特許出願技術動向調査を取りまとめました

2020年4月30日

特許庁は、将来の市場創出・拡大が見込める最先端分野である「スポーツ関連技術」、「宇宙航行体」、「マテリアルズ・インフォマティクス」及び「AIを用いた画像処理」などの10の技術テーマについて、特許情報等を調査・分析した報告書を取りまとめました。

1.特許出願技術動向調査とは

「特許出願技術動向調査」は、世界中の特許情報を、論文情報等と併せて分析して各国や各企業の研究開発動向を把握し、企業・大学・研究機関等が開発戦略・知財戦略を策定するために実施しています。調査においては、有識者からなる委員会で助言等を踏まえ、日本の技術的な強み等を分析し、日本の企業・大学・研究機関等が目指すべき研究開発の方向性を示しています。

(参考図)調査のイメージ

2.調査結果の概要

令和元年度は、以下の10の技術テーマを対象とした特許出願技術動向調査を実施しました。

これらのうち、「スポーツ関連技術」、「宇宙航行体」、「マテリアルズ・インフォマティクス」及び「AIを用いた画像処理」について、以下紹介します。

スポーツ関連技術

スポーツ関連技術として、(1)スポーツや運動に関わる行動や状況に関するデータをセンサによって取得する「センシング」の技術、(2)センシングデータや、スポーツ・運動をする人・みる人の行動履歴などのデータを分析・解析・処理する「解析」の技術、(3)スポーツをより楽しく見るための映像・音響の編集・生成などの「提示」の技術、を中心に調査を行いました。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会を控え、これを契機としてスポーツへの関わりを増やし、ICT 技術を活用したスポーツ産業を振興しようとする政策も採られています。その中で、VR・AR コンテンツや自由視点映像によるライブストリーミング観戦など、スポーツコンテンツを活用した市場拡大も大いに期待されています。特に、国内のスポーツICT市場は2018年の約898億円から急速に拡大し、2025年には9,703億円に成長すると予測されています。また、市場規模は、「する(スポーツを自ら楽しむ)」「みる(スポーツを観戦する)」「ささえる(スポーツ運営を支える)」のうち、「みる」市場の規模が大きく伸びると予測されています。

(参考図)スポーツICT市場規模予測

(出典:シード・プランニング「2018年版スポーツICT 活用の現状と将来展望」(2018年9月))

この「みる」市場に関連した、映像・音響の生成・編集などの「提示」の技術に関し、中国籍・韓国籍出願人とその他の国籍の出願人とを比較した下記の左図のとおり、その他の国籍の出願人の2014年までの特許出願件数(ファミリー件数)の増加率と、2014年以降の特許出願件数の増加率を技術区分ごとにプロットすると、「VR・AR観戦」などのVR・AR技術が成長分野の最も近くに位置しており(2014年以降に出願が増加した技術ほど上部に位置し、成長分野といえます。)、中国籍・韓国籍出願人による技術の特徴を、日本国籍出願人と比較した右図でも、「VR・ARトレーニング」「VR・ARスポーツ」に対して、中国籍・韓国籍出願人がより注力していることがわかります。また、「提示」の技術の中でも、「映像編集」「音響生成」については、日本国籍出願人の出願による技術蓄積が多い状況です。

これらのことから、市場規模が大きく今後5Gの活用が見込まれる「みる」市場に向けて、「VR・AR観戦」などの観戦体験の向上に資する技術の開発や、日本に優位性があると考えられる「映像編集」「音響生成」などの高度な映像サービスのための技術の活用に注力すべきと考えられます。

(参考図)「提示」の技術における中国籍・韓国籍出願人以外の2014年までの特許出願件数年平均増加率と2014年以降の年平均増加率との比較

(参考図)「提示」の技術における日本国籍出願人の特許出願件数比率と中国籍・韓国籍出願人の特許出願件数年平均増加率との比較)

