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令和元年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.11

経済産業大臣表彰/出町 公二(でまち こうじ)氏
横河電機株式会社 マーケティング本部渉外標準化センタ 標準化戦略1部 部長

出町公二氏の肖像

大局観を持ったTC運営で、国家間競争を乗り越えた国際的合意に貢献

 スマートマニュファクチャリング関連の国際標準化は、大局観を要求されるタフな仕事だ。スマートマニュファクチャリングとは、デジタル技術を活用して工場の生産活動をより効率化する構想を指す。この分野は、技術覇権争いを目下繰り広げている米国と中国だけでなく、製造業立国のドイツや日本などもしのぎを削る熱戦の舞台だ。

横河電機・マーケティング本部・渉外標準化センタの出町公二標準化戦略1部部長はIEC(国際電気標準会議)/TC65(工業用プロセス計測制御)のコンビーナ(主査)などを長年務め、合計25件のプロジェクトに関わった実績がある。欧米の影響が強い工業プロセス制御領域で日本代表として活躍。特に安全とセキュリティの協調と、デジタルファクトリの作業部会でデジタル技術による製造業の生産性向上につながる規格開発に尽力してきた。

そんな出町氏は「国家レベルや地域レベルでの戦略的活動が活発で、政治的な背景や圧力を少なからず感じる。」と苦労を語る。国家間の競争は、純粋に技術的な合意を形成する上で障害となりがちだ。

そこで重要になるのが大局観だ。「国家的な競争を乗り越えて国際的な合意をつくらないといけない。」と出町氏は国際規格づくりの原理原則を曲げない。中国製造2025を掲げる中国や、世界に先駆けてインダストリー4.0を打ち出したドイツなどは新しい国際規格提案を山のように出してくる。「我田引水的で勝手な、あるいは他国を混乱させるような規格をどんどん提案してくる。それをNP(新規格提案)段階で問題点を分析して、仲間の国や企業と連携して修正し、場合によっては廃案にする。」と出町部長の対応は迅速だ。入り口段階で止めることで、関係者が将来被るマイナスコストを最小限に抑えているのだ。加えて、「グローバルサプライチェーンが構築されている現代において、言葉や文化の違いを乗り越えて理解し合って、協力できるような国際社会のルールが求められる。」と国際協調を呼びかける。

国際ルールづくりには公明正大さも欠かせない。出町氏は「例えば『英語で話せば皆分かり合える』と言う人もいるが、そういうアプローチはあまり良くない。英語ネイティブの国の独り勝ちになる。」と断言し、特定の言語や文化に依存しない標準化活動の重要性を強調する。大国ですら自国第一主義に突き進む昨今の国際情勢を考えれば、国際標準専門家の言葉は重い。

製油所や化学プラントの運転を行う中央制御室に設置されたプラント制御システム

国家、TC、企業、業界…、それぞれの分野が連携できる環境づくりを

 大局観はAI(人工知能)をはじめとしたデジタル技術を巡る社会全体の風潮にも物申す。AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)、IoT(モノのインターネット)などは本来、スマートマニュファクチャリングを実現する技術でしかない。にもかかわらず、「実現技術という手段に過ぎないAIなどに取り組むことが過熱して目的化している。」と出町氏は苦言を呈す。「確かに可能性を秘めた技術だが、それを生かして何をするかにもっとフォーカスしなければいけない。」と本質を説く。

AIに何かを教え込むために膨大な工数をかけることが、社会問題になっている。人間が直接手がければ特にAIも要らない作業であっても、「人間がより大変なプログラミングをしてAIに教え込むなんて、何かおかしい。」と出町氏はある種のブームに警鐘を鳴らす。

定年を迎えた出町氏の身の処し方も、大局観に満ちている。再雇用制度があるため65歳まで働ける環境だが、違う未来を見ているようだ。「この10年20年国際標準化活動にたずさわってきて、1企業としての立場よりもう少し公的なところでお手伝い、貢献していきたい。」と新たな夢を語る。国際標準化の舞台でも国家間、TC間、企業間、業界間の壁を越え、それぞれの分野で頑張っているエキスパート、専門家、関係者が連携できるような環境づくりを目指す。

さらに、標準化活動を巡る産官学の風潮にも一言。「国際標準化というのは、立派な国際標準を提案して開発して製品に結びつけて、『こんなに商売につながりました』というのがひとつの理想だけれども、それしか成功とは呼べないとなったら日本の国際標準化貢献なんてできない。」と出町氏は言い切る。確かに、もっと多様でもっと広い視野に立った貢献の仕方を許容することで、日本のより豊かな標準化活動への道が拓けるに違いない。

最後に、出町氏に次世代の人材育成について聞いた。「思いもしなかったような他業界や他国の違った文化や常識に触れて、自らの立場や考え方を見直し、その上でどうすれば相手を説得できるかを考える経験を多く持つことが大切だ。」と説く。それがひいては日本経済を維持・発展させる若手企業人の育成につながるはずだ。

【標準化活動に関する略歴】
1982年 横河電機製作所(現:横河電機) 入社
1982年 同社 システム技術開発部署配属
2003年~現在 IEC SC65C/WG11(現WG9)エキスパート就任
2007年~現在 同社 マーケティング部署(国際標準化 専任部長)
        IEC/TC65国内委員会 諮問委員会、IEC/SC65C・IEC/SC65A委員会 幹事
2010年~現在 IEC TC65/WG16(デジタルファクトリ) エキスパート
2012年~現在 ISA(国際計測制御学会)108委員会(インテリジェント・デバイス管理) 共同議長
2013年~2016年 IEC/TC65/AhG1(安全とセキュリティの協調) コンビーナ
2016年~現在 IEC /TC65/WG20(安全とセキュリティの協調) コンビーナ
        ISA標準化理事会 理事

最終更新日:2020年6月1日