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タンパク質繊維の名称・定義に関する国際標準が発行されました
-革新的バイオ素材である人工構造タンパク質が国際規格で明確に定義され、タンパク質成分含有量の基準値も明記(ISO2076)-
2021年12月3日
本規格の発行により、人工構造タンパク質素材の認知性が高まるとともに、粗悪品排除による社会的信用性の向上、用途拡大や国内外市場への早期展開が期待されます。
1.背景・目的
現在、汎用的に使用されている繊維の多くは石油等の枯渇資源(ナイロン、ポリエステルなど)や動物(ウール、カシミヤなど)に由来しています。しかし、石油由来の繊維は、環境中へのマイクロプラスチックの放出が問題視されています。また、動物由来の繊維は、カシミヤヤギなどの過放牧による砂漠化や、家畜が地球温暖化の原因となる温室効果ガスの発生源になることなどの環境破壊の進行への懸念があります。そのため、従来の枯渇資源や動物に依存しない素材の開発・実用化が求められています。
そのような中、人工構造タンパク質は、植物由来の糖を主原料に微生物発酵で生産することから、最終的に分解されて自然界に還る能力に優れているため、環境への負荷が低い素材として関心を集めています。また、タンパク質は、20種類のアミノ酸の組み合わせでできており、用途に応じてその配列をデザインすることで、特性の違う様々な素材への応用もできることから、循環社会の実現に貢献する次世代の革新的バイオ素材として注目されています。
この人工構造タンパク質を用いた繊維について、日本企業は、遺伝子配列の組み立てから、発酵、精製、紡糸、加工に至るまで高度な技術水準を有しており、世界の技術開発をリードしてきました。
表生地に人工構造タンパク質素材を使った世界初のアウトドアジャケット。
本製品の研究開発は、ImPACTの一環として行われました。(提供:Spiber株式会社)
一方で、従来の国際規格や、各国・地域における分類・定義や試験方法などにおいて、タンパク質繊維(Protein fibres)は天然由来のタンパク質のみに限定され、人工構造タンパク質については、明記されていませんでした。さらに、海外の市場では、タンパク質がごく少量で大部分が石油由来の材料で構成される繊維であっても、タンパク質繊維として販売されている例がみられ、従来の国際規格によるタンパク質繊維の定義では、そのような繊維がタンパク質繊維として認定される可能性が残されていたため、取引上の誤認や消費者の混乱を招く恐れがありました。
2.規格の概要
(1)タンパク質繊維に定義される素材の由来
(2)繊維中のタンパク質成分の含有量
3.期待される効果
今回の国際規格改定によって、次世代素材である人工構造タンパク質繊維が国際標準として認められたことにより、素材としての認知性や社会的信用性が向上し、粗悪品との差別化が図られます。これを通じて、日本の製造する高品質の人工構造タンパク質繊維がグローバル市場の中で用途拡大・早期普及することが期待されます。
(提供:Spiber株式会社)
革新的な科学技術イノベーションの創出を目指し、ハイリスク・ハイインパクトな挑戦的研究開発を推進することを目的として、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導して創設されたプログラム。
*2 正式名称 ISO2076 Textiles — Man-made fibres — Generic names
日本語訳 ISO2076 繊維 - 化学繊維 - 一般名称
*3今回発行された国際標準は、経済産業省の委託事業である「戦略的国際標準化加速事業:政府戦略分野に係る国際標準開発活動」の成果によるものです。
担当
人工構造タンパク質について
商務・サービスグループ 生物化学産業課長 佐伯
担当者:保田、森田、髙橋、和田電話:03-3501-8625(直通)
03-3501-0197(FAX)国際標準について
産業技術環境局 国際標準課長 渡辺
担当者:大山、小松、上原電話:03-3501-9277(直通)
03-3580-8625(FAX)