第2章
  世界経済危機の中で我が国が進むべき針路
第1節
 世界経済危機と我が国経済の現状


1 戦後最長の景気回復とその特徴
 我が国は2002年1月から景気回復過程に入り、回復期間は2007年10月1まで戦後最長の69か月に及んだ。この戦後最長の景気回復過程において、我が国経済は従来の景気回復過程とは異なる特徴を示しており、この特徴が昨年秋以降の景気後退と密接に関係している。

1 内閣府「景気基準日付」による。なお、景気の山である2007年10月は暫定である。

 我が国経済の動向について、実質国民総所得(Gross National Income、GNI)の成長率寄与度分解することにより、以下のような特徴が見られる2

2 近年グローバル化の進展にともない海外との経済取引が拡大しており、貿易に伴う交易所得や海外からの所得移転等、我が国経済の豊かさを示す指標がGDPではとらえきれない分野にも注目する必要性が高まっている。そこで、ここでは、GDPに交易利得や海外からの純受取を加えたGNIに注目する。(第3章第1節に後述)


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(1)海外の経済動向の影響が拡大
 今回の景気回復過程では、従来と比較して純輸出や交易所得等、外国との取引が我が国の成長率に大きな影響を及ぼすようになっている。直近の景気回復期における実質GNI上昇率の寄与度を見ると、2004年や2005年第4四半期以降純輸出の寄与度が拡大している(第2-1-1-1図)。一方、2004年以降は交易条件の悪化による交易所得の流出がGNI成長率を引き下げる方向で寄与しており、特に2008年はGNI成長率を大きく押し下げた。
 
第2−1−1−1図 我が国の実質GNI成長率の寄与度分解
第2−1−1−1図 我が国の実質GNI成長率の寄与度分解
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 このように純輸出や交易利得の流出の寄与度が拡大した背景には、為替レートの低下傾向が影響していると思われる。我が国の実質実効為替レートを見ると、2000年以降低下傾向が顕著となり、同じ時期に輸出・輸入が拡大している(第2-1-1-2図)。
 
第2−1−1−2図 我が国の貿易収支の推移
第2−1−1−2図 我が国の貿易収支の推移
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(2)伸び悩む民間最終消費
 今回の景気回復局面でもう一つ特徴的なのが民間最終消費の停滞である。需要項目毎に直近の景気回復期を従来の景気回復期と比較をすると、内需のうち、設備投資は景気回復に比較的大きく貢献してきたが、GNIの6割近くを占める民間最終消費は、1980年代後半、1990年代半ばの景気回復期と比較しても伸び悩んでいる(第2-1-1-3図)。
 
第2−1−1−3図 我が国の景気拡大期における需要項目の回復動向の比較
第2−1−1−3図 我が国の景気拡大期における需要項目の回復動向の比較
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 こうした内需の伸び悩みの結果、直近の景気回復期における我が国の実質GDP成長率は2.4%と、1980年代後半と比較してそれほど上昇しないまま終了した3

3 1986〜1991年の景気回復期には、実質GDPは年率平均で5.4%成長していた。その後の2回の景気回復期(1993〜1997年、1999〜2000年)も、実質GDP成長率は、それぞれ同2.3%、2.4%と低迷している。

 なお、成長率の伸び悩みと円安により、2007年の日本の名目GDPは4兆3,850億ドル、一人当たり名目GDPは3万4,326ドルと、経済協力開発機構(OECD)加盟30か国中で19位に転落、先進7か国(G7)中では最下位となった4。世界の名目GDPに占めるシェアも8.1%と1971年以来の低水準となっている。

4 我が国は、一人当たり名目GDPで、1993〜1996年には3位に位置していた。


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