1.「9つの行動」別冊編作成の背景
近年、日本企業がグローバル規模で成長を実現していく上で、海外M&Aが重要かつ有効なツールとして認識され、日本企業による海外M&Aは増加傾向にあります。一方で、海外M&Aの難易度の高さから、期待されていた成果を十分あげられないケースも少なくありません。
こうした背景から、平成29年度に経済産業省は、「我が国企業による海外M&A 研究会」を開催し、日本企業が抱えるM&A に関する課題を有識者とともに検討し、海外M&A を有効に活用していく上での留意点や事例を、報告書と「海外M&Aを経営に活用する9つの行動」としてとりまとめました。
この「9つの行動」の内容を踏まえ、各企業が海外M&Aに取り組んでいく上でより具体的・実践的に役立てていただけるよう、海外M&Aを活用し企業の成長につなげていくためにCEOと共に重要な鍵を握るCFO、法務担当役員及び社外取締役という3つのポジションに焦点を当て、これらのポジションの職責や専門性に応じて期待される役割やアクションについて、より具体化・明確化した「別冊編」をとりまとめました。
2.「9つの行動」別冊編作成の狙い(CFO、法務担当役員及び社外取締役にフォーカスした趣旨と想定される利用方法)
CFO、法務担当役員及び社外取締役については、執行側とそれを監督する側という差異はあるものの、本来、CEOと共に中長期的な企業価値の向上にコミットし、海外M&Aを活用していくにあたり、これに伴うリスクの精査や対処を含む経営全体を俯瞰した建設的な役割を果たすことが期待されています。そこで、こうしたキープレーヤーが、海企業価値向上に向けて経営全体を俯瞰し必要な行動をとる「経営者」としての「オーナーシップマインド」を持ちつつ海外M&Aに取り組み、企業のグローバルな成長につなげていくために重要なポイントについてまとめました。
この「別冊編」の作成にあたっては、海外M&Aに積極的に取り組む日本企業において、CFOや法務担当役員を務めている方々や過去に務めていた方々、こうした企業で社外取締役を務めている方々を含む有識者からのヒアリングを行い、「現場の声」としてまとめています。
現在進行形で海外M&Aに取り組んでいる企業が、ここに記載した具体例等をきっかけに社内での議論を活性化し、海外M&Aを成長につなげていくために自社にとって必要な取組を考え、実践につなげる契機になればと考えます。
3.「9つの行動」別冊編のポイント
CFOに期待される役割
- 戦略・ビジョン策定に主導的役割を果たしているか
- 企業価値向上のための幅広い要素とリスクを掌握しているか
- 資本市場との対話を意識しているか
- 入念な準備に時間をかけているか
- 結論ありきの机上の空論のバリュエーションとなっていないか
- 最適な資金調達手段・スキームを検討しているか
- 買収ありきでない明確な判断軸を持っているか
- 「買収して終わり」となっていないか
- 数字ばかりを追い、事業の現場感覚を失っていないか
法務担当役員に期待される役割
- 経営チームの一員として戦略策定等に関与しているか
- 必要なリスクを取るための検討ができているか
- 事業サイドからいつでも頼りにされる信頼関係があるか
- 法務部門の経験・ノウハウを活かしているか
- 外部アドバイザーの主体的な活用を意識しているか
- 戦略や買収目的との整合性についての調査は十分か
- 成長のための明確な判断軸をもった検討を行っているか
- グローバル規模でのリスクマネジメント体制が整備できているか
- 買収後の状況を定期的にモニタリングできているか
社外取締役に期待される役割
- 社外取締役に求められる役割について理解・共有できているか
- 成長のために必要なリスクテイクの後押しも行っているか
- 自らに情報が集まるようになっているか
- 自社の戦略・ビジョンとM&Aの位置づけ・整合性は明確か
- 想定外のリスクやその対応シナリオの検討は十分か
- 価格算定の妥当性を確認しているか
- 統合に向け、行動とモニタリングを機動的・継続的に行っているか
- 買収先のリスクマネジメントができているか
- 過去の経験を振り返り将来への教訓につなげることができているか
3.参考
-
海外M&Aを経営に活用する9つの行動」(平成30年3月公表)(PDF形式:1,286KB)
- 「我が国企業による海外M&A研究会」報告書(平成30年3月公表)
-
日本企業による海外M&A実態調査報告書「海外M&Aと日本企業~M&Aの最前線に立つ国内外の企業の声からひもとく課題克服の可能性~」(平成31年4月公表)について(PDF形式:12,102KB)
関連資料
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最終更新日:2024年7月24日