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広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果を公表します
2026年6月29日
同時発表:公正取引委員会
中小企業庁と公正取引委員会は、令和8年2月以降、広告業者と広告制作業者との間の取引において行われている中小受託取引に関する取適法違反被疑行為について集中的に調査を行い、広告業者に対して、71件の指導を行うとともに、中小企業庁において取引Gメンによるヒアリングを実施しました。
1.集中調査の実施等について
中小企業庁及び公正取引委員会は、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(昭和31年法律第120号。以下「取適法」という。)に違反する疑いのある行為を行っている事業者に対して、連携して調査を行い、違反が認められた場合には、勧告、公正取引委員会に対する措置請求、指導等の措置を迅速かつ厳正に行っています。
令和7年以降、中小企業庁及び公正取引委員会は、取適法の執行を通じた取引の適正化の取組を更に効果的なものとするとともに、特定の業種・業界におけるサプライチェーン全体での取引適正化を推進するため、特定の業種・業界における取適法違反被疑行為について集中的に調査を行い、取適法に違反し、又は違反するおそれのある行為が認められた事業者に対して、迅速に指導等を行っています(過去に行った集中調査の結果については関連資料をご覧ください。)。
令和8年2月以降、中小企業庁及び公正取引委員会は、発注側である広告業者(委託事業者)と受注側である広告制作業者(中小受託事業者)との間で行われている中小受託取引(新聞広告、雑誌広告、テレビ広告、インターネット広告、交通広告、屋外広告等の制作及び広告に付随するイベントの企画運営に係る取引を含む。)に関する取適法違反被疑行為について集中的に調査を行い、広告業者に対して、71件の指導を行いました(下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律(令和7年法律第41号)附則第2条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる場合を含む。)。指導事例の概要は関連資料をご覧ください。
また、中小企業庁では全国に取引Gメンを配置して中小企業に対しヒアリングを行っています。広告業者との取引に関して、中小企業である広告制作業者からのヒアリングで聴取した主な意見は関連資料をご覧ください。
2.主な違反行為の傾向等
(1)広告業者及び広告制作業者間の情報成果物作成委託等について
広告業者及び広告制作業者間における情報成果物作成委託等の取引の流れの一例は次のとおりです。情報成果物作成委託等は広告業者と広告制作業者の間の取引であり、広告主は直接の契約当事者ではないことを前提としています。
(注)本件調査では、広告制作業者を受注側と定義していますが、広告制作業者が、他の広告制作業者に発注を行う場合もあり、その広告制作業者間の取引も本件調査の対象としています。
(2)発注内容等の不明示・明示不備について
ア 委託事業者は、中小受託事業者に対し製造委託等をした場合は、書面又は電磁的方法により直ちに発注内容等を明示する義務がありますが、広告業界においては口頭発注が商慣習となっていることを理由に、広告業者が広告制作業者に対し、発注時に発注内容等を明示していなかった事例が複数ありました。
また、発注時ではなく、成果物の受領時等に事後的に発注内容等を明示していた事例が複数ありました。
なお、事後的に発注内容等を明示していた事例の中には、発注時に直ちに発注内容等を明示していなかったことを隠すため、あたかも発注時に明示していたかのように遡って発注日を記載していた事例がありました。
イ 広告の制作では、制作過程において広告業者と広告制作業者との間で修正・校正を繰り返していくことで制作物を具体化させていくため、発注時に成果物の具体的な内容を決定できないことが多いです。このような場合に、発注から受領までの間に広告主の意向等で給付内容が変更され、広告業者が広告制作業者に制作物の修正・校正を複数回求めることを前提として発注しているにもかかわらず、発注時に給付内容を変更する条件等を給付内容として明示していなかった事例が複数ありました。