宇宙航行体

宇宙航行体(ロケット、ロケットエンジン、人工衛星)分野では、リバースエンジニアリングや権利行使が困難なため、特許権を取得するために出願をして技術を公開するよりは、出願をせずに技術を秘匿する傾向がありました。

しかしながら、近年は、ベンチャー企業や他分野からの参入企業を含む民間企業主体の技術開発が盛んになってきており、また、複数の民間企業が関係する製造委託・共同開発や、資金獲得のための投資家への技術説明も一般的になってきていることから、他者に開示が必要な技術については出願する等、知財管理の重要性が増しています。

調査の結果、特に海外では、国の機関のみならずベンチャー企業を含む民間企業による特許出願件数(ファミリー件数)が増加傾向にあり、また、海外の出願人による日本への出願件数も増えていることがわかりました。このことは、日本の企業、団体も、従来の「技術を公開するよりは、出願をせずに技術を秘匿する」という知財管理・知財戦略について再検討し、必要に応じて見直していくことが重要であることを示唆しています。

(参考図)出願人国籍別、出願先国別の特許出願件数

(参考図)出願人国籍別の特許出願件数推移

マテリアルズ・インフォマティクス

マテリアルズ・インフォマティクス(以下「MI」といいます。)は、データ科学を用い、効率的に材料開発を行う手法です。従来の試行錯誤を中心とした材料開発手法に取り入れることで、材料開発の時間及びコストの大幅な低減が期待されることから、近年、化学メーカーを中心として、積極的に取り組まれています。

MIの特許出願件数(ファミリー件数)は全体として近年増加しており、プロセスに関する技術において「管理」を目的とするものが最も多くなっています。実測データの取得が比較的容易な材料の製造プロセスにおいて、MIの社会実装が進みつつあることが分かります。製造プロセス×データ科学(プロセスインフォマティクス)は、今後、ますます重要になると考えられます。

(参考図)「プロセス」の技術区分別-特許出願件数推移


論文発表件数では、材料設計における条件最適化(記述子、パラメータ等)や、MIの本来の目的である低コスト化、効率化に関する論文が近年急増しており、研究が盛んになっていることがうかがえます。日本企業が強みとする機能性材料の優位性を保つためにも、これらのMI技術にも注目して、継続的に技術向上を図っていくことが重要であると考えられます。

(参考図)「材料設計」の技術区分別論文発表件数推移

AIを用いた画像処理

近年、画像処理の分野では、人工知能(Artificial Intelligence、以下「AI」といいます。)を用いることにより、人間を超える精度で画像認識ができるようになったともいわれています。AIを用いた画像処理により、これまで以上に新たな知識や価値が生み出され、様々な応用分野で問題を解決することが期待されます。 

AIを用いた画像処理について、外国籍出願人は、応用先が特定されていない特許出願件数(ファミリー件数)よりも、自動車分野向け、医療分野向けなど、応用先の産業が特定された特許出願件数を早い時期から増加させています。外国籍出願人は、応用先の産業特有の課題を解決するための研究開発を、早くから進めてきたと考えられます。一方、日本国籍出願人は、応用先が特定されていない特許出願件数と、応用先の産業が特定された特許出願件数とが、2016年までほぼ同水準で推移しています。

各産業における市場で優位に立つため、AIを用いた画像処理技術をそれぞれの産業に応用し、実用化を推し進めるための研究開発により注力するべきと考えられます。

(参考図)「特定産業」向けの特許出願件数と応用先が特定されていない特許出願件数との比較(国内外出願人別)

※応用先が特定されていない出願を「共通」としている。
※自国以外の国(地域)に対して行われる出願を対象としている。

3.他の取組

令和元年度は、特許出願技術動向調査の他に下記4つの調査を行い、その結果を下記関連リンクのページに公表しました。

公表日

2020年4月30日(木曜日)

関連資料

関連リンク

担当

特許庁総務部企画調査課長 小松
担当者:立花、小池、藤本

電話:03-3581-1101(内線2155)
03-3592-2910(直通)
03-3580-5741(FAX)

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