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令和元年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.1

内閣総理大臣表彰/梶屋俊幸(かじや としゆき) 氏
一般社団法人セーフティグローバル推進機構 理事

梶屋俊幸氏肖像

日本産業界の円滑なグローバル展開を後押しする国際制度づくりに寄与

 2019年、産業標準化事業表彰において「内閣総理大臣賞」を受賞したセーフティグローバル推進機構の梶屋俊幸氏。現在もIEC(国際電気標準会議)の日本代表委員を務めるなど、多忙な日々を送るが、そのキャリアは1976年に入社した電機メーカーの設計部門からスタートしている。

入社10年目の1985年、梶屋氏は松下電器(現パナソニック)の欧州技術法規駐在員としてドイツ・ハンブルグに赴任。家電製品のトラブル対応などで忙しく欧州中を駆け回る中、パナソニックの1台の電子レンジに目が留まる。

「1つの製品になんと12カ国の異なる安全認証マークがずらっと入っていた。」と話す梶屋氏。欧州各国が定める認証を1つずつクリアしていくには膨大な時間を要する。時間がかかれば当然コストも膨らみ、市場導入も遅れる。「しかも安全基準や認証制度にそれほど違いがないのに、これだけ手間がかかる現状に驚いた。」と続ける。

当時も今も貿易立国である日本。貿易立国に欠かせないのは、製品のスピーディーで円滑な世界展開にある。「どうにか1回のテストで完結できるような効率的な認証制度を確立できないか…。」梶屋氏が目を付けたのが当時発足間もないIECEE(IEC電気機器・部品適合性試験認証制度)=通称CB(Certification Body)制度だ。

同制度は、IEC規格に基づき家庭用電気機器の安全性試験を行い、IEC規格に適合していることを証明できれば、他のIEC加盟国や認証機関で重複テストなしに受け入れることを目的としたデータの相互活用ができるもの。まさに1回のテストで適合証明=CB証明書の発行ができれば認証クリアというワン・ストップ・テスティングは理想的な制度だ。

しかし、当時欧州中心のIECでは欧州域内での自由流通についての関心は高いものの、同制度やCB証明書の知名度はIECメンバーの中でも低く、注目されていない状況であった 。

8年半の欧州駐在から日本へ戻った梶屋氏は、松下電器社内では欧州以外の海外技術法規・基準認証分野の全社指導やCB制度をベースとした適合性評価の効率化推進を担う。その一方で、2001年JEITA(電子情報技術産業協会)の適合性評価システム委員会の初代委員長就任を皮切りに、2005年IECEE国内審議委員会の委員長就任など、日本の産業界のための“対外”活動のウエイトが高まっていく。

一会社員としての“対外”活動……その社内評価について伺うと、「その時々の上司による。快く思わない上司からは本業優先で、対外活動の出張が制限されたこともあった。」と苦笑い。また「ある上司は、リーダーカンパニーとして日本の電気電子業界の3年後、5年後のために貢献する活動は優先すべきだ、と力強く後押ししてくれた。」とも。

梶屋氏はその後、それまで欧州主導であり、存在感の低かったCB証明書の議論を、日本、そしてアメリカ・カナダとともに国際的なステージへと持ち上げるとともに、日本の事情を踏まえた意見を反映させることに成功。CB証明書のQCD(認証の質、認証のコスト、認証の迅速化)の改善、最適化は梶屋氏の大きな功績だ。

ワン・ストップ・テスティングのCB証明書が広く普及し、その信頼性も向上。年々増加傾向にあるCB証明書の2018年発行件数は101,460件、そのうち日本が15,176件と世界トップの15%を占め、日本の電気電子製品の競争力の維持強化に極めて顕著な功績が認められたことが、今回の受賞にもつながっている。

世界の安全認証マーク
世界に乱立する安全認証マーク
(出典:一般社団法人電子情報技術産業協会『認証制度活用時点』(初版)一部改変)

技術革新のスピードに合う新たな規格づくりや認証制度の確立をめざす

 梶屋氏が現在向き合っているのは、新たな時代背景を踏まえた適合性評価の制度開発だ。昨今の技術革新により規格はより複雑化・高度化。それにより製品中心であった国際標準化は、システムやプロセスを含めたものへと認証スコープも拡大している。

「IoTやAIなど現在の技術革新のスピードにIECの標準化活動がついていけない。」と梶屋氏。IECの規格化には通常3~5年かかるので、これまでのやり方を変える必要性を強調する。

そこで今、提案を進めているのは「性能規定化」という規格づくりだ。従来の規格は細かな決まり事に「適合・不適合」ですべて評価が決まっていた。しかし、3年前や5年前の細かな規定や定義は、ことスピードが雌雄を決する技術革新分野において、意味をなさない可能性がある。

新たな性能規定化については「規格の目的や狙いを具体的に定めて、その達成手段はAでもBでもCでもいい。目的へのアプローチは各々に任せる。」と説明。あらかじめ決められた唯一の道を通過しなければならないものではなく、認証クリアまでの道のりは問わないという柔軟性のある規格で、変化のスピードを吸収できる制度の開発をめざしている。それと同時に、「新たな規格の意図を理解し判断できる“認証する側の人材”、その育成・確保の制度についても手を打っている最中だ。」と話が止まらない。

国際標準化活動に携わる次世代へのメッセージについて伺うと、「よく話すのは、1人で10を知ることをめざすより、1知る人間10人を活用できるような手腕を持つこと。」を挙げる。チームで挑むことになる国際会議の舞台、それぞれが持つ専門性を活かした交渉や調整の現場が想像できる言葉だ。

現在、グルーバル展開を行う日本の産業界が当然のように享受しているビジネス環境。実はその背後には、円滑なビジネスを阻む参入障壁の低減・排除に寄与した国際標準化の下地があるのかも知れない。そして、梶屋氏のようなその下地づくりに尽力する存在は日本のビジネスシーンでもっと知られていいはずだ。


【標準化活動に関する略歴】
1976年 松下電器産業株式会社(現パナソニック)入社 回転機事業部 海外設計担当
1981年 同社 技術本部技術助成センター技術法規室 主任
1985年 欧州技術法規首席駐在員としてハンブルグ駐在
1993年 本社海外法規グループ 主担当
2005年~現在 CMC(IECEE認証管理委員会)日本代表委員(国内審議委員会委員長を兼務)
2009年 同社 品質本部 技術法規担当 主幹
2009年~2014年 CAB(IEC適合性評価評議会)日本代表委員(国内対応委員会委員長を兼務)
2011年 退職後、国際標準化担当主幹として再雇用
2012年~現在 IEC/ILAC/IAF合同諮問委員会、ACEE(省エネ諮問委員会)リエゾンメンバー
2015年~現在 CAB日本オルタネイト(国内対応委員会副委員長を兼務)
       PSC(IECEE方針・戦略委員会)国際議長(共同議長)
2017年~現在 完全退職後、一般社団法人セーフティグローバル推進機構 理事
 

最終更新日:2020年3月23日