ウ 広告の制作過程で広告制作業者に知的財産権が発生する場合に、当該知的財産権を広告業者に譲渡・許諾させることを含めて発注しているにもかかわらず、発注時にその旨を給付内容として明示していなかった事例がありました。
(3)支払遅延について
ア 月単位の締切制度を採用して代金を支払っている広告業者が、「毎月末日納品締切、翌々月末日支払」等のように、広告制作業者の給付を受領した日から起算して60日を超える可能性がある支払制度を採用している事例が複数ありました。
イ 広告制作業者からの請求書の提出が遅れたことを理由に、代金を支払期日までに支払っていなかった事例が複数ありました。
(4)不当な給付内容の変更について
ア 広告業者が、広告主の意向等で発注後に給付内容を変更することが前提となっていることを広告制作業者に伝えずに発注していたにもかかわらず、給付内容を変更する条件等を発注時に給付内容として明示せず、成果物の受領までの間に、広告制作業者に対し無償で複数回にわたり、広告制作業者に責任のない修正・校正を行わせていた事例が複数ありました。
イ 広告主又は広告業者の都合で発注を取り消したにもかかわらず、当該発注取消しまでに広告制作業者が要した費用を支払っていなかった事例がありました。
(5)不当な経済上の利益の提供要請について
ウ 広告業者が、コンペティション方式で受注者を決定する広告制作業務の企画に応募する際に、かねてから中小受託取引をしている中小受託事業者である広告制作業者に対し、自己のために無償で試作品を制作させた事例や、失注したこと等を理由に制作させた試作品の費用を支払っていなかった事例がありました。
エ 広告業者が、広告制作業者に制作を委託した成果物等を、取引が終了した後も、自己のために広告制作業者に無償で保管させていた事例がありました。
(6)取適法等で追加された禁止行為について
ア 手形払等について
取適法では、手形を交付することによって代金を支払うこと及び手形以外の支払手段であって支払期日までに代金に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを代金の支払手段として使用することは「支払遅延」として禁止されています。しかしながら、令和8年1月以降も、広告業者が、代金の支払に際して手形を広告制作業者に交付していた事例や、広告制作業者に対する代金の支払手段を手形から電子記録債権に切り替えたものの、支払期日に代金に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものとなっていた事例がありました。
イ 振込手数料の負担について
取適法の施行に伴い、委託事業者が、代金の支払に際し、銀行口座へ振り込む際の手数料を中小受託事業者に負担させることは、中小受託事業者との合意の有無にかかわらず、「減額」として禁止されています。しかしながら、令和8年1月以降も、広告業者が銀行口座へ振り込む際の手数料を広告制作業者に負担させていた事例がありました。
3.主な違反行為に対する指導の内容
(1)発注内容等の不明示・明示不備について
ア 広告制作業者に対し、発注時に発注内容等を明示していなかった広告業者に対しては、発注時に直ちに発注内容等を明示するよう指導を行いました。
なお、広告制作業者に対し、発注時には発注内容等を明示せず、成果物の受領時等に事後的に明示していたにもかかわらず、それを隠すため、あたかも発注時に明示していたかのように遡って発注日を記載していた広告業者に対しては、発注日を遡及して明示したとしても、発注時に直ちに発注内容等を明示していない以上、取適法違反となる旨指導を行いました。
イ 広告制作業者に対し、発注時に発注内容等を明示していても、発注から受領までの間に給付内容が変更され、広告制作業者に対して制作物の修正・校正を求めることを前提として発注している場合は、給付内容を変更する条件等を給付内容として明示するよう指導を行いました。
ウ 広告制作業者に対し、発注時に給付を受領する場所、知的財産権の譲渡・許諾などを明示していなかった広告業者に対しては、発注時に全ての明示すべき事項を適切に明示するよう指導を行いました。
(2)支払遅延について
ア 代金の支払が広告制作業者の給付を受領した日から起算して60日を超える可能性がある支払制度を採用していた広告業者に対しては、給付を受領した日から起算して60日以内に代金を支払うこととなる支払制度に見直しを行うよう指導を行いました。
