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令和元年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.14

経済産業大臣表彰/西脇 徹郎(にしわき てつお)氏
一般社団法人日本建設機械施工協会 標準部長

西脇徹郎氏の肖像

土工機械の国際標準化に従事、世界の建設現場の安全性向上と事故減少に貢献

 産業分野で国際規格づくりを“主導”。それは自国産業の国際競争力向上に直結することを意味する。建設機械分野で世界第2位の日本の存在感は、日本に多い油圧ショベル関連の国際標準化に努めるなど、国際舞台での標準化活動の取り組みによっても高められてきたといえよう。

日本建設機械施工協会の西脇徹郎氏は、その分野における功労者の一人。国際標準化機構(ISO)の分科委員会(SC)で国際幹事を15年以上務め、傘下37件もの規格の制定や改定、それらのJIS化にも尽力してきた。

これらの活動について西脇氏は「個人の功績よりも、建設機械産業界と諸先輩方の力が本当に大きい。ISOに土工機械の専門委員会(TC127)が設立され、国際標準化の取り組みが始まったのは1969年。当初から参加した日本メーカーの経営・幹部層に先見の明があった」と歴史的背景を説明した。

TC127は建設機械の中でも土工機械を扱う専門委員会。土工機械とは土を押したり掘ってすくって運んだりする機械で、代表的なのがブルドーザーや油圧ショベルなどだ。そのTC127の中には4つのSCが設置されることになり、日本はSC3(機械特性・電気及び電子系・運用及び保全)の国際幹事国に手を挙げた。

「これは非常に大きな出来事。当時の業界は国内向けの競争が激しく、海外への輸出は少なかった。日本の建設機械産業の発展には世界に目を向ける必要がある。国際競争の中で世界に伍する、いやそれ以上の製品を作らなければならない。そのような思いで幹事国を引き受けたのでしょう」と先人たちの取組みに思いを馳せる。

西脇氏と国際標準化の関わりはメーカー勤務時代にさかのぼる。1971年にキャタピラー三菱(現:日本キャタピラー)に入社し、技術部で配線などの設計を担当。その後、三菱重工に移籍し、運転室周りの構造を設計する際にTC127の規格を参照することが多くなったという。

当時、日本担当でミニショベルの横転時保護構造の国際規格化を進める動きがあり、西脇氏にも声がかかる。「TC127の特徴として、細部設計に至るまで規格を参照する必要がある。実務での経験を生かし、既存の国際規格を参考にしながら、新しい規格の原案作成に取り組む作業だった」と回想する。

その後、1996年に日本建設機械施工協会の前身の日本建設機械化協会に移動し、以来23年以上にわたって標準化活動に従事。先述の国際幹事のほか、各種作業グループ(WG)ではコンビーナ(取りまとめ役)の補佐役として、時代の先駆けとなる情報分野の規格や日本発の安全技術の国際標準化にも取り組んできた。

安全対策試験の様子
(一社)日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所で実施した、日本発の国際規格提案のための安全対策試験
出典:同協会施工技術総合研究所ホームページ(http://www.cmi.or.jp/bunya/bunya.htm外部リンク

安全技術と情報技術、今後の建設機械産業は標準化にどう取り組むか

 産業界との二人三脚で西脇氏が携わったこれらの規格は、日本の立場を押し上げてきただけでなく、世界の建設現場の安全性向上にも大きく貢献している。「ISO原案は、既存規格の文面を利用して組み合わせるとスムーズに作成できる。困るのは電気・電子・情報化などの先進分野。従来にはない分野では対応する日本語が無いことが多く苦労する」と苦笑い。

いくつもの規格化に携わり、業界の動向を肌で感じ取ってきた西脇氏。今後の課題についてたずねると「電気・電子とりわけ情報技術の建設事業への適用にどう取り組むか」だという。これまでの建設機械は主に安全設計を考えることが中心であり、標準化で扱うテーマの多くを占めていた。

しかし、今やモニターやセンサー、位置情報システムなど電気・電子機器が搭載されていない機械はなく、標準化で扱う比重も大きくなってきている。いままでは、建設機械そのものの生産・使用に関連した標準化という取組みであったが、これからは、インフラの新規投資や維持投資の過程で機械技術にどのように情報技術を適用していくかが課題となり、「この分野は非常に進歩が速い。建設機械産業が今後も発展するためには、安全技術はもちろん、業界各社でこの分野の標準化にどう取り組むかが大きな課題」と西脇氏は強調する。

産業界の標準化人材については、情報技術に精通する若手の起用や育成が望まれている。その一方で、各社とも若手は本業の実務で忙しく、標準化活動への取り組みに割ける時間の制約が厳しいという壁も存在する。

では人的リソースをどう確保するのが現実的なのか。「例えば、経験が豊富で人脈もあるベテランと、現場で機械の情報化に取り組む若手がペアとなり案件ごとに対応する」という方法を挙げる西脇氏。「業界の未来のためにも、各社に標準化活動の体制づくりをお願いしている」とも。

情報技術の進歩といえば、「実は今朝5時からWebで国際会議を行った。アメリカの建設機械メーカーは米国中部のシカゴ近辺が多いが、施工関連の情報技術関連産業はシリコンバレーに近い山岳部にあり、南半球の国との時差も考慮すると……会議時間に対応するのも一苦労」と破顔一笑。温和な表情と語り口の中に一瞬、今日も世界と向き合う姿が垣間見えた。

【標準化活動に関する略歴】
1971年 キャタピラー三菱株式会社入社
1975年 三菱重工株式会社へ転籍
1988年 新キャタピラー三菱株式会社に移籍
1998年~2014年 ISO上層対応連絡会議幹事会、委員会 委員
1996年 社団法人日本建設機械化協会へ休職派遣、規格部次長
2000年 同規格部部長
2002年 社団法人日本建設機械化協会へ移籍、職員として採用、標準部部長
2004年 同標準部長
2004年 ISO/TC127/SC3(機械特性・電気及び電子系・運用及び保全)  国際幹事
    (※2002年~2003年はSC3国際幹事代理を務める)
2006年~現在 ISO/TC127/SC4(用語)/WG3(ローラ及びランドフィルコンパクタ) コンビーナ
2001年~現在 ISO/TC127/SC3/WG5(ISO15143シリーズ施工現場情報交換)国際幹事
2011年~現在 ISO/TC145(図記号)/SC3(機器・装置用図記号) 国内対策委員会委員
2012年~現在 一般社団法人日本建設機械施工協会に移行

最終更新日:2020年6月22日