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GENIAC採択事業者に向けたキックオフイベントを新たに開催しました!

イベントレポート

2024/11/20

2024年10月10日(木)、国内の生成AI開発を推進する「GENIAC」プロジェクトに採択された生成AI開発企業や研究機関を招いたキックオフイベントを東京・大崎で開催しました。本記事では、計算資源の提供支援事業に採択された20の事業者のコメントと、新たに実施するデータ・生成AIの利活用にかかる実証調査事業に採択された3社のコメントをご紹介します。

多用な業種・分野に特化した基盤モデルも登場
採択事業者の事業計画プレゼンテーション

経済産業省商務情報政策局 情報処理基盤産業室 室長 渡辺 琢也氏

イベント冒頭、経済産業省の渡辺 琢也氏が、GENIACを構成する3つの要素①計算資源、②データ、③ナレッジを柱に、生成AIの開発とビジネスへの挑戦を支援してきたことを述べ、GENIACプロジェクトの成果として国内生成AI開発基盤が強化された過程を振り返りました。

また、更なるGENIACプロジェクトの実施にあたり、社会実装のさらなる加速やモデル性能の向上、データ活用の重要性にも言及したほか、生成AI開発コミュニティの活動がGENIACプロジェクトの成功に不可欠であることを強調しました。

計算資源の提供支援事業第2期に採択された事業者一覧と登壇者のコメントは以下のとおりです。今回のテーマには、汎用的な基盤モデルの開発に加え、自動車、製薬、ソフトウェア開発、ビジネス業務支援、カスタマーサポート、アニメーション、食品、環境、観光等、特定領域における基盤モデルやデータセット構築も含まれています。

計算資源の提供支援事業 第2期 採択事業者一覧

株式会社Preferred Elements 岡野原 大輔氏

「第1期では1000億パラメーターのLLM(大規模言語モデル)をフルスクラッチで開発し、日本語性能が高く、国際競争力のある大規模言語モデルの技術基盤を確立しました。今回の第2期では、LLMを活用した世界最大規模の高品質データセットの構築と、MoEからなる30BパラメーターのLLMを開発し、利用時の推論コストを10分の1以下に削減することを目指します」(岡野原氏)

Turing株式会社 山口 祐氏

「これまでに視覚と言語を統合した高品質なマルチモーダルAIモデルの開発に成功し、3,000時間以上の三次元走行データを取得してきました。さらに今回は『身体性』を備えたAIモデルを構築し、テキストや映像、センサーデータを統合的に理解する完全自動運転システムの構築を目指します」(山口氏)

ウーブン・バイ・トヨタ株式会社 小堀 訓成氏

「都市空間向けの大規模マルチモーダル基盤モデル『City-LLM』の構築を目指しています。これまでに歩行者の事故に特化したデータセットを公開し、CVPRが主催する『AI City Challenge』のオーガナイザーを務めてきました。今後はリアルな都市環境での検証等を通じて、世界の交通安全に貢献してまいります」(小堀氏)

株式会社ABEJA 服部 響氏

「第1期では個別モデルを作成するための基盤モデルの開発に取り組み、高精度なRAG+Agentにより低コストとパフォーマンスの両立を達成しました。第2期では10Bと50Bの2モデルを構築し、特定タスクに対して世界トップレベルの性能を持つモデルを開発し、自社プラットフォームに実装することを目標としています」(服部氏)

株式会社EQUES 助田 一晟氏

「薬学・製薬分野に特化した軽量な基盤モデルの開発と、特定ドメインのデータセットおよび評価ベンチマークの作成を目指しています。また、本事業で得られた成果を可能な範囲で公開し、国内製薬会社を中心にAIソリューションやアプリ開発等で社会実装を進めていきたいと考えています」(助田氏)

SyntheticGestalt株式会社 島田 幸輝氏

「本事業では、AI創薬の課題を解決するため、分子情報に特化した世界最大規模の基盤モデル『SG4D10B』を開発します。最大100億件の化合物の立体構造情報を学習し、AI創薬分野の標準ベンチマークで上位3位に入ることを目指しています。本事業では薬効・薬物動態予測能力の検証や、分子基盤モデルの大型・小型モデルの公開を実施していきます」(島田氏)

株式会社ヒューマノーム研究所 瀬々 潤氏

「創薬の成功率を向上させるため、3億パラメーター規模の遺伝子発現量のデータを活用したAI基盤モデルの開発を進めてまいります。細胞の状態空間を詰め込んだ基盤モデル『Cell Scribe』を開発することで、ドラッグリポジショニングや安全性の検証、個別化医療の推進等を目指しており、皆様とも議論を深めたいと思っています」(瀬々氏)

