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令和元年度 産業標準化事業表彰受賞者インタビュー Vol.18

経済産業大臣表彰/三角 正法(みすみ まさのり) 氏
マツダ株式会社 技術研究所 主幹研究員

三角正法氏肖像

自動車業界で現在もっとも開発競争の激しい技術テーマは自動運転で間違いない。100年に1度の大変革期を迎え、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の波が押し寄せている。世界有数の自動車大国である日本にとっても、絶対に負けられない戦いだ。

車自動運転のカギを握る安全技術の標準化で大きな功績

 マツダ株式会社技術研究所の三角正法主幹研究員は、ISO(国際標準化機構)高度道路交通システム専門委員会(TC204)の車両及び路側における警報及び制御システム作業部会(WG14)のコンビーナ(取りまとめ役)を2013年から務め、運転自動化技術の国際標準化に大きく貢献した人物だ。日本提案の5件を含む計15件の国際規格発行で主体的な役割を担った。
「車外の情報をカメラやレーダー、通信などを通じて取得して車を制御するシステムの標準化を進めている。具体的には、最近はやりの自動ブレーキや車間制御システムなどになる。」と三角氏は自らの活動領域を説明する。ほかにも、新たなマネジメント手法を導入してISOでの円滑な会議運営を推進し、対面会議における議論の効率化を図るなど、功績は多い。

そんな三角氏の出だしは、穏やかではなかった。「2013年のコンビーナ就任当初から、いきなり大ゲンカになっていた。」と当時の苦労を振り返る。自動運転は関連する技術分野が多岐にわたり、ISO内にも関連分野の多数のTC(専門委員会)が存在している。各TCやSC間の主導権争いはいつの時代のISOでもよく見る風景であるが、今後の自動車産業の雌雄を決するとされる自動運転分野でも、それが勃発したのだ。
2013年当時、三角氏が担当する作業部会では、歩行者検知被害軽減システムの国際規格策定が進んでいた。ところが突然、別のTCで、競合するような自動運転の予防安全に関する作業部会が設立された。「我々TC204側として『作業が競合するので、TC204の領域を侵犯するのではなく、こちらの作業部会に入って共同で作業を進めるように』と申し入れたが、その翌月には相手側のTCでNP(新規格提案)投票が始まった。」と三角氏は驚きを隠せなかった。

第41回ISO総会(2018年10月)パネルディスカッションでの三角氏

日米と欧州で対立するも、雨降って地固まる

 自動運転関連の規格開発作業の競合は、ISO事務総長らをも巻き込む大騒動に発展したものの、2014年春に両TCでMOU(合意覚書)を締結したことで、問題解決に向けた協議開始にこぎ着けた。相手の作業部会は車試験場運営業者や試験装置メーカーの集まりで、衝突試験用のダミー人形や自走式模擬車などの規格開発を目指していた。三角氏は「ダミー人形などの非常に専門的な仕様は相手に任せ、その代わりに車側の制御は我々でやる方向で、話し合いがうまく決着した。」と喜ぶ。雨降って地固まるのごとく、両者の信頼関係が醸成されたことで連携が加速。一時の対立から一転、2017年末の規格発行につながる成功体験へ変わった。「結果的に、非常にレベルの高い規格が双方ともに発行できた。」と満足げに話す。

自動ブレーキなどはすでに実用化されているが、本格的な自動運転の世界はこれからだ。三角氏の作業部会でも現在、高速道路で運転手が注意していなくても車が勝手に走ってくれる「自動運転レベル3」のシステム動作の標準化に力を入れている。また、複数台のトラックが自動運転で隊列を組んで高速道路を走行するシステムも手がける。「自動運転が安全性に寄与するのは当然ながら、燃費も良くなり、労働環境の厳しいドライバーの疲労軽減にも貢献できる。」と三角氏は新技術へ期待を膨らませる。

ISO /TC204 /WG14における標準開発の実例
ISO 19237 歩行者検知・被害軽減ブレーキシステム

  コンビーナ就任期間が7年間というのは、自動車分野では異例の長さだ。「日本自動車工業会の中の持ち回りで当初3年の予定だったが、いつのまにか2期6年となっていた。」と三角氏は笑う。今春には、ようやく後任へバトンタッチができることになったという。

65歳を超え、所属企業で嘱託社員となりながら、身を粉にして国際標準化の舞台で日本代表を務めてきた。三角氏は「自動車などの工業製品すべてはグローバルに動いているので、国際会議などの場で継続的に、議論や対話の中にいることが極めて重要だ。いきなりぽっと出て行っても『あの人誰?』という感じになっちゃう。」と継続性を重要視する。
この7年間で、三角氏の海外出張は68回を数えた。三角氏のこの東奔西走が、日本の存在感向上に大きな役割を果たしているが、今後の課題は、次世代をどう巻き込むかだ。「自動運転は、今後100年間の国民生活を激変させうる革新技術だ。これからを生きる若者たちにも、大いに参加してもらいたい。」と三角氏は期待を込める。

【標準化活動に関する略歴】
1978年 マツダ株式会社入社
1998年~2003年 マツダモーターヨーロッパGmbH出向
2003年~現在  同社技術研究所
2013年~現在 ISO/TC 204(高度道路交通システム)/WG 14(車両及び路側における警報及び制御システム) コンビーナ
2013年~現在 ITS標準化委員会走行制御分科会長

最終更新日:2020年7月20日