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令和元年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.9

経済産業大臣表彰/田原 芳雄(たはら よしお)氏
一般財団法人日本塗料検査協会 東支部

田原芳雄氏の肖像

JIS新制度の登録認証機関第1号へと牽引、新制度の信頼性向上にも尽力

 乾電池、蛍光灯、ノートブック、自動車用ガラスなど、誰もが一度は目にしたことがあるJISマーク、そんな日常生活に溶け込んでいるJISマーク表示制度は2005年、法改正により国の認定制度から民間の登録認証制度に移行した経緯がある。

同制度の登録認証機関、第1号となったのが日本塗料検査協会。その第1号へと尽力したのが同協会東支部の田原芳雄氏だ。塗料製品のJISで業界の先駆的な役割を果たした人物である。

塗料と聞いて、何を思い浮かべるだろう。塗料は、さまざまな建物や製品の美しさを演出するだけにとどまらない。

道路のセンターラインや横断歩道が、簡単に消えてしまっては困る。これは、白い路面標示用の塗料の話だ。雨風や日差しから機械、建物、構築物の腐食やさびから守り、素材などを長持ちさせる、視認性の高い標識や看板のおかげで快適性や安全性を享受できるなど、塗料は我々の生活に浸透している。

しかし、鉄などに施した塗料は期間の経過とともに腐食に向かい、どんなに堅牢な構築物でも塗料でさびから保護しなければ崩壊してしまう。同協会は1985年、そんな腐食を防ぐ塗料に関する試験方法開発を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から受託する。その開発に向き合ったのが、田原氏だ。

「塗料の性能判断をするには、屋外に置くだけであれば結果が出るまでに非常に長い期間がかかる。」と田原氏。「短期間で結果を出せる、塗装の腐食が促進する過酷な環境作りに取りかかった。」と続ける。

温度や湿気、塩分を加えることも、促進方法の1つ。これらを加える配分や、検証期間の比較など、さまざまなパターンを整理し、短期間で自然環境に一番近い結果が出せる試験方法を、2年かけてまとめ上げる。

その方法は「JIS K 5621:1992(一般用さび止めペイント)」の試験方法として採用され、以降塗料メーカーの製品開発の迅速化、製品の客観的性能比較が可能となり、JISマーク表示製品の信頼性向上に大きく寄与した。

現在、同協会でJISマーク表示認証できるJISは35規格、認証件数は184件に及ぶ。田原氏は、塗料分野におけるJISマーク表示制度で陣頭指揮を取り続け、その普及に貢献する。

JIS K 5621で参照される耐久性試験(サイクル腐食試験)機
画像提供:日本塗料検査協会

認証機関間の差異の解消、認証取得者向けセミナーで講師も

 2005年の法改正によりJISマーク制度は、国の認定制度から、民間の認証機関が自由に業務範囲と料金を定めることができるようになった。それに伴い、JISマーク認証を取得したい事業者からは、制度の信頼性に対するかなりの懸念も寄せられた。こうしたことから、民間の登録認証機関の集まりであるJIS登録認証機関協議会(JISCBA)が設立される。JISCBA立ち上げの幹事会メンバーは10人。登録認証機関第1号となった同協会のキーマン=田原氏もそのメンバーの1人だ。田原氏は以後、幹事会のほか技術委員会、認証委員会、規格検討委員会という各種委員会の全てに名を連ね、塗料分野以外の検討にも積極的に関与することとなる。

民間移行後、次々と登録される認証機関。当然のことだが、認証機関ごとに認証のバラツキがあってはならない。しかし、JISマークを表示していいという基準は、○×のような単純なものではなく、法令やJISの文面の“解釈”によって差が生まれる可能性があった。田原氏は、そういった解釈の違いを少なくするため、”最低限やらなければいけない審査手順”の作成と共有を図る。それが、今も続く「解釈集」や「認証指針」だ。

登録認証機関間での認証の公平性をめざして田原氏が行った認証指針の制定改正は、11件を数える。

田原氏は、メーカーの品質管理責任者など、JISマーク認証取得者を対象とする分野でも尽力する。2010年、同制度の民間移行後初の認証取得者向けセミナー「JIS品質管理責任者セミナー 力量維持・向上コース」の開催が決まる。

JISの認証は3年に1度更新審査が行われる。同セミナーは、品質管理責任者として次回更新に向けて取り組むべき内容や制度の改正内容、違反事例の共有などを、1日集中講座で学ぶスタイルだ。

事前にJISCBA幹事会メンバーで「この章は○○さんが担当」などと分担し、セミナー用テキストを作成。2010年9月21日の第1回セミナーが近づく中、なぜか「その日は都合が悪い」「ちょっと用事が……」と他の幹事メンバーから参加辞退の報告が相次ぐ。
気づけば、田原氏が第1回のセミナー講師を務めることに。「一番印象に残っていて、一番緊張した出来事。」と苦笑いの田原氏。

当日は、メーカーの品質管理責任者に加えて、標準化団体や経済産業省の職員などもオブザーバーとして参加。総勢100人以上の参加で立ち見も出たという。

その後も田原氏は、経済産業省主催のJISマーク表示制度のブロックセミナーなど、各種セミナーのテキスト編集や講師として中心的役割を果たしてきた。新たなJISマーク表示制度やJISマーク製品の普及、そして新制度の信頼性向上に大きく貢献したことが、今回の受賞につながっている。

「JIS品質管理責任者セミナー 力量維持・向上コース」の様子

長年、標準化活動に携わってきた田原氏。活動当初は「品質で悪いところがあれば、改善しながら良い方向に持っていこう。」という流れがあり、その中で標準化が役割を果たしてきた。しかし近年、品質の違反や不正が増え、それを取り締まるというものになってきていないか……と少し危惧をする。「標準化は品質改善のためのもの」という本来の姿を見失わないことが、次世代標準化人材へのメッセージだ。

「JISCBAを立ち上げた幹事会メンバーは今でも交流があり、毎年忘年会を行う。」と田原氏。これまでの標準化活動で一番嬉しかったことを伺うと、「2019年のその忘年会が、今回の受賞祝いを兼ねたものになった。」と話す。この日一番の笑みが浮かんだ。

【標準化活動に関する略歴】
1974年 財団法人 日本塗料検査協会 東支部 入社
1998年 同協会 公示検査 総括検査員
1998年 同協会 検査部 部長
2003年 同協会 認定審査 総括審査員
2005年 同協会 管理部 部長:認証業務 総括審査員
2006年~2019年  JIS登録認証機関協議会幹事会 幹事
                         同技術委員会 委員
2010年 同協会 東支部長付 部長:認証業務 総括審査員
2018年 同協会 認証業務(嘱託) 品質管理者
2019年 同協会 認証業務(業務委託)

最終更新日:2020年5月18日