株式会社オルツ 人見 雄太氏

「個人に最適化された『パーソナルAI』の研究開発を進めています。リアルタイムで適切な応答をするためには高いRAG性能が求められるため、本事業ではGPT-4o相当の回答精度を持つ70BパラメーターサイズのLLMの構築と、指示データに基づく事前学習に向けたデータ構築に取り組み、労働力の補完に貢献できるパーソナルAIの実現を目指します」(人見氏)

AI inside株式会社 渡久地 択氏

「これまで、AI-OCRを用いた文字認識やLLMの開発を通じて、企業が保有するアナログデータのデジタル化を推進してきました。本事業では、学習データの質を向上させたSLMを低コストに量産するため、信頼度を評価・自動化するAIモデルの構築と、インフラの拡充や分散処理による推論効率の向上を目指します」(渡久地氏)

株式会社リコー 長谷川 史裕氏

「企業の“知の結晶”である図表や画像を含むドキュメントから的確に情報を抽出できるマルチモーダルLLM(LMM)の開発を進めています。本事業では、企業内でプライベートLMMとして実現可能な規模のモデルサイズでありながら、現場で用いられるロングコンテクストの資料読解能力を確保しつつ、企業特有の仕様に柔軟にカスタマイズできる実用的なモデルの提供を、お客様のご協力を得ながら進めていきます。」(長谷川氏)

フューチャー株式会社 森下 睦氏

「日本語とソフトウェア開発に特化した8Bと70Bの基盤モデルの構築を進めています。ソフトウェア開発全体をカバーするため、詳細設計や単体テスト等のタスクにも対応できるモデルを構築し、インストラクションチューニングデータと評価用データセットも作成します。また、プログラミング教育等をサポートするAIの開発も目指しています」(森下氏)

カラクリ株式会社 中山 智文氏

「ハルシネーションを抑えつつ、日本語によるカスタマーサポートに特化した高精度なAIエージェントの構築を目指しています。また、サポート業務での実務的な作業やツール操作をサポートする学習データセットや評価ベンチマークを作成し、カスタマーサービス業界全体のAI実装を加速させることを目標としています」(中山氏)

株式会社データグリッド 斎藤 優氏

「ユーザーの意図に沿って動画や画像の特定部分に対する選択的編集能力を備えたVision系基盤モデルの開発に取り組んでいます。主に製造業や広告業界等での利用を想定しており、生成AIの悪用防止としてディープフェイク検知AIの開発も同時に進め、安全で効果的な生成AIの利活用を促進していきます」(斎藤氏)

株式会社AIdeaLab 冨平 準喜氏

「アニメ業界の人材不足や長時間労働の課題を解決するため、日本語に特化した世界初のアニメ動画生成AI基盤モデルと動画生成AIプラットフォームの開発を進めていきます。また、一般的なGPUでも扱える軽量モデルのオープンソース化等、アニメ生成プラットフォームを広く活用できる環境を整えることを目指しています」(冨平氏)

AiHUB株式会社 田中 裕氏

「日本のアニメ産業活性化を目指し、アニメ制作に特化した基盤モデルと制作ツールの開発を目指します。アニメ制作の複雑なワークフローに対し、AIが効率的に連携動作し環境を整える支援をします。また、制作会社向けに、データを管理・自動学習するアニメ制作生成AIサービスを提供し、業界全体で活用できるようモデルの公開を予定しています」(田中氏)

ストックマーク株式会社 有馬 幸介氏

「第2期では、企業内で使われる複雑なビジネス資料に対応できるように、ハルシネーションを抑えた100Bパラメーター規模のマルチモーダルドキュメント読解基盤モデルの開発を目指します。このモデルは、テキストや画像に加え、エクセル等のXMLレイアウトも読み取る能力を持ち、製造業や営業提案資料等の読解性能を強化します」(有馬氏)

NABLAS株式会社 新立 拓也氏

「日本の流行食に特化した最大700億パラメーター規模の大規模視覚言語モデルを開発し、日本の食品・小売流通に関わる産業の大幅な効率化を狙います。将来的には数千枚の画像や数時間単位の動画を入力できるモデルの実用化も視野に入れています」(新立氏)

国立研究開発法人海洋研究開発機構 松岡 大祐氏

「地域ごとの気候変動対策を提案できる、日本語や視覚言語に対応した特化型生成AI基盤モデルの開発を目指しています。気象や気候学のデータ、災害情報等を学習させることで、将来の災害リスク予測や防災計画、気候に関する企業戦略を提案します。将来的には地球科学全般に特化した生成AIモデルの開発を目指しています」(松岡氏)

