革新的環境イノベーション

水素への期待と課題

水素は、運輸、産業、発電など様々な分野への適用を通して、社会の脱炭素化に重要な役割を果たすと期待されている。日本は2017年に世界初の水素国家戦略を策定し、また、2020年1月に策定した革新的環境イノベーション戦略においては、水素を、世界のカーボンニュートラルを可能とする革新的技術を2050年までに確立するための重点領域の一つとして位置づけた(図1、③)。日本は水素ステーションが約131箇所と世界トップ(2020年7月現在)であり、液体水素運搬船の開発なども着実に進行している。

一方で、今後の本格普及に向けては、水素利用の用途拡大(船、列車、物流トラックなど)や、社会全体の自律的なエコシステムの構築が必要であり、また、そこに必要となる安価な水素の確保に向けては、グローバルサプライチェーンの構築に加え、国内オンサイトでの貯蔵を含めたシステム構築と水素製造実証が重要になる。さらに、水素は長期戦略となるがゆえに、人材の戦略的育成を含めた研究開発の足腰の強化も必要である。

図1
(図1)革新的環境イノベーション戦略資料より抜粋

モビリティ分野の動向(企業、プロジェクト動向)

自動車分野

トヨタ自動車は、富士山の麓でのスマートシティ構想を発表した。ここで活躍が期待されるのは多目的次世代モビリティe-Paletteであり、MaaS等の先端技術が導入・検証される。同社は、FCHVの領域では、燃料電池車MIRAIの市販で市場拡大を先導してきたが、今後はバス・トラック等の長距離・大型車両でのラインナップを増やすとする(図2)。また同社はEVにも力を入れており、今後はマテリアルインフォマティクスも活用しながら、バッテリーの革新を目指すとする。

図2
(図2)GI推進会議第2回WG トヨタ自動車(株)発表資料より抜粋

海運分野

国際海運は世界共通ルールの策定が求められる。日本は2100年に排出ゼロを目指すとするIMOのGHG削減戦略に向け、2018年に産官学公の連携でゼロエミッションプロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトにおいては、代替燃料として、カーボンリサイクルを考慮したLNGへの移行と、水素・アンモニアへの拡大、を二つのシナリオとし、2030年までに第一世代のゼロエミ船の実船投入開始を目指している(図3)。

図3
(図3)国際海運のゼロエミッションに向けたロードマップより抜粋

水素/モビリティ分野での技術開発の動向

水素分野

日本は水素長距離輸送に関わる技術開発・実証等を世界に先駆けて実施してきた。今後、水素の本格普及と脱炭素化の実現のためには、水素製造・輸送・貯蔵の各分野での技術革新の着実な推進を通じて、コスト削減が確実に達成されることが重要となる。高効率な水電解、人工光合成、高効率水素液化機、低コストかつ高効率なエネルギーキャリア、プロトン伝導型SOFC等の実現が期待される。

モビリティ分野

EVには航続距離の延長が求められており、蓄電池のエネルギー密度のさらなる向上が必要である。ここに向けては、全固体電池に加え、フッ化物電池等の革新型電池の実現が期待される。FCVには、燃料電池のコンパクト化、高信頼性、低コスト化等が求められており、ここでは非白金触媒、新たなプロトン輸送機構を有する隔膜等の革新部材の実現が期待される。

支援体制

若手研究者支援

エネルギー・環境分野の大学等の有望な若手研究者と企業の研究開発等を結びつける施策として、NEDOを窓口として、5年間で500人の若手研究者を発掘する支援策(ゼロエミクリエイターズ500)を実施している。

スタートアップ支援

エネルギー・環境関連の技術開発は、初期投資が大きく実証期間が長期化しやすいことに加え、マーケットの成長性を見通しづらいことなどから、起業の担い手・資金の出し手が限定的になる課題がある。NEDOが事務局として運営するオープンイノベーションベンチャー創造協議会(JOIC)では、エネルギー・環境分野の社会実装に挑戦するスタートアップを、事業や技術連携を希望するプレイヤーやベンチャーキャピタルとマッチングさせるイベントなどを実施している。