バーチャル工場見学の実施

ユーアイ精機株式会社(http://www.yuai-seiki.co.jp/)は、愛知県尾張旭市で、自動車や産業機械などの部品の試作加工や金型製作、マグネシウム合金の開発などの事業を担われている会社です。同社は、昨今のコロナ渦で実施できなくなった職場体験学習と工場見学をVRやスマートグラスを活用して、バーチャル授業、バーチャル工場見学という形で実施しております。このバーチャル授業・工場見学の取組を紹介します。

ユーアイ精機株式会社のバーチャル授業・工場見学に関する取組

1.バーチャルの世界で、授業や工場見学を実施することになったきっかけ

愛知県が主催した「あいちマッチング」で出会ったスタートアップ企業からVRやスマートグラスの活用方法について教えて貰う機会があり、新型コロナウイルスの影響で学校の職場体験学習が実施できなくなっていく中、これを利用して何かすることができないかと考えていました。
その時、NPO法人アスクネット(https://asknet.org/)から授業実施の相談があり、その機会にVRを活用した授業を提案したところ、学校側とのニーズも一致し、授業を行うことになりました。
2020年10月に愛知県豊橋市の東陽中学校に行った授業が最初の取り組みになります。
 

2.主な授業や工場見学の内容

①スマートグラスを使用した製作体験

メガネのように装着し、レンズにデジタル情報を重ねて表示することができるスマートグラスを利用した製作体験学習では、折り紙で鶴を折る動画を見ながら、折り鶴を折るというような体験を実施しています。
 

②バーチャル工場見学

VRを活用し、工場内の光景を始め、金型が製作されるまでのレーザーやプレスなどの加工工程をバーチャルの世界で見学することができます。製造業というと薄暗い工場の中で、淡々と同じ流れ作業をしているイメージをされるかもしれませんが、実際には、CADソフトやシュミレーションなど、様々なところでIT技術が使われており、近年ではさらにIotの重要度が増しています。このような、ものづくり現場の実態を直接工場に行かなくても、仮想現実として見学することが可能な体験を実施しています。
工業見学の動画は、会社ホームページからも見ることができます。
http://www.yuai-seiki.co.jp/VR_Factory.html​

 
 

③これまで実施してきた学校

愛知県内の中学校に実施してきました。
2020年10月 豊橋市立東陽中学校    2年生4クラス
2021年12月 一宮市立尾西第三中学校  2年生5クラス
2021年12月 瀬戸市立瀬戸特別支援学校 24名
2022年 1月 名古屋市立高針台中学校  2年生25名

   
・名古屋市立高針台中学校       ・瀬戸市立瀬戸特別支援学校      ・一宮市立尾西第三中学校
 

④学校や生徒たちの反応

ほとんどの生徒たちがバーチャルでの授業が初めての体験だったこともあり、とても楽しんでいただきました。学校からも実際に工場に行かなくても製造業の良さが伝わったとか、生徒たち将来の仕事選びに重要な体験ができたと好評価でした。また、スマートグラスやVRは利用していませんが、コイン(10円玉)磨きを製作体験として行いましたが、評判が良かったそうです。

 
①クリーナーなどの研磨剤を馴染ませる。       ②研磨剤を擦りつけて表面の汚れを取る


③汚れを綺麗に拭き取り、磨くとピカピカに!
 

3.本取組に関する意義や期待

・ユーアイ精機株式会社 水野代表取締役社長
学校への授業に関しては、「製造業に関心を持っていもらいたい」それしか考えていないです。私が危機感を持っているのが、子供たちが製造業に関心が薄く、先生もあまり製造業を良く知らないという現実です。加えて、製造業は日常生活で販売業の様にユーザーとして触れる機会もないため、製造業を職業選択で考えてもらえないという状況にあります。この現状を少しでも変えたくて、活動しています。会社としては、技能伝承をどのように進めるかの一つの方法として続けていきます。バーチャルの良いところは、1年に1度しかない事を疑似体験を何度も出来る事と考えています。

4.今後の取り組み

 学校への体験学習の他にも、従業員の育成のためにVRやスマートグラスを活かした活動を計画しています。危険が伴うような現場では、実際に近くまでに行くことが難しいため、そのような現場従業員向けのバーチャルコンテンツの制作も考えています。実際に、若手社員やインターンシップで来た学生の様子を見ていると、文字よりも映像の情報の方が受け入れやすいと感じられたため、特にVRは若手職員への技術継承のためのツールとして活用することが期待しています。

5.最後に

 様々なデジタルツールが普及している中、同社のように生徒たちがものづくりに触れる機会を創出するのは、製造業の面白さやものづくりの重要性をアピールすることができる重要な機会になるだけでなく、今後、従業員の教育や技術継承への活用も可能となれば、業務効率・生産性の向上にも期待されます。
 今後も学校側から依頼があれば、本取組を継続していきたいとの話も伺っており、既に3校の小・中学校から依頼があり、年内に授業を実施するとことが決まっているそうです。
 同社の今後の活動に期待しています。

最終更新日:2022年6月22日