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令和元年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.2

経済産業大臣表彰/橘田 和美(きった かずみ)氏
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合機構 食品研究部門 食品分析研究領域
信頼性評価ユニット ユニット長

橘田和美氏の肖像

日本人の食生活につながるグローバルな食品流通を妨げないために

 豆腐をはじめ、納豆、しょう油やみそなどの原料である大豆。その自給率をご存知だろうか。我々日本人の生活と切り離せない食品だが、大豆の自給率は7%と極めて低い。サラダ油などの原料となる油糧用大豆を除いた食品用大豆に限っても24%だ(平成28年農林水産省データより)。

多くの食料を海外からの輸入に頼っている我が国。中でも既出の大豆やトウモロコシは依存率が高く、そのほとんどがアメリカやブラジルなど遺伝子組換え作物生産国からの輸入となっている。

そんな現状のもと、日本人の食生活に直結する、グローバルな食品流通を妨げない、そして安心・安全な食品の検査に寄与してきたのが農業・食品産業技術総合研究機構の橘田和美氏だ。

ISO(国際標準化機構)のTC34(食品専門委員会)/SC16(一般生物指標分科委員会)に、2008年設立当初からエキスパートとして参加する橘田氏。遺伝子組換え食品の検査法に関してコンビーナ(取りまとめ役)を務めるなど、国際標準化活動に貢献してきた人物だ。

日本には現在、遺伝子組換え大豆と遺伝子組換えではない大豆が海外から入ってくる。一例だが、スーパーマーケットなどで豆腐に「遺伝子組換えでない」という表記を目にすることがあるだろう。この表示内容を担保するのが、橘田氏が携わり公定検査法となった分析法である。

表示の信頼性確保のためには、妥当性が確認された分析法を用いて各検査機関がバラつきのない測定結果を出す必要がある。そこで橘田氏は、遺伝子組換え食品の検査分野で我が国初となる「認証標準物質」の開発・生産をリードしてきた。

同物質は、我が国の遺伝子組換え大豆の標準分析法によって値付けされたもので、精度管理の際に基準となる重要なツールだ。検査機械や検査員の技能の正確さを確認する“共通のものさし”と言い換えれば理解が早いだろう。

橘田氏のグループが開発したこの認証標準物質は、10年間で350セット、1050本が頒布され国や民間の検査機関、大手食品メーカー等がこぞって活用することに。この取り組みは食品表示法に基づく表示に信頼性を与えるとともに日本の規格基準に合った輸入食糧の確保にも貢献し、今回の受賞理由にもつながっている。

遺伝子組換え大豆の検査の精度管理に用いる認証標準物質(生産・頒布は終了)

安心できる食品検査法、その国際標準化をめざし活動の幅を拡大

 輸出入に不都合が生じないよう双方に配慮するかたちで同検査法の国際規格の開発・改訂をめざす橘田氏。生産国と輸入国、立場の違いは利害の違いを生む。さまざまな思惑がある中、グローバルな舞台での議論が簡単ではないことは想像に易しい。

その苦労話について伺うと、「私が自分で開拓したのではなく今のユニットへ異動してきた際にはプロジェクトはある程度決まっていた。それを周囲の方の助けをいただきながら引き継いだだけ」と謙遜。少し間を置き「国際規格づくりはコンセンサスをベースとしている。生産国は“敵”ではないですし、大切なのはやはり信頼関係」と苦労や気遣いの一端を話してくれた。

国内外を問わず遺伝子組換え食品の是・非、その表示基準を巡って賛否があることは確かだ。しかし地球規模での人口増加、それに伴う食料事情を踏まえると、「害虫に強い」「特定の除草剤で枯れない」などの特性を持たせた生産性の高い遺伝子組換え食品の活用は今後も増えていくだろう。そのような状況下、我が国の安心できる食生活を下支えしているのが橘田氏のような存在だ。

橘田氏は、規格開発・改訂の活動と並行し、各種ワークショップや講演、著作物などで遺伝子組換え食品検査における国際標準化の重要性の啓発など、活動の幅を広げている。

最後に2つの質問をした。
今後の取り組みについては「まだ、道半ば。今開発中のものをいかに国際規格につなげていくか。」国際標準化に取り組む次世代へのメッセージを伺うと「まだ、若い人たちと一緒に走りたい。」と開口一番。続けて「さまざまな分野でグローバル化が進む中、国際標準化の役割はより重要となっていく。ルールに従うだけではなく、ルールを作る醍醐味を味わってほしい。」とも。

質問への回答は2つとも「まだ……」という言葉から始まったのが印象に残った。

【標準化活動に関する略歴】
1989年 東北大学農学部食糧化学学科卒業
1991年 University of California,Davis 食品科学部修士課程修了
1992年 農林水産省食品総合研究所 食品理化学部研究員(農林水産技官)
(1998~2000年:タフツ大学USDAヒト栄養学加齢研究センター客員研究員)
2006年~現在 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所* 食品分析研究領域ユニット長
2007年~2016年 ISO/TC34/WG7(遺伝子組換え分析法)エキスパート
2009年~現在 ISO/TC34/SC16(一般分子生物指標)エキスパート
2016年~現在 ISO/TC34/SC16/WG8(肉種識別)エキスパート
2017年~現在 試験所技術審査員(ISO/IEC17025)登録(JAB)
2017年~現在 ISO/TC34/SC16(種子および穀物のサブサンプリング)プロジェクトリーダー
2018年~現在 ISO/TC34/SC16/WG9(種子および穀物のサブサンプリング)コンビーナ
2018年~現在 ISO/TC34/SC16/WG10(高速核酸増幅法)エキスパート

*:現・国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構食品研究部門

最終更新日:2020年3月27日