イ 広告制作業者からの請求書の提出が遅れたことを理由に、代金を支払期日までに支払っていなかった広告業者に対しては、広告制作業者からの請求書の提出が遅れた場合であっても、取適法では、委託事業者は、中小受託事業者からの請求書の提出の有無にかかわらず、給付を受領した日から起算して60日以内で支払期日を定めて、支払期日までに代金を支払う必要があるため、当該支払期日までに代金の全額を支払うよう指導を行いました。
(3)不当な給付内容の変更について
ア 広告主の意向等で、発注後に給付内容を変更することが前提となっていることを広告制作業者に伝えずに発注していたにもかかわらず、給付内容を変更する条件等を給付内容として明示せず、成果物の受領までの間に、無償で複数回にわたり、広告制作業者に責任のない修正・校正を行わせていた広告業者に対しては、給付内容の変更のために広告制作業者が要した費用を支払うように指導を行いました。
イ 広告主又は広告業者の都合で発注を取り消したにもかかわらず、当該発注取消しまでに広告制作業者が要した費用を支払っていなかった広告業者に対しては、広告主又は広告業者の都合で発注を取り消した場合であっても、発注が取り消されるまでに広告制作業者が要した費用等を支払わないことは取適法上問題となるため、広告業者に対し、当該費用等を広告制作業者に支払うよう指導を行いました。
(4)不当な経済上の利益の提供要請について
ア 広告業者が広告制作業者に広告の制作を委託し、広告制作業者から給付を受領した後、給付内容に含まれていなかったにもかかわらず、広告の制作過程で広告制作業者に発生した知的財産権を自己のために無償で譲渡・許諾させていた広告業者に対しては、成果物の知的財産権を譲渡・許諾させる場合であって、当該知的財産権を給付の一部とする場合には、当該知的財産権の対価を支払うよう指導を行いました。
イ 広告業者と広告制作業者との間で取り交わした基本契約書において、広告の制作過程で広告制作業者に発生した知的財産権を「無償で譲渡・許諾させる」旨記載し、広告制作業者の給付の内容には含まれない知的財産権を自己のために無償で提供させていた広告業者に対しては、委託事業者が、中小受託事業者に十分な対価を支払うことなく自己のために知的財産権を提供させることは不当な経済上の利益の提供要請に該当するとして、広告制作業者と協議の上で知的財産権に係る対価を定め、当該対価を支払うよう指導を行いました。
ウ 広告制作業者に対し、自己のために無償で試作品を制作させた又は制作させた試作品の費用を支払っていなかった広告業者に対しては、委託事業者が、自己のために無償で試作品を制作させ、又は制作させた試作品の費用を支払わないことにより、中小受託事業者の利益を不当に害することは問題となるため、試作品の制作に広告制作業者が要した費用を支払うよう指導を行いました。
エ 広告業者が広告制作業者に作成を委託した成果物等を、取引が終了した後も、自己のために広告制作業者に無償で保管させていた広告業者に対しては、広告制作業者と協議の上で当該保管費用を定め、支払うよう指導を行いました。
(5)取適法で追加された禁止行為等について
ア 手形払等について
取適法の施行に伴い、手形払が「支払遅延」として禁止されることになったため、手形で代金を支払っていた広告業者に対しては、直ちに取適法に違反することのない支払手段に改めるよう指導を行いました。また、支払手段を手形から電子記録債権に変更したが、手形の支払サイト(例えば、支払期日から起算して60日を満期とする。)を維持していたため、変更後も引き続き、支払期日に代金に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを使用していた広告業者に対しては、電子記録債権を使用する場合は、広告制作業者が支払期日までに代金に相当する額の金銭と引き換えられるものとするよう指導を行いました。
イ 振込手数料の負担について
代金を広告制作業者の銀行口座へ振り込む際の手数料を広告制作業者に負担させていた広告業者に対しては、広告制作業者との合意の有無にかかわらず、振込手数料を広告業者が負担するよう指導を行いました。
4.まとめ
本件調査において、広告業者の取適法に違反し、又は違反するおそれのある行為が複数明らかになり、それらの行為の中には、広告主を含む広告業界全体の商慣習に起因するものも多くみられました。
広告業界における取引の適正化を進めるためには、そのような商慣習をサプライチェーン全体で改善し、取適法に違反する行為の未然防止に取り組む必要があります。本件調査を踏まえ、広告業界において具体的に取り組んでいただきたい事項は以下のとおりです。
(1)発注内容等の明示について
