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「SXSW EDU 2023」レポート Vol.3
SHOWCASE株式会社~米国の美術館とも関係性を深められ手応えを実感~

2023年3月6日~9日

教育領域に特化した世界最大級のクリエイティブ・カンファレンスイベント「SXSW EDU 2023」が、2023年3月6日~9日、アメリカ・テキサス州オースティンで開催されました。日本からは採択事業者5社が参加。今回は、SHOWCASE株式会社のセッションレポートや参加した感想を紹介します。

参加事業者

SHOWCASE株式会社

貝塚 高士氏代表取締役

【参加目的】

米国の最新トレンドを知ることで課題仮説を検証

弊社では、遊びが学びに繋がる「FUN+」というサービスをワークショップ形式で展開しています。今後、国内外での展開を進める上で、弊社のサービスの教育的価値をどう理解して頂くかが課題と考えています。国内では非認知能力(※1)が大事であると認識しつつも、認知能力が主体であり、非認知学習の取り組みは現場の先生に任せている現状です。しかし米国をはじめとする海外では、文化的な違いはあるものの、非認知学習への取り組みが深いと考えられます。
そのため、「SXSW EDU2023」では、STEAM教育(※2)・非認知学習(能力)に関するセッション、ミートアップに参加し、STEAM教育・非認知学習に関心の強い、また実行している人材と意見交換をすることで、日本との違いを確認するとともに、どのように日本の教育市場に合わせていけるかを検証していきたいと思い、参加しました。

  • ※1 非認知能力:認知能力以外の心の力を総称したものを指す。社会情動的スキル(「目標を達成する力、他者と協働する力、情動を制御する力」)とも呼ばれる。
  • ※2 STEAM教育:Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の5つの単語の頭文字を組み合わせた教育概念。知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な学びのこと。

【SXSW EDU2023レポート】

教育現場の状況や市場を肌で感じる

会場はオースティン会議センターと、隣接しているヒルトンホテル。想像をしていたよりもコンパクトに設計されていて、アプリでの地図案内もあったので移動は容易でした。メンタリングセッション(※3)は人気のため入場制限があり、予約をしてから他のセッションのスケジュールを組む必要があります。

商談などビジネスに繋がる機会は多々ありましたが、「人との出会いや学びの場である」という印象が強かったです。教育に関係する幅広いステークホルダーが集まるイベントなので、主に米国の教育現場の状況や市場を肌で感じることができました。

  • ※3 メンタリングセッション:教育関係の専門家(高等教育・ビジネス・SEL等)と個別にディスカッションをしたり、助言を得ることができる。各12分スロットで、事前に希望するメンターに対して公式アプリを通じて予約をする必要がある。

「SXSW EDU」参加の登録会場

米国でのワークショップ開催の糸口も

当初の参加目的であった弊社のサービスに関する課題仮説の検証については、以下の2つの検証ができました。まず1つ目、「子どもの作品の記録を通して学びに繋げるサービスとしての課題仮説」は、調査した限りでは、米国では作品を記録するという行為自体には重きを置いていないことが判明。ただし、物事を可視化して、コミュニケーションを促すツールとしての観点からは一定の評価をいただけました。

2つ目は「美術館でのワークショップを主軸とした海外展開への可能性」について。こちらは、美術館の方とディスカッションを行い、弊社のプロダクトが美術館(アート領域)との親和性が高いことが分かりました。さらに成果として、美術館の方との今後のディスカッションを約束し、米国の美術館での弊社プロダクトを使用したワークショップの開催に向けた一歩を踏み出すことができました。

また、STEAM教育・非認知能力についての日本市場との違いと弊社サービスの導入の検討については、日本ではプログラミング以外のSTEAM市場がまだ成熟していないのに対し、米国では、非認知能力という言葉自体は一般的ではないものの、STEM・非認知能力開発市場に対する感度は高く、プログラミング以外のコンテンツも進んでいることが明らかになりました。サービス導入の推進にはエビデンスを求められることも多く、すでに実績のあるコンテンツを活用しながら進めることが導入への道へと繋がるという点からも可能性を感じました。

セッション後には、講演者とディスカッションを行った

メタバースとSTEMとの関連性を認識

米国の教育動向の1つとしてメタバース(※4)を活用した教育があります。今回の「SXSW EDU2023」でも、オンラインゲームを活用した事例の紹介やワークショップがありました。STEMとの関連性も強いという印象です。今後、既存のゲーム製品が教育分野に拡張する動きも感じられ、教育市場に大きなインパクトを与えるのではないかと感じました。

メタバースという切り口は、国内ではまだ事例も少ないため、導入には時間がかかりそうですが、海外展開を考えている事業者にとっては、大きな可能性がある市場になりそうです。

  • ※4 メタバース:インターネット上の仮想空間であり、利用者はアバターを操作して他者と交流するほか、仮想空間上での商品購入などの試験的なサービスも行われている。

事前の下調べが現地で大いに役立つ

事前準備段階で全てのセッションを確認し、参加したいセッション等のリストを作りました。また、事前にスケジュールを組み、講演者の背景も下調べしておいたのですが、これはセッション内容の把握、そしてセッション後のディスカッションに非常に役立ちました。次年度以降は、海外展開を視野に入れ、商談をメインとした展示を検討したいと考えています。今回、実際にディスカッションした現地の美術館のプログラム責任者や教育関係者との繋がりを作ることができたため、これからに向けた可能性を感じることができました。会場で出会う方々としっかり繋がりを作るためにも、今後は英会話スキルをさらに向上させていきたいと思います。

セッション後は盛んに質疑応答が行われた

参加セッションの詳細を記載しているレポートはこちら

  • ※ なお、事前に作成した計画とは異なるセッションに参加している場合もあります。

参加事業者

SHOWCASE株式会社

■ 企業概要
企業名/SHOWCASE株式会社
所在地/神奈川県横浜市 設立年/2020年 社員数/1名
HP https://showcase-service.com/

■ 事業概要
子どもの図画工作の作品にフォーカスした成長記録サービス「FUN+」を展開。動画で360度撮影することで立体CGとして保存したり、子どもが好きとされるカードに落とし込むなど、子どもが創作する作品に楽しさを加えることで、従来の写真を撮って記録するだけのサービスとは一線を画す。子どもの内面的成長の記録だけでなく、見返すための楽しさを加えることで遊びという認識が子どもたちに芽生えるほか、記録・活動ログにより子どもの自己認知力、自己肯定感を高めることに寄与。海外に比べて自己肯定感の低い日本の社会課題解決のために、「生きる力」の向上に貢献する。

最終更新日:2023年3月30日