株式会社ユビタス 中坪 知幸氏 & 株式会社Deepreneur 廣田 雄輝氏

「観光産業に向けて、日中韓、東アジア言語に強いLLM基盤モデルの開発を行います。開発したモデルとデータセットの一部をオープンソースとして公開し、サードパーティーのアプリ開発の促進を目指します。また、観光向けアプリケーションを自治体や事業者向けに提供し、観光課題の解決や持続可能な観光産業の発展に貢献してまいります」(中坪氏&廣田氏)

株式会社Kotoba Technologies Japan 小島 熙之氏

「音声基盤モデルの開発を第1期から継続し、リアルタイムで流暢な日本語音声を生成できるAIを半年後にAPIで提供開始する予定です。また、第2期では逐次通訳音声から同時通訳音声への進化をテーマにして開発を進め、将来的には日本およびアジア地域における音声技術基盤を確立することを目標としています」(小島氏)

社会課題解決に向けたデータ・生成AIの利活用に係る実証調査事業がスタート

計算資源の提供によるAI開発支援に加え、データとAIの利活用に向けた新たな取り組みを開始しました。

生成AI開発加速に向けた新たなデータセットの構築に関する調査には、ソフトバンク株式会社が主として採択されました。また、データ・生成AIの利活用に係る先進事例に関する調査にはセーフィー株式会社、個別業界全体における生成AIの利活用に係る先進事例の調査には株式会社オー・エル・エム・デジタルが採択されています。

データセット構築に関する調査事業者一覧

ソフトバンク株式会社 福地 健之氏

「今回のデータ実証事業では、生成AI開発を加速するため、日本語に特化した自然な会話のデータセットの構築を行います。コールセンターのシーンを設定し、約30,000人の調査参加者による多様な自然会話データを収集することで、日本語生成AIの品質向上や生産性向上を目指しております。1年の短期間でのチャレンジングな大規模調査でありますが、AI開発者のみならず一般企業にも活用いただける有用なデータ構築を目指します」(福地氏)

セーフィー株式会社 森本 数馬氏

「映像データを活用し、様々な業界の課題を解決するためのAIソリューションプラットフォームの開発を進めています。本事業では、約260,000台以上のカメラで収集された膨大な映像データを活用し、データホルダーとAI開発者の間で多対多の連携を実現し、AIソリューションを効率的に提供します。プライバシー保護を徹底しつつ、日本の経済活性化に貢献していきます」(森本氏)

株式会社オー・エル・エム・デジタル 四倉 達夫氏

「アニメ制作会社のR&D部門として、生成AIの利活用をテーマにした調査を進めます。AIをクリエイターのツールやサポーターとして活用することで、アニメ制作ワークフローの効率化と品質向上を目指します。このプロジェクトでは、原画やキャラクター描画の工程にAIをどのように取り入れられるかを実証実験します。複数のアニメ会社や研究機関との産学官連携による『ALL JAPAN』体制で取り組むことで、日本のアニメ業界の持続的な発展に貢献していきます」(四倉氏)

GENIAC採択事業者のプレゼンテーションののち、本事業の運営サポートを務めるボストン コンサルティング グループ(BCG) 中川 正洋氏より、GENIACコミュニティの目的とこれまでの取り組みについて説明を行いました。

ボストン コンサルティング グループ(BCG) 中川 正洋氏

「GENIACコミュニティは、知見の共有、パートナーシップの構築、ルールメイキングを目的に設立され、開発者間のノウハウ共有や利活用企業とのマッチングイベントを通じて、社会実装に向けた取り組みを推進します」(中川氏)

また、キックオフイベントの締めくくりにあたり、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構) 高田 和幸氏より、NEDOが有する多様な支援制度を用いて採択者の取組を更に加速させていくことについての発言がありました。

NEDO 高田 和幸氏

「生成AIが日本の産業や社会にどのように組み込まれるかが今後の焦点であり、特にモビリティ、ヘルスケア、デジタルコンテンツ等の分野において重要な役割を果たします。採択された事業者の皆さんには、NEDOの各種支援プログラムも活用いただきながら、グローバルでの競争力を高めていただくことを期待します」(高田氏)

高田氏の講演の挨拶の後、参加者の記念撮影に続き、交流会が開かれ、和やかな雰囲気の中、各事業者や関係者が話に花を咲かせていました。

GENIAC 採択事業者のキックオフイベントでは、第1部の事業者による事業計画プレゼンテーションと第2部の交流会を開催しました。今後のGENIACの活動にご注目ください。

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最終更新日:2024年11月20日