本件調査では、発注時に直ちに発注内容等を明示していなかった事例、明示すべき事項に不備があった事例が多数みられました。発注時に発注内容等を明示することは、委託事業者の取適法上の義務であり、口頭発注による取引上の様々なトラブルを未然に防止する観点からも、中小受託取引の基礎となるものです。また、広告業界においては、広告の制作過程において、広告制作業者に知的財産権が発生することが多くあると思われる中、広告制作業者の成果物の知的財産権を譲渡・許諾させる場合であって、当該知的財産権を給付の一部とする場合には、その旨を発注時に明示することが重要です。
今回指導を受けた広告業者には、発注時に発注内容等を明示していない理由について、広告業界においては口頭発注が商慣習となっていることを挙げる事業者が複数みられましたが、口頭発注という業界の商慣習を早急に見直し、適切に発注内容等を明示することが求められます。
(2)広告制作過程における給付内容の変更について
広告業界の商慣習として、発注時に成果物の具体的な内容を決定できず、発注から受領までの間に給付内容が変更され、広告業者が広告制作業者に対し、複数回にわたって制作物の修正・校正を求めることを前提として発注している場合が多いです。広告制作業者に対して給付内容の変更に伴う制作物の修正・校正を求める場合は、以下の方法等により、広告制作業者が修正・校正に要した費用を支払う必要があります。
制作物の修正・校正に要する費用を代金に含めて発注する場合は、あらかじめ広告制作業者と協議をした上で、給付内容を変更する条件を定めるなど、修正・校正が生じることを踏まえて代金の額を定める。
なお、給付内容を変更する条件としては、例えば、「受領前の修正・校正回数は○回までを給付内容に含めるものとし、○回を超える場合は別途費用について協議する」とするなど、あらかじめ広告制作業者の制作物に一定回数の修正・校正が生じる可能性があることを踏まえて代金を決定することが望ましい。発注時に給付内容を変更する条件等を定めることが困難である場合には、制作過程において広告制作業者が制作物を修正・校正したことによって生じた追加費用について、広告制作業者と十分に協議した上で、別途支払う。
(3) 支払手段の適正化について
本件調査では、取適法の施行後、手形払が禁止されたことは認識していても、単に手形払を電子記録債権払に切り替えていれば問題ないと誤解している広告業者が複数みられました。取適法では、手形以外の支払手段であって支払期日までに代金に相当する額の金銭と引き換えることが困難であるものを代金の支払手段として使用することは禁止されているため、その点を認識していない広告業者においては、早急に支払手段の適正化に対応する必要があります。
(4) サプライチェーン全体での取組について
本件調査は、主に委託事業者である広告業者の行為を対象として行いましたが、サプライチェーン全体で取引の適正化を図るためには、広告業者と広告制作業者との間の取引のみでなく、広告業者に広告の制作等を依頼する広告主においても、取引の過程において、広告業者の取適法違反につながるおそれのある行為を行わないように十分注意することが求められます。例えば、広告業者と広告制作業者との間の中小受託取引において、広告制作業者に責任がないのに、発注後に広告主の意向等によって給付内容が変更され、広告制作業者に追加の作業が生じた事例が複数ありました。広告業界におけるサプライチェーン全体で取引の適正化を図るためには、広告主においても、予定にない給付内容の変更や発注取消しは広告業者と広告制作業者との間の取引において追加費用が生じ得ることを認識し、広告業者に対して追加費用を支払う等の対応を行うことが望ましいです。
中小企業庁及び公正取引委員会は、本件調査の結果を踏まえ、事業所管省庁とも連携し、本件調査の結果について周知徹底を図るとともに、引き続き、広告業界の取引適正化に向けて、取適法に違反し、又は違反するおそれのある行為については迅速かつ厳正に対処していくこととします。
関連資料
- 【概要】(令和8年6月29日)広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果について(PDF形式:570KB)

- 【本文】(令和8年6月29日)広告業における取適法違反被疑事件の集中調査の結果について(PDF形式:358KB)

担当
中小企業庁 事業環境部 取引課長 小高
担当者:久田、山田、三牧
電話:03-3501-1511(内線 5293~7)
メール:bzl-daikinhan★meti.go.jp
※[★]を[@]に置き換えてください。