど、統計的方法があらゆる分野に適用される水平規格だからこそ各国の委員の専門分野によって意見が異なり、調整することが大変。異なる意見を聞き、取りまとめることが難しい。」と議長としての苦労をのぞかせた。

JIS化の際は、20回近くも委員会で議論。ISOにフィードバックも

鈴木氏の活躍の場は国際舞台だけではない。2002年からTC69の国内対策委員会の委員を務め、2003年からは統計関連のJIS(日本産業規格)原案作成委員会の委員を、2005年からは同委員会の委員長を歴任。ISO5725 シリーズ、ISO11843シリーズ含む13件のJISの制定・改正に携わった。2008年に制定されたJIS Z 8405 (試験所間比較による技能試験のための統計的方法)では、「100ページ以上あるJIS原案を徹底的に委員会で読み込み、20回近く議論した。委員一人一人がJIS原案を深く理解することにより、改善点も見えてくる。」と鈴木氏。この検討結果に基づきJISの改正内容をISOにフィードバックをすることもあるといい、国際標準の舞台で活躍する鈴木氏ならではの強みであるといえるだろう。

また、2011年から臨時委員を務めるJISC(日本産業標準調査会)の基盤技術専門委員会では、産業界のどの分野にも共通的な基礎知識・技術(統計、測定、単位など)に関連するJIS原案の審議に参画した。「大きな目的から、細かい文言まで幅広く検討する。審議の際は、JISの原案が工業会や学会などの作り手の立場から作成されるため、常にJISを使用するユーザーを意識して議論する。」と語る。

鈴木氏は今後取り組む課題の1つにJISの制定までの短縮化を挙げた。「JISの原案作成委員会でも、ISOに負けないくらい活発な議論が行われている。ISOの案を検討している段階からJIS原案作成委員会の議論を始め、早めにISOにフィードバックできる体制をつくることができれば、より質の高い規格が生まれるだろう。」と意気込む。

最後に、次世代育成の取り組みについて聞くと「大学の講義では積極的に国際標準の重要性やTC69の話をするようにしている。研究室の生徒と規格の改善点などを話し合うこともある。」と鈴木氏。実際に、教え子の一人が就職後にTC69に参加している、とうれしそうに語る。「水平規格は、いわば度量衡のようなもの。日常その重要性はあまり認識されることはないが、対象とする範囲はとても広く、この取り組みへの理解は多くの仕事の場面で役に立つ。社会的に重要な仕事であると思うので、ぜひ多くの人に関心をもってもらいたい。」と次世代へメッセージを送る。

【標準化活動に関する略歴】
1993年 東京大学工学部反応化学科 助手
2002年~2017年 ISO/ TC69 国内対策委員会 委員
2002年 東京理科大学 理工学部 助手
2003年 東京理科大学 理工学部 講師
2003年~現在 JIS Z 8462-3 (測定方法の検出能力―第3部:検量線がない場合に応答変数の限界値を求める方法)を始め、
        統計関係のJIS原案作成委員会の委員、委員長を歴任
2004年~現在 ISO / TC69 / SC6/ WG5 コンビーナ
2011年~現在  東京理科大学 理工学部 教授
2011年~現在 日本産業標準調査会(JISC)臨時委員/ 基盤技術専門委員会
2017年~現在  ISO / TC69  国内対策委員会 副委員長
2018年~現在  ISO / TC69 / SC6 国際議長

最終更新日:2021年2月22日